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「日本のパワポ資料の4分の1は"忖度ページ"でできている」上司の顔を見て仕事する人ほど成功できないワケ

プレジデントオンライン / 2023年1月4日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/hxdbzxy

労働集約型ビジネスモデルの終焉を迎え、日本企業は大きな岐路に立たされている。変化の只中にある2023年、飛躍のチャンスをつかむビジネスパーソンの条件とは。人事評価「トップ5%」社員、のべ2万人の言動データを5年にわたり収集・分析したクロスリバー代表の越川慎司さんは「自律型人材になることが最低条件。そのうえで『学ぶ技術』と『セルフDCA』が非常に重要になります」という──。(第5回/全5回)

■DAO(分散型自律組織)という潮流

DAO(ダオ)という言葉を聞いたことはありませんか? これは、次の3つの言葉の頭文字を取った略称です。

DAO=Decentralized Autonomous Organization

最初のDはDecentralized(ディセントラライズド)で、中央集権ではなく、全員フラットな関係性であることを意味しています。AはAutonomous(オートノマス)、つまり自主的、自律的を表しています。そして、OはOrganization(オーガナイゼーション)で、組織を意味しています。

日本語にすると、DAO=分散型自立組織のこと。

■「自分で考えて動く組織」と「自律型人材」

2023年は、企業において「自走する組織」を求める動きが加速します。

世の中の変化が激しいなか、その変化を即座に感じ取ることができるのは現場の社員です。ですから、現場に裁量権(自由と責任)を与えて、「自分で考えて動く組織」を作らざるをえないという環境の変化がその背景にあります。

こうした自走する組織を構成するのが「自律型人材」です。したがって、2023年は自律型人材を求める企業が急増することになります。

この大きな流れに乗り遅れないよう、準備をしないといけません。そのなかで、大きく次の2つの点を意識することが必要です。

■①自分で何を学ぶか決めて、学び始める

2023年は「自発的に学習して基礎能力を身に付けた者」と「受け身の姿勢で自ら学ばなかった者」の二極化が進みます。

前者の自発的人材は、自らの基礎能力を実際の業務で活用して成果を残し、かつ副業やNPOなど社外においても活躍の場を広げていきます。自発的に学習し、成長スピードも速い人材として、社内外で引く手あまたの存在となり脚光を浴びるでしょう。

業務を行ううえでの最低限のスキルは企業研修を通して提供されますが、それ以外の能力は、従業員が率先して自ら学習していく形式に変わっていきます。そのため自発的に学習して成果を残し、社内外で活躍の場を広げ、自分の意志で働き方や働く場所を選ぶことのできる人材が増えていきます。

たとえ20代の若手であっても、「待ち」の姿勢でいたら成長することはできません。「自分から率先して学ぶ」という姿勢が求められます。会社の研修を仕方なく受けるのではなく、自分から率先してスキルを磨いていくのです。

2023年は、オンライン講座やYouTube、読書やセミナー参加などによって自分の能力自分自身で高めていくアクションがいっそう必要不可欠なものになるでしょう。

■②「セルフDCA」を回す

過去を否定することなく前向きに振り返る「内省」を習慣にすれば、思考で行動を変えることができ、行動を変えると成果が出るようになります。

この思考法を身に付ければ、いわゆるPDCA(Plan・Do・Check・Action)は必要なく、ひたすら行動(Do)とチェック(Check)を繰り返すことができます。

深く考えずにやみくもにプランニングに時間をかけても、成功確率は上がりません。事実、クロスリバーが行った39社の行動実験で「備えれば備えるほど行動しにくくなる」という傾向があることがわかっています。

正しい思考を持っていれば正しい仮説を立てることができます。そのため、Pにかける時間は最小限で済むようになります。Pに時間をかけるよりも、迅速に行動(A)に移し、チェック(C)と修正(A)のサイクルを早く回すことで、成功に近づくことができます。

■何も行動しないことは退化を意味する

まず試しにやってみて、良ければ続けて、悪ければ修正するかあきらめる。このシンプルなルールで試行と検証の行動実験を繰り返します。

この行動実験は、成功を目指すのではなく、実験すること自体を目的とし、必ずチェックポイントを設けて修正点を見出します。修正すべき点がわかれば、次の行動に活かすことができ、成功に近づいていきます。

越川慎司『29歳の教科書』(プレジデント社)
越川慎司『29歳の教科書』(プレジデント社)

漫然と散歩していたら富士山の頂上にたどり着くことはありません。登頂の途中で自分の位置を確認し、間違ったルートであれば引き返し、正しいルートであればそのまま進むことが必要です。

そして、チェックポイントを設けたときに、必ず「だめだったらやめる」という選択肢を設けることが大切です。「やめる」という選択肢が事前に用意されていれば、気軽に挑戦しやすくなります。

変化が激しく不確実な時代においては、何も行動しないことは退化を意味します。周りが進化して自分が取り残されれば相対的な退化です。ですから行動量が重要です。

動く→気づく→変わる、「セルフDCA」をより多く回すことがこれからの成功のコツ
画像=筆者提供
動く→気づく→変わる、「セルフDCA」をより多く回すことがこれからの成功のコツ - 画像=筆者提供

できる限りPを小さくしてDCAを自ら回していきましょう。このような「セルフDCA」のサイクルより多く回していくことで、進化が加速します。

■「不安」はチャンス

総論としてはわかる。しかし、現実的に考えると、そんな観念論ではどうしたらいいかがわからない──そんな声も聞こえてきそうです。もう少し身近で、具体的な話に落とし込んで考えてみましょう。

いわゆる「働き方改革」が進んだ結果として、「残業するな、でも成果は出せ!」と上司に言われるようになり、自宅やカフェで「隠れ残業」が蔓延するようになりました。

少子高齢化で人手不足が続き、コロナ対策で行動が抑制されるなかで、成果を求められています。

このような厳しい環境でも、残業をせずに、成果を出し続けている社員が各社にいます。これが「トップ5%社員」です。5%社員にヒアリングを行ったところ、「20代は不安だった」「不安を感じるのはむしろチャンス」と発言する人が多かったのです。

■「安定」とは「慢心」の証拠

その理由は大きく2つありました。

1つ目は、前を向いている証拠であること。過去に向けて後悔をしているのではなく、意識が将来に向いているときに感じるのが「不安」だと言っていました。

ある小売業のトップ5%社員は、「将来に向けて不安を感じるから、備えようと考えて行動を変える」と言って自己学習に励んでいました。

製造業の5%社員は、「安定を口にする会社や組織にロクなところはない。慢心している証拠」と低迷するライバル企業を指して発言してくれました。

■不安になるのは「挑戦」をしているから

「不安がチャンス」である2つ目の理由は、新たな挑戦をしようとしたときに人間心理に起こる感情が「不安」であるからです。

やったことのないアクションに挑戦するのは「不安」です。そもそも新たな挑戦には、必ずデメリットが存在します。失敗してしまうリスク、過去の仕事を止める覚悟、ストレスを感じる恐怖……などがあります。

しかし、「変化が激しく不確実な時代では、動かずに何もしないことが最大のリスクである」と通信業の5%リーダーが発言してくれました。デメリットよりもメリットが大きければ、挑戦をしないといけない状況、それが「いま」です。

未来を見つめ、新たな挑戦をするときに「不安」を感じる。挑戦の先に「成功」がある。だからこそ「不安はチャンス」なのです。

■思い込みと妄想で残業が増える

クロスリバーでは、800社超で作成された約5万ファイルのパワポ資料とその使われ方を調査しました。すると24%のページが上司や顧客に対する過剰な気遣いで作成されていたことが判明しました。いわゆる「忖度(そんたく)ページ」です。

「忖度ページ」を追跡したところ、約8割が使用されていませんでした。作成者と受け取り側の認識ギャップによって「差し戻し」が増え、“残業沼”へとつながることも判明しました。

作成している当人にとっては、「この情報があれば怒られないだろう」とか、「こんな質問があるかもしれないから資料に入れておいたほうがいいだろう」とか、「PowerPointで綺麗な資料を作成できることをアピールしたほうがいいだろう」などと、いろいろな思惑に基づき、「よかれ」と思って資料を作るのです。

しかし、その「忖度」は、はっきり言って「妄想」の類でしかありません。

妄想のまま資料を作ってしまうので、頑張っているのに成果が出ないのです。重要“そうな”内容、必要“そうな”内容と、「そうな」を全部カバーしようとしたら、「忖度ページ」が増えるばかりで時間が足らなくなり、やはり残業沼にハマるだけです。

会議を持つビジネスシーン
写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bee32

■ジョブ型雇用は若手社員に不利

2019年の労働基準法の改正、いわゆる働き方改革関連法の施行によって、残業抑制プレッシャーが年々高まっています。かつては、努力や徹夜などのプロセスを評価されていた時代もありました。しかし、今は成果主義が浸透し、欧米型のジョブ型雇用を採用する企業も増加しています。

しかし、ジョブ型雇用は若手社員に不利です。

少子高齢化は加速し、人手不足は深刻な状態になります。短期的な業績を追いかける企業にとっては、時間をかけて社員を教育するのではなく、即戦力人材を社外から引き抜いたり、プロ人材を業務委託として採用したりする傾向が顕著になります。

若手社員にとっては、教育機会が減っていくのにアウトプットを評価されることになります。これまで時間とお金をかけて育成されてきた30代・40代の先輩たちと同じ基準で評価されるのです。

さらに、ジョブ型雇用で職責が明確になることで、職場の先輩が助けてくれなくなるでしょう。成果に対する評価がエスカレートして、先輩がライバルになることもありえます。

■崩壊した「経済成長時代の幸せのストーリー」

1970年代から1990年代の経済成長期は、長い時間かけてスキルを習得して、それで一生食べていくことができました。20代の若いうちは職場の師匠の言うことを聞いて、ただひたすら頑張っていれば一人前になれるパターンです。

若いうちはスキル習得に専念し、会社に忠誠心を誓っていれば給与は年々上がって60歳定年までクビになることはない。定年退職したら多額の退職金をもらって悠々自適に隠居生活を過ごすことができる──これがかつての「幸せのストーリー」でした。

しかし、今ではもうそのストーリーは雲散霧消しました。悠長に時間をかけてスキルを磨いていたら、激しい変化に対応できません。

■2025年の「ビッグバン」に備えよ

このようなビジネス環境下に置いて、前述したように、2023年からはDAOに代表される「自律型組織」であり、「自律型人材」が求められる動きが強まります。

私は「Web3の働き方」が広まることで、2025年にはさらに「ビッグバン」ともいえる大変化がやってくると見ています。厳しさもありますが、その先には想像もしなかった面白い世界が広がっています。

繰り返しますが、不安はチャンスです。変化の時代を生きるためのマインドセットと必要なスキルについては、拙著『29歳の教科書』に詳しくまとめています。こちらも参照いただきながら、新しい年に、大胆に挑戦し、望む未来を切り開いていただくことを切に願っています。

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越川 慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー代表
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。

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(株式会社クロスリバー代表 越川 慎司)

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