なぜ子供はなかなか宿題をやらないのか…「心理的リアクタンス」を乗り越えるための3つのコツ
プレジデントオンライン / 2022年12月9日 14時15分
※本稿は、加藤紀子『ちょっと気になる子育ての困りごと解決ブック!』(大和書房)の一部を再編集したものです。
■なぜ子供はなかなか宿題をやらないのか
「『宿題は?』と何度も言わないといけないので疲れる」「机に座ってから取り掛かるまでの時間が長くて、見てるだけでイライラする」
子育ての悩みで非常に多いのがまさにこれ。なぜ子どもは、やらなくてはいけないことをすぐにやろうとしないのか。
やるべきことをやってから自由に過ごせばいいのに! と、こんな当たり前のことが通用しない子どもに不満が爆発。つい「勉強しなさい」とガミガミ言い続ける怒りの連鎖に陥ることってよくありますよね。
子どもは子どもなりに、学校で勉強したり、友達と遊んだりしながら、毎日さまざまな体験をしています。「今日も1日、いっぱいがんばった」と思っています。だから、宿題をやるべきだとわかっていても、その前に「ちょっとゆっくりしたいな~」という気持ちなのです。
でもなぜ「ちょっと」が「ちょっと」ではなくなってしまうのか。
心理学的にいうと、こうした状態のときに「宿題は?」とか「勉強しなさい!」などと言われるとかえってやる気を削がれ、勉強したくなくなるからです。
これは「心理的リアクタンス」と呼ばれる事象です。リアクタンスとは“反抗”のこと。人は生まれながらに、「自分のことは自分で決めたい」という欲求を持っているため、他人に決めつけられると嫌悪感を覚えます。そして、たとえ言われていることが自分でも正しいとわかっていても、無意識に反発します。
つまり、親から指示をすればするほど、子どもはますますやりたがらないというのは、むしろ自然な反応なのです。
■宿題をスムーズに終わらせるコツ3
では、どうすればいいのでしょうか?
1.勉強は「朝型」にしてみる
子どもの発達に詳しい児童精神科医の吉川徹先生は、「学校から帰ってきた後はまず休息が必要で、先にゲームをすませてちゃんとおしまいにしてから宿題に取り組む、という流れが合う子どもが結構多い」と言います。
親としては「先に宿題をやってから遊んでほしい」ところですが、それがうまくいかない場合は、勉強は学校に行く前の「朝」にルーティン化してしまうのも手です。
2.始める前に課題は机の上に開いておく
勉強の一番のハードルは「始める」ことです。朝型にする場合、夜寝る前に、机の上に課題の箇所をあらかじめ開いて置いておき、起きたらすぐに始められるように態勢を整えておくのがポイントです。
「めんどくさい」「やる気ない」といった気持ちと葛藤(かっとう)するまでもなく、起きたらすぐに鉛筆を持って始められるように準備しておくと、朝の勉強が習慣化しやすくなります。
3.宿題は先生との「約束」だと伝える
親がいくらガミガミ言ったところでまったく聞く耳を持たない子でも、「宿題は先生との『約束』だよね」「『約束』は守らなきゃね」と伝えると、自主的にやり始めるケースが意外と多いようです。
特に低学年くらいまでは、「将来困らないため」「テストで良い点を取るため」といった理由よりも、先生との「約束」という理由のほうが動機付けとしては効果がありそうです。
■勉強好きな子と勉強嫌いな子との違い
ところで、「勉強なんてちっとも面白くない」「勉強は嫌い」といった後ろ向きの言葉ばかりいうようになってしまった子にはどうするといいでしょう。これは、どうやらわが子に限った話ではなさそうです。
東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所の調査によると、勉強嫌いの子どもは、小学校、中学校、高校と年齢が高くなるごとに増えていく実態が明らかになっています。
![できれば勉強とは仲良く付き合いたい](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/6/1200wm/img_5699a5f80fe827ed5062f34bc2677fd2410172.jpg)
勉強内容が難しくなるにつれて、「嫌い」派が増えてくるようですが、一度勉強嫌いになってしまった子は、もう勉強が好きにはなれないのでしょうか。勉強が面白いと思える子たちとはいったいどこが違うのでしょう。
「勉強嫌い」が年齢とともに増えていくのは、勉強内容がどんどん難しくなり、わからなくなるからです。わからないことが雪だるま式に増えると、「自分は何がわからないのかがわからない」状態になり、何をどう勉強してよいかわからず、ますます勉強嫌いを加速させてしまいます。それでも「勉強嫌い」の子が渋々勉強するのは、「先生や親に叱られたくない」という外発的な動機からです。
一方、前述の調査によると、勉強嫌いから勉強好きに変化した子は、「知るのが嬉しい」といった自分の好奇心や関心など内発的な動機で勉強している割合が高くなっています。
学校で“調べ学習”をした経験がある子のほうが、勉強好きになるという結果も出ているそうです。
勉強がわからない子に向かって「勉強しなさい」と言うだけでは、「勉強嫌い」は変わらないまま。「知りたい」という内発的な動機を引き出すことが必要なのです。
■勉強嫌い克服のためのコツ3
1.子どもの「興味」に付き合う
「勉強しなさい」と言われると子どもは反発します。これは、命令されるとむしろやりたくなくなるという自然な心の反応です。
そこで、とっかかりとしては勉強そのものではなく、子どもが夢中になっているものに、「一緒に遊びたいから教えて」などと興味を示し、子どもに説明をお願いしてみます。
また、「好きなことノート」をつくり、どんなところが面白くて楽しいのか、あるいは疑問や妄想などを自由に書き出してもらうのも有効です。
子ども自身がアウトプットすることで何がどれだけ好きなのかを深掘りでき、「もっと知りたい」という探究心が芽生えてきます。そこで「いろいろ知るのって楽しいね」と共感を示してあげることで「勉強って楽しい」という気持ちが育っていくのです。
2.毎日の「勉強時間」は子どもが決める
気分良く好きなことを楽しめると、気持ちが落ち着いて勉強にも取り組めるようになります。
その際、いつ勉強するかは子ども自身に決めさせるようにすると、子どもは親から信頼されていると感じ、自分から取り組もうとする主体性が育まれます。
3.勉強するときは子どものそばにいる
子どもが勉強するときは家事の手を休め、テレビやスマホを見ながらではなく、子どものそばで、その姿を見守るようにします。親がまだ勉強を見られる年齢なら、つまずいているところや苦手分野を洗い出し、克服させてあげると、その都度子どもは自信をつけられます。
小学校高学年から中学、高校になると難しい内容が増えてくるため、親が勉強を見ることは難しくなりますが、その場合には、AIが学習のつまずきの原因を見つけてくれるデジタル教材を活用するなど、子どもがわからないところまで戻ってから進められる勉強法を選んであげるとよいでしょう。
AIが学習のつまずきの原因を見つけてくれるデジタル教材
次のようなデジタル教材は、学習のつまずきの根本原因をAIが特定し、その原因を解決するために必要な課題をAIが選んでくれるという仕組みです。
すらら
小学校1年生から高校3年生まで5教科対応(理科・社会の対象範囲は小学3年生〜中学3年生。英語の対象範囲は中学1年生〜高校3年生まで)。授業と問題演習があり、目標を達成するごとにポイントがもらえる仕組みが子どもたちのやる気を刺激。ゲーム感覚で楽しく学べます。
atama+(アタマプラス)
小学校4年生〜高校既卒生が対象。個人での契約はできませんが、全国の塾で導入されているので、アタマプラスのホームページからチェックを。
Qubena(キュビナ)
小学1年生~中学3年生が対象。自治体・小中学校で広く導入されており、現在個人での契約はできませんが、主要5教科の問題集のような位置付けで、学校の授業や宿題にも活用されています。
その他、タブレット教材では、進研ゼミ(チャレンジタッチ)やスマイルゼミも人気です。スマイルゼミでも先取り・さかのぼり学習ができる「コアトレ」が始まるなど、学年の枠にとらわれず、わかる子はどんどん進み、わからない子はつまずいたところまで戻れます。こうして一人ひとりにあった教材で学べば、学力を効率的に伸ばすことができます。
■親世代と変わった大学受験
わが子が勉強しないとお悩みの親御さんに、もう一つ、知っておいていただきたいのが大学受験の変化です。
親世代の頃は、入試といえば一発勝負。ところが今は、学校側が早期に学生を確保する目的で、「学校推薦型選抜」や「総合型選抜(旧AO)」という形態で入学する学生が、4年制の大学では半数以上、短大では8割以上にものぼります。
![【図表1】入学者選抜の実施状況(令和3年度)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/9/f/1200wm/img_9f32f056d5caede24636f6605b20d819305484.jpg)
親世代になじみがある試験一発勝負の入試は「一般選抜」と呼ばれていますが、このような大学による“青田買い”の影響で、かつてに比べて定員が少なくなっています。
さらに私立大学では、入学定員を上回る学生を入学させると国からの補助金がカットされる仕組みがあるため、定員を超過する合格者を出すことに慎重にならざるをえません。そのため、今は少子化にもかかわらず、「一般選抜」は“狭き門”となっているのです。
親としては、大学入試のこうした変化をおさえておく必要がありますが、一方で、子どもにとっては自分のタイプに合った入口を選べる時代になったといえそうです。
■どの入試方法を選ぶかで過ごし方は変わる
大学入試がこのように変化していると、子どもの高校での過ごし方も変わってきます。「一般選抜」は学力勝負。入試当日、1点でも多くもぎ取るために、参考書を読み、問題集を解き、過去問を研究するといった準備が必要ですが、「学校推薦型選抜」や「総合型選抜」では次のようなことが求められます。
●公募制と指定校制がある
●小論文や適性検査、面接、基礎学力試験、調査書などの書類審査を組み合わせて選考される。課外活動の詳細や資格検定の成績を求められることもあるなど、学校によってさまざま
●出身高校の校長からの推薦状が必要
●調査書の成績が5段階評価で3.5以上といった出願条件が設定される場合もある
■総合型選抜
●志望理由書や自己推薦書といった提出書類のほか、面接や論文、プレゼンテーション、グループディスカッションなど、大学によって課題はさまざまだが、学びに対する意欲や大学・学部への適性を重点的に見られる
●調査書の成績は過度に重視されることはない(ただし最近は、学生の学力不足への懸念から、調査書の成績を積極的に活用する動きも)
このように、「学校推薦型選抜」や「総合型選抜」では、高校での成績、高校時代にどんな活動を行ってきたか、大学でどんなことを学びたいかといった点をトータルで評価されることになります。
となると、入試に出る科目を重点的に勉強するという旧来のスタイルよりも、自分が好きなこと、興味のあることに打ち込むという過ごし方が、そのまま進路に直結していくことになります。
■「総合型」はやりたいことを応援してくれる環境を重視
もちろん「一般選抜」のような試験が得意な子であれば、親世代同様、学力さえ上げられれば何の問題もありません。
でも、試験は苦手だけれど、部活動や生徒会、あるいは地元の課題解決など、課外活動ならがんばれるというタイプの子は、「学校推薦型」や「総合型」で進路を考えればいいわけです。
学校推薦型・総合型で進路を考える場合、高校選びのポイントは次の2つです。
2022年4月から、高校では新しい学習指導要領が本格的に実施され、「探究」という授業が始まっています。「探究」とはまさに、興味のある学びに打ち込み、掘り下げることです。そのためには、生徒の興味のタネを潰さずに、サポートしてくれる環境が必要です。
最近では高校が大学や企業と連携をしたり、先生同士が横のネットワークでつながって互いの知識やアイデアを共有したりする動きが徐々に出始めていますが、その熱量はまだ学校によって大きな差があります。
![加藤紀子『ちょっと気になる子育ての困りごと解決ブック!』(大和書房)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/e/1200wm/img_1ed930a0782a5b85dfb95204bd826897395086.jpg)
学校が生徒のやりたいことを応援してくれる環境かどうかは、その後の進路を左右するといえるでしょう。
無理をして偏差値の高い学校に入っても、周囲に自分より優秀な人が多いと、どんなに努力しても調査書の評定平均が上げにくいというリスクがあります。
学校の勉強に苦労していると、好きなことに打ち込むエネルギーや時間が大きく削られてしまいます。
学校推薦型・総合型での進学を考える場合には、学校の成績があまり苦労なくとれる環境かどうかも事前に調べておくといいでしょう。
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フリーランスライター
ライター。子育てが一段落してから教育関係の取材・執筆を本格的に開始。教育専門家に取材したことから得た知見や、国内外の最新研究から得た子育てのコツを盛り込んだ初の著書『子育てベスト100』は現在17万部のベストセラーに。1男1女の母。
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(フリーランスライター 加藤 紀子)
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