もしかして毒親かも…子どもに怒りすぎて自己嫌悪している親に心理療法士が伝えたいこと
プレジデントオンライン / 2022年12月29日 12時15分
※本稿は、イザベル・フィリオザ『6~11歳 子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■子どもは親を怒らせたいとなんて思っていない
朝、着替えに時間がかかる、友だちの家からの帰りの時間を守らない、部屋の中がめちゃくちゃ、なかなか歯を磨かない、口答えする、いつまでたってもテレビやパソコンを終わりにしない……。子どもは親をいらだたせる名人ですね!
でも、本当のところ、子どもたちは自分の人生を生きているのであって、親を怒らせる目的でやっているわけではありません。
それでも私たちは、子どもの態度を親に逆らっているかのように受け止める傾向にあり、時には過剰な反応をします。こちらが求めたことに子どもがすぐさま合わせない時、我を忘れて叫びはじめ、怒鳴り、罰を与え、本当には思ってもいないことまで言ってしまいます。
少しの不満で発作を起こしているのはどちらでしょう? 自分たちの神経をなんとかできないで、子どもの感情の爆発をとがめることはできません。
欲求不満を我慢することを教えるためには、私たち親が子どもにお手本を見せる必要があります。飛行機に乗っていて減圧状態になった時、まず親が酸素マスクをつけて、それから子どもにつけることが推奨されていますが、それと同じです。まずは、親が自分自身の面倒を見ることが大切です。
子どもの心の声
パパが怒鳴ると、怖くて動けなくなる……。
■子どもが怒られたことを繰り返すメカニズム
子どもに向かって親が大声で怒鳴るのでは、逆効果ですよね。私たち親の見せるお手本が良いヒントになるどころか、子どもの全身をアドレナリンと糖質コルチコイド(ステロイドホルモン)でいっぱいにするのでは、落ち着かせるのに確実な方法とは言えません! 子どもはもっと別の燃料を必要としています。
子どもがストレスや緊張で固まってしまった状態から抜け出す時には注意が必要です。固まることでストレスが蓄積しています。
私たち親が一緒に遊ぼうと誘ったり、楽しくじゃれ合ったり、マッサージをしてあげたりして絆を回復しない限り、扁桃体が子どもの脳内で警鐘を鳴らし続けるので、子どもは何も考えることができないだけでなく、活発になったホルモンのせいで、必ずまた別のまずいことをしてしまうのです。
そんな時、親が落ち着くことが大切です。深呼吸して、自分のストレスを乗り越えることに集中しましょう。
子どもの心の声
ケンカを売る気なんて言われると、わたしがわざとママを怒らせようとしているみたい。そんなことないから、怖くなる。こんなふうに怖くなると、なぜか同じことをゆっくりもう一度してしまうの。それ以外、どうすればいいかわからない。
子どもの言動に我を忘れるのは、私たち親の反応のリモコンを子どもに渡すようなもの。自分が求めていなかった力を手にして不安になった子どもは、自分を怖がらせたことを繰り返す傾向にあります。
それは決して挑発ではありません。そうやって脳が安心を再び見つけようとしているのです。
自分を怖がらせたことを、子どもはそれが克服されるまで繰り返します。つまり、母親を激怒させた言動が再び繰り返されることになります。
なぜなら、子どもは、母親をそんなふうに激怒させた自分が許せないため、脳が、何が起きたかを特定しようとするからです。そして、それが何度も繰り返されることになります。
■子どもへの怒りが収まらない親が抱える課題
あらゆるきっかけが、私たち親の攻撃性をあおる恐れがあります。私たちは子どもの言動や要求のせいで親が不安定になると考えがちです。でも、実際は、ストレスの蓄積や人間関係のもめ事、疲労、責任の重圧、子どもに頼られていることなどが親の緊張状態の原因かもしれません。
こうしたストレスのせいで我慢がききづらくなるため、子どものちょっとした失敗に対して、あるいは子どもがただそばにいるだけで、親は防御と拒絶の反応をしてしまうのです。
子どもが苦境にある時または何か要求した時の、親の脳の活動の様子を、脳の画像で観察してみました。まず親自身が子どもの頃、話を聞いて支えてもらい、かわいがってもらって安定した愛着を感じていた場合、その脳は、愛情ホルモンであるオキシトシンで満たされます。「面倒を見る」脳の分野が活性化するのです。
反対に、子どもの頃に安定した愛着を築けなかった親は、わが子に近づこうが避けようが葛藤するストレスのシステムが活性化します。脳は少しもオキシトシンを受け取りません。むしろ危険を感じ取って、扁桃体が防御反応や闘争・逃走反応のスイッチを入れてしまいます。そのため、このような親は、コントロールできない暴力あるいは冷淡な態度をとる衝動に駆られます。
■怒りっぽい自分を責めなくていい
親の脳内のオキシトシンやドーパミンの受容体の厚みは、部分的にはその人自身が受けた教育の質に左右されます。ですからストレスを制御する能力は、その人のこれまでの人生によるものなので、それが低いからといって罪悪感を覚える必要はありません。
けれど親のストレスが子どもに投影されないように、親の責任でなんとかしたいものです。学校で緊張を溜め込んできた子どもが、夜初めて私たちに向けてそれを見せるのと同様に、私たち親だって仕事でつらい1日を過ごしたあと、子どものちょっとした抵抗や反発を我慢できなくなっています。
したがって、ストレスを感じている時、子どもに対して無力だと感じる時、子どもが思い通りに行動しない時――そんな時、私たち親を苦しめるこの極度の無力感から逃れたくて、自分が子どもだった時に支配されたのと同じように、子どもを支配したくなるのです。親自身がそのことをわかっているだけで、自らの過剰な反応を抑えるのに役立ちます。
アドバイス
親であることは楽ではありません。私たちの「神経」はしょっちゅう厳しい試練にさらされます。親としての能力を保ち続け、お手本になるようにしていなければならないのだからなおさらです。でも、私たちは大人ですから大丈夫!
深呼吸して、自分に問いかけてみてください。「私に何が起こっているのだろう? 正確には何にいらだっているのだろう? 私にとって大切なことは何だろう?」。
■子どもに優しくすることは親の脳にも良い効果を与える
ありがたいことに、子どもたちと積極的に関わることで、親の脳内でドーパミンのレベルが増して、側坐核(喜びと報酬の回路)が刺激されます。子どもに優しい愛情を注ぐことは私たち親にとっても良いことなのです! どんなエゴイストの親でもそれなら興味が持てるでしょう。子どもに愛情を与えることで、私たちは愛情で満たされるのです!
■子どもへの苛立ちを鎮めるテクニック
このテクニックはパパやママに向けて書いていますが、もちろん子どもにも教えて、一緒に実践することができます。
●口をすぼめて息を吐く(風船をふくらませて、それを息で相手のところへ送る練習や小さな紙の船を水に浮かべ、息を吹きかけて進ませる練習がおすすめ)。
●コップ一杯の水を飲む(脳細胞に水分を与えるため)。
●ストローでゆっくり水を飲む。
●大きく伸びをする。
●足の裏が地面に接触するのを感じる。
●会話を否定的なものから肯定的なものへ変換。(例:もう我慢できない!→深呼吸して落ち着くね)
●ブラックチョコレートを少し食べる。
●公園や森に散歩に出かける。少なくとも家の外かベランダへ出て、深呼吸しながら緑を眺める。
●室内用フィットネスバイクや、トランポリン、バランスボールを少しだけやってみる。
●大きなゆったりした動作をする。
●足の裏でテニスボールを転がす。
●目を閉じて身体の感覚に注意を向ける。立っている時なら足の裏を、座っている時ならお尻に身体の重みを感じながら深呼吸してみる。
●全身をゆるめるつもりで、身体に意識的な注意を向ける。
●自分の内面から抜け出て、外側から客観的に観察する(中の自分と外の自分を意識する)
●にっこりほほえむ。ほほえみは、私はうれしい、私は気分が良い、何もかもうまくいっているという情報を脳に返してくれる。
抱いたり、キスしたり、マッサージしたりといったふれ合いは、親のストレスも減るだけでなく、子どもの愛情のタンクも満たします。お互いの信頼を回復し、一緒に問題を解決するエネルギーを与えてくれるのです。
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1957年パリ生まれ、心理療法士。父は心理学者、母は心理療法士で病気を体・心・感情を含めて全体的に見るというホリスティック医療の先駆者。パリ第5大学で、臨床心理学の修士号を取得したあと、フランス、アメリカ、ベルギー、イギリスなどで、交流分析、新ライヒ派のセラピー、神経言語プログラミングなどを学ぶ。それ以後、独自のセラピーを開発し、感情を専門とするセラピストとして、多くの大人や子どもの治療に当たる。世界的ベストセラーシリーズ『子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)ほか著書多数。
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(心理療法士 イザベル・フィリオザ)
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