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自称「贅沢していない… 」世帯年収1500万で貯蓄はたった380万のパワーカップルを転落させる恐怖のザル家計

プレジデントオンライン / 2022年12月24日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Maya23K

夫は自営業、妻はフルタイムの会社員という40代後半の共働き夫婦には3人の息子がいる。妻は仕事に家事に、子供の受験や部活のフォローにと、毎日目の回るような忙しさ。世帯年収は1500万円超あるが、気づけば長男の大学受験を前に貯金は400万円未満。果たして、教育費と老後資金をどう工面したらよいのか。FPが注目したのは、貯金意識が裏目に出た2つの行動だった――。

■年収1500万円「ぜいたくしていないのにお金がたまらない」

相談に来たのは、会社員の上村亜紀さん(仮名・47歳)。高3、高1、中1の男子3人の子供を抱え、受験が数年おきに訪れる家庭の母親です。加えて、子供たちが運動部に入っており、育児はワンオペのため細かい家計管理にまで手が回らず、お金がどんどん流出するザル状態だ。

手取り月収は、自営業の夫(48歳)が71万円、団体職員の正社員でフルタイム勤務の亜紀さんは23万円。合わせて世帯年収はボーナス込みで手取り1178万円、額面で1500万円超ありますが、月に貯蓄できるのはよくて12万円程度で、現在の貯金残高はわずか380万円です。

数年前に購入したマイホームのローンが月20万円以上かかっており、長男の大学受験を控えた今、先々かかる教育費や老後資金をどう貯めていけばよいか、相談に乗ってほしいということでした。上村さんはテーブルにつくと開口一番、こう言いました。

「ここに来る前にちゃんと調べておこうと思っていたんですけど、そんなことをする間もなく今日を迎えてしまって……。とりあえず全部持ってきたので、見てもらえませんか?」

そしてカバンから通帳やカード明細書の山をゴソッと取り出し、テーブルに並べ、「電気代が引き落とされる時って、電力会社の名前、書いてありますかね?」などと一つずつ支出を調べ始める上村さん。住宅ローンの完済予定年や管理費、修繕積立金が月いくらかもちゃんとは把握していませんでした。

実は高収入世帯ではこうしたケースは珍しくありません。フルタイム勤務の共働き多子世帯では、多忙ゆえに支出管理まで手が回らず、どんぶり勘定になりかねないのです。「決してぜいたくをしてきたわけではなく、ただ生活や教育に必要な支出をしてきただけ」と話していましたが、これはお金がたまらない家庭の“常套句”。年収1000万円超のパワーカップルだからこそ、今まではかろうじて家計はもちましたが、息子3人がもし年間の学費100万円以上の私立大に進学したら……。夫の自営業の収入が減ったら……。たちまち、破綻してしまうかもしれません。そうなれば老後資金など夢のまた夢です。

かくして一緒に収支を調べ、明確にしたうえで、上村家の問題点を分析。以下、改善策とともに述べます。

■問題①支払いツールが多岐にわたり、支出が不透明

最初に気づいたのは、支払い方法の問題点。クレジットカードは家族カードと個人用、ポイントをためるためのデパート系と3種類。加えて、ポイント還元キャンペーンにつられてインストールした支払アプリなど、次から次へカードが出てきて支出の不透明化に拍車をかけていました。

「ポイント5倍キャンペーン」や「20%還元キャンペーン」があれば、その支払いツールを使いたくなる気持ちは多くの人が共感するでしょう。私もよくわかります。ですが、上村家の敗因の一つは、支出を把握せず、「必要だから」とお金をジャブジャブ使っていたこと。支出を「見える化」し、ムダを徹底的に省く必要があります。ポイ活はその前提で実施すべきです。

そこで、いったんお金の流れを整理するためにすべて現金払いに一本化。頑張って1カ月間家計簿をつけてもらいました。すると、食費や日用品費だけでも支出が1万7000円も削減。後述しますが、その効果もあり貯金額も大きくUPしています。図らずも、ポイントを意識しなくてもお金はたまることが証明されました。

クリップで留めてあるレシート
写真=iStock.com/oasis2me
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/oasis2me

■問題②貯蓄目的で入った月10万円超の生命保険料

一緒に支出を調べる過程で、他にも大きな問題点に気づきました。生命保険に月12万5000円も払っていたことです。往々にして月4万円以上の高額な生命保険を払っている家庭の場合、その保険商品は貯蓄型ですが、上村さんも例に漏れず……。

いわく、「保険なら強制的に差し引かれるし、取り崩しもできないから自動的に資産が増えますよね」。このように、自分では貯金できないから生命保険を利用してためようと考える人は少なくありません。

上村さんが入っていたのは、米ドルの積み立てと円建ての終身保険。内容を詳しく見させてもらうと、セールストークである「予定利率」とは大きく違い、実質利回りは0.3%程度の商品も。よく言われる「予定利率」はすべてに対してかかるわけではなく、一部のみ。誤解されやすいので注意が必要です。

仮に、実質利回りが1%だったとしても、大きな得でしょうか? インフレでお金の価値が下がれば、まったくリターンになりませんよね。であれば保険はシンプルに保障だけにして、貯蓄に関しては、長期積み立て投資を年3~4%の利回りで運用したほうが、はるかに効率的ではないでしょうか。本来、保険は保障だけで十分なんです。

■貯蓄型生命保険を解約し、iDeCoにスライド

こう話したところ、上村さんは、貯蓄型生命保険は解約し、シンプルに掛け捨ての生命保険で必要な保障を整えました。これにより、生命保険料だけで10万円を削ることに成功。削った10万円のうち約9万円は、そのままiDeCoの口座へ。夫婦でiDeCoとつみたてNISAをフルに使い、11万円近くを毎月投資に回しています。

ため方を、貯蓄型生命保険から、投資へとスライドさせたというわけです。リスクはありますが、想定利回りもざっと0.3%から3%程度へと、ほぼ10倍に。

実は生命保険を解約する際、上村さんにあるお願いをしました。

保険の仕組み、そしてiDeCoをはじめとする投資の仕組みを改めて勉強してほしい、と。そもそも、マネーリテラシーが高ければ、これほどの保険に入っていなかったと思うんです。今からでも遅くない。従来の方法の何がいけなかったのか、提案された方法はなぜいいのか、腹の底から理解してほしいと伝えました。

そうすると、長期で積み立て投資を行うにしても「今日は急落したけれど、本来上げ下げを繰り返しながら時間をかけて上昇していくものだから、焦って売らないようにしよう」などと平静でいられますし、続けるために必要な信念も持ち続けられるはずです。

また、今後も他の専門家から提案されたマネープランに惑わされて「マネープラン放浪者」になるリスクも減るでしょう。

■問題③教育費も大きな見直しポイント

他にも大きく削減したのは、夫婦の習い事費です。夫婦共にスポーツ愛好家で、夫は趣味のゴルフに月4万円、妻はパーソナルトレーニングに月2万円かけていたところ、行く頻度を減らし、半減。ただし、子供3人の習い事である、テニス、野球、サッカーはそのまま続けることに。

また、必要な時に都度渡していた子供へのお小遣いを、毎月決まった金額でやりくりしてもらうように。習い事費と小遣いだけでも、6万2000円もの固定費の削減になりました。

【図表】メタボ家計BEFORE⇒AFTER

■このままいけば老後資金は3650万円までたまるが……

かくして主に固定費を大きく削った結果、これまで月81万2000円だった支出が58万3000円と、22万9000円もの削減に成功。毎月の黒字額は、12万8000円から35万7000円へ3倍になりました。

うち約11万円を前述の通り積み立て投資、残り約25万円は普通預金口座に貯蓄。

現在、約9万円ずつiDeCoに積み立てていますから、仮に70歳まで約20年間このペースで続ければ、元本が2160万円、そこに4%の利回りで運用できれば3285万円にはなるでしょう。65歳で退職しても、11万円の5年間分の660万円を貯めておけば、今の投資額を70歳まで継続でき、老後のための資産を増やし続けることが可能です。

現預金の方も、約半年前には380万円しかなかったのが、現時点で150万円程度増えています。このペースでいけば、奨学金制度を一部利用しながら3兄弟の大学進学費用はまかなうことは可能になります。

今後注意点があるとしたら、やはりリバウンド。一見利回りの高い投資に目が行って道を外してしまうこともあります。受験すると、合格ゲットのために教育費を多めにかけたくなり、iDeCoの掛け金を減らす可能性もあります。老後資金と教育資金は綱引きの関係。「勝って兜の緒を締めよ」の心持ちで、現状維持を目指してほしいと思います。

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横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万3000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は143冊、累計330万部となる。オンラインサロン「横山光昭のFPコンサル研究所」を主宰。

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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭)

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