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「イーロン・マスクは幼い頃から母の会社の敏腕IT担当だった」世界の億万長者が親から受けた凄いマネー教育

プレジデントオンライン / 2023年1月5日 11時15分

出所=『プレジデントFamily2023年冬号』

起業家、実業家であり、慈善家であることも多い、世界トップの資産家たち。イーロン・マスク、ビル・ゲイツ、ウォーレン・バフェットは子供時代に親から何を教えられ、学んだのか。巨万の富を得たヒントを伝記や資料から探ると、幼い頃から“稼ぐ”経験をしていた――。

※本稿は、『プレジデントFamily2023年冬号』の一部を再編集したものです。

■【第1位 イーロン・マスク】

8歳から、母の経営するスクールでIT担当

フォーブス誌の世界長者番付(2022年4月発表)で初の首位に立ったのは、ツイッター社の買収で話題の米電気自動車(EV)メーカー・テスラ最高経営責任者(CEO)イーロン・マスクで、推定総資産は2190億ドル(約33兆円)。

※フォーブスは2022年12月7日に同氏の資産を1849億ドル(約25兆円)と算定。

格安賃貸オフィスの一室で起業したオンラインコンテンツ会社を皮切りに、PayPal、スペースX、テスラを次々に成功させ、世界一の大富豪にまで上り詰めたマスクだが、その生い立ちは決して恵まれたものではなかった。3人きょうだいの長男として南アフリカに生まれ、8歳で両親の離婚を経験。

キーボード
写真=iStock.com/shironosov
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/shironosov

31歳で3人の子供を抱えるシングルマザーとなったモデル出身の母親、メイ・マスクは、CNBC Make It(※)に寄稿した子育て方針のエッセイで、希代の起業家を育てた秘訣(ひけつ)を、「幼少期から働く経験をさせること」と明かしている。

(※)ビジネスやお金、成功体験の情報が得られるアメリカのウェブサイト。

自身も8歳の時に時給5セントで父親の経営するカイロプラクティッククリニックのチラシを郵送する仕事を始めたメイは、同じように3人の子供たちに幼い頃から自身が経営するモデルスクールや栄養コンサルタント業を手伝わせた。

■「子供たちも現実社会の責任から逃れる必要はない」

マスクは当時からテクノロジー分野に強かったため、IT担当としてワープロを使いこなし、長女のトスカは事務作業やモデルスクールの裏方の仕事を担当したという。そのかいあって、マスクのみならず、次男はレストラン経営者として、トスカは映画監督として、それぞれの道で成功を収めている。

『プレジデントFamily2023年冬号』(プレジデント社)
『プレジデントFamily2023年冬号』の特集は、「読解力」の家庭での伸ばし方。「文章を読める子が“新受験”を制す」「なぜ算数の“文章題”だと解けないのか」「食いっぱぐれないために大事なこと 自分で稼げる子にする!」などを掲載している。

「子供たちも現実社会の責任から逃れる必要はない」というメイの教育方針は、まさに生きる力を身につけるためのマネー教育の根幹をなしていると言えるだろう。「髪を振り乱して衣食住のために働かざるをえなかった」メイだが、自身の働く姿を示したことが子供たちの勤勉さと独立心を育み、大きな財産になったと語っている。

04年から4月を「Financial Literacy Month(マネー教育月間)」と定めて、国を挙げて子供たちのお金にまつわる意識を高める取り組みを続けているアメリカでも、「稼ぐ・貯める・使う・増やす」のうち、稼ぐこと、つまり勤勉に働いて報酬を得ることを金融教育のスタート地点に位置づけている。まずは働くことの意義を親子で話し合ってみてはどうだろうか。

メイはまた、フォーブスに寄稿した「How to Raise a Billionaire(億万長者の育て方)」で、3人の子供それぞれの興味を自由に追求させたと明かしている。

コンピュータに強い関心を持ったマスクは、10歳でプログラミングを独学でマスターし、12歳の時には対戦ゲームソフトを自作した。メイは、自身が経営するモデルスクールに在籍しているコンピュータサイエンス専攻の大学生にそのソフトを見せて高評価を得たことから、パソコン雑誌に投稿するようマスクにアドバイス。その結果、ソフトが売れてマスクは見事に500ランド(500ドル相当)の対価を手にした。

メイは「これがテスラやスペースXにつながるとは思わなかった」と語っているが、12歳のこの成功体験が、週100時間以上働くハードワーカーとしても知られるマスクの原点になっているのは間違いないだろう。

テスラ
写真=iStock.com/jetcityimage
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/jetcityimage
※マスクは、「自分の子供たちは主にYouTubeとレディット(Reddit=アメリカの検索エンジン)で教育を受けてきた」とインタビューで語っている。

■【第4位 ビル・ゲイツ】

ボーイスカウトの「ナッツ訪問販売」でいかに売るかを考えた
22年世界長者番付の第4位は、マイクロソフト創業者で、世界最大規模の慈善団体「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」共同議長のビル・ゲイツ。推定総資産は1290億ドル(約19兆円)。世界有数の資産家であると同時に、寄付総額も世界屈指のゲイツのマネー哲学もまた、父親であるビル・ゲイツ・シニア(20年没)の教育方針の影響を色濃く受けている。

飛行機移動の際にはエコノミークラスを利用し、高級ホテルや高級車にも興味を持たないなど、質素倹約好きのゲイツだが、22年7月には一度の寄付額としては史上最大級となる200億ドル(約3兆円)を自身の財団に寄付することを発表したように、慈善活動には巨額を投じてきた。

よく働き、よく稼ぎ、築いた資産をどう使うか。そこには、90歳を超えてもビル&メリンダ・ゲイツ財団共同会長を務めるなど現役であり続けた父親の生き方が反映されている。

著書『人生で大切にすること』(10年、日本経済新聞出版)で父親は、「骨身を惜しまずに働く」ことの意義を訴える。父もまた、質素で働き者だった自身の父親の姿を見て育ち、その勤労意欲と社会奉仕精神から大きな影響を受けたという。

弁護士として成功し、「ビル・ゲイツの父親」としての名声を得るずっと以前から社会的地位を確立していた父親だが、妻とともに、3人の子供たちに健全な金銭感覚を身につけさせていたことがうかがえるエピソードがある。

長女のクリスティは10歳の時にはすでに小遣い帳を持っていて、1セントの狂いもなく収入と支出を記録していたという。

小遣い帳をつけることは、夢や目標に向かってお金の面でもこつこつと計画的に工夫や努力をしたり、必要なものをよく考えて買う習慣をつけたりすることに役立つ。子供が取り組むマネー教育に最適なツールであり、すぐにでも取り入れたいところだ。

夕食の席でも本を読んで親に叱られるほど読書に没頭したゲイツだが、お金やビジネスに関することは実体験から学んだと父親は著書で回想している。

父親、ゲイツともにボーイスカウトOBだ。ゲイツは小学校時代、ボーイスカウトの活動資金を得るため、ナッツの訪問販売をしていた。そこで、「どんな要因が影響して買うという意思決定につながるのか、商品にとって適切な市場を見つけられるかどうかで最終的な成功が決まる」といったことを学ぶ。父親は平日夜と週末、さまざまな地域でナッツを訪問販売するゲイツの運転手役を務め、より多くの売り上げを目指して家から家へとまわって注文を取る息子を見守った。

ナッツ
写真=iStock.com/FotografiaBasica
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/FotografiaBasica

小学校を卒業して地元シアトルの名門「レイクサイドスクール」に進学し、のちにマイクロソフトの共同創業者となるポール・アレンと出会ってからのゲイツは、プログラム開発などで荒稼ぎするが、それはより性能の良いコンピュータを手に入れたいという目的があったから。

幼い頃から目標達成のための資金調達方法を身をもって学べる環境にあったからこそ、世界最高の起業家・慈善事業家が生まれたと言えるだろう。

※ゲイツ夫妻には3人の子供がいるが、子供たちには14歳になるまで携帯電話を持たせなかったという。14歳以降も、食事中の携帯電話は使用禁止、寝る前の使用時間も制限していた。

■【第5位 ウォーレン・バフェット】

ゴルフボールを売って警察沙汰に。両親は野心を認めた
22年世界長者番付の第5位は、世界最大級の保険・投資会社バークシャー・ハサウェイ会長で、「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット。推定総資産は1180億ドル(約18兆円)。92歳になった現在も生まれ故郷の米ネブラスカ州オマハに住み続け、質素、勤勉を絵に描いたようなライフスタイルを貫くバフェットは、その卓越した投資手腕から「オマハの賢人」と称される。ビル・ゲイツにも多大な影響を与えたバフェットが「人生最高の先生」として名前を挙げたのは、父親のハワード・バフェットだ。

CNBC Make Itのインタビューで、「人生で最高のギフトは、父の息子として生まれたこと」と語ったバフェットの父親もまた、優れた投資家だった。「もし父が靴の営業マンだったら、自分も靴の営業マンになっていただろう」と言わしめるほど、投資家としての父親の教えはバフェットの人生を決定づけた。

本人公認の唯一の伝記『スノーボール』(上・下巻、アリス・シュローダー著、09年、日本経済新聞出版)のダイジェスト版が英フィナンシャル・タイムズのオンラインに掲載されている。

それによると、バフェットは6歳の誕生日に、父親から20ドルをもらい、引き出しに大切にしまっていた。同じ頃、祖父から仕入れたガムやコーラ、新聞、雑誌を近所の家から家に売り歩いたり、家族旅行先の湖畔リゾート地で炭酸飲料を売りさばいたりするなど、小銭を貯める喜びを覚えた。

現代の日本人の感覚からすると驚くようなエピソードばかりだが、売れ残りリスクのあるバラ売りには頑として応じないなど、今も大切にしている投資哲学をこうした体験から学んだのだという。引き出し預金の出納はすべて、あずき色の小さな“通帳”に記録されていたという。

9歳の頃、近くのゴルフ場で中古のロストボールを売って警察沙汰になった時も、両親はバフェットの野心を認めこそすれ、心配はしなかった。事あるごとに父親のオフィスを訪れてそこにあった投資に関する本や投資週刊誌「バロンズ」の株式投資コラムを読みあさったという。

ゴルフボール
写真=iStock.com/rustycanuck
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/rustycanuck

バフェットの投資家マインドは、貪欲に稼ぎ、貯めたお金を増やすことに寛容な父親のもとで育まれていったのだ。

バフェットの父親は、3人の子供たちそれぞれを、10歳の記念にニューヨークに旅させた。バフェットは父親とともに世界恐慌から回復途上にあったウォール街を歩き、さらにはゴールドマン・サックスのトップにいたシドニー・ワインバーグと面会する機会を与えられた。ウォール街の重鎮と30分にわたって真剣に語り合った体験を、バフェットは一生忘れないと述懐している。

その後、11歳で株式投資を始めて本格的に投資の神様への道を歩き始めるのだが、それも父親の英才教育のたまものである。

バフェットは自身の経験から、子供たちが読み書きの能力と同様、早い段階で金融に関する知識や実践能力を身につけるべきだと主張し続けている。このため、自らが司会、講師役として登場して、子供たちに正しい投資や起業家精神を教えるためのアニメ「Secret Millionaires Club(秘密の富豪クラブ)」の制作を発案、11年から17年までに全26話が放映された。対象は5歳以上で、YouTubeの「Kartoon Channel!」で視聴可能。投資の先生として、バフェット以上の適任者はいないはず。英語とマネーを同時に学べる良質なアニメ教材、親子で活用してもらいたい。

※バフェットには3人の子供がいるが、末っ子でミュージシャンのピーターは、「子供の頃から質素な生活を送るようしつけられ、自分が一生続けられる仕事を見つけなさいと両親に言われて育った」と自著で語っている。

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恩田 和(おんだ・なごみ)
子育て・教育ライター
1977年生まれ。東京大学文学部英語英米文学専攻課程卒業。読売新聞記者を経て、カリフォルニア大学バークレー校でジャーナリズム修士号取得。配偶者の海外赴任に伴い、アメリカ合衆国(カリフォルニア、テキサス)と南アフリカ共和国に10年近く滞在。2人の帰国子女を育てながら、子育て・教育ライターとして活動中。

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(子育て・教育ライター 恩田 和)

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