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「2週間で偏差値7ポイント急上昇」本番4カ月前に"スマホ沼"に落ちた中学受験生を救った塾講師の神対応

プレジデントオンライン / 2022年12月2日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

中学受験の本番に向けて緊張感が高まる時期。模試の成績が伸びなかったり、モチベーションが急降下してしまったり、とトラブルが起こりやすい。親はどう対処すべきか。中学受験の専門家2人に「秋や年末に特有のスランプの乗り越え方」をケースごとに教えてもらった――。(前編/全2回)

※本稿は、『プレジデントFamily2022年秋号』の一部を再編集したものです。

■中学受験まで間近「秋スランプ」脱出法、教えます

中学受験の本番が数カ月後に迫る6年生の秋。「トラブルが起きやすい時期」と話すのは、中学受験専門カウンセラーの安浪京子さんだ。

「思春期にも差し掛かり、小学生ながら自分の置かれた状況を客観的に見られるようになってきます。特に、秋以降はプレッシャーが具体的になってきて、たまっていた不満や、怒りが噴き出す子もいます。中学受験塾をやめて個別指導や家庭教師に切り替えたり、中学受験自体をやめて高校受験に切り替える子も少なくありません」(安浪さん)

またこの時期は親も余裕がなくなってきて、子供のSOSサインに気付かず、合格判定模試の結果に焦って子供をさらに追い詰めてしまうことになりかねない。

中学受験国語専門塾PREX代表の渋田隆之さんは、「夏期講習を乗り越えることができたということは、勉強する適性は持っています。子供がここまでやってきたのだから、親は模試の合格判定などで一喜一憂しないことを大前提に考えてほしいですね」と話す。

この記事では、長年にわたり中学受験の現場で、多くの受験生と保護者の指導にあたってきたお二人に、6年生の秋に起こりがちなトラブルと解決法を、六つの事例から解説いただく。

■スランプケース1「志望校を変更したい」と言い出した

回答:中学受験国語専門塾PREX代表の渋田隆之さん

難関中学を目指して塾に通っていたのに、6年生の秋の模試の結果を見て第1志望校のレベルを下げたいと言い出したAさん。五つ上のお姉さんが通っている学校を第1志望としていましたが、偏差値が数ポイント低い学校に変えたいと言うのです。理由を聞くと「私にはこっちの学校が向いていると思う」と言います。

『プレジデントFamily2022年秋号』(プレジデント社)
『プレジデントFamily2022年秋号』(プレジデント社)

Aさんの志望校変更の裏には、「親を悲しませたくない」という思いがありました。親を気遣うタイプの子は、「模試の合格判定が次も悪かったらどうしよう……」「本番で合格できなかったら……」と先のリスクを考えて、その回避に走る傾向にあります。志望校のレベルを落とせば、親にも心配をかけないだろうし、自分も楽になれる。そんな心理から、戦いの土俵から降りてしまおうとするのです。

ここで気を付けなければいけないのは、志望校のレベルを下げることで、楽になれるわけではないということ。数ポイント下げても勉強の量はほとんど変わりません。むしろ、志望校のレベルを下げることで勉強への意欲がそがれ、成績が下がってしまうことが多いのです。

さらに、志望校は一度変更すると、何度も変更したくなります。6年生の秋以降は過去問を解くなどして志望校に特化した対策をとりますが、志望校変更を何度もするのは、その対策にもロスが生じてしまいます。

この時期に志望校を変更する場合は、変更は1回のみ、塾の先生などに相談して行いましょう。そして第1志望を新たに決めたら、前の志望校のことはすっぱり忘れてしまうこと。

秋の時点の模試で、たとえ志望校再検討(合格可能性30%以下)のラインでも、ギリギリまで志望校を下げないでほしいと思います。安全校を併願すれば第1志望のチャレンジ校を受験できるのも中学受験の良いところです。

子供の気持ちの変化は、模試の志望校を書く欄に表れます。今までとは違う学校を第1志望校に書いてきたり、志望校の順番を変えてきたりしたら、子供の心が揺れている可能性があります。子供が「志望校を変えたい」と言い出したら、じっくりと話を聞いてみることです。子供自身も「自分の悩みに気付いてほしい」と思っていることが多いのです。

Aさんと面談してみると、プレッシャーとなっていたのはお姉さんの存在でした。Aさんの両親は、お姉さんの成績と比べるタイプではないのですが、Aさん自身がお姉さんのようには合格できないかもしれないと不安に思っていたようです。

Aさんの合格判定はそれほど悪くなく、十分合格できる可能性があるので、「お姉さんのことを気にしているんじゃないの? 君にはお姉さんにはないガッツがある。だから今はうまくいっていなくても、これから成績が上がるから大丈夫!」と励まし、志望校は変えないことになりました。4カ月後、無事に志望校に合格できました。(渋田さん)

→「親を悲しませたくない」と気を使っているかも

■スランプケース2 「ゲーム」がやめられない

回答:中学受験国語専門塾PREX代表の渋田隆之さん

ゲームが大好きなBくん。6年生になっても勉強へのスイッチが入らず、塾には来るものの、ゲームの時間は減りません。2学期が始まったころ、お母さんから塾に電話がかかってきました。

「入試まであと4カ月なのに、家ではゲームばかりしている。模試の結果も散々だったのに、どうしたらいいでしょうか」
「ゲームがやめられない」
「四六時中、スマホで動画ばかり見ている」

といった悩みは、今や、多くのご家庭が日常的に抱えている課題です。

ゲームをしている日本の小学生
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

Bくんのお母さんの相談を受け、私がとった対応策は、「ゲームを次の模試までやらない」というものでした。

ちょうど2週間後に次の模試があったので、そのときまで封印しようと提案しました。

最初は「ゲームに毎日ログインしてポイントをもらわないといけないから困る!」と渋っていたBくんでしたが、前回の模試の結果が悪かったことからとりあえずゲームを完全にやめてみて、成績にどう影響するか試してみようと約束をしました。

その際、私がゲーム機本体を預かり、物理的にできないようにしました。親が職場に持っていく、祖父母に預かってもらうなど、ゲーム機そのものを家からなくすという方法がよいと思います。

実際にゲームができない状況になってみると、自分がどれだけゲームで時間を消費していたのかを自覚することができたようです。

2週間ゲームを預かった結果、Bくんは次の模試で偏差値が7ポイントも上がりました。ゲームをする時間が減った分、勉強する時間が増えたんですね。本人も成績が上がったことが嬉しかったようで、その後、「合格するまで、ゲーム機を預かってほしい」と言われました。

Bくんのように、必ず成績が上がるとは限りません。その場合でも、小テストの点数が上がったことを示したり、ゲームをやらないことで取り組んだプリントの量を見せたりして、その成果を実感させることが大切です。

受験生は多少なりともストレスを抱えています。ゲームもそのストレス解消のためのひとつの方法ですが、長時間やってしまうと、「勉強しなきゃいけないのに……」と内心では思っている状態でゲームをすることになり、心から楽しむことができません。

子供のゲームを預かったり、ゲーム時間を減らしたりする場合、まずは「ゲームをすると心がすっきりするよね」という話から入ります。子供の気持ちを理解していることを示したほうが成功する確率は高まると思います。

また子供が納得したうえで預かることが大切です。1週間といった短い期間で区切る、あるいは1日の遊ぶ時間を減らしてみようという形で話すといいでしょう。(渋田さん)

→先生に2週間預かってもらおう

■スランプケース3 ストレスで「問題行動」をした

回答:中学受験国語専門塾PREX代表の渋田隆之さん

受験勉強や親子関係の悪化でストレスが高まり、ついには問題行動に走ってしまう子がいます。

受験直前の12月後半に、Cくんは通学中にわざと水筒の水をまき、近所から学校に通報があり、近所の人に謝罪する事態に。お母さんは、学校から呼び出されたあと、塾に相談の電話を入れました。

Cくんの問題行動は受験によるストレスからくるものだというのは明白でした。Cくんはそのころ塾でも表情が暗かったのです。受験本番が迫る中でプレッシャーを感じていて、限界まで追い詰められていたのでしょう。

そこで私がお母さんに提案したのが、次の週末、思い切って、丸1日Cくんの好きな遊びに付き合ってくださいというものでした。実はその日には、最後の合格判定模試があったのですが、模試は休んでいいと言いました。

「徹底的に遊んできてください。早く帰って、夜に勉強をさせてはいけません。外出先でおいしい夜ご飯をしっかり食べさせてください」と。丸1日遊園地で遊んだ結果、Cくんの表情が劇的に変わり、無事に志望校に合格しました。

澄んだ青空のジェットコースター
写真=iStock.com/Skyhobo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Skyhobo

12月のこの時期に、塾を休んで1日遊ぶということに抵抗を感じる保護者は多いと思います。しかし、心が元気でない状態で勉強したり模試を受けたりしてもプラスになることはほとんどありません。遊んだ分、こなせなかった勉強をどこかで補うという考えもナンセンスです。Cくんはこれまで散々勉強をしてきています。親が不安を解消するために勉強をやらせていないか一度考えてみてほしいのです。

中学受験をする子供は、学校に通い、平日の夜と休日には塾に通い、さらに家庭でも勉強をしています。これを社会人に置き換えたら、365日連続勤務。ブラック企業ならぬ「ブラック家庭かもしれない」という視点を頭の片隅に置いて、息抜きの時間をとる余地は残しておくことが大切です。

子供自身はストレスが高まっている状態に気付いていないこともあります。一番近い存在である親に気付いてほしいと思います。

子供のSOSサインに気付く方法のひとつが、塾から帰宅した際の表情です。子供たちは塾に行って友達や先生と話したりすることが、ストレス解消になっていることも多い。それにもかかわらず、無口だったり、伏し目がちだったりした場合、心が元気でないかもしれないと考えてください。

また、お弁当の食べ方でもわかることがあります。塾に持って行くお弁当などは、基本的に食べやすく、子供の好物を入れている家庭が多いと思います。これを残してくる場合は、メンタルに不調を抱えているかもしれない。このほか、子供の睡眠時間にも気を付けてみてください。(渋田さん)

→塾や勉強を休んで、丸1日思い切り遊ぶ

以下、後編(スランプ4~6の対処法)へ続く。

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安浪京子さん
算数教育家、中学受験カウンセラー。プロ家庭教師会社アートオブエデュケーション代表。関西や関東の大手学習塾勤務やプロ家庭教師としての経験から中学受験家庭を指導、メンタルケアなど多角的にサポートしている。
渋田隆之さん
神奈川の大手進学塾の責任者を30年間務め、毎年受験生と1対1の面談をするなど丁寧な指導に定評がある。2022年夏、横浜の石川町に中学受験国語専門塾PREXを開校した。

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(プレジデントFamily編集部 文・構成=相川いずみ)

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