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なぜ12~17歳の子どもは「ノリのいい友達」と一緒になると、急激に振る舞いが変わってしまうのか

プレジデントオンライン / 2022年12月30日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/DisobeyArt

なぜ思春期の子どもは不安定なのか。心理療法士のイザベル・フィリオザさんは「思春期の子どもの脳は大きく変化しており、そのために心もデリケートでナイーブになる。脳の変化の過程では、周囲の環境の影響を受ける。とくに親の対応は重要なので、注意が必要だ」という――。

※本稿は、イザベル・フィリオザ『12~17歳 子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■思春期の脳は「大規模工事中」

思春期の子どもは2年間で、14~24センチも背が伸びます。成長は足の指先のような末端から始まって、手脚、それから胴体と続きます。目に見える変化として、皮膚が厚くなり、顔がニキビだらけになる子もいます。髪が脂っぽくなり、胸がふくらみ始め、体毛が生えます。

他にも汗の量が増え、ホルモンのせいで強い匂いを発散するようになります……。女の子の声は静かに変化しますが、男の子の声は、しゃがれたり出しにくくなったりする時期を過ぎて、劇的に変化します。

どこが変わったか見た目にはわからなくても、感情や行動の上で、観察できる変化もあります。

思春期は、大規模工事です。特に、脳は工事の真っ最中。これは欠陥などではなく、驚くほどの変化なのです。この時期の子どもは、思考、学習能力、芸術的創造力、社会化の領域で華々しい進歩を遂げるのですが、その他の部門はまだそれほど機能していません。

心も体もデリケートでナイーブになり、できていたことができなくなってしまうということも見受けられる時期ですが、これはなぜなのか、脳の発達という側面を見てみると納得できます。

■11~12歳で最高潮を迎える前頭前野の成長

脳には灰白質(かいはくしつ)と白質という2つの色の部分が見分けられます。灰白質は脳細胞、ニューロン(脳を構成する神経細胞)、ニューロンの樹状突起、神経膠(しんけいこう)細胞の集合体で構成されています。脳周縁部の皮質を成していて、脊髄の中を走っており、この物質は神経核を形成している脳の深層部にも見られます。

白質の名前は、「ランヴィエの絞輪(こうりん)」と言われる隙間を残しながら、絶縁体の鞘(さや)のように軸索(じくさく)の周りを囲んでいる白っぽい脂肪から成り立っています。神経インパルス(神経線維によって伝達される電気的・化学的変化)は絞輪から絞輪へジャンプしながら伝わるので、速度が非常に速いのです。

女の子では11歳頃、男の子では12歳頃まで、ニューロンが増え、連結を続けます。灰白質が増えると、脳の皮質が厚みを増し、経験と学習によって多数のルートが描かれます。前頭前野の灰白質形成は、11~12歳で最高潮になります。剪定(せんてい)(無駄な部分の刈り込み)を前に、前頭前野は非常に活性化するのです。

こうしてできたルートは、時にやや複雑で、同じ応答に導くいくつものルートがありえます。そこで、効率を上げるため、脳は領域の再編成に取りかかるのです。道のりを最適化するため、脳は剪定と髄鞘(ずいしょう)形成という方法を取ります。

剪定によって、ほとんど使われていないルートや、回りくどいルート、重複しているルートが閉鎖されます。髄鞘形成はいわゆる高速道路の建設のようなもので、ミエリン鞘(しょう)が軸索という長い神経線維を包んで、神経インパルスが超高速で移動できるようにするのです。

【図表1】髄鞘形成の概念図
出所=『12~17歳 子どもの気持ちがわかる本』

■最適化するためにニューロンの数が減る

白質が増え、ニューロンの数が減ることで、灰白質はだんだん薄くなります。枝打ちされたばかりの木はよく茂っていませんよね? それを考えれば、ティーンエージャーが、期待される能力を直ちには使えないことがおわかりでしょう。一部の能力については、幼い時にはマスターしていたのに、できなくなってしまうことがあります。新しい高速道路が開通すれば行程は早くなりますが、それまでの間いくつかの小さな道が循環しなくなったり、他のルートが過密状態になったりしますよね。

要するに、影響を受けやすいデリケートな時期なのです。というのも枝打ちは当てずっぽうにされるものではないから。もっともよく利用される道は強化され、その他は廃止されます。思春期の子どもとその子を取り巻く環境との相互作用が、まさにその子の脳の回路を形成するのです。

この改修工事によって、ティーンエージャーは、子ども時代に作られた道を再び訪れたりもします。そのため、もう意識されていなかったにもかかわらず、古い傷が復活することがあって、思春期の子どもはこの理由のわからない苦しい気持ちを、愛着の対象、特に主要な愛着の対象である母親(あるいは生後9カ月間に主に世話をしてくれた人)に投影する傾向があります。

■12~13歳の子どもはリスクテイカー

アメリカのメリーランド大学で行われた実験をご紹介しましょう。スクリーン上に1つの風船が現れます。クリックするたびにそれをふくらませてコインを1枚獲得しますが、もし風船が割れたら、得たものをすべて失います。

イギリスのケンブリッジ大学の研究によると、12、13歳の子どもはこのテストで、8歳の時よりうまくいかないそうです!

彼の脳の中で、側坐核(そくざかく)(脳の深部にある神経核で、快感や報酬を求める行動や意欲の向上に重要な役割を果たすと考えられている。喜びと報酬の回路と言われる)と腹側被蓋野(ふくそくひがいや)(VTA)の組織が喜びを予測して脳内に、大人やもっと小さい子より大量のドーパミンを分泌します。

そのため強い感情を追求し、目の前の利益に賭けたくなるのです。12、13歳の子どもの知的・論理的能力は最高レベルなのですが、その能力がうまく発揮されるにはあまりに誘惑が強いのです(※)

※「意思決定とアイオワ州ギャンブルタスクについて」ノースカロライナ大学の論文より

■子どもを全面的に信頼しよう

私たち親は思春期の子どもを信頼できるでしょうか? もちろん、信頼できますとも!

確かに、子どもは規則を破るでしょう。反応も予測がつきます。友だちにそそのかされたり、グループに巻き込まれたりして、うっかり、あるいは単におもしろそうだと思っただけで、やってしまうでしょう。

危険だからやめるという選択肢はありませんし、禁止されているからやめておくという選択肢はもっとありません。反対に、禁止すると、側坐核が刺激され、危険をさらに忘れてしまいます。

親と話している時のティーンエージャーは成熟し、考え深く、自分をコントロールできているように見えるかもしれません。確かにそうなのですが……。しかし仲間と一緒にいる時、感情に強い負荷がかかった状況にある時、睡眠不足やストレスの影響を受けている時は違います。衝動を抑制する脳の働きが停止してしまうのです。もちろん完全に停止するわけではありませんが、その能力は興奮や仲間の影響に簡単に負けてしまいます。

アドバイス
こちらが信頼しさえすれば、うまくいくという幻想は捨てましょう。例えば「お酒は飲まないと、あなたを信じているからね」と言うことは、「お酒は飲まないと約束しなさい!」と約束を無理強いするのと同じで、無駄なだけでなく逆効果を生みます。グループの圧力に抵抗するのに必要な能力を発達させることなく、親の信頼を裏切らなければならない状況にわが子を追い込まないようにしましょう。
「思春期の子どもを信頼する」とは、親の期待にそって振る舞うよう信頼するということではなく、もっと全面的な信頼を意味しています。子どもは道に迷い、失敗し、いろいろな問題にぶつかるでしょう……そうやって人生を生き抜いていく力を養っていくのです。その力を信じてあげましょう。

■親の役割は「脳を守り、必要な栄養を供給すること」

思春期は変化の行程です。そばに信頼できる確固とした親の存在があることが、切り札となります。確固としたということは、妥協しないという意味ではありません。確かに私たち親は、まるでエイリアンに変態した子どもを前にとまどうこともよくあるでしょう。わが子は以前と同じようには反応しませんから。私たちは動揺すると、ついわが子をコントロールしようとします。

イザベル・フィリオザ『12~17歳 子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)
イザベル・フィリオザ『12~17歳 子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)

それに対して、子どもは反抗で応じるしかありません。そうなると親子の関係が打撃を受けかねない上、子どもの将来の能力も危険にさらされるのです。

思春期は脳が非常に傷つきやすい時期です。一連のホルモンとニューロンの再編成のせいで、きわめて敏感な時期であり、発展への窓、つまり学習という観点では大きな可能性を持つ時期でもあります。この時期の子どもは向こう見ずで、反抗的に見えるでしょう。ですが、「何でも知ってる! 大丈夫」という外面の下で、まだ非常に脆(もろ)くて繊細です。私たち親の仕事は、この発展途上の脳を守り、支え、必要な栄養を供給してあげること。

これが思春期に親が受け入れるべき現実です。子どもの行為に影響力を持つのは、私たちより子ども本人なのです。私たち親には子どもの人生を左右する力がない──そう認めることが、私たち親に「本当の力」を取り戻させてくれるでしょう。なぜなら私たちはわが子に対して、非常に大きい力を、何よりも大きい愛の力を持っているからです。

【図表2】子育てがラクになる思春期の親の心得
出所=『12~17歳 子どもの気持ちがわかる本』

■イメージは「航空母艦」

愛着研究のスペシャリストである児童精神医学者ニコル・ゲドネによれば、子どもにとって愛着の対象とは、航空母艦のようなものです。危険があった場合、真っ先に頼る相手を「主要な愛着の対象」と言います。思春期には愛着の新しい方向づけが始まっていますが、まだ親が主要な愛着の対象です。

飛行機は燃料補給のために、航空母艦に戻ってきますね。航空母艦が信頼できるものであるほど、滑走路は見晴らしが利き、燃料は上質で、飛行機は自分の力でより遠くまで飛んで行けるのです。

アドバイス
航空母艦(親)と飛行機(子)のイメージを持つことは、この時期の関係性を理解する上で非常に役立ちます。
親の役割は最高の燃料を供給し、時々修理を施し、そして……必要な時に子どもが休息しに帰ってこられるよう、そこにい続けること。
航空母艦から高度、大気圧、気象などの有益な情報を知らせれば、飛行機はそれを考慮に入れるでしょう。けれど、あまりうるさく制御しようとすれば、何も聞かなくなります。大空で自由に宙返りをし、テスト飛行をすることのほうがずっと重要なのですから。

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イザベル・フィリオザ 心理療法士
1957年パリ生まれ、心理療法士。父は心理学者、母は心理療法士で病気を体・心・感情を含めて全体的に見るというホリスティック医療の先駆者。パリ第5大学で、臨床心理学の修士号を取得したあと、フランス、アメリカ、ベルギー、イギリスなどで、交流分析、新ライヒ派のセラピー、神経言語プログラミングなどを学ぶ。それ以後、独自のセラピーを開発し、感情を専門とするセラピストとして、多くの大人や子どもの治療に当たる。世界的ベストセラーシリーズ『子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)ほか著書多数。

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(心理療法士 イザベル・フィリオザ)

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