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国会議員の仕事ぶりを測るにはどうすべきか…1人政党でも国を動かせる「質問主意書」という武器

プレジデントオンライン / 2022年12月23日 9時15分

参院法務委員会で質問する日本維新の会の鈴木宗男氏=2022年10月27日、国会内 - 写真=時事通信フォト

自分が投票した国会議員の仕事ぶりを確認するには、どうすればいいのか。参議院議員の鈴木宗男さんは「質問主意書の提出ぶりを確認してはどうか。主意書への回答は国会答弁以上の重みをもつ。提出本数と内容を見れば、その議員がどれだけの熱量をもっているのかがわかる」という――。

■当時は質問の機会すら与えられなかった

国策捜査で逮捕されて裁判を戦っていた私は、平成16年の参議院選挙は北海道選挙区から無所属で立候補して落選。平成17年に地域政党「新党大地」を結成して、衆議院選挙で北海道ブロックの比例候補として当選し、国政に復帰しました。

新党大地の国会議員は私だけですから、一人会派でした。

国会の本会議や委員会での質疑時間は、議員の人数に比例して各党へ割り振られます。かつては全体で与党2対野党8の配分でしたが、与党の要請によって3年前から3対7になりました。

議員が2人以上いれば会派と認められ、質疑の機会が得られますが、時間は限られます。一人会派には、機会さえ与えられないんです。私が自分の考えや主張を表す方法は、質問主意書しかありませんでした。

■主意書への回答は国会答弁よりも重い

国会に提出された質問主意書は、議長が認めた上で内閣へ送付されます。担当の省庁を決めて答弁書を作成し、関係省庁との協議と内閣法制局による審査を経て、担当課長、審議官、局長、大臣までの決裁がなされ、内閣で閣議決定されるという手順です。答弁書は2週間以内に作成すると決められています。

国会での答弁はあとから訂正できますが、質問主意書は閣議決定を経て総理大臣の署名が入ったものですから、直しがききません。国会答弁よりも重いのです。

質疑はその時々の議題による制約を受けますが、質問主意書は国政全般について内閣の見解を求めることができます。質疑の機会が多い与党の議員は出さないのが不文律ですから、野党議員にとって武器です。私が自民党に所属していた頃には、共産党の議員がよく使っていました。

たくさんの質問主意書を提出した議員の歴代ランキングがあります。

【図表】「質問主意書」歴代議員ランキング

立憲民主党の山井、逢坂、長妻各氏は、質問主意書を活用しています。自民党に所属する娘の鈴木貴子・衆院議員は、新党大地と民主党の野党時代に提出した本数です。

私の2156本は、衆院議員時代だけの数です。さらに、参議院議員になってから現在まで3年2カ月の間に、23本出しています。しばらく破られない記録でしょうね。

■アイヌ、密約、高価なワイン…質問で国を動かしてきた

国会が開いている期間しか出せないので、1日に3本も5本も書いたときがありました。党に所属している議員は、政調のチェックを受けて決裁をもらわなければ、提出できません。しかし一人会派の私は、誰もチェックしてくれません。いい加減なものを出して勉強不足だと笑われないよう、必死に努力するしかありませんでした。

私がこれまでに出した質問主意書を内容別に見ると、36本がアイヌ民族についてです。その中で、アイヌを日本の先住民族だと初めて政府に認めさせたことは、大きな成果だったと自負しています。

外務省が公開した外交文書を基に、沖縄返還の条件として核の再持ち込みを認めるという密約や、本来はアメリカが支払うはずの土地の原状回復費400万ドルを日本側が肩代わりしていた問題についても追求しました。

要人が外国を訪問するとき、現地の大使館がサポートします。その接遇の順位、序列も明らかにさせました。送迎や宿舎手配といった便宜供与の格付けです。皇族や首相、閣僚のAAから、国家公務員・地方公務員のDDまで、7ランクに分かれているのです。

国務大臣経験者が現職の国会議員より格上であることや、各省庁の局部長が国会議員と同格で、同じ官僚への厚遇ぶりが見えたことなど、初めて公表されたので読売新聞で大きな記事になりました。

■「負担」なのは不都合なことを隠そうとするから

外務省でいえば、購入しているワインの金額についても質問しました。狸穴のロシア大使館の向かいにある事務次官公邸が何に使われているか、普通の国会議員は知りません。ここは外務省の隠れ家で、外国から要人が来たときに高いワインを飲ませて接待するのです。こんなムダ遣いをさせてはいけないと思って質問したところ、答弁書には、

〈平成12年から平成16年までに外務本省において購入したワインは合計で2177本であり、その総額は1644万3038円である。〉とありました。

リカーショップの棚からワインを選び取る手元
写真=iStock.com/magnetcreative
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/magnetcreative

あるいは、国民の税金である予算から、外務省が官房機密費を20億円も上納していた問題。これが廃止されたのも、私が質問主意書を出したことがきっかけです。

質問主意書が官僚の仕事の負担になっているとか、細かい質問を繰り返すのは乱発だという批判があるのは知っています。

ですが、この点について、佐藤優さんは一刀両断してくれました。

「正直に書けば2、3分で済みます。過去の不都合を突かれたくなかったり、つじつまを合わせたりする必要があるから、書くのに時間がかかるんです。役人が負担だと言うのは、ごまかそうとするからですよ」

これが、外務官僚として経験豊富な佐藤さんの見立てでした。

■仕事をしているかしていないかが一目瞭然

私の質問主意書はなぜ効果があったかというと、長く政権与党の中にいて、内情をよく知っているからです。だから役人は、いい加減な答弁が書けずに困るわけです。

私は、この11月にも1本出しました。内容は、日本共産党が破壊活動防止法の調査対象団体であるかどうかです。この件については毎国会、必ず出しています。内閣によって判断が変わる可能性がありますから、現在も破防法が適用されているかどうか、常に確認する必要があるのです。

質問主意書は、議員本人が勉強しているかどうかのバロメーターでもあるんです。勉強していなければ、何を質問すればいいかがわからないわけですから。

どの国会議員が、何本の質問主意書を出しているか。それはどんな内容で、それに対してどんな閣議決定がなされたかは、国会のホームページにアクセスすれば簡単に読むことができます。

国会で質問せず、議員立法の発議もしない、質問主意書も出さない議員がいます。あなたが貴重な一票を投じた議員は、どれくらい仕事をしているのか、していないのか。一目瞭然ですから、ぜひ確認してみてください。

私はあと2年半の任期のうちに、前人未到の2200本を目指そうと思っています。

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鈴木 宗男(すずき・むねお)
参議院議員/新党大地代表
1948年、北海道足寄町生まれ。拓殖大学政経学部卒業。1983年、衆議院議員に初当選(以後8選)。北海道・沖縄開発庁長官、内閣官房副長官、衆議院外務委員長などを歴任。2002年、斡旋収賄などの疑惑で逮捕。起訴事実を全面的に否認し、衆議院議員としては戦後最長の437日間にわたり勾留される。2003年に保釈。2005年の衆議院選挙で新党大地を旗揚げし、国政に復帰。2010年、最高裁が上告を棄却し、収監。2019年の参議院選挙で9年ぶりに国政に復帰。北方領土問題の解決をライフワークとしており、プーチン大統領が就任後、最初に会った外国の政治家である。

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(参議院議員/新党大地代表 鈴木 宗男 文・構成=石井謙一郎)

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