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「この仕事量、本当に無理です…」と上司に相談しても、「もうちょっと頑張れ」と返されてしまう本当の理由

プレジデントオンライン / 2023年1月2日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

上司に自分の意見を正確に伝えるにはどうすればいいか。教育コンテンツプロデューサーの犬塚壮志さんは「相手に『察して欲しい』という言い方ではズレた返答が返ってくる。感情ではなく、事実ベースで問題点を伝えることが重要だ」という――。

※本稿は、犬塚壮志『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』(サンクチュアリ出版)の一部を再編集したものです。

■相談したのに「なんか、ズレている…」

あなたが自分の会社の上司に、「この仕事量、本当に無理です……」と、助けを求めたとしましょう。

すると、

「オレの若い頃はもっと大変だったぞ。だから、きっと、どうにかなる!」

と、返ってきました。

どうやら上司は励ましているつもりのようです。でも、「なんか、ズレている……」「そこじゃないんだけど……」とモヤモヤしてしまいますよね?

このようなとき、どう伝えれば、あなたが多すぎると感じている仕事量を減らすことができるのでしょうか。

私も会社員時代、仕事量が自分のキャパシティを明らかにオーバーしたことがいくどもありました。

先輩や上司に、「こんなに忙しいのに、この業務、来週が締め切りなんて、本当にムリです……」と伝えても、「みんないっしょ」「がんばれ」と言われるばかりでいっこうに仕事を減らすことができませんでした。

ついには無理がたたって体を壊し、周囲に迷惑をかけることに。

それ以降、伝え方、特に、要望や提案を通すテクニックや交渉スキルの必要性を感じたのです。

■“本当に言いたいこと”が隠されてしまっている

幸いなことに、社会人になってから通った大学院で交渉学を学ぶ機会がありました。

そこで、弁護士や外交官のような交渉を専門とする仕事に就いていない自分でも交渉力さえ高めることができたら、もっと自分の要望や提案が通り、人生の自由度が上がると考えました。

そこで私は、基礎の基礎から交渉術を徹底的に身につけようと決意。最優先で学んだのが、自分の要望や提案を通す手法です。

さっそくその手法について、説明しましょう。

自分の提案をどうにかして通したいとき、「せめて、これだけは相手に飲んでほしい……!」と強く望んでいる要望があるときに使える交渉テクニックが、自分の「主張」と「根拠」をセットにして伝えること。

冒頭のあなたと上司のやりとりの「この仕事量、本当に無理です……」は「……」の部分に「主張」の重要部分が隠されてしまい、さらに「根拠」も欠けています。すると、上司からは部下がボヤいているように見えてしまい、的外れな叱咤(しった)激励につながってしまうのです。

伝える順番は、「根拠→主張」または「主張→根拠」のどちらでもOKです。大事なのは、2つがセットになっていること。フレーズにすると、「○○である(根拠)。だから、□□だ(主張)」「□□です(主張)。なぜなら、○○だからです(根拠)」となります。

■根拠には必ず「証拠」をつけることも忘れずに

さらに、「根拠」に「証拠」があることも欠かせません。証拠があるというのは、交渉相手も認めざるを得ない「事実」であることです。

相手からズレた答えが返ってきてしまう理由は、「主張」の解像度が低く、「根拠」が薄いから。あなたは自分の要望を伝えているつもりでも、上司は問題点を把握できないのです。

ビジネスの交渉
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

相手にも同じような解釈や感想をもってもらいたいなら、はっきりとした「主張」と客観性の高い「根拠」を必ず添えて伝える必要があります。

根拠に相当する「証拠」についてもう少し詳しくお話ししましょう。証拠のレパートリーを増やしておくと、より高い説得力を保つことができます。

証拠として高い機能を持つのは、以下の両方の性質を帯びるものです。

性質① 相手がすでに知っているもの、もしくは、すぐに理解できるもの
性質② 客観性が高いもの

性質①の「相手が知っているもの、もしくは、すぐに理解できるもの」は、説得において、相手の認識から入ることの重要性を説いています。つまり、相手があらかじめ知っていて納得のできるものから前フリとしてはじめるほうが相手を説得しやすいということです。

説得したい相手が複数人であれば、できるだけ多くの人が知っている証拠を選びましょう。相手が知らない証拠であれば、理解できるようにわかりやすくかみ砕いて伝えることが必須です。

■感情ではなく、事実ベースで問題点を述べる

性質②の「客観性が高いもの」は、他の誰もが「そうだ」と思える情報です。

たとえば、具体事例や歴史的な事実、格言、寓話(ぐうわ)などです。人名や社名といった固有名詞、数字などを使って表現します。

逆に、根拠に自分の考えや漠然とした感情・感覚のような主観的な情報を持ってきても、相手を説得することはできません。

自分が困っている際には、単に「困っています」と伝えるのではなく、事実ベースで問題点をまず整理します。そして、「○○なことが起こってしまっているのですが」と事実として起きている問題を相手に伝えるようにするのです。

以上を踏まえて、冒頭の上司とのやりとりに戻ってみましょう。

仕事量が多すぎるという相談に対し、「俺が若い頃はもっと大変だった」とズレた答えを返すだけでなく、「あの頃は~」と武勇伝まで語り始めそうな上司。この行き違いを解消するには、「主張」の解像度を上げ、「根拠」を明確に示す必要があります。

■「察して欲しい」と願うのは逆効果

「仕事量が多くて1つ1つの案件に少しずつ遅れが生じています。今後、取引先に迷惑がかかる可能性が高いです。案件Bを別のメンバーに頼むなど、仕事量の調整をお願いできますか?」

「仕事量が多すぎて、私も含め、チーム全員、残業が続き、疲れています。本格的に体調を崩し、納期に間に合わなかった場合、大きな損害が出ますよね。サポートメンバーを入れる、納期の延長を交渉するなど、対応をお願いします」

自分の要望や提案を通したいとき、言葉を濁しつつ「察して欲しい」と願うのは逆効果。強気、生意気と思われる……と不安かもしれませんが、「主張」と「根拠」を明確に示しましょう。それがあなたの自由につながります。

最後に、「根拠」を添えたやり取りにおける注意点を2つだけお伝えいたします。

注意点① 断定用語は、極力使わない
注意点② 相手の主張は否定しない

注意点①としては、「すべて」「100%」「必ず」「絶対に」などのような、断定する用語は使わないようにします。相手に「さすがにそれはいいすぎでしょ」と思われる可能性が高く、反例を示されると脆いからです。

■主張を否定するのではなく、根拠を否定するといい

注意点②「相手の主張は否定しない」は、相手が自身の主張や要望を通そうと仕掛けてきたとした場合の注意点です。例えば、同じ会社の上司が仕事のスタンスを押しつけようとしてきたケースを想定します。

犬塚壮志『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』(サンクチュアリ出版)
犬塚壮志『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』(サンクチュアリ出版)

上司が、「オレが若い頃なんて同期の誰よりも先に課長になりたくって、昼夜問わず休日返上でがむしゃらに働いていたんだ(根拠)。だから、キミも愚痴をこぼす前に、プライベートをかなぐり捨ててがむしゃらに働いてみたらどうだ(主張)」といってきたとしましょう。

このとき、「がむしゃらになんて働きたくないんです」「その考え方には賛同できません」「プライベートは捨てたくありません」など、相手の主張は否定しないようにしましょう。それがたとえ本心からの言葉であったとしても、相手の感情を逆撫でし、精神論のぶつけ合いになりかねません。

そうではなく、相手の発言の根拠部分だけを狙い撃ちして否定するのです。

つまり、「ボクは同期より先に出世したいと思っていないんです」「そもそも、私は出世に興味がないんです」と相手の根拠を否定。すると、相手の主張を成立させなくすることができます。

ぜひ、自分の要望や提案には、相手が同じように考えることができる「客観性の高い根拠」を必ず添えるようにしてみてください。

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犬塚 壮志(いぬつか・まさし)
教育コンテンツプロデューサー/士教育代表
福岡県久留米市生まれ。元駿台予備学校化学科講師。大学在学中から受験指導に従事し、駿台予備学校の採用試験に25歳の若さで合格(当時、最年少)。駿台予備学校時代に開発した講座は、超人気講座となり、季節講習会の化学受講者数は予備校業界で日本一となる。2017年、駿台予備学校を退職。独立後は、講座開発コンサルティング・教材作成サポート・講師養成・営業代行をワンオペで請け負う「士教育」を経営する。著書に『あてはめるだけで“すぐ”伝わる 説明組み立て図鑑』(SBクリエイティブ)、『理系読書 読書効率を最大化する超合理化サイクル』(ダイヤモンド社)がある。

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(教育コンテンツプロデューサー/士教育代表 犬塚 壮志)

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