重要なのは「発言内容」ではない…会議で「仕事ができる」と思われる人がひそかに心がけていること
プレジデントオンライン / 2023年1月1日 9時15分
※本稿は、犬塚壮志『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』(サンクチュアリ出版)の一部を再編集したものです。
■明らかに「違うな」と思っても意見できない
会議などで、最初に発言した人の意見が全体に影響を与え、なんとなく受け入れられていく光景を目にしたことはないでしょうか? 本当のところ、自分はその人の意見には反対。ところが、口火を切ったからという理由でその人の意見が会議全体の空気をつくってしまい、そのまま通ってしまいそうに……。
私も会社員時代、目上の人や実力者の人たちが参加している会議で、いつも発言を躊躇していました。そして、自分の考えや経験から明らかに「違うな」と思う提案や、自分にとって不利になるような議論の流れになっても反対意見を言うことができず、結果、会議が終わる度にモヤモヤしていたのです。
“このままでは、職場の人たちや仕事そのものに対してネガティブな感情をいだいてしまう。だから、どうにかこの状況を変えなければならない”と思い、あるとき意を決し、こう発言しました。
■驚くほど議論が進んだ「ある一言」
「僭越ながら、経験の浅い私からお話しさせていただいてもよろしいですか?」
司会の担当者から会議の主旨説明が終わり、「誰か、これに関して意見などありませんか?」とあったとき、真っ先に手を挙げてこのように発言したのです。
上司や目上の人たちが大勢いる前でかなり勇気のいることでしたが、続いてこう言いました。
「今回の件に関しては○○の理由から、△△を最優先すべきだと考えています。私の意見を会議のたたき台にしていただければと思います!」
すると驚いたことに、自分が問題提起したことが、その日の会議の議論をリードしていきました。同時に私は、他の人の意見に振り回されることなく、自分の意見を言えた満足感も味わったのです。
その後、私はできるだけ会議の口火を切るよう心がけていきました。もちろん、私の意見が通らないことなどはありましたし、的外れな意見を出したこともありました。
それでも何度か繰り返すうち、話し合いの場で自分の意見を通したいなら先手必勝だということを学びました。最初に出た発言が会議の場の空気をつくり、結果的に議論の主導権を握りやすくするのです。
■毎回鋭い発言をする必要はない
加えて、この効果をより確実に使うには、周囲から「いつも一番はじめに何かいう人」というレッテルをあえて貼ってもらうといいことも経験から学びました。自分以外の複数の人から意見が出てくる可能性のある場では、毎回、自分が一番はじめに発言するのです。
すると、会議の冒頭で周囲の人からあなたの発言に注目が集まるようになります。ポイントは口火を切ること。いつもいつも鋭い発言である必要はありません。意見ではなく、全体に対して疑問を投げかけたり、問題提起をしたりするだけで十分です。
私も東京大学の大学院に入学したばかりの頃、毎回のゼミで「一番はじめに質問をする人」という認識を持ってもらうように振る舞いました。そうすることで、私の質問(問いかけ)からゼミの議論をスタートすることができ、個人的には非常に多くの学びを得ることができたと感じています。
ビジネス上の会議とは異なる面があるかもしれませんが、限られた時間の中で自分がより多くの学びを得るというメリットを考えた重要なコミュニケーションだと考えています。
■人の行動を操れる「円卓のナプキン理論」
なぜ、私たちは会議の冒頭で発言した人の意見に強い影響を受けるのでしょうか? その心の動きは「円卓のナプキン理論」と呼ばれています。
円形のテーブルの上に人数分、左右均等にナプキンが並んでいるとしましょう。どちら側のナプキンを使うか誰もが周囲の行動を観察する中、ある人が左手にあるナプキンを取ったらどうなるでしょうか?
その人の左隣にいる人は右手側のナプキンを取ることができません。その結果、円卓を囲んでいる残り全員が左手側のナプキンを取ることになります。
私たちは最初に行動した人にリードされ、結果、最初に行動した人がその空間のルールをつくることになるのです。その効果は、3人以上が集まる議論で発揮されます。
この「円卓のナプキン理論」は会議冒頭だけでなく、議論が煮詰まっているため別の話題に切り替えたり、結論が出ないままダラダラと時間だけが過ぎていく会議そのものを切り上げたりしたいときにも有効です。
■結論を促さなくても「終わらせる流れ」を作れる
「議論が煮詰まってきたので、いったんこれは寝かせておいて、次の話題に移りませんか?」
「そろそろ時間ですので、次回のミーティングに向けた話をしませんか?」
と、あなたから切り出します。
また、「いったんここまでのことをまとめてみませんか?」と伝えることで、散らかっていた話し合いを、収束に向かうように流れをシフトさせることもできます。直接的に結論を促すとせっかちな人と思われそうですが、終わらせる流れをさりげなく作ることで間接的に会議を切り上げることができるのです。
![会議の場で挙げられた手](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/5/1200wm/img_15e2a6d1d831cfad2a757a6ef8f6eadf111984.jpg)
このように、あなたが先に発言して主導権を握ることによって、会議や打ち合わせそのものの質を高めることができます。意見がまとまらないことによるストレスや、イライラすることも減るでしょう。
ビジネスシーン以外でも、例えば、マンションの住民会でリーダーシップをとらないとまとめられなそうなときには「いったんここまでのことをまとめてみませんか?」と発言することで、ダラダラと続いていた話し合いを仕切り直すことが可能です。
ちなみに、一番はじめに発言することだけを目的にしてしまうと、焦りから中身のない意見や的外れな意見を出してしまい、場の空気を壊してしまいかねません。自信を持って最初に発言するためにも、普段からそのテーマについて深く考えたり、事前に調べておいたりして、自分の発言の精度を高めておきましょう。
■もし他の人の先手で会議が迷走したら…
とはいえ、いつもいつも口火を切れるわけではありませんよね。他の人に先手を奪われてしまって会議が思わぬ方向に進みそうであれば、すぐさまそのあとにあなたの意見をかぶせるようにしましょう。
そのときの意見は、あえて先手を取った相手の意見とずらし、異なる視点の話にすること。すると、場の空気がリセットされ、擬似的にあなたの意見からリスタートするような状況を演出することができます。
枕詞として「ずれた発言だったら申し訳ないのですが」「少し違った観点からの意見で恐縮なのですが」とつければ、最初に発言した人や周囲の人たちからの反感を買うことも少ないでしょう。
仮に、相手と似たような意見しか思い浮かばなかった場合には、相手の発言をインクルード(包含)するような意見にします。例えば、社内会議で誰かが、「自分たちのチームの売り上げを上げていくべき」と口火を切ったとしましょう。
この場合のインクルードする意見とは、「最大の目的は自社の利益を最大化していくこと。それが結果として、チームの売り上げアップにつながります」あるいは「地域全体で協力体制を取ることを念頭においた営業活動にすべきです。その過程で、チームの売り上げもアップしていくはずです」といった内容です。
■“デキる人”と思われる「発言のタイミング」
より大きな枠組みで最初の意見を包み込むことで、あなたのほうが大局観を持っていると周囲に知らしめることができます。結果、会議での主導権はあなたのもとに移るでしょう。
![犬塚壮志『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』(サンクチュアリ出版)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/b/5/1200wm/img_b5a34aee4b3a404dfa9d9d63034bc4dc89234.jpg)
最後に、もし会議のテーマが自分から最初に発言するのに不向きな専門外のテーマや難易度の高いテーマだったときはリスクをとらず、別の作戦を。こうした場合、むしろ会議の最後に発言しましょう。
司会が「他にもう意見はありませんか?」と投げかけたとき、他の人からの発言がなさそうな状況を確認して「それでは最後、私の意見としましては……」と切り出し、最後のポジションを陣取ります。
すると、別の心理効果「ピーク・エンドの法則」というものが働き、会議の出席者にあなたの意見を強く印象づけることができるのです。
ぜひ、「円卓のナプキン理論」や「ピーク・エンドの法則」といった交渉術を使って、会議の主導権を握ってください。
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教育コンテンツプロデューサー/士教育代表
福岡県久留米市生まれ。元駿台予備学校化学科講師。大学在学中から受験指導に従事し、駿台予備学校の採用試験に25歳の若さで合格(当時、最年少)。駿台予備学校時代に開発した講座は、超人気講座となり、季節講習会の化学受講者数は予備校業界で日本一となる。2017年、駿台予備学校を退職。独立後は、講座開発コンサルティング・教材作成サポート・講師養成・営業代行をワンオペで請け負う「士教育」を経営する。著書に『あてはめるだけで“すぐ”伝わる 説明組み立て図鑑』(SBクリエイティブ)、『理系読書 読書効率を最大化する超合理化サイクル』(ダイヤモンド社)がある。
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(教育コンテンツプロデューサー/士教育代表 犬塚 壮志)
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