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「いつも変わらない同じ毎日」はむしろ危ない…40代から脳の老化が始まる人がよく使う「危険な口癖」

プレジデントオンライン / 2022年12月27日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Anchiy

いつまでも若々しくあるためには、どうすればいいのか。老年医学の専門医の和田秀樹さんは「人の老化は感情から始まる。『まあ、いいや』を口癖にしている人は脳の老化が早まってしまう。恋愛や株投資など前頭葉を刺激するような『俗事』に興味を持ったほうがいい」という――。

※本稿は、和田秀樹『[新版]「がまん」するから老化する』(PHP文庫)の一部を再編集したものです。

■動脈硬化も骨粗鬆症も今は40代から始まる

血管の老化である動脈硬化は、早い人は40代から始まっている。高齢女性に多い骨粗鬆症も、最近は40代ぐらいからめっきり多くなった。これは間違ったダイエットが原因だと私は考えているが、男女問わず、40代ともなると臓器が昔よりも老化しているのではないかとしばしば指摘されている。

とはいえ成人の体として、実用機能はあまり衰えてない。運動能力の低下により「40代になったらこの仕事は無理だ」と言われるのは、プロスポーツの世界ぐらいである。

もっともコンピュータ・ソフトの開発者のように、運動能力が問題になるわけでもないのに35歳定年説がささやかれる職業もある。これは年齢とともに実務からマネジメントへと異動する人事上の理由もないわけではないが、進歩の速い世界で新しいことを覚えるのがおっくうになってくるからとも言われている。

■人間は身体機能よりも感情から老け始める

どんな仕事でも、ベテランと言われる年齢になってくると、いつの間にか新しいことに食指が動かなくなる。面倒くさいと思うことが増えてくる。こうしたことも人間は身体機能よりも、心や感情から老け始めることを示唆している。

現実に30代、40代からうつ病が増加して「何もやる気が起きない」と苦しむ人が目に見えて多くなる。そこまで悪くはなくても、さまざまなことに対してガツガツしなくなる「まあ、いいや症候群」が現れやすくなる。

■なぜ政治家は70代でも権力に執着するのか

一般的に若いころは「出世したい」「よりよいパートナーを手に入れたい」「思いどおりの仕事をしたい」などの夢や欲望があり、頑張る気力もあり、徹夜も辞さない体力もあるものだが、ある年齢から「もう出世などしなくていい」「子どもの成績もこんなもんだろう」と、執着がなくなってくる。それはそれで恬淡(てんたん)としていて、欲望から超越できたのでよいではないかという見方もできるけれども、若さはない。

政治家は60代後半や70代になっても、権力に執着を示す。「いい歳をして、生々しい」と思う人もいるだろうが、概して年齢のわりにエネルギッシュで若々しく見える。最近の草食系と言われる10代、20代からガツガツしていない若者の出現は、社会として老化していると言えなくもない。

年齢が上がっていくにしたがって、体を使っていないときの衰え方が、若いときと比べると急激になる廃用が起こりやすくなる。

■「まあ、いいや」で思考停止していると脳は衰弱する

体を使ってない、あるいはもう生殖器を使っていない状態が恒常化すると、どんどん衰えていく。「まあ、いいや症候群」で頭を使っていないと、脳も衰弱していくのである。「まあ、いいや」的な消極的生活によって感情が老化すると、追いかけるように体や脳、生殖器などの老化を進めてしまう。

感情の老化は、いちばん最初の段階で食い止めなければいけない防波堤なのである。

医学が進歩して80代、90代まで生きるのが当たり前になってくると、「60歳で定年を迎えたら後は隠居」というのでは、老年期が長すぎる。ましてや40代で感情が老化してしまうと、とんでもなく老後が長い人生になってしまう。70代くらいまで、現役のつもりで俗事に興味を持ってもらいたいものだ。

■物忘れが増えた人の脳は海馬より前頭葉が萎縮している

感情が比較的早い時点から老化するのは、医学的な傍証もある。

以前、私が老人専門の総合病院に勤務していたころ、CTやMRIで撮影した脳の写真を、毎日のように見ていた。物忘れがひどくなった人の脳、徘徊(はいかい)する老人の脳、意欲を失ってしまった人の脳など、画像から病変を調べるためだ。多いときは年間に800枚くらい見ていた。いまも年間100枚ぐらい見ている。

こうした写真で見ると、高齢者の脳は多かれ少なかれ縮んでいるのである。歳を取って縮んでいくのは自然なことらしい。数多く見ているうちに、萎縮の度合いから一目見て年齢の想像がつくようになり、「年齢のわりに萎縮が進んでいる」「縮んでいなくて脳が若い」などという感覚も持てるようになった。

脳全体の縮み方には医学的なデータがあって、一律に同じ割合で縮むのではないことがわかっている。また記憶を司るのは海馬という部分だが、物忘れがひどくなった人の海馬を注意して見ても、必ずしも萎縮しているわけではない。

ただ、早くから縮む部位がある。それが脳の前方の部分、前頭葉だ。

前頭葉の機能には未知の部分が多いけれども、意欲や創造性を担っていると考えられている。前頭葉に脳腫瘍や脳梗塞が発生したり、事故などで損傷した場合、意欲が失われたり、感情や思考の切り替えができなくなってしまう。ものごとの段取りを考えるとか、創造性も欠如するようになる。

前頭葉が老化すると、意欲を持ってものごとに取り組んだり、自分で考えをまとめたりすることが苦手になってくるといった変化が現れる。

手のクローズアップ
写真=iStock.com/tolgart
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tolgart

■老化防止には前頭葉を刺激することが重要

側頭葉なら左側は言語の記憶や理解に関係していて、この部分が脳梗塞になると、人の話がまったく理解できなくなる感覚性失語と言われる症状が現れるが、前頭葉の場合、知能はとくに変化せず、驚き・怒り・悲しみ・喜びといった感情に変化が目立つのだ。

すなわち前頭葉が衰えると、老け込んだ人間になりやすい。脳の中ではまず前頭葉の老化予防が大事だと判明してきている。

「脳トレ」で一躍有名になった、東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授は、前頭葉の血流を増やすために単純な計算や音読を勧めている。彼は、読み・書き・計算を毎日反復練習する「学習療法」を提唱している。前頭葉が刺激され、記憶力を鍛える練習はしなくても、物忘れが改善されたりするという。

一般論から言うと、老化の予防とは前述のようにその部位を使うことだ。50の声を聞いて、足腰が以前より弱ってきたなと思ったら歩かないといけないとか、パソコンでばかり仕事をしていて漢字を忘れたなと思ったら、ときには手書きで文字を書いてみる。何と言っても「使うこと」が、もっともシンプルな老化予防作業だ。

■ルーティンではないことをすると前頭葉が働き出す

では、前頭葉はどうやって使えばいいのだろうか。実は人は前頭葉の機能を欠いても生きられる。しかし、この部分がないと人間らしくなくなってしまう。動物の脳と比較すると、人間は異様なほど前頭葉が発達しているのである。

前頭葉は、決まりきったルーティンの状況ではあまり使わない。仕事でも家庭でも、毎日同じ作業を繰り返している限り、活動は低調だ。

だが、ある日突然、奥さんや恋人とは別に好きな女性ができて、この女性とどこでデートしようかとか、どう喜ばせるかとか、いろんなことを考える。つまりルーティンではないことをするときに前頭葉は俄然、働き始めるわけだ。

考えてみると、日本の学校教育では前頭葉を使う教育はほとんど行われてこなかった。言語機能や計算機能を伸ばす、側頭葉や頭頂葉の教育には熱心だったのだが、習ったことを疑うとか、まったく知らない場面にどう応用するかといったことや、プレゼンテーション型の授業が少ないことなども含めて、前頭葉を使う練習はしていない。

■安定した生活の中でドキドキを生み出す方法

日常生活を安穏に暮らしていると、前頭葉を使うシチュエーションがあまりない。エリートコースをずっとたどり、毎日のルーティンワークをこなしていればすむような仕事を続けてくると、前頭葉への刺激がほとんどないまま、40代、50代を迎えることも起こりうる。おそらく、こうした人は脳の老化が速い。

その反対に波瀾万丈でハラハラドキドキするような状況では、前頭葉が活発に働く。端的な例は起業することだろうが、いま、勤めを持っている人には非現実的だ。となると、たとえばネットで株式投資でもいいだろう。

もしくは直ちに起業しなくても、定年後の起業プランを考えてアイデアを練るのもいい。前頭葉を働かせるだけでなく、将来、実際に役に立つかもしれない。定年後の起業支援をしている知人に聞くと、40代くらいから起業に備えてアイデアを検討していた人は成功するけれども、定年してから何をしようかと考える人に、いいアイデアが出たためしがないというのである。

■いちばん感情を動かすのに効果的なのは恋愛

いちばん感情を沸き立たせて、しかも結果が不確定という意味では恋愛も勧められる。中高年が本気になって暴走して、家庭を壊してしまうのは本意ではないけれども、風俗などに行くよりは(風俗にも性ホルモンを若返らせるような効能はもちろんある)、前頭葉の刺激には恋愛のほうがいい。恋愛といっても浮気までするのではなく、プラトニックでも何でもいい。男女交えてワイン会を企画するとか、異性と心をときめかせる機会を持つことも含めて、ということである。

前頭葉機能が衰えてくるにしたがって、ルーティンはルーティンとしてしか受け止められなくなってくる。代わり映えのしない日常は、ますます退屈なものになる。そうなったときには、強い刺激をあえて求める必要もある。

■本格的なものから受ける刺激が中高年には欠かせない

和田秀樹『[新版]「がまん」するから老化する』(PHP文庫)
和田秀樹『[新版]「がまん」するから老化する』(PHP文庫)

たとえば若いころなら何を食べても美味しく感じたものが、中高年になると本当に美味しいものでないと感動しなくなる。となると、信頼できるグルメサイトを見て、評判のいい店に行ってみてはどうだろう。

旅行でも、これまでは普通の温泉旅行で楽しかったものが、つまらなくなってきたなら、本物の秘湯に行ってみよう、世界遺産を訪ねてみようということになるかもしれない。

あるいは、テレビでお笑い番組を見てもつまらない、雛壇芸人ではどうにも笑えないというのであれば、寄席に行ってみるとか、大阪なら「なんばグランド花月」に行くとか、レベルの高い芸を楽しめる場所を訪ねてみよう。

より本格的なものから受ける刺激が、中高年には欠かせなくなってくるのである。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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