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中学受験「小6=フルコロナ世代の算数はボロボロか…」便利な塾のオンライン授業の致命的な落とし穴

プレジデントオンライン / 2022年12月13日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/robuart

中学受験塾はコロナ禍でオンライン授業と対面授業を選択できるケースが増えている。現在の小6は小4から入試本番までコロナの影響をもろに食らった“フルコロナ世代”だ。プロ家庭教師の西村則康さんは「対面授業の緊張感から解放されて集中力を欠き、宿題をさぼるクセがつきやすくなる。算数では比・割合・速さ・図形といった抽象概念の理解がオンラインではしづらい面があった」という――。

■足りないのは「知識」ではなく「演習量」

12月に入り、いよいよ入試本番が間近に迫ってきた。しかし、ここに来て「おやっ?」と思うことが続いている。長年、中学受験専門の家庭教師をやってきたが、今年の受験生は算数の途中式や線分図、面積図など、答えを導くために必要なものを書くことをやたらと面倒くさがる子が多いのだ。

その原因は何か。コロナ禍によるオンライン授業が影響していると感じている。

今年の受験生は、中学受験の勉強がスタートする小4の春にコロナの感染が広まり、入塾後すぐにオンライン授業に切り替わった。その後も感染状況のたびにオンライン授業になり、コロナ時代の受験生の中では最もオンライン授業が長い学年となる。つまり、スタートの小4から入試本番を迎える小6までコロナの影響をもろに食らった“フルコロナ学年”なのだ。

この学年にとって最も痛手だったのは、「比」「割合」「速さ」「図形」など算数の重要単元の学習が続く5年生の大事なときにオンライン授業が多かったことだ。これらの単元はもともと小学生の子供には理解が難しく、この時期を境に算数に苦手意識を持つ子供が増える。抽象的概念の理解がまだ難しい子供たちに必要なのは、線分図や面積図などの図を書くことで、抽象的なものを具体的にイメージさせることだ。こうしたやり方を塾で学習し、実際に手を動かしてみることで理解を深め、いろいろな問題を解いてみることで応用力を養っていく。

ところが一方通行のオンライン授業では、子供たち一人ひとりの手の動きまではチェックできない。先生が画面でチェックできるのは、せいぜい生徒一人ひとりの顔くらいで、画面の外で手を止めていようが、落書きしていようが、漫画を読んでいようが正直分からない。親が横で張りついていない限り、さぼろうと思えばいくらでもさぼれてしまうのだ。また、休校中は宿題のチェックもゆるくなる。塾に通っていれば、「宿題をやって来なかったら先生に怒られる」からやっていくけれど、オンライン授業の期間はその緊張感から解放され、宿題をさぼるクセがつきやすくなる。

■オンライン授業で不十分な部分を間に合わせる方法

このように大人の目がないと、子供はラクな方へ、ラクな方へと流れていく。そして、オンライン授業を聞いているだけでなんとなく分かった気になり、自分で解くことを面倒くさがる。ところが、そういう勉強のやり方のまま小6になって応用問題を解く時期になると、少しでも形が違う問題が出ただけでお手上げになってしまうのだ。

中学受験業界の中では、フルコロナ学年の知識不足を懸念する人がいる。しかし、私は知識の習得自体は、対面授業であれ、オンライン授業であれ大きな違いはないと考えている。

自宅でオンライン授業を受ける少年
写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

それよりも、何よりも圧倒的に不足しているのは、演習量だ。さまざまな問題を自分の手を動かしながら、ああでもないこうでもないと頭をフル回転させながら解く。この積み重ねを十分にしてこなかったことが、今になって大きなダメージとなっているのだ。

では、この時期に有効な対策はあるのだろうか?

入試本番まで1カ月ちょっとの段階で、演習量を極端に増やすことは勧めない。だが、「考えながら解き、書きながら解く」という意識を忘れないことが大切だ。子供が言う「分かった」と実際の「できた」には差があることが多い。

「分かった」というのは、答えまでの道のりを単にたどっていくことを指す。一方、「できた」というのは、道筋を最後までたどる過程で「なるほど」「そういうことか!」と感情が動く。その差を埋めるのに不可欠なのが、再現性を高めるために行う演習なのだ。

「この問題は何を答えればいいのか?」「今何が分かっているのか?」「どんな方法を使えば答えが出せそうか?」考えながら書き、書きながら考える。この習慣を最後まで続け、たくさんの「納得感」を得た子は今からでも伸びていく。

■塾通いを拒む子「できない自分を見せたくない」

一方、小4、小5にはまた別の問題が起きている。

塾に行くのを嫌がり、オンライン授業を選択する子供が増えているのだ。コロナ時代も3年目に入ると、「withコロナ」の考えが定着し、感染者数に多少変動があっても基本的は対面授業を行うようになった。しかし、なかにはコロナに対して慎重な家庭もあり、現在はほとんどの大手進学塾で対面授業かオンライン授業かを選べるようになっている。

そんな中、コロナが落ち着いても塾に行きたがらず、オンライン授業を希望する子供が増えている。近年、共働き家庭が増え、コロナ禍で親のどちらか、または両方がリモートワークに切り替わったという家庭は少なくない。そんな家庭では、子供には「塾へ行ってほしい」。ところが、当の本人は行きたがらない。それはなぜか?

娘のオンライン授業に寄り添う母親
写真=iStock.com/miya227
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227

単に「塾に行くのが面倒くさい」という子は一定数いるだろう。だが、別の理由で行き渋りをしている子がいる。

大手進学塾の授業は、先生の説明の後に問題を解かせて、答え合わせと一緒に解説をするというのが、一般的な流れになっている。その際、子供たちの集中力を切らさないために、先生が指名し、子供たちに答えさせる。実はこれを嫌がる子は少なくない。できない自分を見せたくないからだ。9歳、10歳の年頃になると、友達と自分を比べたり、周りから自分がどう見られているかが気になったりして、“できない自分”に自己嫌悪を抱きやすくなる。特に男の子よりも成長が早い女の子はその傾向が出やすい。

でも、オンライン授業を受講していれば、当てられる確率はグッと減る。自分を防御するために、オンライン授業の逃げ込んでいるのだ。しかし、先にも伝えた通り、オンライン授業は画面越しにいる先生の話を聞いているだけで、受け身になりやすい。また、大人の目がないと手が止まり、自分で考えて解くことをしなくなる。その結果、演習量が不足し、成績が伸び悩むという悪循環を引き起こす。

塾に行かず、成績は下がる一方の子供を心配し、親が教えようとするが、これがなかなかうまくいかない。この頃になると反抗期に差しかかり、親の言うことを素直に聞けなくなってくるからだ。そして、親子のバトルが繰り広げられる。こういう状況が続いてしまうと、ますます挽回は難しくなる。では、どうしたらよいのか?

■身体感覚で学ぶ小学生には対面授業が理想

成績が上がらない一番の原因は、演習量の不足だ。そこで、まずは演習量を増やしていくことがポイントになる。理想は塾へ通わせることだが、しばらく間が空いてしまって行きづらいという場合は、オンライン授業を続けてもいい。その際、子供だけに任せるのではなく、親も一緒に参加するようにしよう。

そして、授業の後に「今回の授業のポイントは何だったと思う?」「こういう問題のときはどういう考え方で解けばいいんだっけ? 何を書けば解けそうかな?」と質問し、子供に答えさせる。そうやって、演習をくり返すことで、「解けた!」「できた!」の体験を増やし、自信を持たせてあげてほしい。そうすれば、塾へ行けるようになるだろう。

娘のオンライン授業をそばで見守る母親
写真=iStock.com/miya227
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227

コロナ禍でリモートワークやオンライン授業が普及し、利便性を感じている人は多いだろう。だが、小学生の子供の学びには、対面が望ましいと感じている。人生経験が浅い子供に新たな知識や考え方を身に付けるには、「なるほど! そういうことか!」と納得感を持って理解することが重要だ。また、記憶を思い起こすとき、大人のようにその事柄だけをポンと思い出すことは難しく、周辺情報から思い出して「あ、そうだ! これだ!」と思い出すことが多い。

「そういえば、先生はこの説明をするときにすごく熱く語っていたなぁ〜」
「この単元を学習したとき、○○くんがこんなことを言ってみんなを笑わせていたな。その後、先生が何て言ったんだっけなぁ〜、あ、そうそう思い出した!」

このように、子供は身体感覚を得て学んでいる。私が対面授業を勧めるのは、この身体感覚が得やすい点だ。それがオンラインになると画像と音声だけになり、先生の熱意も、その場の授業の雰囲気も伝わりにくくなってしまう。また、対面とオンラインでは授業の活気も異なる。やはり、「志望校合格」という同じ目標を持った仲間と同じ空間で学ぶというのは、大きな刺激になる。対面か、オンラインかのどちらかを選べる時代、遠方の子が塾へ通わなくても中学受験ができるようになったなどのメリットもあるが、やはり小学生の場合は、その場の空気が感じられる対面授業を勧めたい。

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西村 則康(にしむら・のりやす)
中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
40年以上難関中学受験指導をしてきたカリスマ家庭教師。これまで開成、麻布、桜蔭などの最難関中学に2500人以上を合格させてきた。

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(中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康 構成=石渡真由美)

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