より高いところを征する国が22世紀の覇権国となる…米中が宇宙開発競争に血道を上げる根本理由
プレジデントオンライン / 2022年12月16日 8時15分
※本稿は、いつかやる社長『90枚のイラストで世界がわかる はじめての地政学』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
■覇権国家アメリカの衰退で混乱する世界
いま世界は「強い国と強い国の争い」がどんどん活発化してきているんだ。いままでのようにアメリカが一番強い状況なら日本は安心だったけれど、次第にアメリカの力も弱くなってきて、アメリカだけで世界をカバーするのには限界がきている。
そんななか、ロシアや中国が次なる世界一の座をねらっているから、世界は大混乱に陥っているんだ。そんな時代に、日本はどうしたらよいんだろう? そのヒントになる事例が、じつは世界中にあるんだ。
たとえば世界中の反対を押しのけて、2022年ロシアはウクライナに侵攻した。アメリカやヨーロッパの支援を受けたウクライナは、必死に抵抗しているよね。このまま多くの国が支援を続ければ、ロシアがスタミナ切れを起こして侵攻をあきらめるかもしれないといわれているよ。
また、中国は台湾と同時に沖縄も手に入れようとしていて、2022年の8月には軍事演習といって日本の海にミサイルを落とし、日本にも脅しをかけてきているんだ。台湾は中国を迎え撃つ準備をしていて、アメリカやヨーロッパはそんな台湾を応援しているんだ。
ぼくらも戦いを避けるために、「誰かに守ってもらう」ことだけを考えるのではなく、台湾のように「どうすれば自分たちが住む国を守れるのか」を考えていく時代になってきたんじゃないかな。
そのためには、やっぱり「戦争の最新情報」を知らないといけないよね? 飛行機ができて空中戦(エアパワー)が生まれたように、いまは最新技術によって戦い方が大きく変わってきたんだ。これまでとは別次元の戦い方をかんたんに見ていこう!
■レーダーに映らない潜水艦からミサイルを発射する最新兵器
ここから最新兵器による新たな戦い方を見ていこう。
ミサイルはふつう陸から発射されるけど、それでは衛星やレーダーに映ってしまいすぐにバレてしまう。そこでできたのがSLBMという潜水艦から発射されるミサイルだ。潜水艦はつねに深い海の中にいるから、撃つ前に衛星やレーダーで発見することができない。見えない場所からミサイルを発射できるようになったんだ。
SLBMの一番のメリットは、敵から先制攻撃を受けて地上にある基地が破壊されたとしても、海にいる潜水艦は被害を受けないから、反撃が可能というところなんだ。どんなに相手にダメージを与えても、手痛い反撃を受けてしまう可能性があると怖いよね。そのため、SLBMをもっていると、相手に攻撃をとどまらせる効果がある、と考えられている。レーダーに発見されないためにできるだけ陸地から離れた深い海で活動していることが多く、そのため長い潜水ができる原子力潜水艦が開発されているよ。
「ミサイルを撃たれても、むかえ撃てばいいんじゃない?」と思うかもしれない。だけど、見えない場所から発射されたミサイルを撃ち落とすのは、現代の技術ではほとんど不可能だ。さらに現在のSLBMに核をのせたら、都市を破壊できるほどの強力なパワーをもっている。日本の周辺では、中国と北朝鮮とロシアがまさに「見えない脅威」の武器を保有しているんだ。
![イラスト=『90枚のイラストで世界がわかる はじめての地政学』より](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/9/1200wm/img_79a1371f9f63b86434d38e8f3f908cf6730690.jpg)
■落下してくるミサイルを迎撃する「ミサイル防衛」
ミサイルは、ロケットのようなものが降ってくる……と思っていないかな? じつは、降ってくるのは先にある「弾頭」と呼ばれる部分だけ。それ以外の部分には、必要な燃料や機械が載せられている。ミサイルが発射されると次々に胴体部分を切り離し、最後は弾頭だけで降ってくるんだ。一番危ない弾頭の部分は小さいから、降ってくるミサイルを撃ち落とすのはとてもむずかしいんだよ。
「ミサイル防衛」とは、かんたんにいえば、「落下してくるミサイルに、別のミサイルをぶつけて破壊する」という考え方だ。
ただ、優秀な日本のミサイル防衛でも、成功率は80%未満。つまり10発撃たれたら、2発は落ちることになる。迎撃率100%のミサイルは、いまの技術では存在しておらず、ミサイル技術は「攻撃側が有利」とされているんだ。
ミサイルの技術は年々進んでいて、1発で複数の場所を攻撃できる「多弾頭ミサイル」や潜水艦から放たれる「SLBM」、マッハ5以上の速度で、複雑な軌道で飛んでくるためさらに撃墜がむずかしくなった「極超音速ミサイル」、またミサイルを撃ち落とすためのレーザー兵器までつくられているんだ。技術の進歩とともに、SFの世界で見たような兵器が、現実にどんどん出てきているんだね。
■「宇宙戦争」が始まっている
近年、宇宙での争いが激しくなってきているんだ。
といっても、宇宙で戦うワケではなく、広い宇宙の空間にどれだけ人工衛星や高機能なコンピューターを置けるか? で競っているよ。その理由はエアパワーと同じで、「相手より高い場所をとると、戦いが有利になるから」なんだよ。
いままでは「高いところ」といえば「空」で、飛行機を使って相手を監視していたんだけど、現代ではさらに高い「宇宙」から、衛星を使って敵の動きを見るのが当たり前になってきているんだ。
アメリカは陸海空の次の戦場は宇宙になると考えていて、「アメリカ宇宙軍」をつくった。この軍隊は人工衛星を管理したり、それを使って相手の国を見張ったりしているよ。日本も2022年に宇宙作戦群をつくっているよ。
人工衛星の種類はさまざまで、敵の国がミサイルを撃つ準備をしていないか見張るもの(偵察衛星)や、軍隊の作戦や命令をやりとりするためのもの(軍事衛星)もあるし、スマホでもおなじみのGPSや、他国の弾道ミサイルの落下地点などの予測もすべて人工衛星から送られてくるんだ。地政学から見ると、これからの時代、より有利な立場に立つためには「宇宙という空間を支配する」ことも大事になってくるんだね。
■武器を使わないでダメージを与える「サイバー攻撃」
サイバー攻撃って聞いたことがあるかな? かんたんにいえば、相手のサーバーやコンピューターに侵入して情報を盗ぬすんだり、壊したりすることなんだ。直接の攻撃にくらべてあまり効果がないように感じるかもしれないけど、じつはとても危険な攻撃なんだよ。
![いつかやる社長『90枚のイラストで世界がわかる はじめての地政学』(飛鳥新社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/d/1200wm/img_5d03bbffa6ece07f6d6d37e00447c3bc388403.jpg)
ぼくらはさまざまなものを、コンピューターに頼って生きているよね? それは国も同じ。電気や水、ガスのような生活に必要なものから、警察や軍隊の情報まで、ぜんぶコンピューターに頼っているんだ。
これがサイバー攻撃されたら……? 生活に必要な電気や水が使えなくなり、軍の作戦もすべて相手に筒抜けになってしまう。そうなればどんなに強い軍隊があっても無意味になるよね。コンピューター時代のいま、サイバー攻撃は1つの強力な武器になっているんだ。
サイバー攻撃は、「好きな場所を好きなときに攻撃できる」という部分も特徴だ。他国を攻撃するときは、軍隊か兵器が必要だけど、サイバー攻撃の場合、たった1台のコンピューターがあれば攻撃ができる。さらに、世界中にコンピューターがあるために、犯人を特定することもむずかしい。
現代ではいままでの地政学、つまり地の利を生かした作戦では考えられない攻撃ができるようになったんだ。
![イラスト=『90枚のイラストで世界がわかる はじめての地政学』より](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/0/1200wm/img_80f9f22333fe437e35f09303a3c7b9cb634258.jpg)
■地球の国々は運命共同体
いまの時代、日本にも多くの外国人が住んでいるし、外国でしかつくれない技術やもの、知識も日本に入ってきているよね。そのおかげで日本は豊かになり、技術も進歩していってるんだ。逆も同じことで、外国に住む日本人も多くいれば、日本の技術で外国を助けていることもある。考えがちがっていても、たがいに助け合うことで、いまの平和な生活は守られているんだ。
これまで見てきた通り、世界の国は複雑な関係性の中で助け合って生きているから、かんたんに敵と味方を分けられない。1つの強大な国が、すべてを自由にできるわけじゃないんだ。つまり地球の国々は、運命共同体ともいえる。だから「他国と争って勝つ」ではなく、「みんなで豊かに生きていく」方法を考えることがもっとも大切だ。
地政学はそんな考え方の大きなヒントになるはずだよ。
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(いつかやる社長)
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