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再雇用を受け入れなくても大丈夫…定年後も会社に頭を下げずに稼ぎをつくる「とっておきの方法」【2022下半期BEST5】

プレジデントオンライン / 2023年1月2日 18時15分

出所=『ほんとうの定年後』

2022年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。仕事術部門の第2位は――。(初公開日:2022年9月6日)
老後のためには給与が大きく減る定年再雇用を受け入れるしかないのか。リクルートワークス研究所研究員の坂本貴志さんは「70代前半の就業者の2割はフリーランスとして働いており、最も多い働き方となっている。組織に縛られずに自由に働けるフリーランスは魅力も大きい」という――。

※本稿は、坂本貴志『ほんとうの定年後』(講談社現代新書)の一部を再編集したものです。

■セカンドキャリアは再雇用だけではない

定年を境に人々は長年勤めた企業での役職を解かれ、第二の道へと踏み出すことになる。多くの人にとって現実的に取りうる選択肢は、まずは再雇用を受け入れるかどうかということになる。

そうしたなか、長く会社に雇われる働き方をしてきた人にとっては想像しにくいが、雇用以外の選択肢も存在する。就業形態に着目しながら、セカンドキャリアにおける働き方を展望する。

ここでは、総務省「労働力調査」から男性の年齢階層別就業形態を取ることで、年齢を重ねるにつれて人々がどのように働き方を変えているかを検証する(図表1)。

まず、用語の説明をすると、労働力調査上の役員は会社・団体等に所属する役員を指しており、自営業主とは区別されている。役員と聞くと一定規模以上の会社の役員を想定しがちだが、ボリューム層は中小零細企業の役員である。また、自営業主は自営(雇人あり)と自営(雇人なし)に分けられる。自営業で人を雇って仕事をしている人は前者、いわゆるフリーランスで仕事をする人などが含まれるのが後者である。

■年齢を重ねるごとに非正規の人が増えていく

50代前半時点の男性の就業形態をみると、この年代で最も一般的な働き方は会社等で正規の従業員として勤める働き方である。無職の人も分母に入れた上で正規雇用者の割合を算出すると69.9%となり、そのほかの働き方をしている人は非就業者を含めても10人に3人程度である。

そして、正規雇用者として働く人の比率は歳を重ねるごとに減っていく。50代後半では64.8%、60代前半で33.0%、60代後半で11.4%と推移し、高齢期には少数派の働き方に変わる。

その代わりに増えるのが非正規で働く人たちである。非正規雇用者が占める割合は50代前半時点では数%にすぎないが、60代後半にはパート・アルバイトで13.6%、契約社員等で12.9%と、定年後の最も一般的な働き方に変わる。

こうした働き方に抵抗感がある人もいるかもしれない。確かに現役時代に関しては、正規雇用で安定した職を得ることの重要性は高く、一定程度の収入を得ようと思えば非正規雇用という働き方は適したものにはならないことが多い。

しかし、定年後に関しては、正規雇用が優れていて、そうでない就業形態が劣っているという認識は改める必要があるだろう。

■無理なく稼ぐことができるおススメの働き方

契約社員やパート・アルバイトという就業の選択肢を選ぶことで、自身のストレスがない範囲で日々の生活のために無理なく稼ぐことができるのであれば、むしろ定年後においてはそういった選択は好ましいものになる。また、仮に第一線で働くまでの意欲はもてなかったとしても、自身がいまできる範囲で世の中に貢献していこうという気持ちは社会的にも応援されてしかるべきである。

役員や自営業主(雇人あり)に目を移してみると、こちらは比率がほとんど変わっていない。役員で見ると、50代前半では7.1%だったのが60代後半には7.7%とほぼ横ばいとなる。先述の通り、名の知れた大企業の役員は全国的にはごく少数であり、この就職形態に関しては自営も含めて小さくビジネスをしている人が大半である。

こうした人は長く働き続ける傾向があるため全体に占める割合もほとんど変わらない。逆に言えば、50代以降に起業をしてこうしたカテゴリーに新規参入する人が少ないということも、この結果から推察される。もちろん、例外はいくらでもあるが、全体としては少数派の事例であるということだ。

夕暮れ時のビーチでソファに横たわりながらノートパソコンで作業するシニア男性
写真=iStock.com/uzhursky
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/uzhursky

■「定年後フリーランス」は意外と多い

さらに、フリーランスは実は定年後の現実的な働き方の一つの形態である。ここでは、自営(雇人なし)を広くフリーランスとみなすと、フリーランスの働き方は50代前半では6.4%と少数派であったが、50代後半で7.4%、60代前半で8.4%、60代後半で10.9%まで増える。そして、70代前半では就業者のうちフリーランスの人は約2割で、最も多い働き方になる。

フリーランスというと自由に働けるメリットばかりが着目されるが、相応にリスクの高い働き方である。まず、報酬水準が低く不安定である。会社員のように安定して生活するに十分な報酬を得られる人はフリーランスで働く人のごくわずかである。

そして何より社会保険の問題が大きい。日頃意識していない人も多いかもしれないが、医療保険や年金保険などの社会保険に企業を通じて加入できるということは、企業で働く大きなメリットである。

自営であれば医療保険は国民健康保険などになるが、国民健康保険の保険料負担は、事業主負担がない分高くなる。全国市町村の平均保険料水準を調べたデータによると、年収500万円であれば年43万6000円、年収700万円であれば年62万6000円が国保だけで持っていかれてしまう。

■若い人にとっては厳しい働き方だが…

さらに問題なのは、年金保険の場合は国民年金に加入することになるから、高齢期の厚生年金保険の給付を受けることができないという点にある。厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると国民年金受給者の老齢年金の平均年金月額は2020年時点で5万6358円。この程度の金額では、老後に豊かな暮らしを送ることはできない。

現役時代をフリーランスで過ごすのであれば私的年金で多額の積み立てをする必要があるが、そういった事情を理解している人はそこまで多くないのではないか。

フリーランスという働き方は、若い人にとっては厳しい働き方になる。しかし、これもやはり高齢期の働き方となれば話は別である。定年後はそもそも年金を受け取れる年齢に差し掛かっていることから、年金を受け取りながらフリーランスとして少額の金銭を稼ぐという働き方は十分ありうる。

また、そもそも収入水準が低いことから国保保険料も大きな問題とはなりにくい。組織に縛られずに自由に働けるというメリットを感じながらフリーランスとして働くことは、定年後の現実的な選択肢となるだろう。

■定年後にはさまざまな仕事の選択肢がある

フリーランスといっても、長年企業に勤めてきた人にとって、その実態をイメージすることは難しい。そこで、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」を用いて、60歳以上でかつ自営(雇人なし)で働いている人の職種を分析してみるとどうなるか。

フリーランスとして就業する人の働き方は、会社で正規雇用者として働く人と比べると実に多種多様である。少し粗い分類ではあるが、これをあえて類型化したものが図表2である。

【図表】フリーランスの職種内訳(60歳以上)
出所=『ほんとうの定年後』

ここでは、フリーランスとして働く人の職種を3つのカテゴリーに分けている。第一は、国家資格が必要になる職種などが含まれる高度な専門性が必要とされる職種である。これは医師や弁護士、公認会計士、建築設計など、イメージとしては10年かあるいはそれを超える程度の勉学や実務経験を必要とする職種である。

このように業務独占資格でかつ取得難易度が高い資格を持つ人は、歳を取っても同じ仕事で働き続けやすい。これは専門性が高いからというのも理由の一つではあるが、その名の通りこれらの資格によって仕事が独占されているということが大きい。そうした規制が新規参入者にとっての参入障壁となり、厳しい競争を免れることができる。

こうした資格は、法令改正などによる知識のアップデートをその都度しなければならないが、必要とされる知識が根本的に変わることはないという事情も大きいだろう。

■もう組織には振り回されたくない人が選ぶ仕事

第二は、一定の専門性を要する職種である。目安としては、技能の習得に数年程度は年月が必要となる職種である。これも実は結構なボリュームで存在している。

個人で営業をする理美容師、建設や土木の世界で元請けの建設企業から依頼を受けて仕事をする一人親方、雑誌やwebメディアでライティングなどの仕事をしている人もいる。さらに、営業職であれば、企業と業務委託契約を結んで不動産・保険等の営業代行をするという選択肢もある。

雇人なし自営の仕事の一部には企業からの依頼をもとに行われる仕事も含まれている。雇用の責任を回避したい企業と、組織の論理に振り回されずに働きたい高年齢者との間で利害が一致した結果として、こうした働き方が普及しているのだろう。

これらの仕事に共通することは、独立して作業を行うことができるという側面があると同時に、その成果が見やすいという要素があることである。第二の区分は、第一の区分ほど新しく始めるにはハードルは高くないが、おそらくはもともとその仕事をしていた人が、働き方を変えて働いているというケースが大半であるとみられる。

■定年後に新たな仕事に挑戦する人も多い

そして、最後の第三の区分が必ずしも高度な専門性を要しない職種である。この区分では定年退職した人などに就業機会を提供する「シルバー人材センター」が一定の役割を果たしている。

坂本貴志『ほんとうの定年後』(講談社現代新書)
坂本貴志『ほんとうの定年後』(講談社現代新書)

たとえば、農業・造園であれば、定年を機に帰農して大規模に農業を始めるのは技術の側面もしかり、地方のコミュニティへの適応もしかり、厳しい側面が多い。だが、小規模に自家農園を行うといったケースであったり、シルバー人材センターで請け負っている庭木の剪定(せんてい)といった仕事に関しては、長期の訓練なしで行っている人が大半である。

施設管理の仕事も定年後の一般的な職種として普及している。販売店員、販売促進は個人商店や、業務委託契約で販売スタッフとして働く人なども含まれているとみられる。ドライバーや宅配であれば、個人契約で行われているスポットでの施設送迎だとか、個人で車を出して行う宅配業務がある。個別指導講師に関しては、音楽、文芸、絵画などの個人指導であるとか、塾や放課後の補習の場で指導をするといった仕事がありうる。

雇用されることで保証される給与や社会保険の問題を踏まえると、現役時代には会社で雇用されながら働くことに一日の長があるといえる。そして、定年前には雇用される働き方を戦略的に選びつつも、定年を迎えようという時期をにらみながら独立に向けた準備を行い、定年後に自由な働き方を選ぶという選択は、良い選択になることも多い。高齢期は必ずしも雇用される必要はないのである。

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坂本 貴志(さかもと・たかし)
リクルートワークス研究所研究員/アナリスト
1985年生まれ。一橋大学国際公共政策大学院公共経済専攻修了。厚生労働省にて社会保障制度の企画立案業務などに従事した後、内閣府で官庁エコノミストとして「経済財政白書」の執筆などを担当。その後三菱総合研究所エコノミストを経て、現職。著書に『統計で考える働き方の未来 高齢者が働き続ける国へ』(ちくま新書)、『ほんとうの定年後』(講談社現代新書)がある。

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(リクルートワークス研究所研究員/アナリスト 坂本 貴志)

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