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なぜ学力トップ層がランク下の学校を志望するようになったか【2】

プレジデントオンライン / 2012年6月16日 15時0分

「自分を鍛えてくれる大学」――秋田杉を配した24時間オープンの図書館。

■就職力重視

授業はすべて英語4年で卒業できるのは全体の半分程度

地方の新設小規模大学か、都会の有名大学かと問われたら、多くの受験生は後者を選ぶはず。だが、2004年に秋田市郊外に設立された定員100人(当初)の国際教養大学に、今や日本全国から優秀な受験生が殺到している。

ごく一部の科目を除けば、授業はすべて英語による少人数教育。1年間の海外留学が卒業の条件となる。在学中の成績もシビアに評価され、4年で卒業できる学生は半数程度だ。「入ってしまえばほぼ自動的に卒業」といった、これまでの日本の大学とは正反対のコンセプトといえる。

そんな厳しさにも、この大学を志望する受験生はひるまないようだ。11年の一般入試の倍率は10倍以上(全日程合計)。人気に伴って定員も段階的に増やされ、12年入試では175人にまで拡大されたが、河合塾が試算した予想偏差値は67.5(A日程)と、11年よりさらに2.5アップ。

国公立・私立を含め国際系学部では難易度トップ、一橋の法学部や早稲田の法学部と並ぶ、文系最難関大のひとつになった。

なぜ、短期間にこれほどの人気を集めたのか。「今の問題は、社会に出たときに求められることと、大学でやっていることのギャップが大きすぎることです。とくに文系の学生は、今のカリキュラムの中でまじめに勉強しても、企業から評価されるポイントが残念ながらほとんどありません」と、森上教育研究所の森上氏は言う。

「ただ、高い英語力や異文化対応能力があれば話は別です。そこを認識している親御さんやお子さんは、社会で即戦力として働ける力を付けてくれる学校として、この大学に期待しているのだと思います」

実際、国際教養大学の就職率はほぼ100%。就職先リストには日本を代表する大企業がずらりと並ぶ。留年が就職であまりハンディにならないのも特長で、卒業証書を得るのが大変な分、それが一種の能力保証として企業に認められているのかもしれない。

「サークルやバイトに明け暮れる大学生活は送りたくなかったんです」と言うのは、国際教養大学2年生の上条和輝さん(仮名)。

本で読んだ、10年1日のごとき内容を漫然と教える日本の大学の現状も、自分の求めるものとは違うと思っていた。そこでいろいろ調べた結果、この大学を知ったという。

「当時は今ほど知名度が高くなく、親や先生には反対されました。『東京出身で地元に大学はいくらでもあるのに、なぜ秋田まで行かなければならないの』とか。でも、自分を鍛えてくれる大学に行きたかったんです」

外交官志望だという上条さんにとって、オール英語による幅広い教養教育は将来の仕事に欠かせないものだ。1年次に入寮が義務づけられるキャンパス内の寮では、海外からの留学生と相部屋になり、日々の生活のなかでも異文化コミュニケーション力を鍛えられる。

「外交官になるだけならほかの有名大学のほうが有利かもとずいぶん悩みましたが、なってから役立つのは何かということのほうを重視したんです」

世間の人気ランキングがあてにならない時代を生き延びる力とは

この12月からは、ロシア語とロシアの外交政策を学ぶため、その隣国ラトビアの大学に1年間留学する予定だ。「現地の学生と同じ基準で単位を取得しなくてはならないので大変ですが、雰囲気が様変わりするほど成長して帰ってくる先輩たちを見ているので、自分も頑張ります」(上条さん)

今や親の世代とは異なり、東大を出ても就職が保証されず、弁護士資格を得ても生活に窮する時代だと指摘するのは、早稲田塾総合研究所の赤坂俊輔氏。「どうやって生きていけばいいかという正解がない以上、世間の人気ランキングなどを気にするより、自分の夢を『食える仕事』にできる力を鍛えることが重要だと思います」。

これからの大学選びは、そんな視点から行うべきかもしれない。

(プレジデントFamily編集部 宇佐見利明=写真)

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