「4分の1の勉強量で私立・公立中高一貫校にW合格」10月に中学受験塾を辞めた子を合格させた母親の"発想転換"
プレジデントオンライン / 2022年12月2日 11時30分
※本稿は、『プレジデントFamily2022年秋号』の一部を再編集したものです。
前編(スランプケース1~3)から続く
■スランプケース4 「塾に行きたくない」と言い出した
回答:中学受験専門カウンセラーの安浪京子さん
Dさんは、6年生になってから勉強に身が入らなくなりました。毎日取り組んでいたワークもやらなくなり、親子の衝突が増えていきました。夏休み明けには、「塾に行きたくない」と言い出し、塾を休むように。そして10月、Dさんは大手塾を退塾しました。
Dさんの家では、お母さんが中学受験に力を入れており、難関校合格を目指してスケジュールを管理したり勉強を見たりしていました。しかし、Dさん自身は受験にあまり関心がなく、友達とおしゃべりするのが楽しいという動機で塾に通っていたのです。勉強も自分からする姿勢ではなく、親に言われるがままにやっている状態でした。
塾をやめた後も、お母さんは家庭教師や個別指導を利用して中学受験を続けてほしいと思っていました。本人は中学受験をやめることには未練がないようでしたが、何年もやってきた受験勉強が無駄になってしまうのも嫌だという気持ちを持っているようでした。
そこで私が提案したのが、「自分でできる量の勉強を続けて、中学受験する」「高校受験に向けて中学の英語や数学の勉強を始めてみる」という2択です。同時に、これまで志望校として候補に挙がっていなかった自由な校風の私立中学や公立中高一貫校を複数紹介してみました。Dさんの親は、これまで「何が何でも難関校」という固定観念を持っていたので、これを取り払ってみてほしかったのです。
そして、Dさんには「自由な校風の私立中に行くためには、今までの勉強の4分の1ぐらいの勉強量でOK」ということを伝えたところ、「それなら勉強できる」という答えが返ってきました。紹介した学校にも見学に行き、その中の2校が気に入ったため、受験勉強を続けることになりました。
最初からスムーズに勉強が再開できたわけではありません。しかしDさんは前向きに学習に取り組むようになり、最終的に私立中と公立中高一貫校に合格しました。
ちなみに、合格後にDさんに受験で一番つらかったことを聞いてみたところ、コロナ禍の休校時だったそうです。この時期は、お母さんが付きっきりで指導したかいがあり、塾のクラスも大幅に上がったそうです。けれど、本人にとっては「しんどくて、勉強が嫌になった」と。「親は子供の成績が上がって良かったと感じていても、子供は真逆の意見だった」ということがあるのです。
Dさんの場合、お母さんが「難関校に進学してほしい」という思いを捨てて、子供に合う学習量で対応できる受験に踏み切ったことが鍵でした。一番、頑張ったのはお母さんだったとも言えます。(安浪さん)
→受験スタイルを思い切って方向転換
■スランプケース5 頑張っても「成績が上がらない」
回答:中学受験専門カウンセラーの安浪京子さん
中堅校を目指していたEさんは、4年生から大手塾に通っていたものの、クラスはほぼ下位のまま6年生を迎えました。まじめにコツコツ勉強はするものの、塾の授業についていけなくなっていました。特に算数は、塾のテストで全く点数がとれず、勉強時間を増やしても成績が上がらないという状況が続いていました。
Eさんの場合、「大手塾に通っている生徒である」ことにこだわっていて、転塾するという選択肢はありませんでした。とはいえ、塾の授業についていけないという状況が続くと、モチベーションを維持できなくなってしまいます。
Eさんの志望校の入試問題は、基礎力を問う問題が中心でした。そこで、6年生の夏期講習から特についていけない算数の授業の出席を減らし、9月からは授業料は払いつつ塾に通うのをやめ、その分、個別指導を受けることにしました。
算数は、通っている塾の難しいテキストは使わず、市販されている四谷大塚の「四科のまとめ」を使うことにしました。「四科のまとめ」は基礎的な問題を網羅している教材。何回も繰り返し、徹底的に基礎を固めていき、同時に塾のテストで点数がとれなくても、気にしなくていいということを繰り返し伝えました。基礎レベルの問題に絞ったことで、12月から志望校と併願校の過去問を始めたところ、8割以上はとれるようになりました。
また、受ける模試についても工夫しました。11月以降は志望校レベルに応じた模試を受けて、テスト慣れをするようにしました。受ける模試によってレベルが大きく異なることを知り、外部模試では点数がとれることでEさんの勉強に対するモチベーションが上がっていきました。
Eさんのように、まじめにコツコツ勉強するタイプの子は、授業のスピードが速い塾では勉強の成果を発揮できないことがあります。しかし、地道に努力することを身に付けた結果、志望校に合格した後も、中学の定期テストで上位に入っているそうです。
![ジャーネーゼの少年は紙に書いています。](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/7/1200wm/img_5747c2b5a4b97c6accd9870365b1d73d595276.jpg)
志望校や学力のレベルによっては塾のカリキュラムが合わないこともあります。特定の教科は個別指導や家庭教師を利用するというこのケースは、親にとっては負担が大きいと思いますが、「子供を守れるのは自分しかいない」と、その決断に自信を持ってほしいですね。(安浪さん)
→塾にしがみつかず、個別指導で基礎固め
■スランプケース6 「元気」がなくなってしまった
回答:中学受験専門カウンセラーの安浪京子さん
2年生から大手塾に通っていたFくん。6年生の夏から元気がなくなり、9月ごろに「受験をやめる」と言い出しました。志望校別の特訓などのオプション授業には申し込みをしないなど勉強の負担は軽くしていたものの、日に日に元気がなくなり、勉強もほとんどしなくなってしまいました。
Fくんの家はお母さんが「私立中に進学させたい」という方針でした。秋以降勉強をしないFくんとお母さんは喧嘩をすることも増えていきました。
家庭教師としてかかわる中でFくんに「中学受験を続ける前提で考えて、どうしたら元気が出る?」と聞いたところ、彼の希望は「放課後、友達と遊びたい」というものでした。常に塾の宿題が大量にあるので、いつもまっすぐ家に帰るように言われていましたが、Fくんの要望をお母さんに伝え、週に2回、放課後に30分ほど学校で遊んでくる時間を確保するようにしてもらいました。
![翌日小学校に持ち物を用意する小学生](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/0/b/1200wm/img_0b473b2627cbad69639a99e58d245b5c1184713.jpg)
友達と遊ぶ時間はつくれたものの、Fくんのやる気は上がりません。10月になり、「どうしたら入試まで頑張れる?」と聞いたところ、「癒やしがほしい。犬を飼いたい」とFくんは言いました。近所で飼っている犬の散歩に同行するほど犬好きのFくんは、犬を飼いたいと切望していました。お母さんに伝えてみたものの、「今は勉強に集中する時期。犬を飼うのは受験が終わってから」という答えでした。
ところがその後、ペットショップに行ってみたら、お母さんがある犬にひとめぼれしました。受験勉強の追い込み期である12月、Fくんの家に子犬がやってきたのです。
一時期、親子の仲はかなり険悪な状態だったのですが、犬が来てからピタッと喧嘩がおさまりました。Fくんは受験勉強の合間に犬で癒やされ、お母さんはこれまでFくんの受験に向いていた気持ちが犬に行くようになり、好循環が生まれたんですね。Fくんのやる気も回復し、見事、第1志望に合格しました。
このケースでは、元気がなくなった子供に「どうしたら頑張れるのか」と聞いたことで、子供の素直な希望を聞くことができました。親が考えたご褒美を与えるご家庭もあると思いますが、子供の気持ちを聞くのが一番です。Fくんは自分の希望が満たされたことで、やる気を取り戻すことができました。(安浪さん)
→「どうしたら頑張れるか」を子供に聞く
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算数教育家、中学受験カウンセラー。プロ家庭教師会社アートオブエデュケーション代表。関西や関東の大手学習塾勤務やプロ家庭教師としての経験から中学受験家庭を指導、メンタルケアなど多角的にサポートしている。
渋田隆之さん
神奈川の大手進学塾の責任者を30年間務め、毎年受験生と1対1の面談をするなど丁寧な指導に定評がある。2022年夏、横浜の石川町に中学受験国語専門塾PREXを開校した。
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(プレジデントFamily編集部 文・構成=相川いずみ)
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