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「後輩を自分の手足のように使うことが快感」新入社員を追い詰める30代女性社員の恐ろしい生態

プレジデントオンライン / 2022年12月15日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yamasan

先輩に追い詰められて泣き顔になっている新入社員がいる。なぜそんな問題社員が野放しになるのか。人材育成コンサルタントとして、ハラスメント行為者へのカウンセリングを専門に行う松崎久純さんは「性格に問題がある人は、小さいころから、しつけにだらしのない親(あるいは周囲の大人)に育てられているものです。それ故に、もし管理者が注意をしても、反抗的な態度をとり事態が改善しないのです」という――。

■新入社員に無計画に仕事を振る同僚女性の身勝手なふるまい

30代前半の同僚(女性)が、高卒の新入社員(女性)を忙しく働かせ、毎晩残業させています。残業代は支給されないにもかかわらずです。この同僚は、とにかくバタバタと、新入社員のことを考えず、無計画に仕事を振るので、見ていられません――メーカー勤務の男性から受けた相談です。

ただの小言か悪口にも聞こえるかもしれませんが、私にはこの男性の話すことがよくわかります。20年以上も前ですが、まったく同じ経験をしたからです。

私が見たケースでは、同じく30代の女性社員が、自分の裁量で好きなように新入社員を動かせるのが嬉しいのか、一日中やたらと張り切って、職場では不適切なほどの大声で話したり、バカ笑いをしたり、連日好き勝手にやっていました。

その一方で、アシスタント業務を担当していた新入社員は、次から次へと思いつきで振られる仕事と、30代の女性社員の遠慮のない振る舞いに疲弊していました。

その新入社員の表情は、わずかの期間のあいだに、入社して配属されたばかりの頃とは違う「泣き顔」に変わっていたのです。

■無計画な仕事のしわ寄せが従順な新入社員に降りかかる…

30代の女性社員は、もともと計画的に仕事を進めることができないため、すべての仕事スケジュールは押され気味で、時間は常に後ろにずれ込んでおり、急な変更も多く、そのすべてが新入社員に、毎日の残業という形で押し掛かっているのでした。

ふてぶてしい30代の女性社員と、従順で泣き顔の18歳の女性社員――これを見て何も感じないほうが不思議でしょう。

私に「見ていられない」とこぼした男性の知る新入社員の女性も、同じように泣き顔になっているのではないかと想像します。

なぜなら、たとえ30代の女性社員の振舞い方が同じようであっても、新入社員が平然としていたり、逆に気が強く、反発するようなタイプであれば、特にかわいそうに見えるものではないからです。

自分の娘や姉妹が、会社や嫁いだ先などで、泣き顔で過ごしているところを想像できるでしょうか。そんなことは決してあってほしくないはずです。

会社や家族として迎え入れた側も、来てくれた人がそんな表情で過ごすことにはならないよう、気を遣うのが普通でしょう。

しかし世の中には、この30代の女性社員のように、そんなことは気にしないだけでなく、むしろ泣き顔で従う部下や後輩を自分の手足のように使うことを快楽と感じる人もいるのです。

■「泣き顔」で働く新入社員はすでに退職を検討している

こんな状態が職場で放置されているのは、それだけで異常なことですが、そんな様子を見たら、18歳の女性社員は会社を辞めることを考えはじめるか、すでに考えていると思わなければなりません。

会社は、30代の女性社員の性格と振舞い方によって、この18歳の社員を早々に失うことになります。

涙を流す女性
写真=iStock.com/yamasan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yamasan

自分よりひと回りも若い10代の社員が泣き顔で仕事をしているのに、平気などころか、やたらと活き活きとしている。こんな人を野放しにしてよいことはない――誰にでもわかる当たり前の話ではないでしょうか。

こんな関係は長く続くものではありません。18歳の女性社員のような境遇に陥った人は、退職することを考えはじめ、いつまでその環境で働くかを自分で決めるから、我慢することができるのです。

■新入社員にとって退職以外の手を打つことは難しい

もう少し社歴が長く、会社組織の中での処世術を学んだ人であれば、部署を変えてもらうよう根回しをしたり、退職以外の手を打つことができるかもしれません。しかし、こうした年代の人たちにとっては、それは相当にハードルの高いことです。

私は、この18歳の女性社員と、部門と部屋は同じでも、所属している課が違ったため、話を聞く立場にはありませんでしたが、本人が話せば聞くつもりで、「残業が多くてたいへんではないか」と尋ねたことがあります。

そのときの返答からは、新入社員である女性が、当時30代の男性である私に、簡単に心を開くものではないという印象を受けました。

年齢差があり、性別も違う上に、特に親しくもない間柄で、悩みを打ち明ける方が、不自然といえばそうでしょう。

若い女性でも、人によっては、このように言葉をかけると、ものすごい勢いで不満をぶちまける人もいます。しかし、そうした人たちは普段から泣き顔はしておらず、失礼ながら、30代の女性社員に負けず劣らずの性格をしていることが多いものです。

■年次が上の人には気軽に本音を見せることはできない

私が問い掛けた18歳の女性社員は、「仕事の内容はいいんですけど、お金が……」と答えました。私は、その社員が「お金」という率直な言葉を使ったことに驚きましたが、それは半分は本音で、半分は30代の女性社員との関係を話題から逸らすために述べたことに聞こえました。

赤いハートは鎖でロックされています
写真=iStock.com/Route55
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Route55

本人によれば、同じ高校を卒業して新聞社に勤めた同級生は、とても給料がよいらしく、自分の給料はそうでないのが現在の仕事で不満な点とのことでした。

私たちが勤務していたのはメーカーの海外事業部でしたので、海外滞在経験のある人が多かったですし、語学も堪能な人たちが多かったからでしょうか。

「自分も留学したい。しかしアメリカやイギリスは費用が高くつくので、オーストラリアかニュージーランドを考えている」という話を聞きました。

思った通りでしたが、やはりもう辞めることを考え、その時期についても検討しているのでした。

私は話を聞きながら、本当は、同期入社の他の女性社員たちは定時に退社していることや、のんびり仕事をしている人も多いことを気にしていても、それは話せないのだろうと感じたものです。

■習慣的な残業を部下や後輩に強いる人

私には、なぜこんな状態を(新入社員の所属する課の)管理者が放っておくのか疑問でした。

習慣的な残業(このケースではサービス残業)は、それを部下や後輩に強いることができる人たちがいるために生じます。

私は、その新入社員の課の管理者に「毎日残業になっているのを放っておいていいのですか」と尋ねましたが、その管理者は「残業といっても、(1日あたり)2時間程度のことだろう」と答えました。

確かに、この管理者も30代の女性社員も、昔から無償の残業をしてきた人たちでしたが、私としては、彼らが同じことを若い人たちにさせるのを厭わないのに驚きました。

また、「残業といっても、2時間程度のことだろう」というのは、この管理者が考えていることのすべてではなく、本当は、聞き分けがないであろう30代の女性社員と話し合ったりするのが嫌で、新入社員の残業は目をつむれる程度の話だとかわして、見て見ぬふりをしているのです。

■性格に問題がある人はだらしない親に育てられている

こういうと反発を買うかもしれませんが、30代の女性社員のように、従順な新入社員を泣き顔で働かすことができるような性格に問題がある人は、子供のころから、しつけにだらしのない親(あるいは周囲の大人)に育てられているものです。それ故に、もし管理者が注意をしても、反抗的な態度をとりがちです。

おそらく18歳の女性社員に負担を掛けすぎていることを指摘すれば、「でも……は必要だと思うんですけど」とか、「私だって……なんですけど」といった口答えをして、不貞腐れるであろうことは目に見えています。

それに加えて、注意をした管理者の悪口を陰で言って回るようなことをするかもしれません。それがわかるために、この管理者としては、関わりたくないのです。

新入社員がかわいそうな目に遭っているのに、「関わりたくない」というのも、従業員にしつけをすることについて、あまりにだらしないのですが、この30代の女性社員の周囲には、こんな管理者しかいないので、当人の振る舞いは変わらないままです。

残念なことに組織には、人と関わって、問題を解決しようとする力や正義感に欠けている人がいることがあります。彼らが管理者であるがために、18歳の女性社員が受ける仕打ちは、見て見ぬふりをされ、退職を考えるに至った原因は、なかったことにされてしまいます。

■犠牲者が出てからの対処でなく早めの対処で悲劇は防げる

「性格に問題のある人たち」には、周囲の人たちが非常にたくさんのエネルギーを使うものですが、このケースでは新入社員が疲弊しているだけでなく、せっかく入社した社員が短期間で退職に追いやられ、組織はあらたな人材の補充が必要になるという、リソースの大きなムダ遣いが生じています。

相談者の方が「見ていられない」とおっしゃるのは、新入社員の泣き顔だけではなく、その現象を生み出す周囲の人たちの振る舞いも含めてのことではないでしょうか。

初心者のピクトグラムとサポートワード付きの木製ブロックを持つハートオブジェクト
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

ハラスメント行為者へのカウンセリングをする私に相談があるのは、多くの場合(残念ながら)こうした問題が起きた後なのですが、犠牲者が出てから重い腰を上げるのではなく、相談者のように感じる方、あるいは次に何が起きるのか想像できる方は、泣き顔の社員に早めに手を差し伸べてあげてほしいものです。

正義感を持った人が早く行動を取っていれば、起こらずに済んだと思えることは、あまりに多いからです。

もちろん組織的に状況を問題と捉えて対処するとなれば、それが一番いいのですが、そうでないときには、どうすればよいのでしょうか。

■助けたいなら心配しているだけではいけない

助けたいと思えば、もちろん「見て見ぬふりをする人」になってはいけません。皆で飲みに行って、それが話題に出たときにだけ、「あれはどうかと思うなぁ」と言っているだけの人たちも、何ら役に立っていません。そんな人たちが何十人いても、泣き顔の社員は救われないでしょう。

ここは、あなたがコミュニケーション能力を発揮するところです。

会社から帰宅する前に、30代の女性社員と18歳の新入社員のところへ立ち寄って、「残業が多くてたいへんですね~」と言ってみましょう。

できるだけ多くの人に聞こえるように話すのがコツです。「何やってるの毎日?」と言うだけでいいのです。

これは18歳の新入社員への「君が残業している(させられている)のを多くの人が知っているよ」というメッセージであり、30代の女性社員への「人使いが荒いねぇ。みんなそう思っているよ」というメッセージでもあります。

嫌味だと思われたらどうしようか? 気にすることはありません。あなたは新入社員を救うために話しているのです。そして、それを聞いている人の中には、なぜあなたがそう話しているのかを悟ってくれる人もいるでしょう。

■助けるためのメッセージは遠慮なく送る

もし、あなたが30代の女性社員に冗談を言える立場なら、その女性社員を指さしながら、新入社員に「こんな先輩じゃあ、仕切りがわるくて仕事が終わらないね」と笑いながら言ってみましょう。

できれば、そうしたメッセージを送る人が、2、3人出てくると、新入社員は、何人もの人が気にかけてくれていると感じます。また、30代の女性社員にも、特定の人だけが非難しているのではないとわかるでしょう。

もともとは、この人たちの上司がだらしなく、「新入社員に毎日残業させていたらダメだぞ。もっと要領よく仕事できないのか」と言えないところに問題があるのです。ですから、メッセージは遠慮なく送ったらいいのです。

ビジネス コンセプトのサポート。握手。
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

こうした状況で、メッセージを送る人たちがいるのが、組織内にコミュニケーションがある状態、見て見ぬふりの人たちばかりなのが、それがない状態です。

どちらが好ましいかは、誰にでもわかるはずです。こんなコミュニケーションすら、誰も取らないところでは、状況は変わることがないのもわかるでしょう。

■必要なのは当たり前のコミュニケーション

誰もが「誰も何も言わないのはおかしい」と思っているだけの組織では、泣き顔の新入社員を助けるのに、テクニカルな手法などはあっても仕方ありません。むしろ、当たり前のコミュニケーションが必要とされているのです。

電車の中で、目の前に高齢者が立っても席を変わろうとしない若者がいたとしましょう。高齢者の周りには、あなたと何人かの人が立っています。そのときにあなたと何人かの人たちが、その若者に注意をするかどうか。

起きていることは、これとまったく同じ次元のことなのです。

こういうシーンすら見て見ないふりをする人は、あまりにも多いですよね……こう聞いて「いや、そんなことはない」と思う人は、ぜひ泣き顔の新入社員には声をかけてあげてください。

求められているのは、必ずしもすべてを完璧にケアできる誰かの行動ではなく、また、「こんなことを言ったら、自分が責められるかもしれない」と心配することでもなく、コミュニケーションを取って、「あの、すみません。こうできるんじゃないですか」と伝えることなのです。

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松崎 久純(まつざき・ひさずみ)
サイドマン経営・代表
もともとグローバル人材育成を専門とする経営コンサルタントだが、近年は会社組織などに存在する「ハラスメントの行為者」のカウンセラーとしての業務が増加中。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では、非常勤講師としてコミュニケーションに関連した科目を受け持っている。著書に『好きになられる能力 ライカビリティ』『英語で学ぶトヨタ生産方式』など多数。

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(サイドマン経営・代表 松崎 久純)

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