不快な「嫌み」を無視すると、余計にこじれる…相手との関係をスッキリ解決する「さわやかなひと言」
プレジデントオンライン / 2022年12月9日 11時15分
※本稿は、桑野麻衣『「また会いたい!」と言われる 一流の話し方』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■「謙虚」と「謙遜」は違う
あなたは人から褒められるのは得意ですか?
謙虚さが重視される日本では、褒められるのはどちらかというと苦手な人が多いイメージがあります。褒められて調子に乗ってしまうと、「え、謙遜しないの?」と相手の心の声が聞こえてくることもあります。かと言って、「全然そんなことないです」と謙遜しすぎると相手を否定することにもなりかねません。
せっかく褒めてもらえたのですから、褒め言葉の受け取り上手でありたいものです。相手にも不快感を与えず、喜びも謙虚さも垣間見える表現をご紹介します。「謙虚」とは心からつつましく、控えめでおごりたかぶらない様です。
それに対して「謙遜」は相手への遠慮から、意図的に控えめな態度を取り、自分を低く評価することです。本心からなのか、表面的な演出によるものなのかがこの2つの大きな違いです。だから謙虚な人は好かれますが、謙遜する癖のある人には不快感や違和感を覚えるのです。
多少の謙遜であれば気にならないかもしれませんが、「いや、そんなことないです」「私なんて……」が口癖になっている人は要注意。褒められた時には素直に「ありがとうございます」とひと言伝えることからはじめてくださいね。
■「プラスα」のひと言でさらに好印象に
感謝の一言を伝えられるようになったら、さらにプラスαの一言を付け加えましょう。受け取り上手な上に謙虚な良い印象を持つ人は、「○○さんに褒めていただけるなんて光栄です!」「○○さんのサポートのおかげです。ありがとうございます!」など、嬉しい気持ちを素直に表現しています。
![感謝の気持ちを表す女性](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/5/1200wm/img_f5f5d6b8ab6cfa7ddb9b0c42d0a7806e213669.jpg)
相手の言葉を受け取ると同時に、持ち前の謙虚さもしっかりと伝わります。素直に喜んでくれる姿を見ると、褒めた側も「伝えて良かったな」と幸せな気持ちになります。ここではあまり深く考えずに、「あなたに褒めてもらえて嬉しい」という率直な気持ちを言葉にすることがポイントです。
わざとらしい表現になっては本末転倒です。もし、あなたがなかなか受け取り上手になれない謙虚すぎる人だとしたら、少し違う言い回しもあります。「ありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えた後に、「おかげさまで今後もがんばれます!」「引き続き精進します!」と今後に向けた心意気を伝えてみてください。褒め言葉を突っぱねることなく、まずは感謝をしてから謙虚な姿勢を表現してみましょう。
これは少し応用スキルですが、そもそもあなた自身が褒め上手になっておくこともおすすめします。自ら誰かを褒めることに慣れていれば、人からの褒め言葉にも抵抗が少なくなります。自分自身が誰かを褒め慣れていない場合は、どうしても褒められる時には身構えてしまうもの。日頃から気づいたことがあれば、その場で相手を褒めるようにしてみましょう。
感謝の言葉の後に、率直な嬉しい気持ちを付け加える
■「嫌み」にはシンプルな質問で切り返す
生きていれば嫌みや皮肉の一つや二つ、言われることがあります。当然のことですが、嫌みを言われて嬉しくなる人はいません。言い返したいけどなかなか勇気がいるし、我慢するのも自分が苦しくなる一方です。そのような時、一体どのように対応すれば良いのでしょうか。
嫌みというのは、そもそも相手に不快な思いをさせることが目的です。はっきりとストレートに言ってくれればまだ良いものの、わざと遠回しに皮肉交じりに言ってくるので余計に腹が立ちます。しかし、言い返したところで売られた喧嘩を買うことにすぎず、残念ながら相手と同レベルになってしまいます。言い返すくらいなら、やはり無視するほうが良いでしょう。
昨今流行っている、スルー力も、時には効果的です。無反応を心がけることで、その場はなんとか切り抜けられるはずです。しかし、あなたがワンランク上を目指すのであれば、もう一つしてほしいことがあります。私が実際に見たこともあり、実践して効果があった方法です。
それは、嫌みに対して「どういう意味ですか?」とシンプルな質問をする方法です。ポイントは、攻撃的にならず、できるだけ爽やかにサラッと言うこと。感情的に聞いてしまうと、言い返すのと同じ印象になってしまいます。多くは語らず一言のみ伝えましょう。
■「無視」は根本的な解決にはならない
先ほどお伝えした通り、嫌みは相手に不快な思いをさせることが目的であり、わざわざ婉曲的に皮肉交じりに伝えてきます。そのような相手には、質問をすることで「言いたいことははっきりと言ってほしい」と伝えます。本当に明確に伝えたいことがあるのなら、正々堂々と言えるはずなのです。
はっきりと伝える勇気がないので、たいがいそこで口をつぐんでしまうか、歯切れが悪くなるケースを多々見かけます。自分は遠回しな表現で逃げようとしたのに、逃がしてもらえなかったと焦ってしまうのです。
嫌みを言ってくる人は、嫌みを言える相手にしか言ってきません。やはりどこかで相手を見下していたり、見くびっています。こちらの反応次第で何度も繰り返されるのか、二度と嫌みを言われないのかが決まります。無視するだけでは、根本的な解決には繋がりません。こちらが正々堂々とコミュニケーションを取ることで、相手からの見方も変わるはずです。今後あなたのことを見下したり、見くびることはなくなるでしょう。
嫌みは絶対に良くないですが、言いにくいことをお互いのために言い合える関係は大切です。対等な関係で、お互いを尊重し合った上で誠意あるコミュニケーションを心がけてほしいと思います。そんな関係づくりのためにも、相手から嫌みを言われた時には「それってどういう意味ですか?」とあなたから爽やかに聞いてみてくださいね。
感情的にならずに、一言で爽やかに聞き返す
■「愚痴」か「相談」か、はっきりさせる
職場の人間関係はもちろん、プライベートな友達であっても「どのように愚痴を聞いたら良いのかわからない」とよくご相談いただきます。
勝手にアドバイスするのも嫌がられそうですし、一緒になって愚痴を言うのもリスクがあります。信頼している相手が直接被害にあっているのであれば、寄り添って話が聞けるでしょう。ただ、相手に直接何かがあったわけでもないのに、第三者への愚痴を延々と聞かされる場合は辛いものがあります。
![ダイニングルームで話をする二人の女性](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/e/1200wm/img_8e93d648b3e5bd84ffb3a294890ef00b88263.jpg)
まず、整理しておきたいのが「愚痴」と「相談」は似て非なるものであるということです。「愚痴」は問題の解決よりも、自分を肯定してくれることを求めています。精神的にはすっきりしますが、現状維持の状態となり、本人の成長は見込めません。それに対し、「相談」は問題解決が最優先です。とにかく問題を解決したい気持ちから、相談を持ちかけます。
時には自分の非を認めなくてはならない場面もあります。その場では精神的に負荷がかかりますが、現状打破となり、成長にも繋がるのです。話し手も聞き手もこの違いを理解し、はじめに確認しておく必要があります。その違いを理解していないから、「相談したい」と言っておいて、結局ただの「愚痴」になるケースが多いのです。
■「相談」には解決、「愚痴」には共感
「相談」と言われると聞き手は、問題解決のスイッチが入り、良かれと思って相手にアドバイスをします。しかし、話し手は頭の中では「愚痴」と認識しているので、そのアドバイスを煙たがります。結果、話し手も聞き手も疲れてしまうのです。あまりに残念すぎるコミュニケーションですよね……。
![桑野麻衣『「また会いたい!」と言われる 一流の話し方』(明日香出版社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/d/1200wm/img_2d1fcd09438ec6fc4cf860a3329a00c386700.jpg)
相手が話したい内容が「愚痴」であった場合は、解決よりも「自分の言い分を聞いてほしい」「肯定してほしい」ことがわかります。本来ならそこで「そっか、それはすごく辛かったね。わかるよ……」と共感しながら話を聞くのがベストではあります。ただ、これでは話し手はすっきりするかもしれませんが、聞き手は正直あまり報われない場面だと思いませんか?
せっかく同じ時間を共有するのであれば、相手にも前向きな気持ちを取り戻してもらったり、成長のきっかけにしてもらえたほうが嬉しいですよね。愚痴を上手に聞ける人は共感をしながら、さりげなく解決にも導くことができます。相手の愚痴を聞きながら、そう思った背景や状況を理解しようと適宜質問をします。
「一番嫌な気持ちになったのは何をされた、もしくは言われた時だった?」「きれいな言葉じゃなくて良いから、その時の正直な気持ちを吐き出してみて?」「職場でこのことを話せる人はいる?」
など、寄り添い、理解を深めるための質問や投げかけをしてみてください。すると、本人も本音を吐き出せたり、自分が何に傷ついているのか、何が苦しかったのかを解明しやすくなります。ここでは無理に答えさせたり、誘導するような尋問や詰問にはならないように気をつけてください。アドバイスや指摘をするのではなく、あくまで聞く姿勢に徹します。
時間は命です。愚痴を聞かされる時間が、相手にとってもあなたにとっても意義のあるものになりますように。
相手を理解するために、聞く姿勢に徹する
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コミュニケーション講師
1984年埼玉県生まれ。学習院大学卒業後、全日本空輸株式会社(ANA)に入社。グランドスタッフとして、7年間で100万人を超えるお客様サービスに携わる。その後ジャパネットたかたや再春館製薬所グループ企業にて教育研修を担当し、独立。著書に『好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい』『部下を元気にする、上司の話し方』『オンラインでも好かれる人・信頼される人の話し方』(以上、クロスメディア・パブリッシング)、『「また会いたい!」と言われる 一流の話し方』(明日香出版社)などがある。
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(コミュニケーション講師 桑野 麻衣)
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