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休憩室に電子レンジがない…なぜか社員採用に失敗してしまう中小企業が見落としている6カ条

プレジデントオンライン / 2022年12月28日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Kiwis

採用に失敗する中小企業は、どんなところに問題があるのか。社会保険労務士の福留文治さんと児玉里美さんの共著『採用がうまくいく会社がやっていること』(かんき出版)から、「見直すべき労働環境の6カ条」をお届けする――。

※本稿は、福留文治・児玉里美『採用がうまくいく会社がやっていること』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■応募者が集まる環境を整える6カ条

少子高齢化のほかさまざまな要因により、中小企業の採用はこれからますます厳しくなることは間違いないでしょう。

どんな求人広告をどの媒体に出せばいい採用ができるか、担当者は頭を悩ませているかと思いますが、求人を出す前にまず大事なのが、労働環境を整えることです。

いつの時代でも根本は「働く環境」です。求人方法は、時代の変化とともに、進化していきます。

戦術はその時々で変わりますし、戦術を変えるのは比較的容易です。それがゆえに、戦術の効果は一過性です。戦術も大事ですが、その前に自社を磨く努力をしましょう。できることはいくらでもあります。戦術が変わっても、変わらないものを持っている会社が、採用に強い会社といえるでしょう。

では、具体的に、どのように整えて求人内容に反映していけばよいか、「環境の6カ条(給与、労働時間、休日数、作業環境、アクセス、人間関係)」をご説明したいと思います。

<応募者が集まる環境を整える6カ条>
①【給与】こだわるのは最下限の設定
②【労働時間】残業時間と拘束時間を減らす
③【休日数】メリットが感じられる休日の設定法
④【作業環境】水回りと個人スペースを優先的に整える
⑤【アクセス】会社が気づいていないポイント
⑥【人間関係】仕事を協力して進められる関係性をつくる

■給与は「1円でも他社より上回る」が鉄則

①【給与】こだわるのは最下限の設定

給与に関しては、「1円でも他社より上回る」が鉄則です。そのために、必ず同業他社をリサーチしてください。さらにこだわりたいのは、給与の最下限です。

「給与は1円でも他社より上回る」と述べましたが、給与水準は可能であれば同業他社の3%上乗せを目指すとよいです。もちろん、人件費はなるべく抑えたいという気持ちもわかります。給与は一度上げてしまうと下げるのが非常に難しいので、最初は抑え気味にしたいというのがまっとうな考えです。

また、既存の従業員との兼ね合いもあり、求人票にあまり高い給与は記載できない、という現状もあるかと思います。ただ、給与で同業他社より見劣りすると、その時点で応募者のリストから外れます。

仕事は給与で決まるものではありませんが、給与が最低ラインをクリアしていないと、求人市場で非常に不利になります。他社を上回るのが難しいときは、最低でも同業他社と同レベルにしてください。

■長時間労働にやりがいを感じるのは経営者だけ

②【労働時間】残業時間と拘束時間を減らす

次に、労働時間です。これも給与と同じ考えですが、労働時間は短いほうがよいですし、休日は多いほうがよいと思うのが一般的です。業種により事情はさまざまではありますが、労働時間や休日を改善できるのであれば、給与の次に優先して取り組んでください。

法律では、労働時間は1日8時間、週40時間と決まっています。しかし、どの企業でも法定内におさめるのは難しいものです。

まずは、残業を減らす取り組みから行いましょう。最初は「残業を減らす」とトップが宣言するだけでも構いません。従業員は、お付き合い残業や生活給のための残業をしている可能性もあります。長時間労働にやりがいを感じ、苦にならないというのは、経営者だけです(逆にそういう従業員がいれば、経営者の素質があるとも言えます)。

経営者から見ると、遅くまで会社に残って頑張っている従業員がかわいいかもしれませんが、もしかしたら業務配分や効率に問題があるのかもしれません。

今が頑張りどき、という時期を除いて、普段の残業時間は短くなるようにトップが意識しましょう。ただ、単に「早く帰ろう」「残業を減らそう」と言うだけでは、「仕事量も減っていないのに、早く帰れと言われても……」と従業員の不満につながります。無駄な作業の廃止、システム導入など、残業を減らす取り組みとセットで進めていきます。

ビジネスミーティング
写真=iStock.com/AzmanJaka
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AzmanJaka

■朝のラジオ体操や掃除、朝礼、終礼はいらない

③【休日数】メリットが感じられる休日の設定法

労働時間が1日8時間週40時間と法定通りであるなら、年間休日は105日になります。1日8時間労働であれば、年間休日105日は最低限の日数です。ですので、年間休日が100日を切ると、応募者から休日が少ないと感じられがちです。

業種によっては、半日出勤などを組み合わせているため、休日が少なくなっているところもあります。たとえば、「月曜日:8時間、火曜日:8時間、水曜日:4時間、木曜日:8時間、金曜日:8時間、土曜日:4時間、日曜日:休み」という場合。週の労働時間は40時間で法定内ですが、丸々一日の休みが週1日だけで、年間休日数は52日になります。

たとえ法定労働時間内であったとしても、丸々一日休める日が少ないと、やはり応募に悪影響が出てきます。法定内だから問題ないだろうと思わずに、シフトを工夫するなど休日数が増やせないか検討しましょう。

他にも「拘束時間」を減らすのも有効です。仕事以外で拘束される時間、たとえば飲み会や、社内の行事ごとを減らすことも一定の効果があります。

細かいことですが、朝のラジオ体操や掃除、始業前の朝礼、終業後の終礼など、時間外になんとなくみんなでやっていることはないでしょうか。小さいことからでもよいので、拘束時間を短くできないか検討してみてください。

■トイレが汚い会社に人材が集まるはずがない

④【作業環境】水回りと個人スペースを優先的に整える

職場は、人が1日の中で多くの時間を費やすところです。職場環境のストレスは、一時は辛抱できても、じわじわと確実に悪影響を与えます。

職場ごとに作業環境はさまざまだと思いますが、必ず整えてほしいのは「水回り」と「個人スペース」です。

その中でも、一番大事なのは、「お手洗い」。とくに女性はお手洗いを気にします。同じコンビニでも、できればお手洗いがきれいなところを選びたいものです。職場のお手洗いが使いづらかったり、清潔感がなかったりすると、それだけでテンションが下がります。

何はともあれ、作業環境を見直すときは、まずはお手洗いを使いやすく、きれいにしてください。

また、飲食店や小売店、美容室など、店舗系で気を付けたいのが、個人スペースである「バックヤード(休憩スペース)」です。

お客さんから見える店舗部分はきれいにしてあるのに、従業員が使うバックヤードは暗かったり、散らかっていたり、汚れていたりするケースがあります。従業員が休憩したり、食事をとったりする場所でもあるので、広さは確保できなくても、ホッとできるくらいの場所にはしておきたいものです。

■採用の明暗は「休憩室の電子レンジ」が握っている

以前、とあるコールセンターに勤めていた方が、職場環境の悪さを話していました。経費削減の意味もあると思うのですが、その職場ではお昼休みに、照明や空調をすべて切るそうです。そのため、休憩室はいつも薄暗く、夏は暑くて、冬は足元が冷えて快適とは言えないものだったそう。電子レンジ等もなかったので、冬に冷たいお弁当を食べるのがつらかったと話していました。

電子レンジ
写真=iStock.com/tianyu wu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tianyu wu

また、細かいことになりますが、会社の傘立てに、使っていないビニール傘がたまっているのを見かけることがあります。整理する余裕がないのかもしれませんが、そういったところに、会社の姿勢が見て取れます。

社内の人間は毎日同じ職場、同じ風景を見ているためそういった細かいことに気づかなくなっています。しかし、面接に来た応募者は初めて見る場所なので、細かいところに気が付くものです。

会社の利益が出たときは、給与や賞与で還元するのはもちろんですが、働く環境、設備に投資するのも有効です。従業員のモチベーションは、給与を上げれば、賞与を支給すれば高まると思いがちですが、実はその効果は一時的です。モチベーションが上がるのは支給された直後のみ。もって1カ月です。

その点、環境、設備をよくすれば、使っている間しばらくは満足度が高まります。

とはいえ、何もすべてを最新のものにしなければならない、というわけではありません。応募者の中には、最新の機械、最新のシステムには慣れておらず、どちらかというと苦手だ、という人もいます。新しい機械や設備はなく、昔ながらのやり方だというのも、そういった人にとっては逆にメリットに感じられるかもしれません。とにかく、働く人にとって働きやすい環境であればよいのです。

■アクセスの良さは、立地のよさだけではない

⑤【アクセス】会社が気づいていないポイント

アクセスには2通りの考えがあります。「場所としての行きやすさ」と「連絡の取りやすさ」です。場所としての行きやすさは、イメージしやすいかと思います。駅から近いか、公共交通機関が便利か、車で通えるか、駐車場は確保されているか、自宅から近いか、渋滞にあわないか、子どもの送り迎えに便利か、など。

在宅勤務が人気なのは、通勤のストレスがない、というアクセスのよさも一つの要因です。都心であれば、駅から直通で雨の日も濡れずに出勤できる、仕事が終わった後の買い物に便利、などもメリットです。新宿、銀座など、勤務場所にステイタスを感じる場合もあります。

地方であれば、車通勤できるかは大きなポイントです。車通勤が可能なところを優先的に探している応募者も少なくありません。

駐車場
写真=iStock.com/Chaiyaporn1144
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Chaiyaporn1144

⑥【人間関係】仕事を協力して進められる関係性をつくる

何も職場でみんなが仲良しになれと言っているわけではありません。逆に、今は、飲み会やサークル活動など、仕事以外での付き合いをあまり好まない傾向もあります。

どういう状況なら「人間関係がよい」と感じるのでしょうか。さまざまな要素がありますが、「人間関係がよい」と感じられるかどうかは、「自分が受け入れられている」と感じられるかです。

挨拶をしても無視される、不機嫌な顔で対応される、ミスを過剰に責められる、仕事で協力してもらえない、わからないことを聞けない雰囲気だ。こういう状況は、人間関係がよいとは言えません。

■人間関係のいい職場の2つのポイント

人間関係のよい職場は、わからないことを聞き合える、お互いに協力できる、情報の共有ができている、人の悪口や噂話をしない、といった職場ではないでしょうか。つまり「仕事上、必要なコミュニケーションをスムーズに取れる職場」です。

人間関係をよくするためのポイントが2つあります。この2つを徹底するだけでも人間関係の悪さは和らぎます。

【ポイント1】
仕事でわからないこと、困ったことがあったときに、相談できる体制(聞ける相手)をつくっておくこと
【ポイント2】
「お客様や一緒に働く仲間のことは決して悪く言わない」と社内ルールで決めておくこと

ドライに聞こえるかもしれませんが、会社には、あくまで仕事をしにきているのですから、コミュニケーションは必要最小限でよいでしょう。必要最小限のコミュニケーションは何かというと、「仕事を協力して進められるか」です。

■いい職場は、相談しやすい職場のこと

もちろん、仕事以外の雑談も仕事を円滑に進めるために必要なコミュニケーションです。なくていいとは言いません。ただその前に、わからないこと、できないこと、相談したいことがあったときに、確認できる体制になっていれば、まずは気持ちが満たされます。

福留文治・児玉里美『採用がうまくいく会社がやっていること』(かんき出版)
福留文治・児玉里美『採用がうまくいく会社がやっていること』(かんき出版)

仕事上必要なコミュニケーションが不足しているために、ミスをしたり、気が回らなかったり、見当違いの仕事をしたりして、それが一層周りとの軋轢を生むことになるのです。何も全員が聞きやすく相談しやすい雰囲気を持たなくてもよいのです。この人には仕事のことを聞きやすい、相談できる、という人が一人いればよいです。

他にも上司が定期的に話を聞く機会をつくるだけでも効果があります。

とくに新人が入った場合は、誰に何を聞けばいいかをきちんと教えてあげるようにしましょう。できれば、人当たりがよく、面倒見のいい先輩が指導役でつくとよいです。わからない状態でほったらかしにされるのが一番不安を感じます。

仕事ができないと、周りから攻撃の対象になりやすいです。社内で軋轢を生まないためにも、最低限の仕事ができるように、新人を育てるのも上司の役目です。

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福留 文治(ふくどめ・ふみはる)
特定社会保険労務士 社会保険労務士法人サフィール共同代表
社会福祉法人(介護事業)在職中の2004年に社労士登録。企業の総務人事を約12年経験。2013年独立開業。これまで受けた労務相談は1万件超。

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児玉 里美(こだま・さとみ)
社会保険労務士 社会保険労務士法人サフィール共同代表
塾講師、社労士事務所、労働局勤務などを経て、2015年に独立開業。300社以上の企業の労務管理や採用支援に携わる。社会保険労務士法人サフィール https://sr-saphir.or.jp/

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(特定社会保険労務士 社会保険労務士法人サフィール共同代表 福留 文治、社会保険労務士 社会保険労務士法人サフィール共同代表 児玉 里美)

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