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「帰宅してソファでまったり」はむしろ疲れる…自律神経の名医が実践している"整う帰宅ルーティン"

プレジデントオンライン / 2022年12月27日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Toru Kimura

ストレスに悩まないためにはどうすればいいか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「ストレスをゼロにすることはできない。大切なのは乱れた自律神経をリカバリーできるよう、副交感神経の働きを高める方法を知っておくことだ」という――。

※本稿は加治ひとみ・小林弘幸『かぢ習慣 自律神経と腸活で「なりたい自分」に』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

■ストレスは必ずしも「悪」ではない

ペットや自然とふれあう、香りを楽しむ、などは、どれも自律神経を整える良い方法です。これらは、「ストレスをなくす」のでなく、「ストレスをやりすごす」習慣と言えるでしょう。

ストレスという概念を初めて提唱した生理学者のハンス・セリエ博士は、「ストレスは人生のスパイス」という言葉を残しました。適度なストレスは人間として成長するエンジンになります。

「荷が重いなぁ」と思っていたポジションに抜擢され、プレッシャーを感じながらもやり遂げたとき、大きな満足感と達成感を抱くことができますよね。

また、トップアスリートは、計り知れないプレッシャーを受けながら、そのストレスを力に変えてパフォーマンスをしています。

決して、ストレス=悪ではありません。でも、過剰なストレスは自律神経を乱してしまいます。また同時にホルモンへの影響もあります。

■自律神経を整える方法を知ることが大切

ストレスがかかると、コルチゾールが分泌されます。コルチゾールは代謝や免疫にかかわるホルモンで、体が“ほど良く”働くよう調整する役割を担っています。

ストレスを受けたときに分泌されるのも体を守るためですが、長い期間、過剰にコルチゾールが分泌されると、代謝や免疫のバランスが崩れてしまいます。また、脳細胞が破壊され、認知症やうつ病にかかりやすくなることも分かっています。

私たちの生活はストレスであふれています。暑い・寒いだってストレスですし、仕事や家事、育児などの苦労や不満、SNSで流れてくる不毛な言い争い……ストレスのもとをあげたら、きりがありません。

ストレスをゼロにすることはできません。だからこそ、ストレスがあっても、うまくやりすごし、自律神経を大きく乱さないようにする術を知ること。そして、乱れた自律神経を整える方法を知っておくことが大切なのです。

■他人の幸せそうな姿は自律神経の敵

日頃からSNSを使っている人は多いでしょう。単なる“ツール”として便利に使っているのであれば、何の問題もありません。

ただ一方で、SNSに心を乱されているのにやめられない。そんな依存状態になっている人もいるのではないでしょうか。

流行のスイーツや楽しい週末の様子をアップすれば、「いいね」がついて、簡単に自己顕示欲や承認欲求を満たすことができます。でも同時に、他の人の幸せそうな姿、素敵なライフスタイルを目にすれば、ねたむ気持ちが湧いてくるかもしれません。

「私ばっかり」「私なんか」と感じた瞬間、それは大きなストレスとなってあなたを傷つけます。人と比べてコンプレックスを抱くのも、逆に優越感に浸るのも健全ではありません。自律神経の観点からも、いいことはひとつもありません。

また、SNSでは、アルゴリズムによってあなたが興味関心を持つと判断された情報が次から次へと提供されますから、ずるずると見続けることになってしまいます。気づいたら日付が変わっていたなんて生活は、私からすると人生のムダづかいです。

ソーシャルメディアアプリ
写真=iStock.com/hapabapa
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/hapabapa

■使い方次第で、心を癒やすツールにもなる

もし嫌な気分になったら、その瞬間、スマホをバッグや引き出しに入れて視界から消してしまいましょう。

実は、私は2020年にインスタグラムを始めました。青空に浮かぶ白い雲や道端の小さな草花など、「きれいだな」「素敵だな」と心動かされたものをスマホで撮影。「自律神経を整える」というひと言だけ添えて投稿しています。

コメントや「いいね」の数はまったく気にしていません。目的は自分が感動した一瞬を記録して、あとで振り返れるようにするため。また、見知らぬ誰かと小さな幸せをシェアできれば素敵だなという思いもあります。

SNSも使い方次第。心を癒やすいい刺激にすることもできます。そんな使い方を探してもらえたらと思います。

■副交感神経を高める「ゆっくりな日常」

もし、あなたのストレスが上司のパワハラや、パートナーのモラハラなどによるものだとしたら、それはしかるべき手段で原因を取り除くべきだと思います。

でも、多くの場合、ストレスの原因だからといって、今ある環境をリセットすることは難しいでしょう。また、自分でコントロールできないことで心を乱されることも日々、あるものです。

必要なのは、ストレスをゆるやかに受けて、ダメージを小さくすること。そして、すぐに乱れた自律神経をリカバリーできるよう、副交感神経の働きを高めておくことです。

おすすめは、日常を「ゆっくり」と過ごすことです。時間に追われていると、それだけで交感神経は高まります。現代人は何かとせかせかしすぎです。急いだことで得られるアドバンテージなど、わずかなものなのに。

むしろ、気持ちが焦れば交感神経が高まり、呼吸が浅くなり、血流が乱れて、パフォーマンスは落ちていきます。仕事が山積みで慌てて仕上げたらミスが見つかり、気持ちが落ち込んで、他のこともうまくいかなくなる……なんて経験は、誰しもあるでしょう。

「急がば回れ」「急いてはことを仕損じる」「短気は損気」などといいますが、慌てれば慌てるほど、脳の働きは低下して、思考力も判断力も落ちてミスにつながります。ゆっくりとした行動を心がければ、心に余裕が生まれ、自律神経をいたずらに乱すことがなくなりますし、何かあったときも焦りや不安に心乱されずに対処できます。

私たち現代人は、そもそも交感神経が優位になりがちな生活を送っています。だからこそ、歩く、話す、歯を磨く、食事をするといった日常の動作をゆっくりと行うことを意識しましょう。呼吸が安定し、副交感神経を高めることができます。

自宅の椅子でリラックスしている若者
写真=iStock.com/Adene Sanchez
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Adene Sanchez

■帰宅してまったり、はむしろマイナス

みなさんは、1日の仕事を終え自宅に着いたらまず何をしますか? 帰宅して、「あ〜、疲れた〜」とソファに身を預けてとりあえずリラックス、という人もいるでしょう。

でも、これ、あまりおすすめしません。副交感神経が活発になってリラックスモードに入ってしまいます。「家に着いたのだから、リラックスできていいんじゃないの?」と思うかもしれません。でも、一度休んでしまうと、再び立ち上がって家事や明日の仕事の準備をする気力が湧かなくなります。

再び、交感神経を働かせるには時間がかかります。ソファでひと休みして、そのときは疲労感を減らせても、むしろ、だらだらとソファで過ごし、食事や就寝の時間が遅くなってしまうほうがマイナスです。

ソファで疲れている女性
写真=iStock.com/yellowpicturestudio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yellowpicturestudio

■30分間の「整う帰宅ルーティン」

私には「帰宅ルーティン」があります。「ただいま」と家に入ったら、まずは冷蔵庫からミネラルウォーターを出して、コップ1杯分をゴクリ。次に玄関に戻って、靴の汚れを拭き取ってシューズボックスにしまいます。スーツを着替えて、クローゼットにしまい、郵便物をチェックして、明日の仕事の準備――。

加治ひとみ・小林弘幸『かぢ習慣 自律神経と腸活で「なりたい自分」に』(扶桑社)
加治ひとみ・小林弘幸『かぢ習慣 自律神経と腸活で「なりたい自分」に』(扶桑社)

トータルで30分ほどかかりますが、「仕事モード」から「自分時間モード」へとスイッチングするために必要な時間だと考えています。モードを切り替えることで、少しずつ副交感神経を高めていくのです。

もうひとつ、1日の終わりの習慣があります。それは「3行日記」です。就寝前に「①今日失敗したこと」「②今日一番感動したこと」「③明日の目標」を1行ずつ、手書きで書き出すのです。

今日の失敗を振り返り、同じミスを繰り返さないよう反省をして、ネガティブな感情をリセット。心動いたことを記しながら、今日という日に感謝する。明日の目標を書いて、翌日の意識づけ。ポジティブな気持ちで1日を終えることができ、心が整い、自律神経の安定につながります。

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小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授
1960年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”としても有名。近著に『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム)、『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(日本文芸社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。

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(順天堂大学医学部教授 小林 弘幸)

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