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「肉だけを40日間食べ続けると人間はどうなるか」ウンチ博士が自ら試みた"人体実験"の結果

プレジデントオンライン / 2022年12月16日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/magnetcreative

日々の食事は腸内環境にどのように影響するのか。「ウンチ博士」として知られる辨野腸内フローラ研究所の辨野義己理事長は「肉だけを食べ続ける調査ではビフィズス菌が4分の1も減り、悪玉菌が2倍近くに増加した。腸内バランスを整えるには、しっかり野菜をとることに加えて、ビフィズス菌を増やす効果のあるオリーブオイルや緑茶がおすすめだ」という――。

※本稿は、辨野義己『最高の睡眠は腸活で手に入る』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

■40日間、肉だけを食べる“人体実験”

私は長年の研究生活の中で、いわば人体実験ともいえる調査も試みてきました。

その一つが「一日に1.5kgの肉だけを40日間食べ続けて、ウンチの変化を調べる」というもの。私が30代のときのことですから、今ではとてもできない調査です。

朝・昼・晩とステーキや加工肉を食べ、野菜はおろか、ご飯やパンも口にしないというもので、20日を過ぎたあたりで同僚は脱落していき、私一人が貫徹しました。

私はもともと偏食気味で肉は大好きだったのですが、実験が進むにつれて体臭がきつくなり、皮膚が脂っぽくなります。エネルギッシュさはあるものの、一方で朝起きても疲れが抜けない感覚がありました。肉のとりすぎは、眠りの質も落とすのかもしれません。

もともと便通はよいので便秘にはなりませんでしたが、ウンチは典型的な悪い例そのものでした。だんだんと黒ずんでいき、最終的にはタールのような黒褐色になり、排便すると自分でも耐えられないほどの悪臭が漂うのです。

■健康を保つには、肉プラス野菜3倍

腸内細菌はビフィズス菌が4分の1も減り、悪玉菌が2倍近くに増加。しかも便の量は減っていました。ウンチが食でいかに変化するかが実感できる体験でした。動物性脂肪をとりすぎると、悪玉菌によって発がん促進物質である二次胆汁酸がつくられますし、“肉のとりすぎにはリスクがある”と、改めて警告をしたいと思います。

昨今はご高齢でもたっぷりのお肉をペロリと召し上がる人もいらっしゃいます。私からの提案は、“お肉を食べるならその3倍の野菜を一緒にとる”ことです。肉を100g食べたいなら、300g分の野菜をしっかりとること。

肉には、体をつくるために不可欠なタンパク質が豊富ですし、食べる喜びをかきたててくれます。だから、ゼロにするのではなく、野菜を十分にとって腸の健康を保ちながら、食べる工夫をすればよいのです。

■長寿の3条件はすべて和食にあてはまる

前ページで肉のとりすぎに警鐘を鳴らしましたが、タンパク質はなくてはならない栄養素なのも確かです。しかしタンパク質は肉以外にも含まれています。たとえば植物由来のタンパク質である大豆などに豊富に含まれます。

辨野義己『最高の睡眠は腸活で手に入る』(扶桑社)
辨野義己『最高の睡眠は腸活で手に入る』(扶桑社)

健康長寿の条件は「低脂肪・適タンパク質・高食物繊維」です。これらの条件は、すべて和食にあてはまります。日本人は、豆類を多く食べてきました。大豆はまさに植物性タンパク質の宝庫です。

豆類にはビタミンB1、B2、B6、カリウムのほか、カルシウム、鉄分、亜鉛、マグネシウムなどのミネラルがバランスよく含まれています。

日本人に一番身近なのは大豆でしょう。

大豆そのものだけでなく、納豆、豆腐、味噌、しょうゆに至るまで、和食に欠かせない素材ばかりです。

■女性と大豆イソフラボンの気になる関係

大豆に含まれるイソフラボンは女性ホルモンに似た性質があり、ホルモンの減少が気になる女性にはおすすめだとされています。ただし大豆イソフラボンに含まれるダイゼインという物質は、腸内にエクオール産生菌がないとつくり出すことができないといわれています。

また、国立がん研究センターが大豆イソフラボン摂取と乳がん発生率の関係を調べたところ、味噌汁の摂取が多いほど乳がんになりにくく、大豆イソフラボンの摂取量でみても、多くとっている人のほうが乳がんになりにくいという結果になりました。

がん予防には未解明の部分もありますが、健康効果は間違いなさそうです。

■オリーブオイルは「健康に役立つ油」

近年、スーパーの油コーナーには実にさまざまな油が並んでいます。その中でもオリーブオイルは比較的早い時期から、健康に役立つ油だと考えられてきました。

それは1950年代から始まった国際的な研究で、ギリシャの人々が赤身肉などの高脂肪食を食べているにもかかわらず心臓病による死亡率が低いことで、地中海沿岸の食生活が注目されたからです。

オリーブオイル
写真=iStock.com/ugurhan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ugurhan

その後の調査で、いわゆる「地中海食」は魚介が中心で、野菜や果物、豆類など植物性の食品が多く、パンや穀物の多くは未精製のもの。オリーブオイルを使い、食事のときにワインを飲むという非常にバランスがよい食生活だとわかってきました。

余談ですが、私もテレビ番組の取材で長寿者が多いサルデーニャ島の生活調査をしたことがあります。山間部の住人は羊や山羊の飼育で体を動かし、その乳でチーズや発酵乳をつくり、野菜も自給自足。そのおかげで長寿者が多いとされていました。

■ビフィズス菌が増え、便秘改善効果も

オリーブオイルにはおもな成分としてオレイン酸が70%以上、リノール酸が7%弱含まれています。そのほかビタミンEやポリフェノールを含んでいるため、抗酸化作用ももたらします。また、悪玉のLDLコレステロールのみを低下させることで動脈硬化や心臓の病気を予防し、中性脂肪を減らす働きがあるとされています。

何よりも注目したいのは、オリーブオイルを摂取することでビフィズス菌が増えるというデータです。地中海地域では、オリーブオイルが腸の調子を整えるとして古くから信じられ、子どもなどにそのまま飲ませることもあるといいます。

便秘に悩む人に一定期間摂取してもらったところ、便秘が改善されたというデータもあります。オリーブオイルに含まれるオレイン酸は、加熱に強いですが、料理にそのままかけたり、あえ物やドレッシング、スープにたらしたりするのもおすすめです。

■緑茶に含まれるカテキンのスゴイ作用

緑茶に含まれるカテキンはポリフェノールの一種です。これはお茶の渋味や苦味のもととなる成分ですが、強い抗酸化作用や抗菌作用があり、そこから生活習慣病や肥満を遠ざけ、血糖値の上昇を抑える作用にもつながっています。

日本茶
写真=iStock.com/kuppa_rock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

緑茶などが備えるポリフェノールとは、強い紫外線にさらされても自分では動くことができない植物が自らの身を守るために持つ成分のこと。それを人間がとった場合、健康を守る作用につながるのです。

緑茶に関しては、私自身が行った腸内細菌に関する実験があります。日頃緑茶を飲む習慣のない10人の男女に10日間緑茶を飲み続けてもらい、飲む前と飲んだ後の腸内細菌の変化を調べたところ、10人ともビフィズス菌の割合が有意に増えたのです。

ところが、1週間飲むのをやめてもらうと、ビフィズス菌の割合が飲む前と同じ程度まで戻ってしまったのです。

ここから推測されるのは、カテキンの効果で悪玉菌が抑制され、それによってビフィズス菌が増えたのではないかということです。ビフィズス菌はカテキンに強い菌で、それによる影響がなかったことが考えられます。いずれにしても、飲み続ければ腸内バランスの維持に役立つことに変わりありません。

■茶葉ごと飲むのが「腸活」の秘訣

お茶どころは全国にたくさんありますが、個人的に静岡の掛川茶にはとても注目しています。がんによる死亡率が低い地域ランキングの上位には緑茶の産地が多く、そこからも緑茶の健康効果がわかりますが、その中でも掛川は随一です。

昔ながらの「深蒸し製法」が残っていて、茶葉ごと飲むのが特徴です。茶葉には食物繊維が豊富に含まれるので、腸活のためにはぜひ茶葉ごと飲むといいでしょう。実際、住民の腸内細菌解析でもビフィズス菌の検出量が顕著にみられています。

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辨野 義己(べんの・よしみ)
一般財団法人辨野腸内フローラ研究所理事長
1948年、大阪生まれ。酪農学園大学酪農学部獣医学科卒業。東京農工大学大学院獣医学専攻を経て理化学研究所研究員。1982年東京大学農学博士授与。2009年同所辨野特別研究室特別招聘研究員、2021年退職後、現在、国立研究開発法人理化学研究所名誉研究員、十文字学園女子大学客員教授。およそ半世紀にわたって腸内細菌の分類と生態を研究し続けている。著書に『「腸内細菌」が健康寿命を決める』、『長寿菌まで育てる最高の腸活』(宝島社)など。

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(一般財団法人辨野腸内フローラ研究所理事長 辨野 義己)

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