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クルマなしでは生活できない田舎は最悪…「老後の田舎暮らし」を絶対にやってはいけない理由

プレジデントオンライン / 2022年12月8日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

老後はどこに住むのがいいのか。経済評論家の佐藤治彦さんは「車がなくては何もできないような田舎に住んではいけない。むしろ50歳前後には生活の拠点を都市部に移しておいたほうがいい」という――。

※本稿は、佐藤治彦『おひとりさまが知って得する、お金の貯め方・増やし方』(ぱる出版)の一部を再編集したものです。

■住宅は買うべきか、借りるべきかの結論

幸せなおひとりさまのために、必要なことは、お金で困っていない。できれば余裕があることだと思います。お金は入ってくるものと出ていくものがある。そして、出ていくもので、人生最大のものが住宅に関するものです。

日本の場合、これは持ち家でも賃貸でも、手取りの3割くらいを住宅に使う人が多いです。使ってない人の多くは、親の家、昔なら社宅といった具合に、誰かが負担してくれているので、その支出がない人たちです。

もしくは、3割以下の人は、相当稼いでいる人です。日本人の多くは、毎日の買い物などでの節約に力を注ぐ人はとても多くいるのですが、人生における最大の支出が住まいに関するものである限り、住宅に関することで失敗したら、他でどんなに節約してもほぼ取り返しがつきません。

住宅に加えて、生命保険などの保険に関するもの、自家用車などの支出もとても大切です。ですから、十分すぎるほど考えたいことは、住まいに関することなのです。

それでは、多くの人が悩むことから考えていきましょう。住宅は買うべきか、借りるべきか。

■30年後のことを考えているか

かつて歳を過ぎて独身で働いている女性たちの多くが小ぶりのマンションを買いました。一生家賃を払っていくのは損だ。30歳まで節約して働いて手元に1000万円ほど貯まった。それを頭金にして、マンションを買って、これで生涯にわたって住宅の心配はないと考えたのです。

本当でしょうか?

まずに申し上げたいのは、賃貸なら要らない費用がマイホームには必要だと言うことです。

固定資産税、火災保険料、地震保険料、リフォーム代、マンションなら修繕積立金、管理費といったものです。これらは生涯ついて回ります。

特に考えてもらいたいのがリフォーム代です。マンションに住んでいる。一軒家に住んでいる。30年後、その水回りを使いますか? トイレはどうですか? フローリングはどうなっているでしょう? 壁紙も汚れますよね?

もしも、30年後の最新の快適な設備とともに人生を歩みたかったらお金が必要なのです。マイホームだからといって決して住宅周りのお金がかからないとは思わないでください。

■資産が不動産だけという危うさ

私が持ち家をあまりオススメしない理由はいろいろとあるのですが、特に大切なことは、大部分の人にとっての財産が住宅メインになってしまうことです。

自分は1億円の資産を持っている。そのうち、住宅が8000万円、生命保険が1000万円、貯蓄が1000万円だ。これではあまりにも歪(いびつ)です。

それに住宅の価値は本当に8000万円あるのかどうかはわかりません。自分でそう思っている、いや、願っているだけです。

換金が必要になって売却に出し、その時に買ってくれる人が決めるのです。そして、手元に残るのは多額の税金や仲介業者への手数料を差し引いた残りなのです。

年齢を重ねて、介護付き老人ホームに入るのにお金がいる。急にお金が必要だと、不動産を短期の間に現金化しようとすればするほど、買い叩かれることが多いものです。

実際に売ってみないといくらの市場価値があるのかわからないもの。また、災害や火事など思わぬ理由で価値が半減することもありうるのが持ち家なのです。

これが、株式や投資信託、預金などで1億円の資産がある。そして、不動産も8000万円の価値があるものを所有しているというのであれば、まだバランスが取れているのですが、今や退職金で住宅ローンの残金を払うなんて人もザラにいるのが実態です。

いざという時に動かせる、そして老後を支えていくための現金やすぐに現金化できる金融商品で資産を作っている人が少ないのが気がかりです。

■車が必須の田舎に住んではいけない

住宅の問題といえば、持ち家か賃貸か。そればかりが毎回取り上げられます。

それは確かに重要なのですが、それと同じくらい大切なのが、どこに住むかということです。

これは、おひとりさまでなくても重要なのですが、特におひとりさま生活をしていくとなるともっと重要です。それは都市部に住むか地方に住むかということです。

もっと突き詰めてお話しすると、地方でも地方都市に住むのか、自然に囲まれた地域に住むのかということです。

結論から申し上げると、たとえ地方に住むにしても、都市部に住むべきです。言い換えると、自家用車に頼らなくても、そこそこの交通アクセスがある。買い物ができる。役所や病院に行ける。そういうところに住むことがとても大切です。

つまり、できるだけ人の集まっているところに住む。人が多く住んでいるところには、税金を使ってさまざまなインフラ対策もしてくれるものだからです。

これは国の政策であるコンパクトシティにも合致した考え方です。年老いた人たちの交通事故が絶えません。高速道路を逆走する。ブレーキとアクセルを踏み間違えて、建物に突進する。それで、他人の命を奪ってしまうことさえあるのです。

シニアドライバー
写真=iStock.com/GCShutter
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/GCShutter

さらに、経済的にも自家用車はメリットが少ない。ガソリン、税金、車検などのメンテナンス、都市部なら駐車場代、自動車保険、もちろん自動車本体の価格。費用もバカになりません。

50歳を過ぎたら自家用車で移動するよりも、自分の足で移動していく方が健康のためにもいいはずです。つまり、年老いた時に自家用車がなくては何もできない、そんなところに住んではいけません。

■50歳前後には都市部に行くべき

こう申し上げると、わかった。それなら70歳までにはそうするよ。そう言われる方がいる。これがよくない。

70歳になって新しい場所に住み、地域に溶け込み、新しい人間関係を築く。至難の業です。できるだけ若いうち、遅くても、50歳前後からじっくり作っていくのが、その後の人生のためにとても大切なのです。

毎日歩く、自転車に乗る。それで、日常の用事が事足りる。そういうところに住むべきです。どうしても車に乗って遠出もしたい。それならレンタカーを借りるという選択肢もあることをお忘れなく。

家族の思い出がある家屋にこだわる。これもよくない。いや、家族との思い出は大切です。そういう気持ちを持つのも当たり前です。しかし、それに引きずられてしまうのはどうでしょう。家族との思い出は心に残す。それだけで不満であれば、きちんと画像として残しておけばいいのです。

未来永劫に残る建物などはないのです。寺社仏閣の古いものは、建て替え、修繕を繰り返しています。伊勢神宮は20年ごとに造り替える。そういうものです。

とくにマイホームというのは買った時の家族構成に合わせているものです。4人家族のための3LDK。おひとりさまには大きすぎます。光熱費も修繕費などの維持費もそれだけかかる。また、都会や都市部の不動産は残された遺族の揉め事の発火点になりかねない。

マイホームのある方は50代で売却し現金化して、シニア時代に備えるべきなのです。特におひとりさまにはマイホームを維持し続けることは、じっくりと考えてもらいたいことです。マイホームよりも車が無くても生活していける環境に住むことにこだわって頂きたいです。

ただし、21世紀生まれの人がシニアになる時代には、すでに自家用車は全国的に自動運転の時代になっているでしょうから、少し違ってくるのかもしれません。

家族の家があるから、持ち家があるからと地方で都市部以外に住むのは果たして合理的な考え方でしょうか?

■マイホームを売る最適な年齢

佐藤さんは何歳でマイホームを売って現金化するのがいいと思っているのですか? とよく聞かれます。

佐藤治彦『おひとりさまが知って得する、お金の貯め方・増やし方』(ぱる出版)
佐藤治彦『おひとりさまが知って得する、お金の貯め方・増やし方』(ぱる出版)

子どもが大学などを卒業し就職、独立をした頃に考え始めるのがいいと思っています。そして、若い頃から働いてきた仕事に一区切りがつく頃がもう一つのタイミングでしょう。

特におひとりさまなら後者は非常に重要です。具体的には50歳台半ばと思います。

この年齢なら、住み替え、新しい環境に馴染み、コミュニティーに溶け込むこともできる、何に対しても柔軟に対応できる年齢です。マイホームを売却するという非常にストレスのかかることにも対応できるでしょう。

だからといって55歳や、60歳の退職時に売却した方がいいなどとは申し上げません。もう少しはっきり申し上げると、家が高く売れる時こそ、そのタイミングと申し上げたい。

マイホームの売却は買ってくれる相手がいて初めて成立するからです。不動産会社の中には買い取ってくれるところもありますが、それは、ほぼ100%安く買い叩くということです。

■日経新聞の有効な使い方

家を売却しようかと思ったら、ぜひ新聞を定期購読してください。特に日本経済新聞がオススメです。新聞記事そのものも大切ですが、そこに折り込まれる不動産関連の折り込み広告(特に高所得層に読まれる日経は不動産関連の折り込み広告が多いとされます)は、あなたが住んでいる地域の生きた不動産価格情報です。それも中古の不動産価格情報です。

それらに数年親しめば、自分の住む家の売り出し価格がどのくらいが適正であるかがはっきりするでしょう。そして、自分が適正と思っている金額よりも1~2割高めに不動産会社に売却を申し出ましょう。

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佐藤 治彦(さとう・はるひこ)
経済評論家
1961年東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。東京大学社会情報研究所修了。大学卒業後は、米銀で為替オプションを扱う銀行員として、東京、ロンドン、ニューヨークで勤務した後に、短期の国連ボランティア、経営コンサルタント事務所などを経て独立。放送作家を経て、1992年ごろからテレビ、ラジオ、新聞、雑誌などで、経済やマネーのことを評論、コメントする経済評論家として活動してきた。主な著書に、『安心・安全・確実な投資の教科書』『年収300~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』(以上、扶桑社)、『急に仕事を失っても、1年間は困らない貯蓄術』(亜紀書房)、『日経新聞を「早読み」する技術』(PHP研究所)など。

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(経済評論家 佐藤 治彦)

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