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批判は増えているのに、動画再生数は減る一方…不登校YouTuber・ゆたぼんのために大人がやるべきこと

プレジデントオンライン / 2022年12月26日 15時15分

画像=YouTube「少年革命家ゆたぼんチャンネル」より

不登校YouTuber・ゆたぼんの言動を、ネットメディアがたびたびニュースにしている。コラムニストの木村隆志さんは「ネットメディアにとって好都合の存在のため、話題性は高い。だが、動画の再生数は落ち、収益モデルは限界にある。いまこそ、大人がサポートするべきときだ」という――。

■14歳のYouTuberの言動になぜ大人が反応するのか

今月12日に14歳の誕生日を迎えた不登校YouTuber・ゆたぼん。本来なら中学校に通っている年齢だが、“少年革命家”を名乗る彼は小学校3年生のときから「不登校の自由」「不登校は不幸じゃない」という主張を貫いている。

YouTubeの登録者数は15万人あまりで、SNSのフォロワーもツイッターが8000人、インスタグラムが6000人に満たないレベル。人気YouTuberやインフルエンサーと比べると明らかに少ないのだが、ネット記事の数では逆に上回っている。

「アンチが多いだけ」「炎上ビジネス」などの批判は多いが、それは的を射ている一方で、一部に過ぎないのかもしれない。なぜ、ゆたぼんはここまで記事になるのか。「嫌いなら放っておけばいい」のに、なぜわざわざ叩こうとするのか。

■ゆたぼんがネットで叩かれるワケ

それらを考える上で、まず踏まえておかなければいけないのは、ゆたぼんをめぐる記事やコメントに多数の論点が混在していること。

「不登校の捉え方」「親の子育てと教育」「子どもに稼がせること」「再生数を稼ぐための方法」「子どもへの誹謗中傷」など、さまざまな角度から記事やコメントが飛び交うことで、人気YouTuberやインフルエンサーと同等レベルの発信力や存在感を得ている。

その言動の是非はともかく、発信力や存在感を得るためのロジックとしては、すべてを否定しづらいのではないか。

■人気の動画は過去のモノばかり

前述したいずれの論点でも否定的なコメントが大半を占めているが、その言動を踏まえれば当然であるとともに、狙っているところもあるのだろう。

子どもだからこその無知や無謀、間違いや危うさは、そのまま批判に直結するし、さらに、そのまま発信するのではなく、あえて露悪的に演出している感は否めない。

YouTubeチャンネルの「人気の動画」を順番に見ていくと(※)、「【ロボットになるな!】不登校の天才YouTuber『麦わらのゆたぼん』」が556万回(4年前)、「不登校は不幸じゃない!」が346万回(4年前)、「【新聞載った!】ゴールデンウィーク終わっても学校行くな」が312万回(3年前)。

(※)登録者数や再生数は、2022年12月23日時点のものになります。

画像=YouTube「少年革命家ゆたぼんチャンネル」「【新聞載った!】ゴールデンウィーク終わっても学校行くな」より
画像=YouTube「少年革命家ゆたぼんチャンネル」「【新聞載った!】ゴールデンウィーク終わっても学校行くな」より

これらは3~4年前にアップされた動画であり、最初に読んでもらう名刺代わりのようなものだろう。

続いて、「【前編】パパが捕まりました」が232万回(2年前)、「【速報】ゆたぼんに彼女ができました!不登校でも彼女はできる!」が201万回(2年前)、「学校に行ってきました!」が195万回(3年前)、「【悲報】友達のへずまりゅうが逮捕されました」が149万回(2年前)、「卒業証書を破ってみた【プレゼント】」が143万回(1年前)、「校長室でひとり卒業式してきた」が142万回(1年前)、「金髪で学校行って先生とケンカした!」が140万回(2年前)と続いていく。

これらは1~2年前にアップされた動画であり、「捕まった」「彼女ができた」「逮捕された」「卒業証書を破った」「先生とケンカ」という刺激的な内容で100万回を超える再生数を得ている。つまり、これがメインコンテンツなのだろうが、不登校に関するものが少ないところが批判の一因かもしれない。

■露悪的な演出に慣れてしまった

ところがこの1年間をピックアップすると、再生数が10万回を超えた動画はわずかでベースラインは1万~4万回あたり。決して「人気YouTuber」とは言われない理由がここに表れている。

現在の上限は、「【ご報告】坊主にしました」が13万回(6カ月前)、「日本一周中止と返金について」が28万回(3カ月前)、「【緊急報告】日本一周できません」が19万回(1カ月前)、「【悲報】100万円は詐欺でした…」が20万回(1カ月前)など劇場型の動画。

ネット記事の力を借りてまれに10万回を超えるが、その減り幅は隠せないほど大きくなっている。

子どもならではの無知や無謀、間違いや危うさ、露悪的な演出に人々が慣れてしまったのか。ゆたぼんと父親への嫌悪感が慣れによって薄れ、関心がなくなりはじめているのではないか。

「フォロワーは少なくても大量のアンチを利用して広告収入につなげる」という活動スタイルの賞味期限が迫っているのかもしれない。

だからこそ「全国の不登校児童を支援する」という目的を掲げた日本一周は、これまでとは異なる角度のアプローチで関心を集めるチャンスだった。

ゆたぼんは「50人を超える不登校児童とふれ合った」と明かしているが、その成果は見えづらく、評価されていない。それどころか、「けっきょくこれまでと同じ劇場型動画を繰り返したほか、遊びの要素が濃い旅になった」という悪印象を与え、現状打破するチャンスを逸したように見える。

■注目されるが再生数が増えない皮肉

では、なぜ再生数が下がりながらも、発信力や存在感を保っているのか。

それは、ゆたぼんの動画を記事化するネットメディアによるところが大きい。PVを生命線にしているネットメディアは、「いかに多くの記事を、いかに早く、いかにインパクトをつけてアップできるか」に力を注いでいる編集部が多く、ゆたぼんは格好のターゲットとなる。

暗い部屋でノートパソコンを使う手元
写真=iStock.com/chrispecoraro
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/chrispecoraro

それまで芸能人のみに求められていた品行方正さをYouTuberにも求める風潮が広がり、彼らの言動は明らかに大人しくなった。芸能人も人気YouTuberも記事になるような言動をしなくなる中、子どもならではの無知や無謀、間違いや危うさ、露悪的な演出が変わらないゆたぼんをネットメディアが狙うのは自然な流れに見える。

さらに言えば、ネットメディアの編集者たちが「批判したくなる記事や、アンチが飛びつくような記事を書けばPVが上がりやすい」ことを知っていることが大きい。その意味で現在、ゆたぼん以上の発信数やアンチを持つ存在はいないのだろう。

ポジティブに捉えるのなら、「人から白い目で見られ、笑われることを恐れず、ピエロになり切れる」ことが評価されているのかもしれない。

ただこのところ、「ネットメディアの記事を見るだけで、ゆたぼんの動画を見ずに終わる」というケースが増え、再生数が伸びないのが皮肉なところ。本人はネットメディアの切り取り記事に複雑な心境なのではないか。

前述したように多数の論点を生み出しているため、すぐにゆたぼんの記事が消滅することはないだろう。しかし、批判を前提にした動画をアップしている以上、ゆたぼんの言動が健全な議論につながる可能性は見いだしづらい。

■大人のフォローがまだまだ必要

ゆたぼんは本当の意味で、全国の不登校児童に勇気や希望を与えられる存在になれるのか。

現在のような活動スタイルは、「歩みはじめたら後戻りできない」ものではなく、「いつか戻ってこなければいけない」ものに見える。ならば、そのタイミングはいつなのか。代わりにどんなものを見せていくのか。

まもなく義務教育を終える年齢になり、この先「少年」を名乗りづらくなっていくだろう。再生数が下がっている上に、重要な武器を失うだけに、それに代わるものを少しでも早く見せていきたいところだ。現在はボクシングに励んでいるようだが、さまざまな可能性がある14歳のゆたぼんには、やはり大人たちのフォローが必要ではないか。

14歳の誕生日パーティーには多くの大人たちが訪れていた。しかし、その中にゆたぼんの話や要望を聞くだけでなく、学びをうながす言葉をかけられる人がどれだけいたのか。ゆたぼんに乗っかって稼ごうとしているだけではないのか。その動画は、心配はしても、安心できそうなムードはない。

■14歳の少年に反応しすぎてはいけない

ゆたぼんを「ネット上でときどき見るだけ」のわれわれも、まだ14歳の言動にできるだけ反応をしないほうがいいだろう。

その考え方や言葉づかいなどに首をひねりたくなったとしても、過剰な批判はますます彼を露悪的な方向に歩ませるだけであり、まずは放っておいてあげることが導きになるのかもしれない。

彼が、本気で、全力で、全国の不登校児童に勇気や希望を与えられる存在を目指すことになったとき、応援できる世の中でありたいところだ。

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木村 隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者
テレビ、エンタメ、時事、人間関係を専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、2万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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(コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者 木村 隆志)

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