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離婚した前妻は、前夫の「遺産」はもらえるのか…「離婚をめぐる金銭トラブル」がよくわかる5つのクイズ

プレジデントオンライン / 2022年12月16日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bee32

離婚をめぐっては「相続トラブル」が起きることが珍しくない。なぜなのか。夫婦問題コンサルタントの寺門美和子さんと弁護士の木野綾子さんの共著『別れても相続人』(光文社)より、離婚相続のことがよくわかる5つのクイズをご紹介しよう――。

■「離婚」と「相続」が大いに揉めるワケ

はじめまして。夫婦問題コンサルタントの寺門美和子です。

私が3年3カ月の泥沼裁判の末、19年間の結婚生活にピリオドを打ったのは48歳の時。その後、自らの離婚経験を活かそうと夫婦問題カウンセラーとAFP(アフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー)、さらには相続診断士の資格を取得して経験を重ねる中で、「離婚」と「相続」、この2つが似ていることに気がつきました。

その共通点は大きく分けて3つです。

①当事者のメンタルが複雑であること

真っ先に挙げられる離婚と相続の共通点は、本人、配偶者、そのほかの家族、それぞれの想いや思惑が複雑に絡み合うこと。

当事者の多くが、意地、憎悪、不安、欲だけでなく、仲がよかった当時の愛情の名残すら入り混じった、複雑なメンタルを抱えることになります。

また、長年生活を共にした夫婦・家族だからこそ、お互いに武器も弱みも丸わかり。ひとたび争いとなると、容赦なく死戦を繰り返すことになるのです。

また、離婚では、夫婦で「子どもの愛」を取り合い、相続では兄弟姉妹が「親の愛」を奪い合う。自分の存在価値がひとたび認められないものならば怒りは3倍増!

この複雑な感情は第三者が理解・整理するのはなかなか難しく、だからこそ夫婦問題と相続のコンサルタントは、やり甲斐のある仕事なのかもしれません。

■子ども、マンション、土地…分けられないものは揉める

②権利や資産の分割があること

メンタル面が整理整頓されても、親権の問題、財産分与、遺産分割は簡単ではありません。なぜならば、「かけがえのない愛する子どもを守る権利」や、マンションや土地といった「ひとかたまりの財産」など、到底分けることができない、または分けづらいものを分ける作業においては、問題は必然的に大きく複雑になるからです。

虫眼鏡で拡大した家のミニチュア
写真=iStock.com/sommart
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/sommart

離婚するほど仲が悪い夫婦が話し合いをするのですから、「俺が稼いで築いた資産だ」と夫が主張すれば、今度は妻が、「私のサポートがあったからこそ築けたのよ」と主張する。

相続も同様で、親の築いた財産を兄弟姉妹で分け合う際、「お母さんは私に全てを任せたいと言っていた」と長女が言えば、「母は生前、自宅は自分に、保険を姉に、少ないけど預金は弟に渡すと言っていた」と長男が言う。この仕事をしていると、天国の故人にメールを送り、「どちらが本当でしょうか?」と質問したくなることもしばしばあります。

また、令和真っ只中の今、文明は進化、発展するばかりですが、法律は時に「時代遅れ」、もっといえば「非常識」ですらあると感じることも少なくありません。

■法律を知らず「まさか」の事態に

③法律が絡むこと

結婚は愛し合う2人が一緒になり、愛を育みながら生活をするものです。しかし、同時に、結婚は法に則った契約で、権利や義務が発生しているにもかかわらず、それに気がつかない人、普段は意識しない人がほとんど。

その認識の甘さがいざ離婚となった際、親権や財産分与などで揉める火種になるのです。

相続も同様です。相続できる人や割合は法律で決まっており、愛情の量は関係なし。にもかかわらず、法律に無頓着でいたために、「まさか!」という人が法定相続人として浮上したり、法律で定められていない人にも財産を分けられ、割合を変えることもできるため、“争族”問題に発展したりすることが間々あります。

事前に万全の対策を講じておけば避けられるトラブルが、それを怠ったために、二進(にっち)も三進(さっち)も行かない泥沼にまで発展することもありうるのです。

いきなりですが、「離婚×相続」に関するクイズです。

皆様、チャレンジしてみてください。

■「離婚×相続」に関するクイズ5問

Q1 離婚した前妻は、前夫が亡くなったら遺産はもらえる?

①婚姻期間の長さに応じてもらえる。
②遺言書があればもらえる。
③全くもらえない。

Q2 前夫が、別の女性と再婚した翌週に事故で急死しました。前妻との間に子どもが2人いる場合、遺産はどうなる?

①後妻のみが受け取る。
②後妻と2人の子どもの3人で等分に分ける。
③後妻が半分、残りの半分を2人の子どもで分ける。

Q3 前夫は離婚後、前妻に引き取られた息子に会わせてもらえず、無念のうちに亡くなりました。貯金3000万円は、面倒を見てくれた弟夫妻とその子に残したいと言っていましたが、思いは叶う? 遺言書はありません。

①息子が全額受け取る。
②面会交流を拒否した息子は法定相続人から外され、それ以外の法定相続人が分ける。
③前夫の希望どおりに弟夫妻とその子が受け取る。

「遺言書」と書かれた封筒
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

Q4 結婚した際、妻の連れ子と養子縁組をした男性。その後、妻と離婚した場合、妻の連れ子との関係はどうなる?

①離婚に伴い養子縁組は自動的に解消され、親子ではなくなる。
②養子縁組と離婚は別の身分関係なので養子縁組は維持され、将来的には法定相続人となる。
③3年以上、音信不通の状態が続けば、養子縁組をしていても法定相続人にはならない。

Q5 離婚して、両親と未婚の姉が暮らす実家に戻った男性。娘は前妻の元へ行きました。まもなく両親は死去。長男である男性が自宅を相続し、姉と2人暮らしをしていましたが、突然の事故で男性は死亡。男性の自宅を相続するのは誰? 遺言書はありません。

①全て姉が相続する。
②姉が2分の1、娘が2分の1相続する。
③全て娘が相続する。

答え
Q1:② Q2:③ Q3:① Q4:② Q5:③

何問、正解でしたか? 答えを見て、「え~! どうして? そんなのおかしいんじゃない?」と思われたものもあったかもしれません。弁護士が解説します。

■離婚すれば前妻は財産をもらうことはできない

Q1 正解は②

離婚すれば、前妻は法定相続人ではなくなりますので、前夫が亡くなった際、当然には財産をもらうこと(遺産を相続すること)はできません。

しかし、遺言書で自分の財産(遺産)を誰にどのように分けるかを決めることができ、それは法定相続人以外でも構いません。もっといえば、個人でも法人でもOKです。

ですから、前夫が前妻に遺産をあげるということを遺言書で定めていれば、前妻も前夫の財産をもらうことはできます。

相手と夫婦でいることが嫌になって離婚するのですから、通常は元配偶者に財産を残すなどということはないのでしょうが、何かの事情で籍だけは抜くなど、形だけ離婚したような場合は、前夫が前妻に財産を残すためには遺言書を作成するといった相続対策をする必要がありますので専門家に相談しましょう。

■「前妻vs.後妻」を避けるために

Q2 正解は③

この場合の法定相続人は後妻(法定相続分は2分の1)と前妻の子2人(法定相続分は各4分の1)です。

本来ならこの3人で遺産分割協議をすることになるのですが、前妻の子2人が未成年の場合には前妻がその法定代理人(親権者)として後妻と協議しなければなりません。

「前妻vs.後妻」で遺産分割協議、想像するだけで怖い構図ですね。特に本問の場合は、前夫が再婚さえしなければ、遺産は全て前妻の子2人が相続できたわけで、前妻からすると、死の直前に後妻と入籍した前夫が余計に腹立たしいことでしょう。

再婚者で前配偶者との間にお子さんのいる方は、まだまだ若くバリバリの現役世代であっても、万一に備えて、誰に遺産をあげたいのか、遺言書を書いておくことをお勧めします。

■遺書は口約束では成立しない

Q3 正解は①

相続人になる人は法律で決められており、これを「法定相続人」といいます。本問の場合は、息子のみが前夫の法定相続人になります。

面会交流を拒否され何年も会っていなくても、このルールは変わりません。もし法定相続人以外の人に財産を渡したいのであれば、生前贈与、死因贈与、遺言書の作成、家族信託の活用などの法的な対策をしておく必要があります。

なお、遺言は口約束では成り立たず、法律で決められた方式や要件をクリアしないと効力がありません。そのため、前夫が、「弟夫妻と甥に財産を残したい」と言っていたのが本当だとしても、残念ながらその発言には遺言としての効力がない、というのが現実です。

必ず専門家にチェックをしてもらいましょう。

■連れ子がいる人と結婚する際に気を付けること

Q4 正解は②

生活実態としては、3人は家族だったかもしれませんが、法律上は婚姻(夫婦)関係と養子関係は別のものです。

従って、夫が妻と離婚しても、それと連動して養子関係が解消されることはなく、この男性が連れ子と離縁の手続きを取らなければ、養親子関係は残ります。そのため、このままだと将来的には連れ子が法定相続人になります。

子どもの前でけんかをする両親
写真=iStock.com/xijian
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/xijian

Q3と同様、音信不通は法定相続人になるかどうかには影響しません。離婚後、実の子でもない赤の他人である配偶者の連れ子に、自分の財産を相続させたくないならば、養子縁組されている方は離婚する際、養親子関係を終わらせる手続きが必要となることを認識しておきましょう。

連れ子がいる方と結婚する場合は、養子とするか慎重に決めてください。

再婚したからといって相手の連れ子は当然には養子とはなりませんから、同居して本当の親子同然の関係性が築けた段階でどうするのか検討してもいいかもしれません。

■あなたの法定相続人は誰かご存じですか

Q5 正解は③

前提として、「前妻の元に置いてきた子は、自分が親権者になっていないから法定相続人ではない」。

さてこれは、◯? ×? 正解は×ですが、◯だと誤解している人は結構多いものです。

寺門美和子、木野綾子『別れても相続人』(光文社)
寺門美和子、木野綾子『別れても相続人』(光文社)

本問の前夫も同様に誤解して、自分の法定相続人は娘ではなく姉だと考えていたフシがあります。この後、きっと姉は前妻の娘(未成年ならその親権者である前妻)から家を出て行くように言われるか、家賃を払えと言われるかのどちらかでしょう。

しかも、姉が亡くなった時の法定相続人は前妻の娘のみ。つまり、離婚して親権も手放したのに、「前夫の実家の財産は、別れた妻の元で暮らす娘が残らず総ざらいしてしまう」ということ。

あなたの相続対策は万全ですか? いかがでしょう? すんなり理解できましたか?

やはり難解ですよね。『別れても相続人』や相続にまつわる本を読むために必要な基礎知識を学びましょう。

勉強が超嫌い? 法律は難しい? わかりやすく解説したので大丈夫です!

相続にはルールがあり、そのルールを理解していないところに争いは起こります。ですから、この「基礎知識」をインストールすることは、争いを避けるうえでとても大切です。

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寺門 美和子(てらかど・みわこ)
AFP(アフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー)
AFP(アフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー)、上級プロ夫婦問題カウンセラー、相続診断士、終活カウンセラー、公的保険アドバイザー。お金と相続と夫婦問題の専門家。48歳で離婚、失意の底から資格を取得し起業。一般社団法人夫婦問題診断士協会代表理事。理念は「離婚してもしなくても幸せになる」。Miwa Harmonic Office

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木野 綾子(きの・あやこ)
弁護士
弁護士、上級相続診断士、家族信託専門士、終活カウンセラー。裁判官を13年間務めた後、2010年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2016年法律事務所キノール東京を開設し、現在に至る。相続・不動産関係・労働紛争(企業側)問題等を主に手がける。1971年生まれ。23歳で結婚、夫は専業主夫、成人の娘2人。離婚歴なし。原作・監修等を務めた映画『別れても相続人』がAmazon Prime Videoで配信中。法律事務所キノール東京

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(AFP(アフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー) 寺門 美和子、弁護士 木野 綾子)

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