「うん、うん」とあいづちを打つ人は要注意…周囲に「残念な人」と思われてしまう言葉遣いの落とし穴
プレジデントオンライン / 2022年12月10日 11時15分
※本稿は、桑野麻衣『「また会いたい!」と言われる 一流の話し方』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■「敬語を使えない大人」は嫌悪されている
一流の話し方を語る上で、「言葉づかい」の話題は外せません。
「型があるから型破り。型がなければ、それは形無し」という言葉は聞いたことがあるでしょうか。亡くなられた歌舞伎役者の中村勘三郎さんの言葉として有名です。これは読んで字のごとく、「型があるからこそ型破りができるのであって、そもそも型がないのであればただの形無しにすぎない」という意味です。
言葉づかいに関しても同じことが言えます。言葉をしっかり学び、理解した上で意図的に崩している人は確かに「型破り」な存在になれます。しかし、言葉づかいや敬語そのものを軽視し、言葉が崩れてしまっているのは「形無し」にすぎません。言葉づかいを軽視している人は、「親しみやすさを表現する」=「言葉を崩す」という思い込みがあります。
親しみやすさよりも、「見下されている」「馬鹿にされている」と感じる人が多いことに気がつきません。いずれ自己流のコミュニケーションに限界が訪れ、ある時から人と信頼関係を築けていないことにようやく気がつくのです。実際に、最近の学生や新入社員と会話をしていると、「敬語を使えない大人」に対して強い嫌悪感があることがわかりました。
どの世代や立場の人からも信頼され、愛される一流の人たちは「言葉づかい」は崩しません。その人たちは、言葉づかいや敬語の持つ力をよく理解しています。言葉を崩すことを良しとする相手もいれば、良しとしない相手も多くいることを知っているのです。
■むしろ「言葉づかい」は崩してはいけない
親しみやすさは大切にしていますが、決して馴れ馴れしくならないように気をつけています。その代わりに顔の表情や感情を込めた話し方、身振り手振りといったジェスチャーなど、言葉づかい以外の部分を崩すことはあります。「かしこまりました」と真顔で低めのトーンで抑揚をつけずに言うと、文字通りかしこまった印象を与え、相手に距離を感じさせてしまうかもしれません。
![オフィスで楽しそうにミーティングをする人たち](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/8/1200wm/img_78f59bc7541ab6543aa48c0ef0df4b5c215897.jpg)
それに対して、満面の笑みで目を合わせ、明るく高めのトーンで「はい、かしこまりました!」と言えば、親しみやすさは十分に伝わるのです。他にも「○○さん!」「○○さんは……」と相手の名前を繰り返し呼んだり、「以前、餃子がお好きとおっしゃっていましたよね! ○○さんをお連れしたいお店があるので、ぜひご一緒しませんか?」など以前の何気ない会話を覚えているなど、さまざまな工夫をすることで相手と適切に距離を縮めています。
言葉を崩さずに相手との距離を縮めるには、日頃から少しずつ表情や話し方のトレーニングをしておく必要があります。ぜひ言葉を「崩している」人から「崩さない」人を目指していきましょう。崩しても良いのは言葉づかい以外です。覚えておいてくださいね。
言葉以外の部分を崩すことで距離を縮める
■「尊敬語」と「謙譲語」のたった一つの違い
私は若い時から多くの人と接する中で、「親しみやすいけれど礼儀正しい」という一流の印象を持つ人を徹底的に研究してきました。同業者である講師や著者の先生、ホットヨガスタジオのインストラクター、お気に入りブランドの店員さんなど、分析をした結果わかったことがあります。ここでもやはり「敬語」「言葉づかい」にヒントがあったのです。
突然ですが、あなたは敬語の種類を覚えていますか? 敬語には大きく分けて「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」の3種類があります(正式には丁重語、美化語が加わり5種類となりましたが、ここではいったん3種類のまま話を進めます)。敬語と聞くと、基本的には丁寧語を使うイメージが浮かぶのではないでしょうか。
「~です」「~ます」「~でございます」と表現することで、丁寧な印象を与えられます。丁寧語が難しいと悩む人はあまりいませんよね。問題は「尊敬語」と「謙譲語」です。この2つの違いがわかりにくく、「使い分けるのが難しい」と言う人が多くいます。
「尊敬語」と「謙譲語」の違いは、実は一つだけです。「相手」が主語であれば「尊敬語」を使います。主語が「自分」や「身内」であれば「謙譲語」を使います。尊敬語を考える時は、主語に「お客様が」とつけると言葉が出てきます。同様に謙譲語を考える時には、主語に「わたくしが」とつけると答えが出てくるはずです。
■「謙譲語」が使いこなせると印象が変わる
いくつか例を挙げてみましょう。
聞く:尊敬語「お聞きになる」謙譲語「うかがう、お聞きする」
敬語は目上の相手に対して使うことが多いことから、まずは尊敬語を学ぶ人が大半です。丁寧語、尊敬語を正しく使えることで、ある程度は礼儀正しい印象を与えることができます。「○○さんが言っていたように」ではなく、「○○さんがおっしゃっていたように」と言うほうが印象は上がります。「A社の件、知っていますか?」ではなく、「A社の件についてご存じですか?」と相手に尋ねたほうが丁寧な印象になりますよね。
さらなる上を目指すのであれば、ぜひ「謙譲語」をマスターしましょう。謙譲語は自分に対して使うので、必要性をあまり感じていない人もいます。だからこそ、謙譲語を使いこなしているだけで、印象に差をつけることができます。
「それ聞きました」と言うよりも、「そちらの件うかがいました」と言えたほうが、“きちんと感”がありますよね。日頃から、自分の行動に対しては、自分自身をへりくだり、相手を高める表現を練習しておくと自然と出てくるようになります。ちょっとした表現の違いで「あ、この人はちゃんとしているな」と相手に感じてもらえることが伝わりましたでしょうか。日頃から使っている言葉を少しかしこまった表現に変えることからはじめてみましょう。ほんの小さな一工夫でガラリと印象が変わりますよ。
自分に対して使う言葉で、印象に差をつけられる
■敬語を使う「2つの理由」
あなたは敬語を使う理由について考えたことがありますか?
わざわざ考える機会は、あまりないかもしれませんね。しかし、敬語を正しく使える人とそうでない人の違いは、実はここにも表れるのです。文化庁の発表している『敬語の指針』に、敬語を使う2つの理由が書かれているのをご存じでしょうか?
![会議で話を聞きながらメモを取る人](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/0/9/1200wm/img_0932894076654e19a0ee7d8487f8602782475.jpg)
1つめは「相互尊重」という考え方。「敬語は、人と人との『相互尊重』の気持ちを基盤とすべきものである」と書かれています。年齢や立場に関係なく、目の前にいる相手のことを尊重し、失礼のないように敬語を使いましょう、という意味です。ある程度、敬語を使えている人であればこの視点はしっくりくるのではないでしょうか。目上や年上はもちろんのこと、初対面の相手など相手に失礼のないようにまずは敬語を使いますよね。
2つめは「自己表現」という考え方です。「敬語は、自らの気持ちに即して主体的に言葉遣いを選ぶ『自己表現』として使用するものである」とあります。正しく敬語が使えることはあなたにとって武器となり、自信にも繋がります。
■「敬語が使えない人」は信頼を失う
以前、とある人気な先生のセミナーに参加した時、お話自体は納得のいくものでしたが、「~なんだよね」「うん、うん」といった語尾やあいづちが多く、残念な印象のほうが強く残ってしまった経験があります。このように、どんなに良い話をしていても、敬語が使えていないことでいまいち内容が入ってこなかった……なんて経験はないでしょうか。
![桑野麻衣『「また会いたい!」と言われる 一流の話し方』(明日香出版社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/d/1200wm/img_2d1fcd09438ec6fc4cf860a3329a00c386700.jpg)
「人柄は良いけれど、自分の大切な人に紹介するのは抵抗があるな……」と思う人の共通点として、敬語を正しく使えないことがよく挙げられます。「敬語が使えない」ことで、相手を軽んじているように見えることが理由です。また、「敬語すらできないということは、違う部分でも気を遣えないのでは?」と思われかねません。
敬語の持つ影響力を理解できている人は「たかが敬語なんて」とは絶対に言いません。相手に失礼である上に、自分の価値も下げてしまう危険性を理解できているからです。一流の人たちは相手を尊重し、自分を正しく表現するものとして、敬語を学び使っています。
私たちが思っている以上に、敬語を重視している人は多くいます。以前はどちらかと言うと、年配の方が若者の言葉の乱れを指摘する傾向にありました。しかし、今ではむしろ逆です。若い人たちからも「敬語を使えない大人は尊敬できない」という言葉を非常によく聞くようになりました。実際に学生向けの授業と社会人の研修に登壇すると、学生のほうが敬語を学び、習得できているのがわかります。
正しい敬語を使えることは相手を大切に扱うだけでなく、自分自身を大切にすることもできます。せっかく良いことを話していても、話し方で気を取られてしまってはもったいないですよね。あなた自身の武器とし、自信に繋げてほしいのです。
敬語を使えるだけで、自分の価値を上げられる
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コミュニケーション講師
1984年埼玉県生まれ。学習院大学卒業後、全日本空輸株式会社(ANA)に入社。グランドスタッフとして、7年間で100万人を超えるお客様サービスに携わる。その後ジャパネットたかたや再春館製薬所グループ企業にて教育研修を担当し、独立。著書に『好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい』『部下を元気にする、上司の話し方』『オンラインでも好かれる人・信頼される人の話し方』(以上、クロスメディア・パブリッシング)、『「また会いたい!」と言われる 一流の話し方』(明日香出版社)などがある。
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(コミュニケーション講師 桑野 麻衣)
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