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太っている人は実は栄養不足…胃腸科専門医が「満腹にならないと食べた気がしないのは異常」と指摘するワケ

プレジデントオンライン / 2022年12月29日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Fertnig

健康的で正しいダイエット法はないものか。10万人の胃腸を診てきた消化器専門の福島正嗣医師は「太っている人の多くは糖質を摂りすぎているのが原因。『栄養の摂りすぎ』ではなく過剰なまでに糖質に偏った食事で、必須栄養素である脂質やタンパク質が足りない『栄養不足』の状態なのです。栄養が十分足りていれば多少の空腹感を我慢できるようになります」という――。

※本稿は、福島正嗣『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■太っている人は、実は栄養不足

一般的に、太っている人は「食べすぎ=栄養の摂りすぎ」だと思われているかもしれません。

驚かれるかもしれませんが、じつは多くの人は、「太っている=栄養不足」なのです。なぜかというと、太っている人の多くは、糖質に偏った食事をしているからです。

糖質を摂りすぎた場合、体を構成する脂質やタンパク質が足りなくなるため、体脂肪はあるのに脂肪以外の体の組織は飢餓状態になっていたりします。

飢餓状態のときに食べることを我慢できるでしょうか? 無理ですよね。私なら絶対にできません。

でも、栄養が十分に足りている状態なら、どうでしょうか? 多少の空腹感があっても、1日ぐらいは何とか我慢できると思います。実際、私は1日ぐらいの絶食は特に苦痛もなく実践することができます。それは痩せていても必須栄養素が十分足りているからです。

仮に太っている状態が栄養過多であれば、本来は1日ぐらい食べなくても苦痛ではないはずです。それができないということは、質的な栄養が足りていない可能性が高いのです。

つまり、「太っている=栄養過多」と考え、安易に食事の摂取カロリーを減らすというのは、ダイエットとしての戦略性は乏しいと言えます。むしろ、無駄な時間を消費するだけで、メリットは少ないでしょう。

テレビ番組などで、太ったタレントにダイエットと称して断食道場に行かせたり、野菜だけを食べさせるなどの企画がありますが、私からしたら飢餓状態の人に食べさせないのですから、単なる虐待にしか見えません。

■「太る=カロリーの取りすぎ」は古い

厚生労働省が公表している日本人の食事摂取基準では、体重はエネルギー消費量よりエネルギー摂取量が上回った場合に増加すると記されています。つまり、食べたものが糖質であろうとタンパク質や脂質であろうと、総エネルギーが消費エネルギーを上回った場合に太るという単純なモデルで示しています。

確かに基本概念としては正しいのですが、この提示しているモデルでは、食事の内容によって消費エネルギーも異なるという生理学的な事実を無視しています。

同じ摂取カロリーでも炭水化物を多く摂る場合とタンパク質と脂質中心に食べた場合では、消費カロリーが大きく変わります。一般的には摂取した栄養素のうち、糖質では6%、脂質では4%、タンパク質で30%が体熱として変換されるとされます。

つまり、ご飯を食べるよりお肉を食べたほうがより多くのエネルギーが消費されるのです。

このため、摂取カロリーを考えるよりは、何を食べて何を食べないかを考えたほうが、痩せやすくなるのです。

■太る原因は追加インスリンの分泌

前述したように、「太る=カロリーの取りすぎ」というのは古い考え方です。

食事の内容により体の消費カロリーは大きく変わるため、痩せやすい体質をつくるためにも、消費カロリーが大きい栄養素であるタンパク質や脂質を摂ることは重要です。しかし、体脂肪が蓄積しないようにインスリンホルモンもコントロールすることも重要です。体脂肪が蓄積する原因は、過剰な糖質の摂取にともなう高インスリン血症(追加インスリン分泌)とわかっています。

インスリンが分泌されれば、タンパク質や脂質からブドウ糖をつくる糖新生が抑制されるため、消費エネルギーの大きな比率を占める基礎代謝が低下し、太りやすくなります。

以前は、3大栄養素の一つである脂質を大量に摂取することにより肥満が起こると考えられていました。しかし、仮に脂質のみを摂取した場合は追加インスリンがほぼ分泌されないので、太ることは理論上ありません。

低脂肪食を継続した場合と低炭水化物食を継続した場合では、低炭水化物食のほうが体重をコントロールできることは、すでにわかっています。

では、「脂質を摂ると太る」という定説はまったくのでたらめかというと、そうではありません。脂質を摂取した場合に太ることもあります。それは脂質と一緒に糖質を食べたときです。

実際の食事で脂だけを食べることはほぼないので、一緒に食べる食材が問題となります(私はたまにバターだけ食べることもあります。一般的には非常識ですが、まったく太りません)。糖質が多ければ、脂質は皮下脂肪に摂り込まれて太ります。

要は、糖質、脂質、タンパク質のエネルギー比をどうするかが重要になるのです。

■まずは必須栄養素をきっちり食べること

私自身は、10年ちょっと前に糖質制限を始めて、炭水化物を減らしました。毎日3食のうち夜の白米をきっぱりやめて、脂が比較的多い豚肉とキャベツのみというメニューにしました(糖質制限をする前は、白米は2分の1合から多いときで1合食べていました)。

私は、この糖質制限を10年以上たっても続けています。糖質制限前に72キロだった体重が60キロとなり、現在もリバウンドすることもなく維持できています。

減量は最初のきっかけが重要です。肥満を飢餓と仮定すると、食べないダイエットは困難です。まずは食べることから始めて、ダイエットに対してのハードルを下げることが重要だと考えています。

糖質制限でダイエットをするなら、最初は以下のいずれかの方法で始めるのがいいでしょう。

①夕食の炭水化物を減らして、肉や魚を多く食べる
②朝食を抜くか、朝食の炭水化物をなしにして、バターコーヒーや卵料理に変更する
③昼の定食のご飯をやめる、もしくはうどんやラーメンをやめてサラダチキンに変更する

ポイントは、脂質を増やして満足感を出すことです。

炭水化物をいきなりなしにする必要はありませんが、1日の糖質量は100グラム以内、かつ1食の食事の糖質量は30グラム以内にする必要があります。

ちなみに、一般的な主食の糖質量は、ご飯1膳は糖質50グラム、パンは30グラム、うどんは60グラム、そばは50グラムです。

ヘルシーに思われているそばでも、1食しっかり食べれば追加インスリンが出るため、その日は痩せることは不可能になります。

■満腹にならないと食べた気がしないのは異常

普段から炭水化物を食べている人は、炭水化物特有の胃がはち切れるような満腹感に慣れてしまっています。しかし、はち切れるような満腹感は本来、異常なものなのです。

炭水化物を減らせないという人は、必要な栄養素を得るという食事の本来の目的からずれて、胃がはち切れるほど食べることが目的になっている可能性が高いです。

このような状態が毎日続けば、胃腸に負担がかかるだけでなく、肥満や生活習慣病のもとになります。

胃腸科には、「ゲップが気になる」「みぞおちのあたりの圧迫感がある」といった症状で受診される人が多いですが、そもそもそれらの大半は炭水化物の食べすぎが原因です。

何より、その食べすぎに気づいていないことが大問題なのです。

■現代人は食事の奴隷!?

自分もその傾向があるなと思う人は、まずはダイエットの前に自分の正常な食欲を知る必要があります。

肉は単独で食べた場合、食欲は暴走しないため、本来の食欲を知るためにはもってこいの食材です。たとえば豚肉もしくは鶏肉をソテーして、それだけを満足するまで食べてください。この際、調味料は塩のみで、こしょう、醤油、ソースといった食欲を増進させる調味料は使わずに、油やバターだけでソテーするのがポイントです。

ほとんど味が付いていないので当然食べ飽きると思いますが、「食べ飽きたから、もういいかな」と思った量が、本来の正常な胃の容量であり、正常な満足感です。

福島正嗣『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社)
福島正嗣『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社)

おそらく100グラム程度でも飽きてしまう人も多いでしょう。思ったよりも食べられないことに驚くと思います。私も10年以上前に自分で実験した際に、この程度の量で満足するのかと驚くと同時に、自分の食べ過ぎを反省しました。

現代人は炭水化物や調味料により、食べているというより食べさせられているのが実態に近いかもしれません。このことに気づかないと、いつまでたっても食事の奴隷のままです。

本来の食事は、味気ないものなのです。なぜなら食事の本来の目的は、楽しむためではなく、必須栄養素を得るためにあるのですから。

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福島 正嗣(ふくしま・まさつぐ)
医療法人社団正令会みらい胃・大腸内視鏡クリニック理事長兼院長
1993年、聖マリアンナ医科大学卒業。東京女子医科大学消化器病センター外科に入局後、主に消化管および肝胆膵の悪性疾患の手術を担当。2017年に内視鏡検査専門のみらい胃・大腸内視鏡クリニックを設立、現在に至る。これまでに消化器外科手術2000件、胃内視鏡検査6万件、大腸内視鏡検査3万件の実績を誇る。40歳から糖質制限を始めて肥満や脂質異常症を克服し、自身の体験もベースに多くの患者さんに薬以外の治療として食事指導を行なって成果を上げている。

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(医療法人社団正令会みらい胃・大腸内視鏡クリニック理事長兼院長 福島 正嗣)

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