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かんしゃくを起こす、暴れる、怒鳴る…心理療法士が「手に負えない問題児にこそ親のハグが必要」と説くワケ

プレジデントオンライン / 2022年12月18日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ViktorCap

子どもはなぜ「かんしゃく」を起こすのか。心理療法士のイザベル・フィリオザさんは「それはホルモンによる身体の緊張が原因であることが多い。つまり身体が命じるように、爆発してしまう。そのことがわかっていれば、親も正しい対処ができるようになる」という――。

※本稿は、イザベル・フィリオザ『6~11歳 子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■子どもはなぜ「かんしゃく」を起こすのか

子どもが病気になった時、皮膚の発疹が消えただけでは安心できませんよね。細菌が原因なら、それを退治しなければなりません。

子どもが高熱を出したり発疹が現れたら、「どうしたんだろう?」とまず考えますよね。

同じように、原因に取り組まずに、子どもの好ましくない行動をなくせると考えるのは幻想です。見方を変えてみましょう。

もし子どもの態度や行動が症状だとしたら? 不適切なあるいは困った行動を前にして、病気の時と同じ質問をして原因を探してみましょう。「どうしたんだろう?」と。

ヒント

最初の答えは「ストレス」です。子どもの攻撃性、逃避、行動不能は、脳がストレスを受けていることが表に現れたものです。これは、どんな罰を与えても治りません。

イラスト=『6~11歳 子どもの気持ちがわかる本』
イラスト=『6~11歳 子どもの気持ちがわかる本』

子どもの脳の中では何が起こっているのでしょうか? 扁桃体(へんとうたい)と呼ばれるアーモンドの形をした小さな組織がホルモンの洪水を起こしているのです。

これが状況に応じて闘うか逃げるか(闘争・逃走本能:生物が恐怖や危険に対する生理学的反応として、生存のために闘うか逃げるかの準備を整える反応)を命令します。心臓の鼓動が速まり、猛然と走ったり殴ったりするために、血液が糖と酸素を手足へ送り、筋肉は緊張します。

子どもはこの身体の緊張を感じ取って、時に爆発するのです。つまり身体が命じるように、闘ってしまうのです。

■コップ一杯の水をあげよう

危険が最高潮に達した時、または闘うことも逃げることもできない時、身体は固まってしまいます。猫に捕まったネズミが死んだふりをするように、身体と思考の動きが止まって、苦痛を感じないよう麻痺してしまうのです。

脅されたり、平手打ちをされたり、お尻を叩かれたりして子どものかんしゃくが止まるのは、「落ち着いた」からではありません。動けなくなって、固まっているのです。

依然としてストレスは消えていないため、少しするとまた爆発してしまいます。

攻撃性、逃避、行動不能は、子どもの脳が限界を超えているしるしで、もう考えることはできません。そんな時、子どもはまず、自分の脳を落ち着かせる必要があります。子どもの脳を落ち着かせるために、次のようなことを参考にしてみてください。

子どもの脳内のストレス緩和に役立つもの

・身体の接触、優しさ、親の安心させる声、愛着の表現
・深くておだやかな呼吸
・内部感覚(身体の内部からの刺激源によって身体内に起こった変化を感じ取る感覚)へ関心を向けること
・感情表現の受け入れ
・コップ一杯の水
・木や草の緑を見る
・運動(歩く、走る、大きくゆったりした動き)
・音楽、笑い……

イラスト=『6~11歳 子どもの気持ちがわかる本』
イラスト=『6~11歳 子どもの気持ちがわかる本』

■たった数秒の接触で幸せになるオキシトシン

子どもはおなかが空いたり、喉が渇いたりしていると、怒りっぽくなることをみなさんご存知だと思います。

けれど、幼いおちびさんにはビスケットや飲みものをあげたりするのに、8歳になった子どもがかんしゃくを起こしているのを見て、水を飲むようすすめるということはなかなかしません。

子どもがいらだって、バカなことをしたり、攻撃的だったり、乱暴だったり、怒鳴ってドアをバーンと閉めて部屋に引きこもっていたりする時、ぎゅっと抱きしめたり、一緒に遊ぼうと言ったりはもっとしませんね。

ですから、こんなふうに決めてみましょう。今度子どもがかんしゃくを起こしたら、深呼吸して、優しく笑いかけ、水の入ったコップを差し出す。子どもの感情に耳を傾けて、一緒に散歩に行く。笑いかけながら近づいてさりげなくそばに座って、遊ぶ……そして様子を観察する。そう難しいことではありませんよね?

ヒント

体の接触、つまりふれ合いはたった数秒で、幸福ホルモンまたは愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンの分泌を引き起こします。
6歳から11歳の子どもはオキシトシンが必要で、日常生活のストレスに立ち向かうために、まだたくさんの身体の接触を必要としているのです。
脳にストレスを受けた子どもは、学校の勉強でも苦労します。ですから、わが子が明日の授業の発表の準備をする前には、抱きしめてあげたり、マッサージをしてあげたり、ベッドの上でじゃれ合ったりすることがおすすめです。

■誤った解釈が加わると悪感情が強化される

エモーション(情動・感情)とは何でしょう? 不正や欲求不満あるいは傷ついたことに対する怒り。危険を前にした恐怖。成功、一緒にいること、あるいは単に生きる楽しさによる喜び。人が亡くなった時や、失望、敗北による悲しみ。これらは生理的な、生物としての適応反応です。

扁桃体が、適切な反応を確認する大脳新皮質に情報を与える前に、身体が対応する準備のためのホルモンの大量放出を命令します。これが、科学者が「高速回路」と呼ぶものです。一次的感情(情動)と呼ぶ人もいます。

反対に、フィーリング(気持ち)をともなう感情や二次的感情反応は、「思考」から発生します。科学者はこれを「遅い回路」と言います。したがって、この二次的感情反応は「解釈」に基づいています。そして間違える可能性があります!

「私はそれが不公平だと思ったので(解釈)、怒った(感情)」。表明することで、怒りは有効であると認められ、強化されます。

本来感情を表すことは、それを解放することですが、解釈に基づく二次的感情反応を表すことはその感情を強化することになるのです。

■感情の発散方法を教えよう

子どもが感情に囚われると、衝動を感じて居ても立っても居られなくなります。身体が緊張をはらむせいで、暴れたり、動き回ったり、走ったり、殴ったりします。「何かしたい」という身体の欲求を感じて動いているのです。

イザベル・フィリオザ『6~11歳 子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)
イザベル・フィリオザ『6~11歳 子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)

身体が動くことを切望している時、「おとなしくじっとしていなさい」と言うのは非現実的です。むしろ、走ったり、踊ったり、泳いだりして存分に身体を動かすと発散できます。

たっぷり動いたあとも、強い情動が残っていて、まだ全身を震わせたり、泣いたりして放出することが必要な場合もあります。そんな時は優しく受け止めてあげてください。子どもは解放されている最中で、苦しんでいるのではありません。

感情を放出できない時、子どもは緊張状態が続き、他の人に対してささいなことで爆発する可能性があります。余計な反応であるこのときの放出は、緊張を取り除くどころか、その感情を強化してしまいます。

たとえば妹を叩くことでは、学校でいじめられたことで溜まった緊張を発散することはできません。その子は自分のいじめの問題が解決されない限り、ちょっとした機会に妹を殴ることになるでしょう。親の役目は、時に子どものこうした激しい衝動的な反応の後ろに隠れていることがあるエモーション(感情)を受け入れてあげることです。

感じているものを言葉にして表現すること、どんな時に反応するか、何が原因かを突き止めること、身体をコントロールすること、直面している問題を解決することなどを子どもに教えましょう。

そうすることで、子どもの感情的知性を育てることができます。

【図表1】感情をコントロールするために必要なこと
出典=『6~11歳 子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)より

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イザベル・フィリオザ 心理療法士
1957年パリ生まれ、心理療法士。父は心理学者、母は心理療法士で病気を体・心・感情を含めて全体的に見るというホリスティック医療の先駆者。パリ第5大学で、臨床心理学の修士号を取得したあと、フランス、アメリカ、ベルギー、イギリスなどで、交流分析、新ライヒ派のセラピー、神経言語プログラミングなどを学ぶ。それ以後、独自のセラピーを開発し、感情を専門とするセラピストとして、多くの大人や子どもの治療に当たる。世界的ベストセラーシリーズ『子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)ほか著書多数。

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(心理療法士 イザベル・フィリオザ)

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