ホメるだけではウソっぽい…アンジャッシュ渡部建が「めちゃくちゃオシャレですね」の次に言う言葉
プレジデントオンライン / 2022年12月16日 11時15分
※本稿は、渡部建『超一流の会話力』(きずな出版)の一部を再編集したものです。
■質問は「縦・横・前・後」で聞く
僕がふだんから実践している「質問のルール」があります。それは「縦・横・前・後」で質問するというものです。これを覚えておくと、相手が誰でも、どんな話をしていても、質問に困ることはありません。僕は、これが質問の極意だと思っています。
以前、生放送のラジオ番組のMCをやっていたとき、芸能人ではない(つまりトークが本業ではない)さまざまなジャンルで活躍している人をゲストにお招きして、トークをしていました。そのときも相手に気持ちよくしゃべってもらうために、
1 縦の質問
2 横の質問
3 前の質問
4 後の質問
の方式にもとづいて、相手の話を聞いていました。ひとつずつ、順番に説明していきます。
■1 縦の質問
これは要するに、相手の話題を深掘りする(縦に掘る)というものです。たとえば相手が、「休みの日は釣りをすることが多いです」と話したとします。これを縦に掘り進めていくなら、次のような質問があります。
・どういうところに釣りに行くんですか?
・どのくらいの頻度で行くんですか?
・どんな魚を釣るんですか?
![夕暮れ時の湖で釣り。釣りの背景。](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/f/1200wm/img_3fbf22e77b3630503b50a865042e7166482510.jpg)
要するに、相手が話してくれたことをもっとくわしく、具体的に聞いていくということです。ここでも大事なのは、「相手の話題に興味を持つ」ということです。
相手が出してくれた話題に、私は興味を持っていますよ、ということを、縦に質問することで相手に伝えるのです。ここで注意したいのは「笑顔やリアクションをしっかり行う」ということです。いくら縦の質問を重ねても、それが真顔で、淡々とした口調で行われていては、とても興味を持っているようには感じられません。
むしろ、警察の事情聴取のように、「別に聞きたくはないけれど、義務だから聞いている」ようにも見えてしまいます。
■2 横の質問
これは話題の軸をずらすことで広げるときに使う質問です。たとえば先ほどの「休みの日は釣りをすることが多いです」という話でいえば、
・釣りをしないときはなにをしているんですか?(「休みの日」という軸を残す)
・釣り以外の趣味ってなにかありますか?(「趣味」という軸を残す)
こういった質問が考えられます。
ただ、この「横の質問」に関しては、使い所に注意が必要です。ここではわかりやすくするために具体的な「横の質問」の例を2つ挙げましたが、たとえばあなたが「休みの日は釣りをすることが多いです」と言ったすぐあとに、相手が「へえ、そうなんですね。釣り以外の趣味はなにかありますか?」などと聞いたら、多くの人はいい気持ちはしないでしょう。
なぜいい気持ちがしないのか。それは、せっかく自分が「釣り」という話題を提供したのに、すぐにその話題を変更されたからです。
いきなり「横の質問」をすると、「あなたの釣りの話は、興味ないです」というメッセージを相手に伝えることになるのです。「横の質問」は、必ずその前に「縦の質問」を何度かして、相手の話を深掘りしてからにしたほうがいいでしょう。
■3 前の質問
「前」というのは、「過去」という意味です。「休みの日は釣りをすることが多いです」という話題に対する「前の質問」としては、次のようなものがあります。
・何がきっかけで釣りを始めたんですか?
・今まで釣ったなかでいちばんの大物ってどんな魚で、どのくらいの大きさでしたか?
![彼が捕まえたマスと青いバケツを持っている少年。](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/a/1200wm/img_ca4371677d18a6b6ac72b6a09d54d827896733.jpg)
このような質問をすると、答える側は当然、頭のなかで自分の過去を振り返ります。そして自分の楽しかったこと、そのときのポジティブな感情を思い出し、気持ちよく話すことができるのです。
■4 後の質問
これは「未来に関する質問」を指します。
「休みの日は釣りをすることが多いです」という話題に対する「後の質問」としては、次のようなものがあります。
・次はいつ、どこに釣りに行く予定なんですか?
・いつか、ここで釣りをしたいっていう場所はあるんですか?
・いつか釣りたい魚ってあったりするんですか?
これはだいたい、相手の脳内にワクワクしたポジティブな気持ちを引き起こすことができるので、オススメです。もちろん、世の中にはものすごいネガティブ思考の人もいますが、だいたいの人は自分の未来について「こうなったらいいなあ」「こうしたいなあ」というポジティブな思いを持っているものだからです。
この「縦・横・前・後」のルールに則(のっと)って質問すると、「何を聞いたらいいか、わからない」「なかなか会話が盛り上がらない」という問題は解決するはずです。順番的には縦→前→後→横がオススメです。
まず、相手が口にした話題を縦に深掘りし、次に過去の話を聞いて、未来の話に広げて、そこから別の話題にシフトしていく、という流れですね。
■質問×「ホメ」は相性が抜群
質問するというと、相手の話を受けて行う受動的なイメージを持っている人が多いかと思います。でも僕はむしろ、質問は能動的に会話を展開していくすごいパワーを持っていると思っています。
たとえば、「質問」と「ホメ」を組み合わせる方法です。日本人は謙虚な人が多いので、単に「すごいですね」「おきれいですね」「頭がいいですね」などとホメられても、「いえいえ」「そんなことありません」と否定することが多いですよね。
ただ否定されてしまうだけでは、それ以上、話が広がりません。また、単にホメ言葉を言うだけでは、ウソっぽく感じたり、おべっかを使われて気持ち悪く感じてしまう人もいます。
でも、ホメ言葉も、質問と組み合わせると、自然と受け入れてもらいやすいし、そのあとに話を展開してもらいやすくなります。
たとえば
「肌がすごくおきれいだなと思ったんですけど、ふだん、どういうケアをされているんですか?」
といった具合に、ホメと質問を組み合わせると、
「そんなに大したことはしていないんですけど、日焼けはしないように気をつけています」
など、自然と相手の話題にシフトすることができます。
質問を加えたほうが、相手も答えやすい
ただホメるだけだと、相手の返事は「肯定/否定」の二択になってしまいます。でも、質問を組み合わせることで「質問へ回答する」という第三の選択肢が生まれるのです。
ほかにも、
「その服、めちゃくちゃオシャレですけど、どこで買われたんですか?」
「すごく体が引き締まっていますけど、何かトレーニングされてるんですか?」
![女性は、彼女の寝室のクローゼットからジャケットを取り出します。](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/7/1200wm/img_f75878da0a06fc3c7883af98ac7372351048915.jpg)
など、いろいろな言い回しができます。
■ほとんどの人が知らない「ホメ」の効用
質問にからめると相手をホメやすいとはいえ、そもそも相手をホメるという行為自体が苦手な人も多いと思います。なぜホメることに苦手意識を持っているのかというと、「おべっかを使っている」という感覚が強いからではないでしょうか。
つまり、相手をホメるのは、自分が好かれるために行うエゴイスティック(利己的)な行為だから、あまり積極的にやるべきではない、という思い込みです。もちろん、ホメるという行為には「好かれる」という結果もついてきますが、それだけが目的なわけではありません。
![良好的なパートナーシップ](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/e/b/1200wm/img_ebcfe1445411b4a6ea0a1cb95e9dacd7676683.jpg)
とくに、初対面の人をホメることは、相手の話題を積極的に引き出すために必要なことでもあるのです。なぜ、ホメることが相手の話題を引き出すのか。それは、多くの人が次のように考えているからです。
「自分は平凡な人間だ」
「自分の話なんかしても、相手はつまらないに決まってる」
「わざわざ話題にするほどのものでもないだろう」
このような思い込みがあると、本当は話したいことがあるのに、それを自分で抑え込んでしまいます。このような状態では、会話は盛り上がりませんね。だからこそ、相手が出してきてくれた話題に大きくリアクションを返し、ホメることで、
「それは、すごいことなんですよ」
「それは自分が知らなかったことです」
「私はその話が聞きたいです」
というメッセージを送ることになり、相手にその先を促すことができるのです。
■相手よりも自分を下にする「逆マウンティング」
とはいえ、それでもやっぱり相手のことを面と向かってホメるのは小っ恥ずかしい、抵抗感がある……という人もいるでしょう。その場合、ホメによって相手を上げるのではなく、「自分を下げる」という手があります。
これは、「逆マウンティング」の応用です。自分の立場を下げて、相対的に相手の立場を上げる手法ですね。たとえば、料理の話題になったら、次のような逆マウンティングが可能です。
![渡部建『超一流の会話力』(きずな出版)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/a/1200wm/img_6a48d2ec045e6b3aba45dc02775407ca147212.jpg)
「本当にちょっとしたおかずとみそ汁をつくるくらいですから、料理ができるなんて言えませんよ」
「そんなことないですよ! 僕なんてみそ汁にダシを入れることがわかってなくて、ぜんぜん味がしないみそ汁をつくったことがあるくらいですから」
大事なのは、
「あなたのほうがくわしい。だから私にいろいろ教えてほしい」
ということを相手に伝えることです。
基本的には自分が相手から教えを受けるという関係性が確立できれば、相手は安心して、気持ちよくしゃべりやすくなります。
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お笑い芸人
1972年、東京・八王子生まれ。1993年、神奈川大学在学中に高校の同級生であった児嶋一哉に誘われ、お笑いコンビ「アンジャッシュ」を結成。2003年、NHK「爆笑オンエアバトル」5代目チャンピオンに輝き、日本テレビ「エンタの神様」などのネタ番組では“コント仕掛け”のスペシャリストと呼ばれる。その後は数々の人気番組の司会を務め、現在はコミュニケーションをテーマにした企業向けの講演などを積極的に行っている。著書に『ホメ渡部!「ほめる奥義」「聞く技術」』(小学館)、『大人のための「いい店」選び方の極意』(SB新書)などがある。
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(お笑い芸人 渡部 建)
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