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大手出版社の管理職→コンビニ店員…茂木健一郎が「これこそがこれからの生き方だ」と力説するワケ

プレジデントオンライン / 2022年12月28日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/NosUA

いつまでも健康で若々しい脳を保つにはどうすればいいのか。脳科学者の茂木健一郎さんは「お金を稼ぐことだ。それにより社会とのつながりが生まれ、脳を活性化できる。収益の多寡は気にしなくていい」という――。

※本稿は、茂木健一郎『脳は若返る』(リベラル社)の一部を再編集したものです。

■脳を若々しく保つ秘訣はお金を稼ぐこと

シニアの方々の中には、「この歳になったら稼げる機会なんてない」「年金だけが頼みの綱だ」という方もいるかもしれませんが、それではアクティブシニアには程遠いといえます。「たとえ何歳になってもお金を稼ぐ!」という心意気こそが、いつまでも脳を若々しく保つ秘訣(ひけつ)でもあるからです。

また、「いかにお金をかけないで、老後の社会活動を充実させるか」というのは生きるうえでの知恵ではあるわけですが、社会との接点や人間関係のサークルが増えるアクティブシニアになればなるほど付き合いも増えるので、当然ながら出費もかさんでいきます。

その一方で、アクティブシニアのもうひとつの特徴として、単にお金を出費するだけでなく、お金の入りについても考えて興味を持っていることが挙げられます。ソーシャル・コネクションを増やしているアクティブシニアには、頻繁なお金の出入りがあるということ。

シニア世代においてこのお金の出入りがあるというのは、脳科学的にも重要なことだと私は提唱しています。これがどのようなことなのか、順を追って説明していきましょう。

■「年金を有効活用」だけでは寂しい

まず、シニアとお金の関係性を語るとき、どうしてもこれまでの貯蓄をどう切り崩して生きていけばいいのか、あるいは年金を有効活用するにはどうすればいいかという議論が持ち上がりがちですが、私はそうした考え方だけでは寂しいと感じてしまうのです。

なぜなら、自分の蓄えは別として、何歳になっても出るお金もあれば入るお金もある。それこそがアクティブシニアの生き方の真骨頂でもあるからです。

少しだけ私の話をすると、私は脳科学者として自分軸のようなものは持っていますが、このように本を執筆したり、テレビやラジオなど多岐にわたって仕事をしています。そうしたあらゆる仕事で得た経験は回り回って脳科学の研究に役立っているのです。

シニアの皆さんにも、これまでの経験で培った知識やスキルをほかのことに活かすことがきっとできるというのが私の考え方です。

■大手出版社社員→コンビニ店員になった結果

ここでひとつ、私の知り合いの話を皆さんに事例として紹介したいと思います。

その方は、大手出版社で編集者として役職にも就き、会社に多大な貢献をしました。

しかし、定年を迎えると、なんと地元のコンビニで働き出したのです。現役時代は大手企業でバリバリ働き、定年を迎えたらコンビニの店員。

スーパーマーケットのレジ
写真=iStock.com/FG Trade
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/FG Trade

もちろん、そのような「転職」に意外という印象を持つ人もいるでしょう。言うまでもなく、コンビニで働くということは、一つの大切な仕事です。なぜなら、どんな仕事であれ、お金を稼ぐというのは大変なことであるからです。

私が興味を持ったのは、「なぜ、コンビニを選んだのか」ということです。現役時代にエリートと呼ばれるような仕事に就いていた人間が、突如としてまったく別の業界であるコンビニで働き出すのは面白いことですね。これぞ、アクティブシニアのマインドです。

実際のところ、コンビニの仕事は実に多岐にわたります。接客はもとより、店を運営していく上でのさまざまな作業、ノウハウがあり、全体として複雑で高度な仕事です。コンビニの仕事には、その人の仕事の能力やスキルが明確に映し出されます。出版社で編集者として働く中で培われた経験が、コンビニという新しい職場でさらに発展していく。これぞアクティブシニアの生き方と言えるでしょう。

■いま稼ぐならこのネットメディア

ここで一度、話を戻しましょう。

ソーシャル・コネクションを増やしているアクティブシニアには、頻繁なお金の出入りがあると述べた根底には、やはりネットの影響が大きいといえます。

私がこの5年ほどのネットの推移を見渡しても、やはり社会経済はネットに大きくシフトしています。それがどのようなことかといえば、今まさにネットビジネスが全盛期を迎えているといっても過言ではないということです。

シニアの皆さんもご存じの人気のネットメディアといえば、「YouTube」や「Instagram」などが挙げられます。これらは単に情報発信という役割を担っているわけではなく、収益化が加速しているのです。

また最近では、「note」をご存じのシニアも増えているようです。

noteとは、登録したユーザーが自身の経験やノウハウを文章や画像、音声、動画などで投稿して、さまざまなコンテンツを配信するメディアプラットフォームです。私自身も活用しているのですが、noteでは有料コンテンツの販売やストア機能、作品販売などの方法でお金を稼ぐことができます。

そのほかにも、本田圭佑選手が運営する音声メディアで、各界を代表するトップランナーの逸話などが聴き放題の「NowVoice」や、一流のビジネスパーソンや芸能人などの「声のブログ」を聴ける「Voicy」、もちろん、日々の出来事をネット上に日記として公開する「Amebaブログ」や「LINE BLOG」など、ネットの世界はまさに「稼ぐ戦国時代」とも呼ばれるほど収益化が進んでいるのです。

■大事なのは「収益の額」ではない

こうしたネットビジネス、実は誰にでもできるものがほとんどです。

例えば、YouTubeの場合、1000人以上の登録があれば有料化できます。

「そんなのやっても、所詮は二束三文では?」

そう思うかもしれませんが、たいした額にならなくとも、承認欲求が満たされて、人生に張り合いが出ることは間違いありません。

ここで大事なのは、決して大金を稼ぐことが目的ではなく、ソーシャル・コネクションによって社会とつながっている、人と関わり合っていることで脳を活発に働かせることなのです。

会社の切れ目がお金の切れ目ではないですが、お金が入ってこなくなるということは、単にお金が使えなくなって覇気がなくなるだけではなく、社会とのつながりがうすれることに関係しているのです。

だからこそ、生涯何らかの形で現金収入はあったほうがいいのです。

脳科学の世界では、お金というのは「ソーシャルリワード」と定義されています。ソーシャルリワードとは、栄誉、名誉、賞賛、社会的なステータスなどで、「他者から承認されること」が基本概念です。つまり、他者との比較において心理的な満足感を得られるものの象徴だということ。何歳になっても、こうした他者から承認されることで張り合いが出て、脳内のドーパミン系が活性化するということが、脳科学の研究で解明されているのです。

■脳科学者おすすめのアプリ

もうひとつ、シニアでもできるネットビジネスの好例を挙げるとすれば、それは「メルカリ」です。

メルカリとは、誰もが無料で使えるフリマアプリで、自分の家の不要なものを売ったり、買ったりできるサービスです。

自分の身の回りにあるものが、他者にとっての意外なお宝となって高値で売買されるというケースも多いようです。

「この歳になるとなかなか稼げない」と嘆いているシニアもいるかと思いますが、このように多様化したネットビジネスに鉱脈を見つける。これもアクティブシニアを目指すためにやるべきことなのです。

■シニアほどひと儲けできる

メルカリについて、もう少しだけ触れておきましょう。

私はもっぱら買うのが専門なのですが、だからこそ気づいたことがあります。それは、「こんなもの、絶対に売れっこない」というものが、誰かにとってのお宝だったりするということです。

私は先日、あることがきっかけで「ポロンちゃん」というおもちゃが好きになりました。

ポロンちゃんは、老舗玩具メーカーであるローヤル株式会社から1960年頃に発売が開始され、今でも愛されている赤ちゃんにやさしい音色のおきあがり玩具です。昭和のベビーブーム時代には出産祝いに贈られ、たくさんの家庭で赤ちゃんを見守っていたそうです。

そんなポロンちゃんをメルカリで探したところ、見つけ出すことができました。

茂木健一郎『脳は若返る』(リベラル社)
茂木健一郎『脳は若返る』(リベラル社)

そしてもうひとつ、『こちらアポロ』という集英社から1969年に刊行された理科学習漫画です。

この本は、アポロ号の月面着陸成功で記念出版された、私が小学校のときにボロボロになるまで読んでいた本で、ひそかにずっと探していたのです。

これも、メルカリで探し出しました。今では非常にレアな本だと思います。

他にもメルカリでいろいろなものを購入しているのですが、こうした経験からもメルカリというのは極めて特殊なマーケットだといえます。そんなメルカリで、シニアの皆さんがひと儲けできると私は踏んでいるのです。

■人生の履歴を探りながら商売をする

とにかく、メルカリでは思いもかけないものが売れる。「まさかこんなもの、世の中にほしい人はいないだろう」と思ったら大間違い。おそらく、普通に路上や公園でのフリーマーケットでは誰にも見向きもされないようなものが、メルカリというネットワークで世界へつながると、ひとりくらいはそういう特殊なものを欲しがる変わった人がいるものです。私もそのひとりかもしれませんが……。

そこで、自分の人生の履歴を探っていきながら、身の回りにあるものを一度整理してみてはいかがでしょうか。捨てようと思っているものの中から意外なお宝が発掘できるかもしれません。

また、自分の描いた絵や自分でつくった工芸作品などをメルカリに出品している方もいますので、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者
1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。クオリア(感覚の持つ質感)を研究テーマとする。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞を受賞。近著に『脳のコンディションの整え方』(ぱる出版)など。

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(脳科学者 茂木 健一郎)

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