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「高齢ドライバーは事故率が高い」というデータはない…抗老化の専門医が「免許返納は早まるな」と説くワケ

プレジデントオンライン / 2023年1月2日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Rike_

高齢ドライバーは運転免許を返納したほうがいいのだろうか。愛媛大学医学部附属病院 抗加齢・予防医療センター長の伊賀瀬道也さんは「65歳以上の高齢者による車の事故率が、他の世代と比べて特別に高いわけではない。運転をやめた人は続けた人より要介護リスクが2倍高くなるという研究結果も出ており、脳機能や運転能力が落ちないうちはなるべく続けたほうがいい」という――。

※本稿は、伊賀瀬道也『100歳まで生きるための習慣100選』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

■「高齢者の運転する車は事故率が高い」というデータは存在しない

高齢者になると、家族から運転免許の自主返納を促されることがあるでしょう。昨今、高齢者の運転は危険だという風潮が広がっているからです。

本当にそうなのでしょうか。あまり知られていないのですが、「65歳以上の高齢者による車の事故率が、他の世代に比べて特別高い」というデータは、今のところ出てきていません。

少し特殊な例かもしれませんが、ご高齢にもかかわらずアクティブに運転をされている方を一人紹介しましょう。

日本のレース黎明期ともいえる1960~1970年代に、国内トップカテゴリーで活躍したレーシングドライバーを総称して「レジェンドドライバー」と呼ぶのですが、彼らのつくった「レジェンドレーシングドライバーズクラブ」のお一人に武智勇三さんがいます。かつてダイハツのワークスドライバーとして活躍されました。

武智さんとは、私も友人としてお付き合いしていますが、80歳を超えた現在も本当にお元気で、ドイツ製のスポーツカーを運転されています。武智さんを含めたレジェンドドライバーのみなさんは、すでに平均年齢が75歳を超えているにもかかわらず、一年に一度「富士スピードウェイ」に集い、最高速度200km/hでの激しいバトルを見せてくれているのです。

■車の運転をやめた人が要介護になるリスクは2.09倍

このように、高齢になったからといって、即座に免許を返納する必要はないと私は思います。特に地方在住の高齢者(特に男性)は、運転免許を取得していて、自分で車を運転して行きたいところに行けるということが、1つのアイデンティティー(自分の存在証明)と考える方も多いと思います。

これまで外出の際に車を運転していた人は、免許を返納してしまうと外出の機会が極端に減ってしまうため、活動範囲が極端に狭まります。その結果、交友範囲が狭くなったり、運動量が減ったりして、数年のうちに介護が必要になったり、認知症になったりしてしまう人が少なくないのです。

実際、筑波大学の研究チームが、65歳以上の男女2800人を10年にわたって追跡調査したところ、車の運転をやめた人は、運転を続けた人に比べて、要介護になるリスクが2.09倍になったということです。車の運転をやめたことで、活動量が落ち、意欲も筋力も体力も減退してしまったと考えられます。

■免許返納の時期は家族と相談して決めておく

車の運転は脳機能や反射神経のトレーニングになりますし、買い物先のスーパーやショッピングモールを歩いたりすることは運動にもなります。友だちに会って楽しく話せば、それだけで認知症予防になります。

ただし、返納する時期については家族と相談して決めておきましょう。1年に1回は、運転能力に問題がないか、家族に同乗してもらい確かめてもらえば安心です。

ちなみに75歳以上の後期高齢者の場合には、認知機能検査に合格し、運転適性検査や実車指導を含む高齢者講習を受けなければ、免許更新手続きはできません。

少しでも長い間、安全な運転を続けていくためには、脳機能や運動能力を落とさないことが必要です。今のうちから健康的な生活を心がけておきましょう。

それでも、いつか免許を返納する日が来るかもしれません。でも、大丈夫です。運転ができなくなっても、他の健康習慣は十分に実践可能です。できることをコツコツと、楽しんでやってみてください。

■長野県民の平均寿命の長さは有業率の高さと関係している

2015年の都道府県別生命表によると、長野県民の平均寿命は、女性が87.67歳で全国第1位、男性が81.75歳で第2位でした。1990年以降、長野県は男女ともに全国1位を何度も記録しています。

この状況を受け、長野県は長寿の理由を分析したところ、「県民の高い就業意欲や積極的な社会参加」「地域において医療保険活動が活発に行われたこと」「健康ボランティア活動が活発であること」などを挙げています。

確かに長野県は、65歳以上の高齢者の有業率は男性が41.6%で全国1位、女性が21.6%で1位です。このことと長野県民の長寿は関係があると思います。

なぜなら、働くことはフレイル予防にはもってこいだからです。家から出るので足腰が鍛えられて「身体的フレイル」の予防になります。仕事仲間と会話をしたり、何か楽しみを見つけられれば「精神・心理的フレイル」や「社会的フレイル」からも遠ざかることができます。脳も使うので、認知症予防にもなるでしょう。

体がまだ元気ならば、定年を迎えたからといって家の中に引きこもるのはもったいないと思います。たとえアルバイトやパートであっても、外に出て働くほうが、さまざまな面で健康長寿に寄与するといえるでしょう。

もちろん、必ずしも仕事として働く必要はありません。地域のボランティア活動に参加するもよし、趣味のサークルに積極的に参加するもよし。外に出てやりたいことを思う存分やるのが、長寿のヒケツなのです。人生100年時代、60代70代で隠居なんて、早すぎると思いませんか?

■「部屋の片付けが億劫」そんなところから老化は進んでいく

部屋の片づけが億劫で、モノがあふれかえっている人はいませんか? 私は何千人ものご高齢の患者さんと接してきましたが、うつ症状があったり、認知機能が低下したりしている人は、部屋の片づけやお化粧といった、それまで当たり前にできていたことができなくなっていく傾向にあります。

部屋は不要な服でいっぱいです。
写真=iStock.com/Yusuke Ide
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yusuke Ide

老化と一言で言っても、さまざまな側面があります。筋肉や骨が衰えていく「身体的フレイル」に、気力ややる気がなくなっていく「精神・心理的フレイル」、閉じこもりや独居などの「社会的フレイル」など……、複数の要素が絡み合って老化は進行していきます。

部屋の片づけが億劫になるのは、このうち精神・心理的フレイルが進行している状態です。しかし、動かない生活で足腰が弱れば身体的フレイルも、そして部屋の中に引きこもってしまえば社会的フレイルも、同時に進行してしまいかねません。

■不要なものを一気に捨てると気持ちが若返る

高齢者の中には、孤独死する人が年々増えています。ニッセイ基礎研究所の調査によると、65歳以上の孤独死者数は年間2万6000人と推計しています。中にはモノやゴミにあふれた部屋で亡くなっていく人が少なくないそうです。

これまでできていた片づけや掃除が億劫になってきたら、「フレイルの兆候だ」と気づき、健康のための運動というつもりで部屋の掃除を始めましょう。オススメは「不要なモノを一気に捨てる」ことです。部屋がスッキリ片づくと、心までスッキリしてきて、本当に大切なものが見えてきます。

このように、片づけは元気に100歳まで生きることに直結しています。部屋がきれいである限り、長生きできるのだと考えれば、やる気が起きるはずです。

■健康でいるためにきれいな空気を絶えず取り込む

人間が生きていくために、外から取り入れているものは、まず食料と水です。そして、もう1つ忘れてはならないのが「空気」です。体内に入るすべての物質を合わせた総重量の中で、空気が占める割合は8割を超えます。

伊賀瀬道也『100歳まで生きるための習慣100選』(飛鳥新社)
伊賀瀬道也『100歳まで生きるための習慣100選』(飛鳥新社)

つまり、「健康に悪い空気」を吸っていると、健康を害してしまうといえます。代表的な「健康に悪い空気」といえば、大気汚染の原因であるPM2.5や黄砂が思い浮かびます。PM2.5や黄砂の量が多いという報道があったときは外出を控えるか、マスクの着用をして外出をしたほうがいいでしょう。

また、部屋をきれいに保ち、定期的に換気をすることも大切です。特にガスで調理をしている家では、大量の窒素酸化物や硫黄化合物といった有害物質が発生しています。定期的に換気をして、空気の入れ替えをしましょう。

これは、石油ストーブなどの燃焼型の暖房器具も同様です。IH型のコンロや、電気ストーブなどに変更して、ガスを使わない生活をするのもよいでしょう。

部屋はモノを片づけるだけでなく、掃除もきちんと行うのが望ましいです。特に床が汚れていると、部屋の空気まで汚れてしまいます。私たちは床から上昇してくる空気の50%を体内に取り込んでいます。寝た状態だと70%以上です。

部屋の清潔感を保つと同時に、空気清浄機を利用してもいいでしょう。オススメは活性炭やセラミックで化学物質を吸い取るタイプの吸着型です。あるいは、空気清浄機代わりに備長炭を部屋に置くのも効果的です。備長炭は、1カ月程度で洗って乾燥させれば長く使い続けることができます。空気の汚れが気になる方は、ぜひ試してみてください。

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伊賀瀬 道也(いがせ・みちや)
愛媛大学医学部附属病院 抗加齢・予防医療センター長
1964年愛媛県生まれ。1991年、愛媛大学医学部卒業後に第二内科(循環器)に入局。2019年4月より現職。2006年に抗加齢センター(現・抗加齢・予防医療センター)を開設。『血圧がみるみる下がる! 8秒ジャンプ』(文響社)、『1分 ゆるジャンプ・ダイエット』(冬樹舎)などの著書のほか、メディア出演も多数。

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(愛媛大学医学部附属病院 抗加齢・予防医療センター長 伊賀瀬 道也)

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