1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「和食はヘルシー」は誤解だった…10万人の胃腸を診た専門医が「一汁三菜はバランスが悪い」と断言するワケ

プレジデントオンライン / 2023年1月1日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

和食は本当にヘルシーなのか。10万人の胃腸を診てきた消化器専門医の福島正嗣医師は「和食の基本である“一汁三菜”は1食あたりのカロリーの半分が糖質なので、じつは栄養バランスが悪い。生理学や食の科学から見ると、必ずしもヘルシーな食事とは言えないのです」という――。

※本稿は、福島正嗣『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■「和食=ヘルシー」という思い込み

胃腸科外来の患者さんの多くは、「胃もたれ」「胃液が上がってくる」「胸や喉(のど)が詰まる」という症状で来院されます。

私は胃腸専門医として、これまでに胃の内視鏡検査を6万件、大腸の内視鏡検査を3万件以上してきました。延べ10万人の胃腸を診てきた私のこれまでの臨床経験では、これらの症状の多くは、食習慣が原因だと考えています。

そして、その主犯は炭水化物だという結論にたどり着きました。

以来、私のクリニックでは、胃腸の不調を訴える患者さんに、「朝のパンを、やめてみませんか?」と提案しています。

パンをはじめとする炭水化物がいかに胃腸に負担をかけているかを説明すると、患者さんから「やっぱり和食が最高なんですね!」と返ってくることがあります。

どうも「和食=ヘルシー」または「和食=消化がいい」と思い込んでいる人が多いようです。

たしかに和食は、2013年にはユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録されて、世界的に見てもヘルシーというイメージが確立されています。私も日本人なので和食が健康にとって最高な食事であることを望みますが、生理学や食の科学から見ると、じつは必ずしもヘルシーな食事とはいいがたい面もあります。

■一汁三菜は本当に栄養バランスがいいのか

農林水産省の資料を見ると、和食は一汁三菜(いちじゅうさんさい)を基本とした栄養バランスに優れた食事という部分が強調されていますが、私はこの点が非常に気になります。

和食の基本とされる「一汁三菜」というのは、

・主食…脳の働きに欠かせない炭水化物の摂取
・汁物…食べ物を飲み込みやすくする。体を温かくする
・主菜…魚や肉を使って、タンパク源を摂取する
・副菜…煮物や和え物など野菜を中心としたもので、ビタミンやミネラルを補う
・副々菜…香の物。足りない栄養素を補う

で構成された献立です。

定食などはこの考え方で構成されており、一般的にバランスがいい食事といわれています。

厚生労働省が発表している日本人の食事摂取基準では、タンパク質が13~20%、脂質が20~30%、炭水化物(糖質)50~65%となっており、このバランスを推奨しています。

日本が世界に誇る一汁三菜ですが、はたして本当にバランスがいいのでしょうか?

■1食の糖質は350キロカロリーに

一見すると正しいバランスのようにも見えますが、仮にこの食事を1日3回食べた場合、1食あたりのカロリーは700キロカロリー程度になり、その半分の350キロカロリーが糖質となります。

350キロカロリーの糖質量は90グラム程度になるため、3食食べたら1日約300グラムの糖質を摂ることになります。

300グラムの砂糖を想像すればわかると思うのですが、これだけの糖質を摂ることがバランスいい食事とは、どうしても思えません。糖質制限食の考え方では、糖質の摂取は1日100グラム以下が目標になるため、いかに多い量かわかるでしょう。

そもそも一汁三菜という考え方は、室町時代の武家社会の本膳、つまり一の膳、二の膳、三の膳と順番に膳に載せた料理が提供されるスタイルが由来になっているそうです。

一般的には、「これだけ長い歴史のある食事スタイルが体に悪いわけがない」と考えられると思うのですが、そもそもおもてなしの食事が発祥ということを考えると、健康を目的とした食事というよりも、満足感が高い食事という意味合いが強いといえます。

しかもこの食事スタイルは、日常的な食事というより特別な日の食事で、当時も日本人全体がそのような食事を習慣としていたわけではないようです。

■白米は茶碗3分の1杯が限度

私自身は、ご飯を「主食」と呼ぶことに大きな違和感を抱いています。

主に食べるべき食材を主食というべきであり、ご飯はあえて食べなくてもいい食材なのです。タンパク質や脂質のように、生理学的に食べなければ生命に支障がある栄養素ではないからです。

ただ、明日からいきなり「主食を食べなくていい」「ご飯を減らしなさい」といわれても、受け入れられないのは理解できます。

もし主食のご飯が必要なら、許容量を考えながら食べるのがいいでしょう。ご飯一杯150グラムには53.4グラムの糖質が含まれるため、この一杯ですでに体の糖代謝は大きく乱れます。

インスリンが追加分泌される糖質量は、おおよそ30グラム以上とされているため、それ以下に抑える必要があります。おかずにも多少の糖質が含まれることを加味すると、1回の食事で許容できるご飯の量は3分の1杯、つまり50グラム程度と考えます。

■玄米もヘルシーではない

白米は美味しいけれども栄養価が低いことが指摘されるようになり、近年は玄米や雑穀米を食べる人が増えています。外食チェーン店の定食でも、白米の代わりに玄米や雑穀米を選べるようになり、以前よりは栄養素に配慮した食事が広がってきたのはいいことだと思います。

しかし玄米も、白米に比べて食物繊維が多く、ビタミンBやE、ミネラルが含まれているなど優れている面はあるものの、ほかの食材に比べてヘルシーかといわれれば、むしろ不健康な食材といえます。

ビタミンやミネラルが含まれているからヘルシーだというなら、卵のほうが優れています。玄米と卵で、どちらのほうが栄養価が高くて痩せられるかといえば、卵です。

玄米がいいというのは、あくまでも白米に比べればであって、食べれば食後に血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」を起こすことには変わりないので、けっしてヘルシーとはいえません。

■和食をアップグレードする

和食は主食と副食という概念で構成されていますが、先ほど述べたとおり主食は栄養価的には食べなくても困らないものです。

炭水化物をゼロにしなさいとまではいいませんが、まずは体にとって必須の栄養素から摂取することを考えるのが、本来の順番のはずです。この大前提を変えることが、国の宝である子どもたちの食育につながるだけでなく、日本人の健康寿命を延ばす第一歩につながります。

必須栄養素を摂ってもまだ空腹感がある場合に、炭水化物をデザート代わりに食べるぐらいの感覚でちょうどいいのです。

■和食でおすすめの食材

ここまで白米を主食とする食文化を否定してきましたが、前述した通り和食すべてを否定しているわけではありません。白米が多すぎることを除けば、一汁三菜という概念自体は本来の食文化であり、素晴らしいと考えます。

和食(副食)の優れている点は以下になります。

・海産物を中心として栄養を取り入れる考え方
・生ものを積極的に取り入れ、高温加熱が少ない調理法
・食材の種類が多い点

こうした和食の優れた点を踏まえながら、推奨できる料理や食材を以下に挙げます。

・刺身…刺身は加熱しないため、栄養素をもれなく取り入れることができ、すべての人に推奨できます
・貝類…亜鉛やマグネシウムなどのミネラルが豊富で、積極的に摂取してほしい食材です
・納豆…発酵食品は腸内細菌をコントロールするのに有効な食材です。ただし、納豆を食べて腹痛を起こす場合は控えてください
・海藻類…海藻類を積極的に食べる民族は少ないですが、海藻類は水溶性食物繊維やミネラルを多く含み、野菜同様に積極的に摂取すべき食材です

日本の水は軟水のため、欧米に比べると水からのミネラルの摂取は期待できません。その代わり海の食材が豊富なので、これらを積極的に摂取し、栄養管理をしていく必要があります。

刺身
写真=iStock.com/ShyMan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ShyMan

■高脂肪なのに脂質異常症になる人が少ない地中海食

和食をアップグレードさせるためには、ほかの食文化のいいところを取り入れる必要があります。世界のどの地域でも完璧な栄養バランスの食文化はありませんが、その中でも、医学的に注目されているのが地中海食です。

地中海食とは、イタリア、スペイン、ギリシャなどの地中海沿岸諸国の食習慣です。

2010年にユネスコがイタリア、スペイン、ギリシャ、モロッコの各国の無形文化遺産として登録。2013年にはポルトガル、クロアチア、キプロスが追加され、注目を集めています。

医学的に注目されている理由は、1957年からアメリカのミネソタ大学のアンセル・キース博士が中心となり、日本、アメリカ、フィンランド、オランダ、イタリア、ユーゴスラビア、ギリシャの7カ国で行なった疫学研究によります。

その研究によれば、地中海沿岸の国では高脂肪食が多いにも関わらず、脂質異常症が少なく、動脈硬化による狭心症や心筋梗塞、脳血管障害などの血管系の病気も少ないことが報告されました。

■和食に地中海食をミックスさせる

実際の地中海食には、以下のような特徴があります。

・ナッツやオリーブオイルを多く使う
・赤身肉は比較的少なく、魚や鶏肉を多く使う
・穀物は全粒穀物で、豆もよく使う
・乳製品はチーズとヨーグルトが中心
・お菓子の消費は控えめ
・赤ワインも適度に飲む

福島正嗣『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社)
福島正嗣『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社)

地中海食は、日本と同じように海産物が多く、参考になる部分が多いです。

地中海食にあって和食に少ない食材は脂質です。私も和食には、この足りない部分を補うことが重要だと考えます。

和食にはごま油があるので、積極的に良質の油を取り入れれば、医学的にも最善の食事になると考えます。私は豆腐や野菜、納豆などには積極的にごま油やオリーブオイルを使っており、和食の足りない部分を補っています。

----------

福島 正嗣(ふくしま・まさつぐ)
医療法人社団正令会みらい胃・大腸内視鏡クリニック理事長兼院長
1993年、聖マリアンナ医科大学卒業。東京女子医科大学消化器病センター外科に入局後、主に消化管および肝胆膵の悪性疾患の手術を担当。2017年に内視鏡検査専門のみらい胃・大腸内視鏡クリニックを設立、現在に至る。これまでに消化器外科手術2000件、胃内視鏡検査6万件、大腸内視鏡検査3万件の実績を誇る。40歳から糖質制限を始めて肥満や脂質異常症を克服し、自身の体験もベースに多くの患者さんに薬以外の治療として食事指導を行なって成果を上げている。

----------

(医療法人社団正令会みらい胃・大腸内視鏡クリニック理事長兼院長 福島 正嗣)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください