マネックス証券清明社長が語る「2023年も続くインフレ時代にこそ、投資しておくべき」ある対象とは
プレジデントオンライン / 2022年12月31日 11時15分
■物価が上がることで「潮目が変わった」
今、グローバルで考えると、どの国の政治も経済も不安定で、新型コロナウイルス感染症を筆頭に戦争、物価上昇、エネルギーや食料不足など、不安要因が多数あります。私は相場の専門家ではないのですが、ここから2023年にかけてもウクライナ危機などがどう決着がつくかわからない状況で、株価や為替は安定しない状態が続くと思っています。
一方、日本経済に目を向けると、「スタグフレーション」に突入したと見ているアナリストもいます。これは、景気が後退していく中でインフレが同時進行する現象のこと。給料が上がらないにもかかわらず、原油価格の高騰など原材料や素材関連の価格上昇によって物価が上昇する最悪の事態、ともいわれています。
私たちの世代は物心がついてからずっと“失われた30年”といわれるデフレの中を生きてきました。給料が上がらないのも、金利がゼロに近いのも、「そんなもの」として受け入れてきたのです。物価が上がることは初めての経験で、今、本当に「潮目が変わった」ことを実感しています。
■インフレも円安も成長するには必要なこと
しかし、私自身はインフレや円安もポジティブにとらえています。6月にニューヨークに出張しましたが、普通のカフェで30ドルぐらいしました。「高い!」と思いましたが、レストランはどこもほぼ満席で活気があり、インフレを気にしていない様子がうかがえました。アメリカでも物価高に対し給料の上昇は追いついていないのに……。それでも、人々は物価が上がることで、経済が回ることを理解している。「成長」することに前向きなのが心地よかったです。
円安にしてもそれで業績が上がる企業もあります。さらに、海外の人は、物が激安でサービスのよい日本に来たくてたまらない様子です。日本の物の値段は安すぎるとは思いますが、それは競争力があるということ。新型コロナが落ち着き、また海外からの観光客がこぞってやってくれば、観光業も盛り返すでしょう。
このように「成長」という視点でみれば、インフレも円安も必ずしも悪いだけではありません。
■米国株インデックスの投信積立を実行中
「潮目が変わった」とはいいましたが、私はそれに動じることなく、投資を続けることこそが資産を目減りさせない防衛術だと思います。
私は「コア・サテライト運用」という投資スタイルを実行中で、これは資産を守りの「コア」と、攻めの「サテライト」に分けて投資する方法です。中長期で考え安定的に運用する「コア」の部分を米国株インデックスの投信積立で、積極的に運用する「サテライト」の部分は、投資信託の投資先や、運用レポートを読んで「これはいい!」と思ったものをスポット購入しています。
投信積立なら自動的に資産と時間の分散ができて長期投資になるし、運用はプロに任せるので、いわゆる「ほったらかし投資」ができます。多忙な人にはぴったりでしょう。
また、通貨の分散も重要と考え、半分くらいを米ドル資産にすることを目指しています。金ETFや暗号資産などを活用した分散もよいかもしれません。
![攻めの投資、守りの投資](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/a/1200wm/img_5ae447beb091cd367561e49a1ebd66de269525.jpg)
■自分に投資して、将来の報酬に換える
私自身の人生を振り返ると、攻守のバランスをとることはなく(笑)、ひたすら「攻め」てきました。新卒で銀行に就職し、その後、2回目の転職でマネックスグループに入り、やがて現職に就いています。
![清明 祐子さん](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/7/1200wm/img_2743b57b758ce8a9840799ae27154b1d1698512.jpg)
20~30代前半はよく飲みに行き、ゴルフを始め、ワインスクールに通い、マラソン大会に出場し……、給料だけでは足りずに、ボーナスで補填(ほてん)していた時期もあります。英会話にはこれまで100万円以上かけたと思います。赤字ギリギリでも「攻め」でした(笑)。
けれども、それを無駄遣いと考えたことは1度もなく、働きながら自分のお金を何かに投資することによって、将来のお金に換えようと。その何かが当時は「自分」だったのです。
転職したときも報酬は下がりましたが、あまり気にしませんでした。今はマイナスでも、そこで頑張れば給料を上げることができるし、自分に足りないものを身に付けることで、20年後の自分の価値が上がると信じて仕事をしてきました。
■成長に投資し、将来を楽しみにしよう
こう考えると、投資もキャリアも同じかもしれません。証券会社の社長としての言葉ではなく、1人の先輩として、若い世代に向けて「お金を増やさなくてもいいから、自分を信じて、自分に投資する。目指せ、ハイリターン!」といいたい。
ある程度のキャリアを積んだ世代は、仕事と資産形成の両輪を回して、お金をどんどん増やしてください。
インフレも円安も個人でコントロールできるものではないので、不安がって縮こまっていては時間がもったいない。資産も、自分も、「守るより成長」。短期的な収益を求めずに、成長に投資し、将来を楽しみにしたほうが、明るい人生になると思います。
お金を守るための3カ条
1. 投資し続けることが資産防衛になる2. 分散・長期・プロに任せる「投信積立」がおすすめ
3. 自分に投資して、目指せ、ハイリターン!
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マネックス証券 代表取締役社長
マネックスグループ株式会社取締役 代表執行役Co-CEO 兼 CFO。2001年大学卒業後、三和銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。06年にMKSパートナーズ(プライベート・エクイティ・ファンド)の参画を経て、09年2月にマネックス・ハンブレクト(17年にマネックス証券と統合)に入社し、11年に同社社長に就任。19年4月よりマネックス証券代表取締役社長。20年1月マネックスグループ代表執行役COO、21年1月よりCFO兼務。21年6月マネックスグループ取締役 代表執行役COO 兼 CFO、22年4月よりマネックスグループ取締役 代表執行役Co-CEO 兼 CFO。
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(マネックス証券 代表取締役社長 清明 祐子 構成=坂本君子 撮影=国府田利光)
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