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なぜキーエンス社員は平均年収2183万円を稼げるのか…仕事の価値を高めるために必要な「3つの問い」

プレジデントオンライン / 2022年12月11日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

2022年6月の有価証券報告書によると、キーエンスの平均年収は2183万円だった。なぜここまで給与が高額になるのか。キーエンス出身の戦略コンサルタントである田尻望さんは「ビジネスでは、自社で仕入れたものの価値に対し、どう付加価値をつくり上げるのか、が重要だ。この価値が何かを理解していないと、生産性も報酬も低くなる」という――。(第1回/全3回)

※本稿は田尻望『付加価値のつくりかた 一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■会社の利益を効率よく増やすにはどうするか

早速ですが、質問です。

もし、あなたの会社で、コスト(原価・販管費)はそのままで、価格を20%アップできたとしたら……。

あなたの会社の利益はどう変化するでしょうか?

「そんなことできるわけないじゃないか!」という考えはいったんおいて、もしできたとしたらどうなるでしょうか?

図表で見てみましょう。

【図表1】価格向上は利益向上に直結する
出典=『付加価値のつくりかた』(P.3)

答えは……。

図表1の条件で営業利益率が5%だったとしたら、利益は5倍になります。

逆に、価格をたった5%下げることになったら、会社の利益はどうなるでしょうか?

【図表2】価格を下げると、利益は格段に下がる
出典=『付加価値のつくりかた』(P.4)

図表2のように、とんでもなく利益が減るのがわかるでしょうか。この図表の条件だった場合、利益がゼロになるのです。価格の上下だけで利益がこれだけ格段に変わるのです。

いかに仕事の生産性を高め、売上や利益を効率よく増やしていくのか。
いかにムダな仕事を減らし、本当に意味のある仕事に集中していくのか。

そのキーとなるのが、「付加価値」なのです。

■「付加価値」とはお客様のニーズに応えるもの

「価値とはお客様(相手)が感じる(決める)ものである」

これが本稿における価値の定義です。

では「付加価値」とは何でしょうか?

付加価値は次のように定義づけしています。

「付加価値はニーズが源泉である」

つまり「価値」は、その商品やサービスに対して、「お客様が『これには価値がある』と感じるもの」であり、「付加価値」とは、「お客様のニーズを叶えるもの」なのです。

「付加価値」について少しだけ付け加えておきましょう。

ビジネスで重要なのは、「自社で仕入れたものの価値に対し、どう付加価値をつくり上げるのか。それをどうやってお客様に買ってもらい、使ってもらうか。そして最後に、いかにその商品・サービスの価値、付加価値を感じてもらうか」です。付加価値をつくるためにはこれらを考える必要があります。

■「価値」がわからないと報酬は低いまま

話を戻しますが、多くの人が「そもそも価値とは何か?」を理解していません。

価値を理解していないと、次のようなことが起こります。

・価値を理解していないから、そもそも価値をつくれない
・偶然に価値をつくれたとしても、繰り返し再現できない
・再現できないから、仕組みにできない
・仕組みにできないから、システムにできない
・システムにできないから、自動化できない
・自動化できないから、生産性が低い
・生産性が低いから、報酬も低い

つまり、もしあなたが今「給料・報酬が低い」と感じているなら、あなたやあなたが働く会社の人たちが、「価値とは何か?」をきちんと理解していない可能性があります。

まずは価値の定義をきちんと理解しましょう。

それが付加価値をつくるためのスタート地点だからです。

そのうえで、「ムダ」に時間をかけないために、自分の仕事に価値があるかどうかを判断することが必要です。

■仕事の価値を判断する「3つの問い」

その判断には、次の「3つの問い」が役に立ちます。

あなたが日々行っている仕事は、

①お客様の「買う」という意思決定に影響を与えているか?
②商品・サービスを買った後、本当に「使う」か?
③それを使ったら、「役に立つ」か?

例えば、健康食品を売る営業が、お客様のところへ出かけていき、一生懸命、商品の説明をしたとします。

①は、その説明によってお客様が「最近、体調悪化がひどくて……。ずっとこういうものを探していたんです。ぜひ買います!」と、その健康食品を買ってくれるかどうか、ということです。

②は、その健康食品を買ってくれたお客様が使ってくれたか、そして、その後も同じ商品を継続して買い続けてくれたかどうか、ということです。

③は、その健康食品を摂り続けた結果、お客様の体調が大幅に改善。悩みが解消されて、「すっかり体調がよくなったよ!」と喜んでもらえたかどうか、ということです。

これら3つのどれか1つでも当てはまれば、その仕事には「価値がある」と言えます。逆に、①から③のどれにも当てはまらないことに価値はありません。気をつけてほしいのは、①が起こらない限り②③が起こることはないことです。

価値がないこと=「ムダ」です。

日々さまざまな仕事に取り組む中で、その仕事の価値の有無を判別するためには、この3つの問いに答えてみるとよいでしょう。

■キーエンス社員が徹底的に突き詰めること

かつて私が在籍したキーエンスでは、マーケットイン型、つまり、顧客のニーズにフォーカスした新商品企画・開発がなされており、日本有数のマーケットイン型企業と呼ばれていました。

・なぜお客様が買うのか?
・本当にその商品・機能は使われるのか?
・使われたら本当に役に立つのか?
・どんな役に立つのか?

について、企画・開発前に徹底的に突き詰めるのです。

顧客のニーズを突き詰めるプロセスにおいて欠かせないのが「市場調査」です。

しかし、多くの企業では、この「顧客のニーズを突き詰める」こと、つまり市場調査をキーエンスのように徹底して行っていません。

そう言うと、多くの人は、「いやいや、うちも市場調査はしていますよ」と反論したくなるかと思います。

では、お聞きしますが、

その市場調査は、買い手に直接聞いていますか?
その商品を作ったら、お客様から本当に「買う」と言われていますか?

■「見切り発車」の新事業・新商品は失敗する

おそらく、多くの会社は、ここまで徹底できていないのではないでしょうか。

キーエンスはメーカーです。しかも特注ではなく「標準品」を作っているメーカーです。

「標準品を作っているのに、新商品の企画・開発の前に、買い手にそこまで細かいニーズを聞くなんて、おかしいじゃないか」と思われるかもしれません。

しかし、キーエンスの新商品企画者は、「商品を作る前に、現場に足を運んでお客様に直接ニーズを聞く」「その企業が何に困っているのかを調査・分析する」という市場調査を徹底的に行い、その結果を商品開発に反映させているのです。

キーエンスのような徹底した市場調査を行わずに出した商品、サービスはすべて「仮説」だけをもとに作られています。

つまり、売れるかどうかがまったくわからないのに作っているのです。

仮説レベルで開発・製造してしまうのは「見切り発車」と言っていいでしょう。

見切り発車をすると、十中八九失敗します。

日本企業の新事業・新商品の成功率が低いのは、この「仮説レベルで見切り発車してしまうこと」が原因の大半を占めると考えて間違いないでしょう。

そして、この新事業の失敗が、会社全体の利益を激減させているのです。

■嬉しいサービスと邪魔なサービスの違い

さきほど、「付加価値はニーズが源泉である」と定義しました。最後に、これについてわかりやすい事例を挙げて説明しましょう。

高級レストランや料亭などで、料理の素材や調理法について、スタッフが丁寧に説明してくれることがあります。

こうした説明は、ゆったりとした雰囲気のお祝いの席であれば、品格も感じられて、なかなか風流でいいなと思います。

また、有名店の名物料理を目当てに来たのであれば、お客様も料理の内容について詳しく知りたいはずなので、ありがたい、嬉しいと思うでしょう。

しかし、何か込み入った話をしている最中、例えば真剣に商談しているとき、親しい友達同士が面白い話で盛り上がっているときだったらどうでしょう?

突然「失礼します」とお店の人が入ってきて、途中で話をさえぎられたうえに、料理の説明を長々とされたら……。

「いやあ、せっかくですが、はっきり言ってちょっとうっとうしいなあ……」と感じるのではないでしょうか。

■押し付けのサービスに付加価値はない

どちらも「料理の詳しい説明」という同じ行為です。

にもかかわらず、なぜ前者では「嬉しい」と思われ、後者では「邪魔だ」と思われるのでしょうか?

田尻望『付加価値のつくりかた 一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質』(かんき出版)
田尻望『付加価値のつくりかた 一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質』(かんき出版)

前者では料理の説明がお客様のニーズに叶っている、付加価値のある行為なのに対し、後者はお客様のニーズに叶っていないため付加価値のない、ムダなサービスになってしまっているからです。

どんな場合でも、相手のニーズがある部分に対してきちんとサービスを提供したときに、初めてそこに付加価値が生まれます。

すべて一律にマニュアル通りに話をしても、そこに相手のニーズがなければ、その説明はすべてムダになってしまうのです。

同じサービスでも、付加価値がある場合と、ない場合があります。その差を分けるのは、相手のニーズがあるかどうかです。ぜひそこを見極めてください。

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田尻 望(たじり・のぞむ)
カクシンCEO、戦略コンサルタント
京都府京都市生まれ。大阪大学基礎工学部情報科学科にて、情報工学、プログラミング言語、統計学を学ぶ。2008年卒業後、キーエンスにてコンサルティングエンジニアとして、技術支援、重要顧客を担当。大手システム会社の業務システム構築支援をはじめ、年30社に及ぶシステム制作サポートを手掛ける。その後、企業向け研修会社の立ち上げに参画し、独立。年商10億円~2000億円規模の経営戦略コンサルティングなどを行い、月1億円、年10億円超の利益改善企業を次々と輩出。企業が社会変化に適応し、中長期発展するための仕組みを提供している。著書に『付加価値のつくりかた』(かんき出版)など。

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(カクシンCEO、戦略コンサルタント 田尻 望)

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