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エコではないが…「ペーパータオルを使いまくる」子育てと介護で超多忙な翻訳家が雑巾を捨てて手に入れたもの

プレジデントオンライン / 2022年12月30日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/BBuilder

仕事や育児や介護に追われる毎日を、どうやりくりしていけばいいのか。夫と高校生の双子の息子、50キロの大型犬と生活しながら義父母を介護している翻訳家でエッセイストの村井理子さんは「些細な工夫を積み重ね、隙間時間を無駄にせず、時に堂々とサボる。嫌なことがあったら家事を投げ出しふて寝すればいい」という――。(第1回/全3回)

※本稿は、村井理子『いらねえけどありがとう いつも何かに追われ、誰かのためにへとへとの私たちが救われる技術』(CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。

■「雑巾の呪い」から解放された

トイレットペーパー

ペーパータオル

雑巾が好きではない。これは小学生の頃から続く呪いだと思っている。なぜ私たちは各自雑巾を管理させられていたのだろう。給食が終わると掃除の時間で、毎日雑巾で床を磨いていた。とてもつまらない作業だった。あの頃のどんよりとした気持ちが、雑巾を見るたびに思い出される中年に成長してしまった。

数年前に大病をしてから生活スタイルを大幅に変え、わが家から排除されたもの。それは雑巾だった。大げさだが、これは私にとってはゲームチェンジャーとなった。

雑巾の代わりに登場したのが、ペーパータオルやウェットタオルといった類の製品だ。それらをたっぷり揃えて、使いまくっている。

エコではないと思いつつ、できんもんはできんのだ。

ダイニングテーブルを拭く際に使う、厚手の食卓テーブル用ウェットタオル、キッチンを掃除する際に使う洗剤つきのウェットタオル、トイレ掃除のためのお掃除シート、フローリングを掃除するためのシート……。とにかく、こういった製品を迷うことなく、ある意味贅沢に使用するようになった。

それで何が変わったかというと、実は家のなかがきれいになった。すぐに手が届く場所にこういった製品があることで、隙間時間にこまめに掃除するようになったのだと思う。そのうえ、嫌いな雑巾が消えた。いままで何を我慢していたのだと思う。そのうえ、家がきれいだと幸福感が増すし、仕事がはかどるのだ。つまりひとつの工夫でふたつのごほうび(雑巾が消え、仕事がはかどる)だ。

些細な工夫だったとしても、生活は大きく変わってくれるのだ。

■記録は未来のわが身を救ってくれる

自他共に認める記録魔だ。

忍耐が必要な事務作業は苦手だが(たとえばレシートを集めるなどといった作業にはかなりの苦労を伴う)、起きたことをそのまま撮影して記録すること、写真に添えて文章を残す作業は、まめにやるほうだと思う。

過去に見た光景を思い出して文章に書き起こすことも多い。自分でも恥ずかしくなるほど、映像や画像に残す行為を躊躇(ちゅうちょ)しない。

もちろん、何から何まで撮影するなんてことはしないけれど、普通だったら撮らないよねというようななんの変哲もない景色、道路に転がった小さなものなどを、しっかり撮る。なんでもないものから何かを導き出したいと、常に書くことを探しているからかもしれない。もちろん、堂々とというよりは、焦ってこっそりやっているのだが。

この記録魔の一面に、いままでどれだけ助けられてきたかわからない。何か問題が起きたとき、残していた写真で解決できたことは多々ある。そこにメモをつけておくクセは数年前に定着した。難解な作業(たとえば葬式の喪主とか、相続手続きとか)の連続は、このルーティンを私の暮らしにしっかりと植えつけたと思う。

スマートフォンを使った記録は簡単な日記のようなものだ。

後日、それが原稿となって世に出ていくこともある。写真を見たことがきっかけとなり子どもの学校行事を思い出すこともあったし、学校から配られるプリントはすべて撮影し、子ども別にラベルを設定してGoogle Keepにアップロード、そのうえリマインダーを設定しているため三者面談の日程を忘れるという恐怖の体験を回避したこともある。こういった記録の積み重ねが、隙間時間を使った作業の前倒しの一部となっているのは言うまでもない。

多くの人がスマートフォンを持つ時代になったことで、自分の苦手を克服する手段も増えた。素晴らしいことだと思う。

■歯医者も美容院も予約は死守せよ

主婦、双子の母、大型犬の飼い主、翻訳業……。確かに、私の人生は忙しい。

忙しいながらも、どうにかして生きている私に、「どうやったら時間のやりくりができるのですか?」との質問が多く寄せられる。自分自身は、嫌なことは先送りしてしまうタイプの人間だし、毎日昼まで寝たいし、料理も面倒だし、社会人として失格だなといつも思っているのだけれど、たったひとつだけ、時間を節約するために自分に課していることがある。それは、予約をキャンセルしないというルールだ。

たとえば歯科医院や美容院などがそれに当たる。急ぎの仕事が入ったときに限って、「あ! 今日は歯医者だった!」とか、「あ、今日は髪を切る日だった」なんてことがよく起きる。

私の場合もそんなケースが多い。こういうピンチになると、思わず、予約をキャンセルしてしまおうかな……と考えるものだが、私はそんな気持ちを抱く自分を厳しく叱るようにしている。

ヘアドライヤーを使用した美容師
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

■最初に入れた予約が正解

ダメだ!

予約だけは厳守!

理由は単純だ。そのスケジュールを入れたとき(予約時)は、今日が最適の日程だと考えて設定しているはずなのだ。これより先でも、後でも、自分のスケジュール的には正解ではない。相手にとってもベストな日程だったはず。それを先送りすればしただけ、自分の作業に支障が出る。だから、先送りはするべきではない。

当然、どうにもならない急な用事でキャンセルが不可避になる場合もある。そんなときは1分でも早くキャンセルの手続きを取るようにしている。そしてきちんと謝る。次の予約には必ず行く。

簡単なルールだが、無理をしてでも予約を守ることでスケジュールの遅れを回避できたことは何度もある。何が素晴らしいかというと、キャンセルしなかったことで、普段の倍以上の達成感(「予約どおりに行けた私ってすごい!」)を得られるという事実だ。運動や風呂と同じで、面倒だと思っても、「えいや!」とやってみて後悔したことなど一度もないのだ。

■エアコンは死活問題

長い冬が終わりに近づき、そろそろ山が春めいてきたなと思うと、じわじわと、いつもの悩みが心に浮かんでくる。

今年の夏は酷暑だろうか?

酷暑であれば、エアコンは絶対に必要だ。何せうちには大型犬がいるし、家族はみんな暑がりだ。

「万が一、エアコンが故障していたら、大変なことになるぞ……」

山に近い場所に住んでいるので、冬は積雪量が多いし、とても長い。そんな地形に建つ家でエアコンの暖房機能は一切役に立たない。役に立たないので、冬の間わが家のエアコンは休止状態となり、部屋を暖めるために使うメインの道具は石油ストーブ2台となる。

だからこそ、久々に稼働させるエアコンが生存しているかどうか、春先になると気になってくる。それも、じわじわ、深刻なまでに気になってくる。

雪も解けた頃(通常それは5月の初めだ)、ドキドキしながらスイッチを入れてみる。動けばわが家は安泰だが、今年の春先の入電の儀で、わが家最大クラスのエアコンの運転ランプが点灯せず、いつまで経っても点滅したままだった。これは故障を意味する。私が恐れていたことが現実になってしまった。

■自分は何を嫌がっていたのか

メンテナンスを頼めばいいのでは? 社交的な人はそう思うだろう。しかし私は極力人と会わない暮らしを実践している人間だ。

村井理子『いらねえけどありがとう いつも何かに追われ、誰かのためにへとへとの私たちが救われる技術』(CCCメディアハウス)
村井理子『いらねえけどありがとう いつも何かに追われ、誰かのためにへとへとの私たちが救われる技術』(CCCメディアハウス)

動物はいい。

しかし、知らない人はダメだ。

普段、家のなかに閉じこもって暮らしていると、エアコンのメンテナンス・修理を頼むということは、大きな決断となる。家のなかに知らない人を、少なくとも1時間以上迎え入れる。部屋の掃除をしなくてはいけないし、仕事も中断しなければならない。人と会うストレスも大変なものだ。

しかし背に腹は代えられず、渋々修理を依頼し、メンテナンスの男性がわが家にやってきた。

60代ぐらいの方だっただろうか、とても静かにやってきて、エアコンや室外機のチェックを素早く終え、部品を一部取り替え、あっという間に修理を完了させると、内容説明をしたうえで、去っていった。

感動する手際だ。自分は一体何を嫌がっていたのだろうと思わずにはいられなかった。プロとは、このように短時間で結果を出す人なのだと感動し、彼が残したアンケートハガキに記入し(満点評価)、そしてポストに投函した。

■悩む数時間は浪費、アウトソースの方が経済的

何を言いたいのかというと、悩む時間を過ごすよりも、プロに即座にアウトソースしたほうがよっぽど経済的だということ。悩んだ数時間は、誰の人生にとっても二度と戻らない時間なのだ。

年末になると一斉に大そうじの圧が迫ってくる。今年の汚れは今年のうちになどと言われるが、そんなのよけいなお世話である。それでも年末年始はさわやかな気持ちで過ごしたいから、私は「小そうじ」を適当にやって、あとはピザやカニの注文に全力を注ぐことにしている。今年と来年の間に境界線があるわけでもあるまいし、今年の汚れも来年の汚れもまるごと愛していこう。

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村井 理子(むらい・りこ)
翻訳家、エッセイスト
1970年静岡県生まれ。琵琶湖のほとりで、夫、双子の息子、愛犬ハリーとともに暮らす。著書に『兄の終い』、『全員悪人』、『家族』、『犬ニモマケズ』、『本を読んだら散歩に行こう』など。訳書に『家がぐちゃぐちゃでいつも余裕がないあなたでも片づく方法』(KC デイビス著)、『エデュケーション』(タラ・ウェストーバー著)、『ゼロからトースターを作ってみた結果』(トーマス・トウェイツ著)、『黄金州の殺人鬼』(ミシェル・マクナマラ著)ほか多数。

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(翻訳家、エッセイスト 村井 理子)

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