「即戦力にならなくては」と空回り…「転職で失敗する人」に共通する6つの落とし穴
プレジデントオンライン / 2022年12月8日 13時15分
■「就職」の前から「転職」を考える時代
私は現在、山梨学院大学で「実践キャリア論」の授業を週1回、大学3年と4年生を対象に実施しています。その中で、まずは「就職」というキャリアステップを控えた大学生から、将来的な「転職」さらには「独立」に関する質問を受けることが増えてきています。
終身雇用だった時代は変わり、今や「転職」は一般的なキャリアの選択肢として定着しました。しかし、いざ転職しても失敗してしまうケースは多々あります。
本稿では、転職先の企業で成功するための「6つの鉄則」を解説していきます。6つの鉄則を把握し、転職先で実践することで、「転職先で成功する人」になっていただきたいと切に願います。
■入社してから1週間~10日が勝負
鉄則① 職場での第一印象を大切にする
転職先で最も気を使わなければいけないことの1つが、職場での人間関係です。
![佐藤文男『働き方が変わった今、「独立」か「転職」か迷ったときに読む本』(クロスメディア・パブリッシング)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/8/1200wm/img_688c567ded9c21496d43b2066645c80a234487.jpg)
仕事はチームで行うものなので、いくら実力があるからといっても、一緒に仕事をする人と良好な人間関係を築けなければ、周りから認められるような成果は出せません。
今は「成果主義」や「個の時代」と呼ばれ、個人のアウトプットが問われる時代です。若い世代の中には、人間関係を重視していない人がいるかもしれませんが、それは大きな間違いです。
特に経験者採用で入社した人にとって、周囲からの支援は不可欠です。同じ業界、同じ職種といえども、仕事の進め方は会社によって異なるため、職場での人間関係をうまく構築できなければ仕事はうまく回っていきません。
言い換えるならば、人間関係に失敗してしまうと、その転職自体が失敗に陥りやすく、そこからのリカバリーは非常に困難と言えましょう。
良好な人間関係を構築できるかどうかは、第一印象に大きく左右されます。もちろん第一印象が悪くても、仕事をしていくうちにマイナスな印象を取り返せる要素もありますが、それには長い時間が必要です。
目安として、入社してから1週間〜10日後までにあなたへのイメージはほぼ固まってきてしまいます。この期間には特に気を抜かないように心がけたいものです。
■気づかないうちに悪印象を与える「臭い」
もちろん遅刻は厳禁です。始業ベルの15分から20分は早めに到着するようにしたいものです。
身だしなみも当然大切で、家を出る前に、シャツの裾が汚れていないか、ズボンにプレスが効いているか、爪が伸びていないか等をしっかりチェックしておきましょう。
汗をよくかく人は、体臭にも気をつけましょう。臭いはなかなか他人には指摘できませんが、かなり悪印象を与えてしまいます。これは口臭についても同じことが言えます。
また出社する際は、職場の人への挨拶をしっかりすることも重要です。もちろん言葉遣いも丁寧に、新入社員になった気持ちで話すことが大切です。
ほかにも、部署の人はもちろん、仕事で関係する人たちの顔と名前はしっかり覚えるようにしましょう。
転職先で失敗する人:職場での第一印象が良くないために、人間関係の構築もうまく進まず、結果的に仕事もなかなか軌道に乗らない
■職場に疑問があってもすぐに否定しない
鉄則② 新しい職場での仕事の進め方を素直に受け入れる
転職先の会社においては、「郷に入っては郷に従え」が基本だといわれます。
その会社のカルチャーや仕事の進め方など、たとえ気になるところがあっても、それを否定せずにまずは真摯(しんし)に受け入れましょう。
ある企業に転職したAさんは、前の会社の経験から転職先の仕事の進め方が非常に効率悪く感じたので、「事業展開はもっとテンポ良くやるべき」と改善提案を出してしまいました。たしかに彼の意見にも正しい部分はあったのですが、それまでのやり方を否定された側としては、当然ながら気分は良くありません。
Aさんは正しいことを言ったにもかかわらず、「まだ入社したばかりだというのに生意気な奴」というイメージが定着してしまいました。結局Aさんはそのまま職場に馴染めず、半年で会社を退職してしまったそうです。
転職前に実績があった人ほど、前の会社の仕事の進め方を引き合いに出してしまいがちです。しかし、転職先の会社ではまだ成果も出していない段階から自分の主張を強く出しすぎると、どうしても周囲から浮いてしまいます。
あなたが会社に徐々に貢献することができるようになってから、初めて自分なりの提案なり方向性を少しずつ打ち出していきましょう。
転職先で失敗する人:前職の仕事の進め方に固執し、新しい職場での仕事の進め方を否定した結果、職場で孤立してしまう
■「年下の上司」にも素直に助けを求める
鉄則③ 年下であっても転職先では先輩として扱う
今や年功序列は崩壊しつつあり、上司が自分より年上とは限らない時代になりました。
それがわかっていながら、転職した先に自分より若い人が上のポジションにいると、面白くないと感じる人は少なくありません。特に転職前に年功序列をしっかり守っている会社で長く働いてきた人は、どうしても若い上司や同僚を下に見てしまいがちです。
しかしながら、例えばその会社の生え抜きの人は、その会社の業務に関してはあなたよりも人脈があり、仕事の進め方も熟知しています。たとえ年下であっても、彼らから教えを請う謙虚な意識を持たなくてはいけません。
そういった謙虚な姿勢を持つことが、職場での人間関係構築につながり、困ったときには周りから助けてもらえるようになります。「聞くは一時の恥」ではありませんが、年下相手でも素直に聞いて助けてもらう姿勢は、自分の人間性を高める上でも重要です。
「年下に対して下手に出るなんてみっともない」と見栄を張る人もいますが、そんな虚勢はビジネスの現場では必要のないことです。むしろ転職してきたばかりの頃は、恥ずかしがらずに素直に人に聞きやすい立場なのだと認識しましょう。
■「年上の自分が正しい」意識はゴミ箱へ
以前に転職の支援をしたBさんは、新しい職場の上司が2歳年下でした。そのことは入社前から知ってはいましたが、今まで年上の上司しか持ったことのないBさんにとって、なかなか納得できることではありませんでした。
そのうち上司からの指示自体が正しくないように思えてきて、次第にBさんは反抗していきました。Bさんもそんな状況がいいとは思えず、関係を修復しようとも考えたのですが、どうしても年下を相手に自分から頭を下げることができません。
結局、その上司とは関係が築けないまま1年が過ぎ、Bさんは別の会社に転職することとなりました。
このように「相手は年下で社会人経験も少ないから、自分のほうが正しい」といった考え方ではなかなか通用しません。
もしも自分の中にそういう感覚があるのなら、意識してそれを捨てなければ、ビジネスパーソンとしての成功も手に入れることはできないでしょう。
転職先で失敗する人:自分より若い上司のことを受け入れられず、仕事の指示に対しても真摯に対応しない結果、仕事の評価や実績につながらない
■企業規模で「成果が求められる期間」は異なる
鉄則④ 「即戦力」としての期待値を分析し、すぐ結果を出すことだけを考えない
即戦力というのは、文字通り「入社してすぐに結果を出せる力」という意味ですが、実際にそこで期待されているレベルは実は転職先によって違いがあります。
例えば営業職として転職した人は、業種にかかわらず比較的すぐに数字としての売り上げ実績を出すことが求められます。しかしながら、総務のような管理部門で転職した人に、営業と同じレベルで成果を期待されても困ってしまいます。
転職した際は、職場において仕事で成果を出すまでどれだけの期間が与えられているかを把握することが大切となります。
求められる即戦力のレベルはその会社や部署によって異なりますが、大きく分けると「企業規模」と「職種」の2つの指標で見ることができます。
まず企業規模ですが、ベンチャー企業のような急成長している会社や規模の小さい企業ほど、初日からガンガン動いていくことが求められます。すなわち、短期間で成果を出すことが求められる環境であると言えましょう。
一方、大企業では短期間で結果を求められることは基本的にありません。特に大企業では、転職当初は会社全体の動きや仕事のやり方、自分の仕事の位置づけなどを把握することに費やす必要があるわけです。
■「即戦力」を意識しすぎて空回り…
続いて職種ですが、例えば金融トレーダーやアナリストは、基本的に個人で動く仕事であり、会社が変わっても業務内容にはほとんど違いはないので、転職してもすぐにアウトプットが求められます。ほかにはクリエイターやコンサルタントも、比較的短い期間で成果を出す必要があります。
一方、人事や総務といった管理部門は、評価できる成果を出すのに時間がかかる職種です。エンジニアやマーケティング、商品開発、店舗開発、研究開発などは、営業部門と管理部門の中間レベルに相当するため、短期スパンでの成果を上げることは決して簡単ではないのです。
このように、周囲の評価に対して即戦力になるという意味では、単に急げばいいというものではありません。場合によっては、自分1人だけが空回りしていることもありうるわけです。
自分は一生懸命やっているのに、どうも周囲から評価されていないのではないかと感じた際には、自分の仕事の位置づけをあらためて確認することがポイントです。「即戦力」という言葉に振り回されて、自分の動き方が独善的にならないよう気をつけたいものです。
転職先で失敗する人:「即戦力」の内容を把握せず、自分だけの実績を出すために周囲との人間関係を無視して独善的に行動する
■ホームランよりも地道なヒットを積み重ねる
鉄則⑤ 「ホームラン」を狙わず、周囲の協力も仰ぎながら地道な「ヒット」を積み重ねる
入社後3カ月が経過しても結果が出せないとなると、どうしても不安に感じてしまうことでしょう。しかしそんなときこそ焦らないことが大切です。
焦るとどうしても大きな成果を出そうとホームランばかりを狙いがちですが、そんなときほど小さな成果を出せるよう、まずはヒットを出すことに注力しましょう。
地道にヒットを積み重ねていくことが、周囲からの信頼を得る一番の近道なのです。
特に40代や50代で部下のマネジメントを行ってきた管理職の人なら、プレーヤーの意識を呼び覚まして現場で先頭に立つことも大切です。たとえマネージャーとして採用されたとしても、現場に立つプレーヤーとしての意識も忘れずに自ら行動を起こす人は、転職先でも成功しています。
50代で消費材分野の外資系企業の日本支社長のポジションに転職したCさんは、入社後に支社長として大きく構えるのではなく、自ら営業マンとして顧客に積極的に足を運び、新規の営業開拓をリードしていきました。
その結果、転職してから1年後には業績が伸び、部下からも強い信頼を得ることができました。日本支社長だからといって、椅子にふんぞり返っていたらこうはいかなかったでしょう。
■焦って1人で悩んでも何も良いことはない
特に仕事で小さな成果を早く出したいのなら、仕事を進める方向性が上司(職場)の希望する方向性と合っているかどうかを確認することもポイントです。
いくら努力をしていても、会社が望んでいるベクトルと向きが間違っていたら、なんの意味もありません。きちんと上司とコミュニケーションを取り、プライドを捨てて自分の仕事の進める方向性のチェックをしてもらうようにしましょう。
もし、仕事を進める方向性は間違っていないのに成果が出ない場合は、より具体的に自分の仕事の進め方の問題点を上司と一緒に検証し、アドバイスをもらうようにしましょう。
「お客様へのアプローチ方法が間違っている」「プレゼンの方法を変えた方がいい」「お客様への訪問頻度が足りないから、必要なフォローができていない」など、具体的な課題と改善点を挙げていくことで、突破口が見えてくるはずです。
![オフィスで逆光のサラリーマン](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/e/d/1200wm/img_ed75acac40a27170a746fbb375db2158397111.jpg)
仕事の結果が出ないときに一番良くないのは、自分だけで抱え込んでしまい、1人で何とかしないと、と焦ってしまうことです。しかしながら、それではストレスが溜まるばかりで、良いことは何もありません。
仕事がうまくいかないときこそ見栄を張らず、周囲にいる上司や同僚に助けを求めるようにしましょう。
転職先で失敗する人:上司や周囲に協力を求めることなく、何とか自分の力でホームランクラスの結果を出そうとする
■自分の手応えと上司の評価の「答え合わせ」を
鉄則⑥ 入社3カ月後と6カ月後を区切りに、上司からフィードバックを受ける
転職した際は、会社によっては研修を受ける機会もあるでしょうし、前任者からの仕事の引き継ぎや周囲からのサポートを得られるかもしれません。新しい仕事を学ぶ機会は、企業規模や職種、業種、置かれている状況によって千差万別です。
その中でも大切なのは、たとえどんな状況で働くにせよ、仕事を教えてもらうのを受け身で待つのではなく、自分がどれだけ成長したいのか、目標を設定することです。
具体的には、入社してからおよそ3カ月と、6カ月の時点を1つの区切りと考えるといいでしょう。
転職から3カ月後は、ちょうど新しい職場や仕事にも慣れてくる頃です。試用期間は一般的に3カ月で終了するので、ここで気を抜いてはいけません。
入社3カ月というのは、ようやく慣らし運転が終わり、これから仕事で成果を出すための重要な時期です。このタイミングで、3カ月間の自身の活動に対してフィードバックを受けるようにしましょう。
さらに転職から6カ月が経つと、会社に慣れてくるだけでなく、それなりの実績なり成果が求められます。このタイミングで、仕事で着実にヒットを出せているのか、改めて上司とすり合わせを行うことが大切です。
3カ月間、あるいは6カ月間、あなたががんばって成果を出したと考えても、最終的な評価は上司が下します。自分では満足のいく仕事をしたと思っていても、実は上司や会社が期待している方向性と大きくズレてしまっている可能性もないとはいえません。
そうしたズレが生じる事態を防ぐためにも、入社3カ月後と6カ月後の時点でのフィードバックを受けることが、転職の成功には欠かせない要素です。
転職先で失敗する人:上司からフィードバックをもらえるような動き方をしない
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佐藤人材・サーチ社長、山梨学院大学客員教授
1960年東京生まれ。1984年に一橋大学法学部卒業後、日商岩井株式会社(現・双日株式会社)、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社(現・シティグループ証券株式会社)、株式会社ブリヂストン等、多様な業種において人事業務、営業・マーケティングを中心にキャリアを積み、1997年より人材紹介(スカウト)ビジネスの世界に入る。2003年に佐藤人材・サーチを設立。2013年4月よりシンガポールに拠点を移し、海外での人材紹介ビジネスの研鑽を積む。帰国後、2015年4月より佐藤人材・サーチを再起動する。著書に『今よりいい会社に転職する賢い方法』(クロスメディア・パブリッシング)、『自助の時代 生涯現役に向けたキャリア戦略』(労務行政)など多数。公式サイト https://www.sato-jinzai.com/
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(佐藤人材・サーチ社長、山梨学院大学客員教授 佐藤 文男)
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