なぜロシアや中国は他国を侵略するのか…世界情勢が小学生でもよくわかる「地政学」超入門
プレジデントオンライン / 2022年12月14日 15時15分
※本稿は、いつかやる社長『90枚のイラストで世界がわかる はじめての地政学』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
■世界情勢の理解に役立つ「地政学」
毎日ニュースや新聞、ネットで流れてくる情報を見ていて、
「世界では大きな事件や戦争が起きている。大変なことはわかるけど、むずかしくてよくわからないなぁ……」
そんなふうに思ったことはないかな?
最近では、ウクライナにロシアが侵略をおこなったり、中国が「台湾は自分の国の一部だ!」といって台湾周辺で軍事訓練をおこなったり、ぼくらの住む日本でも憲法を変えようとする動きが出てきたり、アメリカがいろんな国と対立したり仲良くなったり……なぜこんなことが起きるんだろう?
さらに、国と国との関係がだんだんと複雑になっていく世界で、日本がこれからも平和でいられるためにはどうすればいいのかな?
そんな問題解決に、おおいに役立つのが「地政学」なんだ。
■時代は変わっても、地理的条件は変わらない
世界にはたくさんの国があり、そこには多種多様な人々が住んでいる。人が多くなれば、考えることも十人十色だよね。
ただ、どの国にも絶対に変わらない前提があるんだ。それが「地理的条件」。
たとえば、日本はまわりを海に囲まれている国であり、この条件が変わることはない。同じように、世界の国もこうした地理的条件からのがれることはできないんだ。
だから、どの国もかならず地理的条件を考え、政治や戦争をおこなっているんだよ。
地政学はそんな地理的条件から、その国がおこなう政策や軍隊の動かし方、そうした動きの本心を知り、そこから未来に起こるであろうことを予測し、対処しようとする学問なんだ。
だからこそ、地政学は世界情勢を知りたいときにも役立つよ。
ニュースを見ると、世界では毎日のようにさまざまなできごとが起こっているけれど、これも「地理的な条件」が大きく関係しているんだ。そうしたできごとを地政学を通して見ていくと、「なぜこの事件は起きたのか?」「どうすれば解決できるか?」がパッとわかるようになるんだ。
■日本は海に守られた「シーパワー国」
日本は海に囲まれた島国だ。
海がまわりにあるから、攻められるとしたら敵は海を超えてくるよね。だから海の守りに力を入れるのが正解。海の力をもつ国を「シーパワー国(海洋国家)」といって、日本以外にはアメリカやイギリスがあるよ。
シーパワーの特徴は、なんといっても「海に囲まれていること」だ。
もし他国がシーパワーの国を侵略しようとしても、かならず船で海を越えなければならないよね。平地に比べ、海をわたって侵略するのはとてもむずかしく、リスクが多くあることから、シーパワーの国は他国から攻めこまれる危険性が低いんだ。
シーパワーの国々は、経済や貿易でも、漁業や船を使った海上貿易など、海を中心とした生活をおこなっている。だから、海での活動が制限されるとヤバイ。命綱を切られるのと同じくらい危ないことなんだ。
そのため、シーパワーの国は周辺の海を一生懸命守ったり、海外に基地をつくったりする必要が出てくるんだ。だから当然のように、シーパワーの国は、陸軍よりも海軍が強くなっていく。広い海を守るため、ほかのシーパワー国と協力するのも特徴だよ。
![イラスト=『90枚のイラストで世界がわかる はじめての地政学』より](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/d/3/1200wm/img_d3c6f0e85fc525c24393dbedd0b545cf609671.jpg)
■ロシアや中国は他国と陸続きの「ランドパワー国」
逆に内陸部にあるロシアや中国は、多くの国ととなりあっているから、直接攻めこまれてしまわないように陸の守りに力を入れたほうがいい。このように陸の利点を生かして強くなった国を「ランドパワー国(大陸国家)」という。
たとえば、ロシアを見てみよう。
地図で見てみると、たくさんの国とつながっているよね。だから自分たちの国や土地(領土)を広げようとしたり、資源や食料がなくなると、陸続きの国に攻めいって奪おうとするんだ。隣りあう国は、そうした攻撃から自分の国を守らなくてはいけないから、国と国との境(国境)に軍隊を置く必要があるよね。攻めるのも守るのも陸軍の力が必要不可欠なため、ランドパワーの国は陸軍が強くなるんだ。
経済も貿易も陸を使った行動が中心になるから、鉄道や建物をつくる力も高い。陸上でのやりとりが中心だから、「農業や鉱工業が得意」という特徴もあるんだ。いずれも、海より陸地に注目した生活や文化で発展してきた経緯があるんだね。
■紛争に巻き込まれることを宿命づけられた国がある
地政学ではたびたび「バッファゾーン」という言葉が出てくるけど、知っているかな?
日本では「緩衝地帯」と呼ばれる地域や国のことで、簡単にいってしまえば「大国と大国にはさまれた国」のこと。これを、「バッファゾーン」と呼ぶんだ。
大国にとって「バッファゾーン」には大きな意味がある。
たとえば大国と大国が戦争になったとき、その中間にある国をバッファゾーンにすれば、敵が攻めてきたときにバッファゾーンで相手を押さえることができるし、直接自分の国が攻撃されないから被害が小さくてすむ。
だから大国は中間にあるバッファゾーンになりそうな国を自分の手下にして、敵からの攻撃を防ふせごうとするんだ。ただ、敵の大国も同じことを考えてバッファゾーンを自分のものにしようとするから、バッファゾーンではどうしても争いが起きやすくなるという特徴があるんだ。
■朝鮮半島は現代の「バッファゾーン」
ぼくらの近くを見てみると、「現代のバッファゾーン」といっていい場所がある。
それが北朝鮮と韓国がある朝鮮半島だ。北朝鮮は中国やロシアと連携していて、韓国はそのライバルのアメリカと連携している、つまりライバル同士である大国のアメリカと中国・ロシアは「朝鮮半島=バッファゾーン」と考えている。そのため、韓国と北朝鮮は昔から仲が悪いんだ。
こんなふうに、地図を使って国の特徴や国の関係を解明していこうとするのが地政学なんだよ。
![イラスト=『90枚のイラストで世界がわかる はじめての地政学』より](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/d/1200wm/img_2d371879bd1bef3c56a4d9e32b480ef8539020.jpg)
■第二次大戦後、禁断の学問となった「地政学」
地政学は19世紀に日本に伝わってきて、第二次世界大戦が終わるまでのあいだ研究されてきた学問なんだ。
だけど日本が戦争で負けたあと、日本を支配下に置いたアメリカによって「地政学は戦争に直結する学問だから、研究を続けさせたら日本はまた戦争するかも……危険だ!」と考えて、日本にいた地政学者たちをクビにしてしまった。
![イラスト=『90枚のイラストで世界がわかる はじめての地政学』より](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/9/4/1200wm/img_945daea02e214994177c69bc105db12d492327.jpg)
その後は、日本国内でも、戦争に関わることを考えないようにしようとする流れが生まれたために、地政学は最近まで禁止されてきたんだ。
■これから学ぶべき学問
だけど現代になってくると、「地政学は戦争のためだけではなく、世界各国の動きを知るために必要な学問」という考えに変わってきたことで、ふたたび注目されるようになってきたんだ。
![いつかやる社長『90枚のイラストで世界がわかる はじめての地政学』(飛鳥新社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/d/1200wm/img_5d03bbffa6ece07f6d6d37e00447c3bc388403.jpg)
たしかに、地政学は国の防衛や戦略を考える学問だから、戦争につながる可能性は否めない。だけど、戦争がいやだからといって戦争のことを考えない・知らないというのはかえって危なくないかな? 戦争を絶対にくり返してはいけないからこそ、戦争をしないために、「そもそもなぜ戦争が起こるのか?」という「戦争が起こるメカニズム」を知っておく必要があるよね。
地政学は、これから学ぶべき学問といっても過言ではない。
小、中、高、大学と新社会人や年配の方まで、あらゆる世代で幅広く使えるツールとなっていくはずだよ。
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(いつかやる社長)
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