日本人の約半数はリビングを週1回も掃除していない…「片づけ」をめぐって夫婦ゲンカが起きる根本原因
プレジデントオンライン / 2022年12月19日 9時15分
※本稿は、米田まりな『あの人にイライラするのは、部屋のせい。』(PHP研究所)を再編集したものです。
■7割の夫婦がモノでもめた経験がある
夫婦喧嘩・親子喧嘩の原因は、ズバリ「モノ」です。
いきなり深刻な話題から入り、驚かせてしまったかもしれません。
片づけにまつわる夫婦・親子間のトラブルは、意外にも深刻です。株式会社サマリーが行なった「夫婦間のモノのトラブルにまつわる意識調査」(インターネット調査/既婚者600人対象、2016年)によると、モノについてもめた経験のある夫婦は7割にものぼります。
「相手の持ち物が多すぎる」「自分のモノを勝手に捨てられた」といった、一見些細ないざこざが原因で、半数の夫婦が結婚を後悔し、3人に1人は、離婚の危機にまで発展してしまうこともあるようです。
ところで、「自己奉仕バイアス」という心理用語をご存じでしょうか?
簡単に説明すると、「成功」は自分の手柄とするのに、「失敗」の責任は取ろうとしない人間の習性を表しています。曖昧な情報を、都合のいいように解釈する傾向とも言えます。
■環境には家族の言動を決定づける力がある
これを家庭生活に置き換えてみると、「家庭内のことが上手くいけば自分のおかげ」「上手くいかなければ家族や環境のせい」にしてしまう危険性があるということです。
夫も妻も、あるいは親も子供も、家庭に対する自身の貢献度を過大視する一方で、「あの人のせいで、この家は汚いんだ」「宿題をやる気にならないのは、部屋が散らかっているからだ」と、ことあるごとに家族や家庭環境への不満を募らせていくのです。
片づかない部屋やモノのいざこざで夫婦が離婚の危機にまで発展してしまうのは、お互いが自分の行動を棚に上げて、パートナーや環境のせいにしてしまうことに原因があります。この状態から脱する一つの方法が、「家族や部屋のせいにさせない仕組み」です。
家庭環境は、あなただけでなく、家族の思考や言動を決定づけると言っても過言ではありません。夫婦、家族の関係を良好に保つためにも、片づけがいかに重要かを、パートナーにも気づかせるように働きかけてみてください。
■片づけの重要性を「データ」で示す
片づけをしてくれない人に効果的なのが、「家にいる時間を計算し、その事実をデータで示す」ことです。
NHK放送文化研究所の「2015年 国民生活時間調査報告書」によると、勤め人の平均在宅時間は1日16時間。睡眠時間を7時間としても、1日9時間は「自宅の風景」を視覚刺激として目にし続けているのです。
仕事・勉強・家事・食事・くつろぎなど、朝起きてから夜寝るまで、潜在的刺激として、家庭内のあらゆる場所に置かれたモノが目に入り続けます。本人が意識していなくとも、日々の細かい視覚的ストレスの脳への刺激の量は甚大であり、家庭生活の満足度を低下させていきます。テレワークの方や主婦の方はなおのこと、ぜひ、どれくらいの時間、自分やパートナーが家にいるかを計算してみましょう。
そして、そのデータを示しながら、「1日10時間以上もこの部屋にいるよね。部屋にこれだけモノが多いと、過ごしにくいかもよ?」とパートナーに片づけの重要性を伝えるのでです。イライラが積もり積もって悲劇を招く前に、「ファクト」の力を借りて早め早めに解決しましょう。
■夫婦で片づけの習慣・能力に差があるのは当たり前
パートナーがずぼらで、散らかっていても平然としている。結局自分ばかりが先に気がついて、片づけることになるのは不公平だ!
そういってガミガミ怒ったところで、残念ながら両者の溝は一生埋まらないでしょう。そもそも、散らかりに対する許容度には、大きな個人差があるからです。
東京大学大学院新領域創成科学研究科は、被験者を1人ずつ居住空間に入れ、空間に徐々にモノを増やしていって、どのポイントでストレスを感じるかという実験を行ないました。
被験者の反応から、ストレスが高まる閾値には大きな個人差があることがわかりました。「多少モノが散らかっていた方が、何もモノがないよりもむしろ落ち着く」という人も一定数存在したのです。
片づける能力は、その人の育った家庭環境に依拠します。目白大学大学院心理学研究科の調査によると、子ども時代に同性の親がどのように片づけに向き合い、片づけるよう指導をしたかによって、片づけ行動に変化が出ることがわかっています。
「同性の親」という点がポイントで、仮に整理整頓が行き届いた実家で育った男性でも、母親一人が片づけを担い、父親は何もしていなかった場合は、家庭をもった際、自分の父親と同じ態度を取ることが多いのです。
家庭の環境以外でも、視野の広狭・身長の高低・空間把握能力・記憶力など、片づけ能力に影響する要因は多く存在します。視力が悪く、細かい埃やゴミがそもそも見えていないという人もいます。
後天的にスキルを上げようにも、集団で片づけの練習ができる場は幼稚園くらい。まずは、夫婦間で片づけの習慣・能力に差があることは「当たり前」のこととして受け入れるところからスタートしましょう。
■平日は片づけを頑張らない
夫婦間に能力差がある場合、「気づいたほうが片づける」方式だと、能力の高いほうに負担が偏ってしまいます。
![米田まりな『あの人にイライラするのは、部屋のせい。』(PHP研究所)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/6/1200wm/img_f6cf445fa76cb1cae503f61488e7ae95128743.jpg)
おすすめは、お互いが理想とする片づけの頻度を知り、その中間をとること。そして特定の曜日を決めて、1人ではなく共同で取り組みましょう。
例えば、片づけが得意で、妻が「毎日ピカピカにしたい」と思う一方で、夫は片づけが苦手で、なるべくさぼりたい。そんな場合には、夫婦で片づける時間を週末に1時間程度設け、平日は妻も意識的に頑張らないようにします。
仮置きのカゴを多めに設置して、平日はそこに投げ入れるだけでOKとするなど、意識的に「さぼるための仕組み」を作っていきます。
夫婦とも片づけをやりたくないという場合には、最低限週末の30分間だけ、片づけの時間としましょう。土曜のランチは出前を取り、浮いた時間を片づけに充てるなど、無理なく続けられる仕組みづくりが大切です。
「1つも無駄なモノが出ていない」レベルと、「ギリギリ掃除機がかけられるレベル」では大きな差があります。毎日完璧な状態を求めるのはハードルを上げすぎなので、「休日はピカピカにする代わりに、平日はギリギリ掃除機がかけられればOK」など、家族全員の期待値をすり合わせましょう。
週末にリセットすれば、金曜日は多少整っていなくても、お互い目をつぶること。赤ちゃんがいて毎日綺麗にする必要があるというご家庭も、家中を綺麗にしようと思わず、赤ちゃんが移動するスペースのみを綺麗に保ち、それ以外のスペースは「平日は散らかしてもいい」と許容するなど、メリハリをつけましょう。
■片づけが苦手な人が掃除機をかける
株式会社日本リサーチセンターが全国の15~79歳の男女1200人を対象に行なった「家の掃除についての調査」(2013年)によると、リビングを週1回以上の頻度で掃除する人は、全体の半数程度。残りの半分の方は、週1回も掃除をしていないのです!
また、国際医療福祉大学が大学生に対象を絞って行った室内環境調査(2015年)では、大学生で毎日掃除をする人はわずか8%に留まります。
一人暮らし時代に掃除する習慣がなかった人が、家族と同居した瞬間に、毎日完璧な状態を保つというのは不可能に近いですよね。
そこで片づけが苦手な方に、休日に掃除機をかけてもらうのがベストです。
![掃除機をかける父と息子](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/7/1200wm/img_a755bc56cbdf28af0305c8b2a84b6acc187945.jpg)
掃除機をかけない人は、床にモノが散らばっているとどれだけ邪魔になるか、想像できません。掃除機をかける人だけが床に置かれたモノが気になり、風呂掃除をする人だけが排水溝の髪の毛に目がいきます。
片づけを「自分事化」してもらうには、その場所に関連する掃除を任せるのが一番です。
ただし、最低限の掃除さえできれば、見た目の美しさは「自己満足」の領域。パートナーに自分の美的感覚を強要しないようにしましょう。
お互いに片付けの方法と頻度を腹落ちさせたうえで、納得感を持って取り組むのが、長続きの秘訣です。パートナーとの家事分担にモヤモヤしたら、まずは期待値のすり合わせから始めてみましょう!
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整理収納アドバイザー
脚本家の祖父・研究者の父の影響を受け、茨城県・宮城県でモノに囲まれた幼少期を過ごす。2014年、東京大学経済学部卒業後、住友商事に入社。Eコマース領域の事業投資を担当。18年、株式会社サマリーに出向、収納サービス「サマリーポケット」の運営に従事する。現在は大手不動産デベロッパーで働く傍ら、プライベートで整理収納アドバイザー(1級)の資格を活かし、副業としてイベントや雑誌監修、記事執筆など多方面で活躍。作家・デザイナー・起業家から一般の家庭まで幅広い層に向けて片づけのコンサルティングも行なっている。著書に『集中できないのは、部屋のせい。』(PHP研究所)、『あの人にイライラするのは、部屋のせい。』(PHP研究所)がある。
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(整理収納アドバイザー 米田 まりな)
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