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「高齢の親の愚痴にどう対応すべきか」三流は無視し、二流はアドバイスする、では一流は?

プレジデントオンライン / 2023年1月1日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/eclipse_images

身近な人の愚痴には、どう対応すればいいのか。コミュニケーション心理トレーナーの松橋良紀さんは「無視をするのは論外だが、親身になってアドバイスをすればいいわけではない。愚痴をこぼすのは、解決策を求めているからとは限らない」という――。(第2回)

※本稿は、松橋良紀『聞き方の一流、二流、三流』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

■「自分7:相手3」の割合で話している人は要注意

他人と会話するとき、相手と自分が話す割合は次の3つのうち、どれくらいが適切だと思いますか?

①相手:自分=3:7
②相手:自分=5:5
③相手:自分=7:3

いかがでしょう? 3つのうち、①を選んだ方は、残念ながらかなり話しすぎです。これを選ぶ人は自分が話している時間が長く、他人の話をあまり聞けません。人前で話すことが好きで、プレゼンが得意な人は、それはそれで素晴らしい特技ですが、1対1の関係になると話は別です。

相手にしてみれば、「この人、自分のことばかりで、私にはまったく興味がないんだな」となり、深い人間関係を築くまでにはいたりません。しゃべりすぎることの弊害はたくさんあります。営業であれば、話しすぎる人は契約が取れません。もし勢いで契約が取れてもキャンセルが多いです。管理職なら、部下との意思疎通が取れず、突然退職を言い出されます。

話を聞けない人には情報が集まらなくなり、自分の知らないことが増えていき、前触れもなくいきなり大きな問題が勃発したりします。問題なくうまくやっていたつもりの恋人やパートナーに突然フラれる人も、この傾向が強いです。家庭では、いつの間にか妻や子どもと心の距離ができて、厄介者扱いされるようになったり、突然に離婚を言い出されたりします。いずれも聞けない人に起こりがちなことです。

■相手に話させすぎても不安を感じさせてしまう

では②の5:5なら、対等な関係だからいいのでしょうか?

これだと二流です。「え? フィフティー・フィフティーでちょうど良い感じなんじゃないの?」と思う方も多いかもしれません。しかし、「人の話を聞く時間」と「自分が話す時間」では、時間の感覚がずいぶんと変わるものです。

交流会やパーティなどで、自己紹介タイムなどの体験はありませんか? 自分が話をしているときは、2分くらいだととても短く感じるのに、他人の2分はとても長く感じると思います。研究によると、相手5割・自分5割でも、「この人はよくしゃべる人だな」と感じる人が多いという結果が出ています。

一流は、自分が話す時間より、相手が話す時間を大切にします。相手の話す時間が7割で、自分の話す時間が3割。これがもっともいいバランスだという研究結果があります。たとえば相手が9割で自分が1割だと、相手にしてみれば、自分ばかり話しすぎていて、不安に感じる割合も多くなるというのです。相手に7割の時間をしゃべってもらえるだけの「聞く技術」を身につけている人が、本当の一流です。

・POINT
一流は、相手:自分=7:3で会話する
聞いている時間は長く感じ自分が話している時間は短く感じる

■「帰宅恐怖症」になってしまった男性の悩み

帰宅恐怖症の末、離婚の危機にいるBさんという男性が、セミナーに参加したことがあります。帰宅恐怖症とは、帰宅困難症、帰宅拒否症とも呼びます。

顔を手で覆って屋外に座っている男性
写真=iStock.com/Naoyuki Yamamoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Naoyuki Yamamoto

帰宅恐怖症の男性は、寄り道などして、妻や子どもが寝静まったタイミングで帰ります。Bさんが帰宅恐怖症になった原因は、仕事で疲れて帰っても、妻から育児やママ友の愚痴を聞かされるのがプレッシャーとのこと。「帰宅すると気が休まるどころかよけいに疲れてしまうから、遅くに帰るようになった」と力なくおっしゃいました。

そこでBさんは、残業を買って出たりして、よく会社に居残りをしていました。仕事が早く終わったときは、同僚を誘って飲みに行ったり、漫画喫茶で過ごしていたそうです。

その結果、妻から離婚届を突きつけられました。「妻と話し合った結果、いったんは離婚を回避できたけど、子どもがかわいいから離婚は嫌なんです」ということで、セミナーに参加されました。

私はBさんに、お願いしました。

「奥さんが愚痴を言い出したときに、どんな聞き方をしているのか、ちょっとやってみてください」

セミナーの実習で、他に参加している女性に妻役をやってもらい、いろんな愚痴を言ってもらいました。するとBさんは一つ一つの愚痴に対して、「なるほど、だったらこうしたら?」などと、改善策やアドバイスを入れ始めたのです。「なるほど、Bさん、その聞き方をしていたら疲れるはずですよ」Bさんは、明らかに「アドバイス病」を患っている人でした。

■アドバイスよりも深い共感のほうが重要

アドバイス病とは、私の造語ですが、聞けない人の典型的なパターンの一つです。アドバイス病の人はたいてい問題回避型で、解決能力が高いです。ミスは少ないし、仕事の面ではとても有能さを発揮します。でもそれをパートナーとの会話に持ち込んでしまうと、コミュニケーション不全の夫婦となってしまいます。そうして、家庭不和、仮面夫婦、離婚につながります。

問題解決力の高い男性は、ストレスがたまったら自分の殻にこもってゲームをするなどの趣味に没頭します。そうして自分のストレスを解消します。ですから自分が悩みや問題を口にするときは、アドバイスを求めているときだけです。しかし、多くの女性にとっては、心にたまっていることを吐き出すことがストレス解消です。アドバイスが欲しくて話しているわけではありません。愚痴をただただ聞いて、共感をしてほしいのです。

男性の手を握る女性の手
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

それなのに、アドバイスや解決方法を提案されると、「私のことを大事にしていない」と感じてしまうのです。一流は、アドバイスをして解決案を提示するのは、よけいなことだと知っています。じっくり話を聞いて共感をする。そうすることで、一流は、家庭もプライベートも円満な関係を築きます。

・POINT
一流は、悩みを解決しなくてもいいことを知っている
悩みや愚痴を聞くときには、問題解決能力を封印して聞こう

■なぜ高齢になると愚痴が止まらなくなってしまうのか

40代以上の女性からの相談で多いのが、「高齢の親と会うと、ずっと愚痴を聞かされたり、ネガティブなことばかり話しているので嫌になる」という悩みです。

なんとか愚痴をやめさせようとして、「愚痴を言うのはやめて!」と伝えても、改善につながらない。かといって、話している悩みを解決してあげようとしていろいろアドバイスを与えても、まったく聞く耳を持たない。そもそもどうして、高齢になると愚痴が収まらなかったり、イライラして怒りっぽくなったりするのでしょうか?

脳の前頭葉には、怒りの感情を抑制する機能があります。この前頭葉は、高齢になると収縮してしまうため、判断力が落ちたり、感情を抑えることができなくなります。男性の場合だと、テストステロンという男性ホルモンの低下によって、精神面が不安定になることもあります。

女性の場合は、エストロゲンという女性ホルモンの低下によって、心身に不調が現れる人もいます。また、喪失体験も影響します。喪失体験というと、親しい人やペットを亡くした体験をイメージしますが、それだけでなく、自分の健康を失っていく悲しみも、怒りに転化されることがあります。

■スッキリしないから何度も同じ愚痴を繰り返す

65歳以上の3割に聴力障害があるといいます。会話がうまくできなくなるのも、聞こえにくいのが原因の一つです。視力も80歳だと1.0を維持している人は10%くらいといいます。見えにくいことでストレスが多くなります。このような不安などのストレスから、愚痴を言ったり、ネガティブなことを言いたくなります。

頭を抱えてソファに座っている高齢の男性
写真=iStock.com/kimberrywood
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kimberrywood

同じ愚痴を何度も何度も言っているとしたら、それは聞いてもらっていないと感じているのかもしれません。

松橋良紀『聞き方の一流、二流、三流』(明日香出版社)
松橋良紀『聞き方の一流、二流、三流』(明日香出版社)

「その愚痴は聞き飽きたよ。前向きにとらえたら?」と言われても、スッキリしていないのだから言いたりないのです。欲しい反応が得られないから、何度も何度も同じ話を繰り返すのです。そんなときは、一流の聞く技術の登場です。といっても、何かすごい技を使うわけではありません。しっかりペーシングをすることです。

そして、一切のアドバイスをせず、励ますようなこともせず、ひたすら親の目をみながら、聞いてください。そして、共感してあげてください。そうすることで、今まで同じ話をするのに30分かかっていたのが、5分で済むようになるかもしれません。親にとっては、「ああ、本気で自分の話に共感してもらえた」と感じた瞬間に、その話をする必要がなくなります。心の中に残っている未完了がクリアされると、心が軽くなります。

未完了を引き出して、スッキリさせるために、聞く技術をフル活用してください。

・POINT
一流は、本気で共感することで愚痴を終わらせる
何度も何度も同じ話をするのは「共感してほしい」というサイン

■三流は目に見えることをほめがち

多くの人は、ほめられることが大好きです。しかし、ほめ方によっては、相手に喜ばれません。三流は、次の例のように、目に見えることばかりをほめがちです。

【三流】Gさんは、どんなに忙しくてもいつもキチッとした身なりで出社するよね。そのカラーシャツも鮮やかですごく良いよ!
【相手】ありがとうございます(オシャレじゃないあなたに言われてもね)

見た目をほめるのは初対面の人なら、話を広げるきっかけになったり、潤滑油になります。しかし、よく知っている人間関係などでは、ちょっと浅いほめ方です。

また、オシャレに詳しい人がほめるならまだしも、こだわりを持ってなさそうな人からほめられても、うれしいと感じることはないでしょう。また最近では、男性上司が女性社員のルックスをほめると、セクハラと思われる可能性がありますから注意が必要です。

【二流】挨拶の声が、いつも大きくて爽やかだね~

このように、二流は相手の行動をほめます。しかし、このレベルでほめても、それほど喜ばない人も多いです。

■一流は「価値観レベル」でほめることで人を魅了する

●意識の5段階

NLP心理学では、人間の意識レベルを5つの段階に分類しています。

レベル1:環境レベル
レベル2:行動レベル
レベル3:能力レベル
レベル4:価値観レベル
レベル5:アイデンティティレベル

環境レベルでほめる場合、「家柄がいい」「住んでるところが素敵」「いい会社にお勤めですね」となります。行動レベルでほめるなら、「時間をきちんと守る人ですね」「挨拶がさわやかですね」となります。能力レベルでほめるなら、「仕事が早くてていねい」「精度が高い仕上がりですね」となります。ここまでは二流のほめ方です。

一流は、価値観レベルやアイデンティティレベルでほめます。

「あなたがみんなのために努力していることに感謝しているよ」
「思いやりにあふれた人だとホントに思う」
「あなたの、常に人に貢献しようとする姿勢が素晴らしい」

このように一流は、その人の価値観やアイディンティティなど、意識の上位レベルでほめます。そうして人を魅了し続けるのです。

・POINT
一流は、価値観やアイデンティティをほめる
人間性と精神性に目を向けて、意識の上位レベルをほめよう

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松橋 良紀(まつはし・よしのり)
コミュニケーション心理トレーナー
1964年生まれ。青森市出身。20代で営業マンを経験するが、強度の人見知りで人間関係が大の苦手なため、まったく売れず……。ところが30歳のとき、カウンセラー養成学校で心理学を学んだことで人生が激変。支店長となり社内研修講師として全営業所の全社員の営業研修を担当すると、1年で会社の売り上げが140%アップ。2007年にコミュニケーションが苦手な人、困っている営業パーソンのための協会を設立。著書はこれまでに30冊、累計40万部。『話し方で「成功する人」と「失敗する人」の習慣』(明日香出版社)、『「売れる営業」がやっていること 「売れない営業」がやらかしていること』(大和書房)、『何を話せばいいのかわからない人のための雑談のルール』(中経の文庫)など著書多数。

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(コミュニケーション心理トレーナー 松橋 良紀)

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