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世界一高い「葬儀費用」が完全無料で、手間もゼロ…直葬よりずっと安い「献体」という終活の奥の手

プレジデントオンライン / 2022年12月17日 13時15分

人体解剖学実習の教材として自分の遺体を無条件、無報酬で提供(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/fstop123

葬儀費用を安く抑えるにはどうすればいいのか。元経理マンの中町敏矢さんは「病院で死亡すると、一切の行事を省いて、火葬場に直行する『直葬』という方法がある。それよりも安いのは『献体』で、手間も費用もまったくかからない」という――。(第1回)

※本稿は、中町敏矢『月14万円の年金で夫婦が生活している術』(ぱる出版)の一部を再編集したものです。

■人体解剖学実習の教材として自分の遺体を提供

2011年1月、俳優の細川俊之(享年70)が突然亡くなった。

彼は生前、「自身の始末」を考え、出した結論は「献体」だった。2枚目スターと献体という思いがけない取り合わせに、私は驚かされた。

献体とは、大学の医学部や歯学部で行われる人体解剖学実習の教材として自分の遺体を無条件、無報酬で提供することをいう。

近年では作業療法士などを養成する保健学科でも、解剖実習を行うようになった。

「献体」は法律で規定されているが、手続きなどはよく知られていない。

献体した有名人には夏目漱石がいる。夫人の希望で、遺体は東京大学に渡され、医学の発展に貢献した。

■移送費・火葬料など一切の費用は大学側が負担

献体すると、通夜や葬儀は行わないか、行ったとしてもあわただしいものになる。

なぜなら、大学は死後24時間から48時間以内の遺体の引き取りを希望しており、時間の余裕がないからだ。だから、献体は地元の大学に限られる傾向がある。

遺体の移送費・火葬料など一切の費用は、大学側が負担するので、献体すれば「オールゼロ円」が実現する。

“お役目”を終えた遺体は、大学側が火葬をし、遺骨は家族に届けられるが、それが1年後か、もっと先になるかはわからない。

引き取り手がいない遺骨は、大学が用意した合祀(ごうし)墓や納骨堂に納められる。

手続きには、事前の登録が必要で、申し込みは直接、大学病院にするのではなく、献体篤志(とくし)家団体、または医科および歯科の大学になる。

なお、献体登録をした者に対し、大学病院などが優先的に入院させるといった特別扱いは存在しない。

■「手間いらずでゼロ円」が人気に

「申し込み→死亡→身内が登録団体に連絡」という流れになり、遺骨になるまで大学がすべて面倒を見る。

この「手間いらずでゼロ円」に惹かれて、葬儀にカネをかけられない人、かけたくない人、人生の最後になにか「役に立ちたい」人などが申し込んでいるという。

ただ、最近は人気が出てしまい、登録を見合わせている大学もある。

ちなみに、私は献体すると決めている。大学丸抱えのフルサービスなのに、ノー・チャージ。さらに、人生の最後に社会貢献もできる。

遺骨がいつ戻るかわからないというが、私は遺骨なんか、要らない。所詮、火葬場で焼いたただの骨でしかない。

所詮、火葬場で焼いたただの骨でしかない
写真=iStock.com/Ritthichai
所詮、火葬場で焼いたただの骨でしかない(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Ritthichai

そんなものなくたって、故人を偲(しの)ぶことに何の不自由もない。

献体登録をしていることは、生前に家族や親族に対してきっちり伝えておこう。

申込書には、家族の同意を示す欄もある。

■死んだあとのことは思うようにならない

1年ほど前、「直葬」がぼちぼち話題に上ったころ、週刊誌に「ジミ婚で始まり、ジミ葬で締める人生」とあった。ネットでは某葬儀社の棺が4万円と紹介されていたが、どうせすぐ灰になるのに「高くないか」と思う。

作家の曽野綾子氏は「紙袋でいい。ピンクのリボンで結んでほしい」と月刊誌に書いた。

三國連太郎は、「散骨してほしい」と遺言したが、息子の佐藤浩市は、あえて意に逆らい、三國の故郷の伊豆の寺に納骨した。「最後くらい俺の好きなようにさせろ」という思いからだった。(『終活読本ソナエ2020年春号』より)。

死んだらしまい。思うようにはならない。

「勝手なことをするな」と叫べはしない。

石原慎太郎は希望通り、海に散骨してもらえた。石原家はTVを呼んでそれを見せた。佐藤家は、他人の目を避けた。ショー化したい個性と、秘めたい個性。考え方・やり方は人それぞれ、そこにいい悪いはない。あるのは故人への思いだけだ。

■死者数145万人で火葬場は「1週間待ちはザラ」

2021年の死者数は約145万人で戦後最多。前年比で約6万人増えた。

一方の出生数は約84万人で戦後最少。約61万人の人口減である。中堅都市がひとつ、消えたことになる。これから毎年こうした状況が続くだろう。

これからも死者は増え続けるから、火葬場はますます混雑する。

「これで安心して死ねるから」は、元東大教授・上野千鶴子氏の10年以上前の終活本の帯の言葉だが、時代は激変してしまった。安心して死ぬのはもう無理だ。

現に火葬場が混雑し、すぐ焼いてはくれなくなっている。

数年前、葬儀業者が火葬の順番に便宜を図ってもらう目的で現場職員に現金を渡していたことが発覚した。業者はワイロを葬儀費用に計上していた。

現在も火葬場が「1週間待ちはザラ」だという。その際、遺体は冷房設備の整ったカプセルホテルで待機するそうだ。

遺体はドライアイスで冷却するが、その費用は1日あたり6000円という。

遺体は1ミリも動かないのに、生きている人間よりも高い料金が必要だ。

遺体はドライアイスで冷却する
写真=iStock.com/Instants
遺体はドライアイスで冷却する(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Instants

■日本の葬儀費用は世界一高い

葬儀費用の全国平均は、208万円(2020年)で、これは世界一高いと言われている。

韓国は37万円、アメリカは44万円、イギリスは12万円というから、日本とはケタがちがう。葬儀のために貯金をしている人もいるだろう。

葬儀費用は、安く設定された基本料金があって、それだけで済ませるなら、高くつくことはない。

しかし、落し穴がある。ご遺体を前に、社員があれこれとオプション・サービスを提案してくる。

向こうはワンチャンスだから、強烈な気迫で勧める。

言われるままだと、高く積み上がった請求書が後ででてくる。安くあげたいなら、キッパリ断れる強い性格の人に対応してもらうことだ。

葬儀はわからないことだらけだから、業者まかせになりがちだ。気付かないうちに、うまく業者のペースに乗せられてしまうおそれがある。

それを防ぐには、まずどのような葬儀にしたいのかを事前にイメージしておくことだ。

葬儀や墓におカネをかけないと決断すれば、100万円単位のおカネをとっておく必要はなくなる。

■「いちばん安くて、迷惑をかけない」直葬が最善のチョイス

昨今は廉価な「直葬」が熱い。

直葬とは、病院で死亡すると、一切の行事を省いて、火葬場に直行するスタイルをいう。

葬儀社の人が、寝台車で病院に遺体を引き取りに行く。葬儀社で納棺すると、火葬場に直行。

通夜、僧侶の読経、祭壇なし。

【図表1】直葬プランの費用表
出所=『月14万円の年金で夫婦が生活している術』

直葬費用はピンキリで、下は6~7万円、上は25~35万円と大変な差がある。

価格は電話で問い合わせて、安いところに決めればいい。「安い=悪い」は直葬には当てはまらない。やることはシンプルだから、サービスに差はない。

私が葬儀に無関心なのは、「死んだら終わり」と思っているからだ。

本当に大切なのは、死後のことより、生きている間のことだ。死ねば「ハイ、それまでヨ」の世界になる。

であれば、「いちばん安くて、迷惑をかけない」直葬が最善のチョイスではないか。

■葬儀をしてもしなくてもこの世から卒業できる

言うまでもないが、葬儀の盛大さと死者を悼むことは、一切の関係がない。

ラジオで俳優の森繁久彌が、戦中の満州で死者を送ったときの話をした。当時、森繁は30歳前後だったという。

「何もなかった。石ころしかなかった」と、老人になった彼は話した。それでも、死者を痛切に悼む心が真っすぐ伝わった。

一般的な葬儀では、僧侶に枕経をあげてもらったあと、戒名(浄土真宗では法名)をつけてもらう。

中町敏矢『月14万円の年金で夫婦が生活している術』(ぱる出版)
中町敏矢『月14万円の年金で夫婦が生活している術』(ぱる出版)

だが、無宗教ならば必要ない。白洲次郎や石原慎太郎も戒名がない。

天国、地獄、極楽は、人間が空想で創造した場所だ。

私は死ねば「無」だと思っている。神も仏も信じていない者には、極楽や天国があるはずもない。

もしあるなら、この地上にしかない。

卒業式に出ても出なくても、学校は卒業できる。

葬式も同じだ。してもしなくても、人はこの世から卒業し、灰になる。

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中町 敏矢(なかまち・としや)
元経理マン
1948年大阪府生まれ。大阪と京都で小企業を2回転職、経理マンとして定年まで勤め上げる。サラリーマン時代に培った経理の知識を武器に、少額年金でラクに快適に過ごす方法を実践、発信している。著書に、『あんしん・お気楽! 年金15万円のゴージャス生活』(ぱる出版)がある。

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(元経理マン 中町 敏矢)

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