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3位はJR北海道ノースレインボー、2位は長野電鉄3500系、1位は…「いま乗らないと後悔する鉄道車両」ベスト10

プレジデントオンライン / 2022年12月25日 9時15分

381系の百の位の「3」は、「アルミ車体の直流電車」という国鉄の定義に基づく。 - 筆者撮影

昭和から平成中期に製造された鉄道車両がここ数年、次々と姿を消している。2023年以降に引退もしくはその可能性が高い車両の中から、レイルウェイ・ライターの岸田法眼さんが選んだ、「いま乗らないと後悔する車両ランキング」ベスト10をお届けする――。

■最後の時が近づく思い出の車両たち

2022年は長らく“御堂筋線の顔”として親しまれたOsaka Metro10系、“有楽町線の顔”として親しまれた東京メトロ7000系、国鉄特急形電車の代表的な存在だったJR東日本485系、東武鉄道の急行(現・特急)〈りょうもう〉用の1800系として登場し、通算53年の長きにわたり活躍した日光線系統特急用の350系などが引退した。

2023年以降も引退予定や引退が近づきそうな車両が多く、見納め、撮り納め、乗り納めは今のうちであろう。そこで「引退間近」「この先、引退の可能性あり」の車両ベスト10を私の独断で選定した。

■JR西日本にのみ残る「絶滅危惧種」

第10位 JR西日本381系

国鉄時代の1973年に登場。カーブ通過時でもスピードを落とさずに走行できる振子車両の第1世代である。エル特急〈しなの〉を皮切りに、1978年にエル特急〈くろしお〉、1982年にエル特急〈やくも〉(いずれも現在は特急)に投入された。

国鉄分割民営化後はJR東海・西日本が継承。前者は2008年に引退。後者は特急〈やくも〉(岡山―出雲市間)のみ活躍が続くものの、2024年春に後継の273系がデビューする予定で、このときに381系が引退の可能性もある。

なお、2022年3月19日から「国鉄色リバイバル車両」の運転を開始。特急〈やくも9・25・8・24号〉で、“タイムスリップ”した雄姿を見ることができる。381系をじっくり味わいたい人向けの車両ともいえよう。

第9位 JR西日本201系

国鉄時代の1979年に登場。国鉄初のサイリスタチョッパ制御(「電機子チョッパ制御」ともいう)を採用した省エネ電車である。当初は中央本線(東京―高尾間)に投入された。

JR西日本201系
筆者撮影
201系は関西本線で現役を締めくくる模様。 - 筆者撮影

1981年から量産車が投入されると、関東ではオレンジの中央本線用、カナリヤイエローの総武本線用、関西ではスカイブルーの東海道・山陽本線用がそれぞれ投入された。しかし、製造コストが高い難点があり、1985年からコストパフォーマンスに優れた205系に移行されてしまう。

国鉄分割民営化後はJR東日本・西日本が継承。前者は2011年に引退した。後者は関西本線(おもにJR難波―王寺間)を走るのみ。先輩の103系などよりも先に引退する予定である。国鉄の元祖省エネ車両の“咆哮(ほうこう)”を聴けるのも今のうちだ。

■万博開催終了後に姿を消す

第8位 Osaka Metro 2代目20系

大阪市営地下鉄時代の1975年、初代20系が10系に改称され、「20系」は1度途絶えたが、9年後の1984年に2代目が登場。我が国では2番目、地下鉄では初のVVVFインバータ制御車(現代の省エネ車両)である。

Osaka Metro 2代目20系
筆者撮影
2代目20系は2014年に試作車が廃車。2022年に入ると、廃車が本格化した。 - 筆者撮影

中央線に投入され、1985年4月5日の深江橋―長田間の延伸開業、1986年10月1日の近畿日本鉄道(以下、近鉄)東大阪線(現・けいはんな線)の開業に伴う相互直通運転に備えた。

2代目20系は1984年から1989年にかけて中央線用7編成、1989年に谷町線用9編成がそれぞれ投入され、冷房サービスの向上を図った。1990年に新20系が登場したため、96両で増備が打ち止めとなった。

その後、近鉄けいはんな線の開業に備え、谷町線用の9編成がすべて中央線に移り、“生え抜き”の7編成とともに、制御装置の更新、各車両に車椅子スペースと旅客情報案内装置の設置、最高速度を70km/hから95km/hに引き上げるなどの改造が行われた。

後年は“中央線の顔”として親しまれたが、2022年に関西万博アクセス用のリリーフ車両30000A系(大阪・関西万博終了後は谷町線に転属)、新しい中央線の顔となる400系が相次いで登場した。残念ながら2代目20系は関西万博アクセス車両の対象から外れており、開幕前までにはお役御免の模様だ。

Osaka Metroでは“昭和の薫り”が漂う最後の車両なので、今のうちに堪能してみてはいかがだろうか。

■地下鉄「名物車両」たち

第7位 名古屋市営地下鉄3000形

鶴舞線(上小田井―赤池間)の第1世代車両として1977年に登場。車体は鋼製の骨組とステンレスの外板を組み合わせたセミステンレスで、当初は4両編成だった。

上小田井駅へ進入する、鶴舞線用3000形3120編成による豊田市行き列車
上小田井駅へ進入する、鶴舞線用3000形3120編成による豊田市行き列車(写真=MaedaAkihiko/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)

1993年8月12日の全通を機に、6両編成化することになり、8編成を分解して増結車に転用された(増結車の一部は3050形に挿入)。これに伴い、23編成から15編成に減少し、不足分は第2世代車両の3050形で補う。

2011年に第3世代車両のN3000形が登場すると、3000形の廃車が進み、現在は1編成のみ在籍。めぐり会うのも至難のワザ的な車両と化している。

第6位 都営地下鉄5300形

都営浅草線の第2世代車両として1991年に登場。北総開発鉄道(現・北総鉄道)との相互直通運転開始に伴う輸送力の増強、ならびに第1世代車両5000形の置き換えも兼ねた。

都営地下鉄5300形
筆者撮影
5300形の最高速度は、ラストナンバーの第27編成のみ120km/h、ほかは110km/h。 - 筆者撮影

軽量化に優れ、塗装の必要性がないアルミ車体ながら、アーバンホワイトをベースに、レッドとダークブラウンの帯を巻く。車内も明るさが強調され、ロングシートも着席区分を明確化したバケットタイプが採用された。

2017年に第3世代車両5500形が登場すると、廃車が進み、現在は1編成のみ在籍。いつ引退してもおかしくない状況だ。

泉岳寺―西馬込間の区間運転列車だと乗車チャンスが高いものの、押上―泉岳寺間、相互直通運転を行う京浜急行電鉄、京成電鉄、北総鉄道では、“運がイイ”ときしか現れない。

■「スーパーひたち」でお馴染みの車両も

第5位 JR東日本651系

JR東日本が初めて手掛けた新型車両で1988年に登場。車両形式の百の位の6は交流電化と直流電化の両方を走行できる交直流電車、十の位の5は急行形だが、JR東日本は特急形に充てた。

JR東日本651系
筆者撮影
651系に乗るならグリーン車がおすすめ。2人掛けと1人掛けの組み合わせもあり、豪華な雰囲気を醸し出す。 - 筆者撮影

1989年3月11日に常磐線のエル特急〈スーパーひたち〉でデビュー。最高速度130km/h、タキシードボディーと称される洗練された顔立ちと車体で、国鉄特急形車両とは“隔世の感”をまざまざと魅せつけた。2002年12月1日から停車駅が多い特急〈フレッシュひたち〉にも充当された。

現在は交流機器の撤去や耐雪強化などの改造を施した651系1000番台として、高崎線系統の特急〈スワローあかぎ〉〈草津〉、臨時特急〈水上〉に転用されたが、2023年3月17日をもってお役御免。翌日のダイヤ改正で波動用(臨時列車や団体列車用)に転用され余生を過ごすのか、それともこのまま引退となるのかが注目される。

■日本で唯一の短距離交通システム

第4位 スカイレールサービス200形

1998年8月28日、広島短距離交通瀬野線(営業上、「スカイレールみどり坂線」と案内)が開業。ロープウェイと懸垂式モノレールの技術を融合した「短距離交通システム」が初めて実用化された。1999年には鉄道友の会ローレル賞を受賞した。

スカイレールサービス200形
筆者撮影
200形は「開業」と「廃止」の両方を味わう車両となった。 - 筆者撮影

車両は小ぶりで定員は25人。丘陵地に開発されたみどり坂団地の足という、“住民のための鉄道”で最大260パーミルの急勾配を労せず走る。

しかし、短距離交通システムはここだけという特殊性から、部品の調達が困難なうえ、赤字も重なり、2023年12月末に廃止される予定だ。

ベスト10のなかでは容易に乗車できる車両なので、沿線住民に迷惑をかけないかたちで特殊な鉄道の醍醐味(だいごみ)を楽しんでいただきたい。

■函館―釧路間を約半日かけて走った

第3位 JR北海道キハ183系

国鉄時代の1979年に登場。キハ80系に比べ、冬の北海道でも安定した運転ができるよう、ディーゼルエンジンや耐寒耐雪構造を強化したほか、普通車にもリクライニングシートを採用し、快適性も向上した。先頭車はスラントノースで、国鉄の特急形電車と同様に運転台を高い位置に配した。

JR北海道キハ183系
筆者撮影
残るキハ183系500番台グループのうち、先頭車とグリーン車の2両は登場時のカラーリングを身にまとう。 - 筆者撮影

極寒の1980年2月10日に特急〈おおぞら5・4号〉でデビュー。当時、石勝線は存在しておらず、函館―釧路間を10時間以上かけて結んだ。その後、特急〈北斗〉〈北海〉〈オホーツク〉にも投入された。

1986年にキハ183系500番台が登場。国鉄の概念を打ち破る斬新な塗装、すべての座席に背面テーブルを設置、グリーン車を眺望のよいハイデッカーにするなど、グレードアップを図り、人々に衝撃を与えた。

国鉄分割民営化後はJR北海道が継承。引き続き増備を続けたほか、自社苗穂工場の手により、リゾート気動車のキハ183系5000番台『ニセコエクスプレス』、キハ183系5100番台『クリスタルエクスプレス』、キハ183系5200番台『ノースレインボーエクスプレス』という“オンリーワン”の車両もお目見えした。

『ノースレインボーエクスプレス』
筆者撮影
『ノースレインボーエクスプレス』は、ハイデッカー4両、2階建て車両1両の5両編成で、すべて普通車。 - 筆者撮影

また、1999年にはキハ183系500番台をお座敷車両に改造したキハ183系6000番台が登場。定期特急に併結する態勢を取り、車両運用の効率化を図った。

現在はキハ183系500番台グループ、キハ183系5200番台『ノースレインボーエクスプレス』が最後の活躍を続けており、2023年をもって44年の歴史に幕を閉じる。

前者は特急〈オホーツク〉(札幌―網走間)特急〈大雪〉(旭川―網走間)、これからの季節は前面が雪化粧した姿で最後の力走を迎える。

後者はすでに一般の営業列車の運行が終了し、2023年4月予定の団体貸切列車が乗車のラストチャンスとなる。

なお、JR九州のキハ183系1000番台(1988年登場)は、引き続き運用される。

■2度のオリンピックを見届けた

第2位 長野電鉄3500系

この車両は1961年に営団地下鉄(現・東京メトロ)日比谷線用の3000系として登場。1988年に後継の03系が登場すると、1994年7月23日で引退した。

長野電鉄3500系
筆者撮影
運がよければ長野―信州中野間は3000系、信州中野―湯田中間は3500系との“日比谷線車両の乗り継ぎ”ができる。 - 筆者撮影

幸い一部は長野電鉄に移籍し、2両編成の3500系が1993年、3両編成の3600系が1995年に新たなステージに立つ。特に日比谷線時代の1964年に開催された東京オリンピック、長野電鉄時代の1998年に開催された長野オリンピックでは、ともにアクセス輸送を担った。2度もオリンピックアクセスを担った唯一の車両でもある。

2020年から2022年まで03系15両が長野電鉄3000系として移籍し、3500系と3600系を置き換える展開になった。移籍先でも再び共演するのは大変珍しい。

3600系は2020年9月に引退。3500系も2023年1月19日をもって引退し、通算62年の歴史に幕を閉じる。年末年始は長野線信州中野―湯田中間を中心に運転される。運転スケジュールについては、長野電鉄のホームページでご確認いただきたい。

■昭和の風情を感じられた「田都の顔」

第1位 東急電鉄8500系

東京急行電鉄時代の1975年、当時工事中だった新玉川線(現・田園都市線)、営団地下鉄(現・東京メトロ)半蔵門線の直通用として登場した。

東急電鉄8500系
筆者撮影
8500系は田園都市線のほか、東横線、大井町線でも運用された。 - 筆者撮影

1969年に登場した8000系に比べ、運転台の位置を高くしたほか、先頭車前面の方向幕の左に種別幕、右に運行番号表示器を設置、その外側には急行灯(当時、急行等の運転時は点灯し、通過駅で注意喚起を図っていた)、先頭車の前面にコーポレートカラーの赤帯を巻いた。

1976年には鉄道友の会から「技術的に集大成された車両」として、ローレル賞を受賞。1991年まで400両投入され、長年にわたり“田園都市線の顔”として親しまれた。2003年3月19日から東武鉄道との直通運転を開始し、埼玉県にも足を延ばす。

車内は天井が高く、広々とした半面、冷房の効きがいまひとつ。扇風機を併用すると、ちょうどいい涼しさになる。アナログチックなところが昭和の風情を感じさせた。

現在は青帯のBunkamura号のみ在籍。すでに2023年1月での定期運用終了が発表されており、48年の歴史に幕を閉じる見込みだ。

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岸田 法眼(きしだ・ほうがん)
レイルウェイ・ライター
1976年栃木県生まれ。「Yahoo!セカンドライフ」の選抜サポーターに抜擢され、2007年にライターデビュー。以降、フリーのレイルウェイ・ライターとして『鉄道まるわかり』シリーズ(天夢人)、「AERA dot.」(朝日新聞出版)などに執筆。著書に『波瀾万丈の車両』『東武鉄道大追跡』(ともにアルファベータブックス)がある。また、好角家でもある。

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(レイルウェイ・ライター 岸田 法眼)

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