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なぜ夏休みの宿題はすぐに終わらないのか…どんなに優秀な人でもギリギリまで動き出せない理由

プレジデントオンライン / 2022年12月22日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Click_and_Photo

なぜ夏休みの宿題はすぐに終わらないのか。明治大学の堀田秀吾教授は「人間にはギリギリまで動き出せない脳のクセがある。これは能力の高低とは関係ない」という――。

※本稿は、堀田秀吾『世界最先端の研究が導き出した、「すぐやる」超習慣』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■なぜ、人はギリギリまで動こうとしないのか?

みなさんは、夏休みの宿題をどのタイミングで行っていましたか?

30日間前後も休みがあるにもかかわらず、ついつい後回しにしてしまい、夏休み終了ギリギリで終わる――という人も多かったのではないでしょうか。

私自身、「あとでやろうはバカヤロウ」と言いつつも、仕事が立て込んでいるときなどは、ついつい締め切りギリギリまで後回しにしてしまい、あたふたする……なんてことが結構あります。いやはや、関係者のみなさま、申し訳ございません。

なぜ、人はギリギリまで動こうとしないのか?

イギリスの歴史学者・政治学者であるシリル・ノースコート・パーキンソンは著作『パーキンソンの法則:進歩の追求』の中で、『パーキンソンの法則』を提唱しています。

第1法則 仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する

ざっくり説明すると、先の夏休みの宿題のように、「本当は3日で終わる課題も、長い期間で設定してしまうと、ギリギリまでかかってしまう」ことを指しています。

人間は締め切りやデッドラインがあることで、かえって“期限内に終えればいいや”と、いつまで経ってもやろうとしません。人は元来、できるだけ楽をしたい生き物ですから。

■余裕があると、人間は無意識にダラダラとしてしまう

ちなみに、パーキンソンは、イギリスの官僚制における役人の状況を観察し、この法則を導き出しています。

官僚になるくらい、とても優秀な人たち――にもかかわらず、ギリギリまでやらないわけですから、多くの人が「まだ猶予があるし」と動き出さないのも納得でしょう。

実際に、パーキンソンの法則について、米国研究所のブライアンとロックらが実証実験を行っているのですが、とても興味深いものです。

被験者たちが、ある作業を行うにあたって、

①2倍の時間を与える場合
②最小限の時間を与える場合
③自分のペースで行う場合
④できるだけ早く遂行するように指示された場合

①〜④の条件を付けて、それぞれ調べてみたところ、①のように長い時間を与えるケースほど、ゆっくりと作業するようになったそうです。余裕があると、人間は無意識にダラダラとしてしまうというわけです。

こうした先延ばしグセを解消するためにも、課題に対する懸念事項を因数分解してみたり、「宿題を終わらせる」という大きな目標から、「○日までにこの部分は終わらせる」と小さな目標を設定したりすることが大事です。

オフィスで一休みしているプログラマー
写真=iStock.com/visualspace
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/visualspace

自己管理というのは、自分が思っている以上に難しいものです。

体調にしろ、スケジュールにしろ、自分が想定していた方向とは、違う方向に向かうこともあるでしょう。

何度も繰り返しますが、うまくいかないのは、あなたの意志が弱いわけでも、だらしないわけでもありません。

自責の念にかられるよりも、脳の仕組みや習性を理解すれば、小さなところから変わっていくはずです。

■具体性に欠ける大きな目標は逆効果に

もう少し、「すぐやる」ための目標設定についてお話ししましょう。

たとえば、SNSなどで友人の投稿を見ると、何かしたくなりますよね。

ただ、いざやろうとすると面倒に思えて、結局何もしない。その気持ち、とってもわかります。

なぜ、やる気が起きないのか?

それは、具体性に欠けているという理由や、現実的にハードルが高いといった理由などにも起因しています。

ですから、まず自分が「漠然と考えているのか」、「明確な目標があるのか」を把握するようにしてください。

具体性に欠ける大きな目標を掲げている場合は、意味がない――どころか、逆効果になってしまうといわれています。

そうならないためにおすすめしたいのが、ニューヨーク大学のエッティンゲンとゴルウィッツアーの「メンタル・コントラスティング」という考え方です。

人間は、「目標達成のための障害を克服できる」とわかれば元気が出るし、克服できないとわかれば元気がなくなる生き物です。

そのため、実現したい未来と現在の状況を比べて、どんな障害があるかを知り、実現可能性が高いものを選んで実現していくことが望ましいです。

わかりやすく言えば、いい未来と悪い未来を思い浮かべて比べてみて、悪い未来にならないようにするにはどうすればいいかを考えるという方法です。

■「モテたい」なら、モテない人にならないためにと考える

人には、体力や時間やお金など、有限な「資源」がありますから、これらを無駄なく配分し、目標の達成率を高めようというのが、「メンタル・コントラスティング」です。

漠然と考えているときは、自分がどうなりたいかを考え、そこに向けて障害と思われるものを見つけ、実現可能性が高いものを目標として定めていけばいいというわけです。

「新しい趣味を見つけたい」という漠然とした目標があるなら、その趣味によって自分がどうなりたいのか? そして、どうなりたくないのか? を洗い出し、悪い予測を避ける方法を考えます。

たとえば、「異性からモテたい」と思うのであれば、モテない人にならないためにはどうしたらいいか? を考えます。

コーヒーを片手に雑談するグループ
写真=iStock.com/imtmphoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/imtmphoto

するとそこに向けて自分の資源をどう使えばいいのかも見えてくるため、やる気も芽生えやすくなります。

「メンタル・コントラスティング」を行うと、自然と「明確な目標がある」というステージへと早変わりするというわけです。

■やることは1つに絞る

ライデン大学のレントとエラスムス・ロッテルダム大学のスフレインの1092人の大学1年生を対象にした研究でも、野心的な目標を設定するより手ごろな目標を設定すると、パフォーマンスが上がると報告しています。

目標の設定の仕方にはいろいろあると思うのですが、私は小さな目標を立ててコツコツと達成していくことをおすすめしています。

これは、日常生活においても同じです。

たとえば、「部屋を片づける」と目標を立てたとしましょう。片づけが得意な人は、ざっくりとした目標でも対応可能でしょうが、片づけが苦手な人や面倒くさがりな人にとっては話が変わってきます。

「片づけをしなければ」と考えると、どこから手をつければいいのかわからなくなり、何もできなくなってしまう……。

堀田秀吾『世界最先端の研究が導き出した、「すぐやる」超習慣』(クロスメディア・パブリッシング)
堀田秀吾『世界最先端の研究が導き出した、「すぐやる」超習慣』(クロスメディア・パブリッシング)

そういった可能性もあるからこそ、小さな目標を有効活用してください。「部屋の片づけをする」ではなく、「今日は机の上だけを片づけよう」という具合に1カ所に範囲を絞ると、目標が明確になり、“すぐやる”につながります。

やる気のエンジンは、始動されてしまえばこっちのもの。

きっと、先ほど述べた片づけだって、机の上だけでなく、机の中、ひいては部屋全体とやってしまうことでしょう。

引っ越しを想定して、「ものを減らそう」と考えているなら、「1週間に必ず1つは不要なものを処理する」と決めたほうが、どんどんものは減っていきます。

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堀田 秀吾(ほった・しゅうご)
明治大学法学部教授
1968年、熊本県生まれ。シカゴ大学博士課程、ヨーク大学ロースクール修士課程修了、同博士課程単位取得満期退学。言語学博士。立命館大学准教授、明治大学准教授などを経て、2010年より現職。専門は司法におけるコミュニケーション分析。脳科学、言語学、法学、社会心理学などのさまざまな分野を横断した研究を展開している。『科学的に元気が出る方法集めました』(文響社)など著書多数。コメンテーターとしても活躍中で、メディア出演も多い。

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(明治大学法学部教授 堀田 秀吾)

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