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世界一ビタミンKを含む「納豆」が身近だから…欧米人に比べて日本人女性の更年期症状が少ないワケ

プレジデントオンライン / 2022年12月29日 19時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kaorinne

健康でいるためには、どんな食生活が望ましいのか。愛媛大学医学部附属病院 抗加齢・予防医療センター長の伊賀瀬道也さんは「大豆食品は老化防止に効果が期待できる。なかでも納豆はビタミンKが豊富に含まれており、骨粗しょう症で骨折するリスクを下げてくれる」という――。

※本稿は、伊賀瀬道也『100歳まで生きるための習慣100選』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

■欧米人に比べて日本人女性の更年期症状が少ないワケ

老化のスピードを抑えるのに有効な食品として、まずオススメしたいのが、豆腐、納豆、油あげ、大豆の水煮などの大豆食品です。大豆の水煮は、缶詰でも売られています。

大豆に含まれているイソフラボンという成分は、女性ホルモンのエストロゲンと非常に似た構造をしています。そのため、女性ホルモンと似た働きをし、女性の更年期症状を抑えたり、骨粗しょう症の予防になったりするのです。

日本人女性は欧米人女性に比べて、「顔がほてる」「のぼせる」「汗が出る」といった更年期症状が少ないといわれています。その一因は、日常的に大豆食品を食べることが欧米人よりも多いからだと推測できます。更年期症状にお悩みの方は、大豆食品を食べているか見直してみてください。

また、多くの研究によって、イソフラボンは血管の弾力性を保つ機能を改善し、血管の老化を防ぐことが証明されています。悪玉コレステロールや中性脂肪を減らす働きもあり、メタボリックドミノの進行を止める大きな役割を果たすことは間違いありません。

イソフラボンで血管の弾力性が改善する
出典=『100歳まで生きるための習慣100選』(飛鳥新社)より

■イソフラボン以上に老化防止作用が期待される「エクオール」

大豆のすごさはこれだけではありません。最近の研究から、イソフラボンから分解されてできる「エクオール」という物質が、イソフラボン以上に健康に良いことが判明したのです。

エクオールは、イソフラボンの中のダイゼインという物質から、腸内細菌による酵素の働きで作られる物質です。イソフラボンと同じく、更年期症状や骨代謝の改善、閉経後における女性のメタボリック症候群の予防、肌の老化の抑止などに関わっていますが、エクオールの作用は、通常のイソフラボンの何倍もあるといわれています。まさに、アンチエイジングの救世主としてエクオールは注目されているのです。

ただ残念なことに、エクオールはすべての人が作り出せるわけではないのです。腸内細菌は、個々人がそれぞれ100種類以上を持っていますが、誰もが同じ種類を持っているわけではありません。どんな腸内細菌を持つかは、生まれたときの環境や親から受け継がれることで、誕生後すぐに決まります。

エクオールを作り出す腸内細菌はわかっているだけで約15種類ありますが、これらの腸内細菌を持っていない人は、イソフラボンを摂取してもエクオールが作られないのです。

■体内でエクオールを生成できる人は血管年齢が10歳若い

日本人はエクオールを作り出せる人と作り出せない人は、1対1だといわれています。私は抗加齢ドックの受診者152名(男性61人、女性91人、平均年齢69歳)に協力してもらい、尿からエクオールの含有量を測定しました。すると、60人がエクオールを持っていることが判明しました。割合にして約4割です。やはり、日本人の約2人に1人程度がエクオールを作り出せると考えられます。

その検査では、その他にも驚きの事実がわかりました。エクオールを作れる人は、エクオールを作れない人に比べて、血管年齢が10歳も若かったのです。また、認知機能検査の点数が高いことも明らかになりました。

■大豆食品を日常的に取り入れることが重要

クオールを作れるか否かは、病院や市販の尿検査キットでも調べることができます。仮にエクオールが作れないとわかっても、悲観することはありません。私が調べたところ、エクオールが作れないという評価の中にも、「エクオール産生菌はまったくのゼロではない」という人がたくさんいました。

お酒を飲み続けるとだんだん飲めるようになってくるのと同じように、大豆食品を日常的に取り入れていくことで、しだいにエクオールを作れる体になる可能性は十分にあります。

仮にエクオールが作れなくても、イソフラボンそのものが健康に良いことには変わりませんので、継続的に大豆食品を摂っていきましょう。昨今は大豆を原料としたエクオールのサプリメントも発売されていますので、試してみるのもよいでしょう。

「イソフラボンは女性ホルモンの代わりになる」という点から、大豆食品は女性向けなのかと思った方もいるでしょう。

そんなことはありません。男性の老化現象を食い止めるのにも、大豆食品は非常に効果的なのです。

大豆から作られた日本のビーガン食品には、納豆、味噌、豆腐、醤油、もやしなど多く含まれます。
写真=iStock.com/Yuuji
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yuuji

■男性もイソフラボンを摂ったほうがいい

60歳以上の男性の2人に1人は、前立腺肥大症になります。残尿感がある、夜中に尿意で起きる、尿意があるのになかなか出ない、というつらい症状です。

実はイソフラボンには、前立腺肥大の予防効果があると期待されているのです。

前立腺が肥大する仕組みには、男性ホルモンのテストステロンが関係しています。テストステロンは前立腺の内部でジヒドロテストステロン(DHT)と呼ばれるホルモンに変換されます。DHTは生殖器の発達に関わる必要なホルモンですが、こと中年以降の男性にとっては「薄毛(AGA)」や「皮脂分泌」や「前立腺肥大」を引き起こす、やっかいなホルモンなのです。

なんとイソフラボンには、DHTの働きを抑える効果があります。

それもそのはずで、イソフラボンは女性ホルモンの代わりになる働きをするので、その作用によって男性ホルモンDHTの働きを抑えることができるわけです。

中年期以降の男性も、積極的に大豆食品を食べることをオススメします。

このように、大豆食品は男女ともに老化抑止に役立ちます。ただし、婦人系のがんで抗がん剤治療を受けている女性や、前立腺がんが進行している男性には逆効果になる可能性もあります。その点は注意するようにしてください。

■骨粗しょう症や骨折のリスクを下げるビタミンK

伊賀瀬道也『100歳まで生きるための習慣100選』(飛鳥新社)
伊賀瀬道也『100歳まで生きるための習慣100選』(飛鳥新社)

大豆食品の中でも、特に納豆はオススメです。納豆にはビタミンKが豊富に含まれています。昨今の研究で、ビタミンKは、骨粗しょう症や骨折のリスクを下げることがわかってきました。

2008年に、日本の12地域で、大腿骨近位部骨折発生率と4つの栄養素(カルシウム、マグネシウム、ビタミンD、ビタミンK)の摂取量との関連を分析する研究がされました。それによると、最も関連が深かった栄養は、ビタミンKであることがわかりました。

そして興味深いことに、東日本のほうが西日本に比べて、骨折の発生率が低いことが判明したのです。詳細な因果関係は不明ですが、納豆の摂取量は東日本のほうが多いことを考慮すると、納豆を食べる人のほうが骨折しにくいと考えられます。

■納豆1日1パックで1日あたり摂取量目安が摂れる

実際、閉経後の1万7699人を対象にした約15年にわたる調査では、納豆摂取量が1週間に1パック未満の人たちと比べると、1~6パックの人たち、7パック以上の人たちは、摂取量が増えるにしたがって骨粗しょう症で骨折するリスクが下がることが報告されています。

ビタミンKは、骨を守る以外にも、動脈硬化を予防したり、糖尿病リスクを下げたり、循環器疾患や前立腺がんによる死亡リスクを下げたりと、さまざまな健康効果があります。もちろん、納豆にはイソフラボンの健康効果も期待できます。

納豆は、世界一ビタミンKを含んでいる食品です。1パック食べるだけで、1日あたりの摂取目安量を摂れます。苦手ではない人は、ぜひ毎日食べるようにしましょう。

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伊賀瀬 道也(いがせ・みちや)
愛媛大学医学部附属病院 抗加齢・予防医療センター長
1964年愛媛県生まれ。1991年、愛媛大学医学部卒業後に第二内科(循環器)に入局。2019年4月より現職。2006年に抗加齢センター(現・抗加齢・予防医療センター)を開設。『血圧がみるみる下がる! 8秒ジャンプ』(文響社)、『1分 ゆるジャンプ・ダイエット』(冬樹舎)などの著書のほか、メディア出演も多数。

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(愛媛大学医学部附属病院 抗加齢・予防医療センター長 伊賀瀬 道也)

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