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"まさかのブランド"が躍進の予感大…「箱根駅伝2023 厚底ウォーズ」の行方を密着ライターが大胆予測した

プレジデントオンライン / 2023年1月2日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/amriphoto

「箱根駅伝2023」はどんな展開になるのか。連覇を狙う青学大、3冠を目指す駒大が二大優勝候補だが、レース展開同様に注目されているのが「厚底ウォーズ」だ。例年、高いシェア率を誇るナイキを筆頭にアディダス、アシックス、ニューバランスなどのメーカーがしのぎを削っているが、スポーツライターの酒井政人さん「意外なブランドが躍進するとみています」という――。

■箱根駅伝Vの行方とともに「足元」にも脚光

例年25%以上の視聴率を誇る箱根駅伝。2023年大会は、出雲駅伝と全日本駅伝に続く“3冠”を狙う駒澤大と、“連覇”して直近9年で7度目の優勝を目指す青山学院大の2強対決が予想されている。さらに出雲と全日本で2位に入った國學院大、前回準優勝の順天堂大、24年大会の優勝を狙っている中央大などが熱い戦いを繰り広げるだろう。

近年はランナーたちの足元も脚光を浴びている。2017年夏にナイキがカーボンプレート搭載の厚底シューズを一般発売。この“魔法のシューズ”を履く選手たちが快走を連発して、いつしか箱根路は“ナイキ一色”に染まった。

厚底登場前の17年大会は出場210人中36人(17.1%)だったナイキは21年大会で210人中201人まで上昇。着用率は驚異の95.7%に到達した。

前回22年大会はアシックスが逆襲する。前年0人から24人(11.4%)までV字回復を果たしたのだ。

シューズシェア率は1年単位で大きく変貌している。箱根駅伝2023の“厚底ウォーズ”はどうなるのか。

まずは前回の22年大会の着用シューズをおさらいしたい。出場210人が着用していたのは以下の通りだ(カッコ内は21年大会の人数)。

①ナイキ154人(201人)②アディダス28人(4人)③アシックス24人(0人)④ミズノ2人(3人)⑤ニューバランス1人(2人)⑥プーマ1人(0人)

王者ナイキがシェアを下げたとはいえ、圧倒的な強さを示した。アディダスとアシックスがパイを奪い返すも、ミズノとニューバランスは2年連続で低迷した。

■11月の全日本大学駅伝もナイキが“完勝”

箱根駅伝2023のシューズを予想するうえでは、11月に行われた全日本大学駅伝が参考になるだろう。

レースは、10月の出雲駅伝に続いて駒大が独走Vを果たした。追い風になったこともあり、4位までが大会新。駒大は大会記録を4分21秒も更新した。これもシューズの進化が大きく影響している。ナイキだけでなく、他社も続々とハイレベルのモデルを発売しているからだ。

今年の伊勢路で一番目を引いたのは、ナイキ厚底の最新カラー「トータルオレンジ」のシューズだ。ユニフォーム契約をしている駒大、中大、東洋大、東海大、明治大の選手たちを中心に着用。他のカラーを履いていた選手も多く、今回もナイキが一強だった。

具体的な数字を調べることはできなかったが、ナイキの着用率は7~8割ほど。正月の箱根駅伝(76.6%)と同等のシェア率だったといえるだろう。区間賞獲得者と着用シューズメーカーは以下の通りになる。

1区 ピーター・ワンジル(大東文化大2)ナイキ
2区 葛西潤(創価大4)アディダス
3区 石原翔太郎(東海大3)ナイキ
4区 山川拓馬(駒大1)ナイキ
5区 青木瑠郁(國學院大1)プーマ
6区 吉居大和(中大3)ナイキ
7区 田澤廉(駒大4)ナイキ
8区 花尾恭輔(駒大3)アシックス

最も区間賞を獲得したのはナイキだった。主なモデルは2つで、「ヴェイパーフライ ネクスト% 2」(以下、ヴェイパーフライ)と、前足部にエアが搭載された「エア ズーム アルファフライ ネクスト% 2」(アルファフライ2)もしくは「エア ズーム アルファフライ ネクスト%」(以下、アルファフライ)だ。

ナイキ「ヴェイパーフライ ネクスト% 2」
ナイキ「ヴェイパーフライ ネクスト% 2」(ナイキ公式サイトより)

■各大学の有力選手はどのブランドのシューズを履くのか

なかでも圧巻の走りを見せたのがヴェイパーフライを着用していた駒大の絶対的エース・田澤廉だ。トップを独走しながら、区間記録を43秒も塗り替えた。なお同区間で区間記録を29秒上回った近藤幸太郎(青学大4)は昨年発売されたアルファフライを履いていた。

他の有力選手でいうと2区で区間新(区間2位)をマークした佐藤圭汰(駒大1)、同区間で3位だった三浦龍司(順大3)がヴェイパーフライ。準優勝のゴールテープを切った伊地知賢造(國學院大3)はアルファフライ2を着用していた。

今年の箱根駅伝で前年よりシェアを伸ばしたアディダスとアシックスもしっかりと区間賞を獲得した。

アディダスは2区葛西潤(創価大4)が区間新の快走でトップ中継。着用していたモデルは今年7月に発売された「アディゼロ アディオス プロ 3」で、アディダス独自の5本指カーボンを搭載した厚底シューズになる。他の有力選手では岸本大紀(青学大4)、平林清澄(國學院大2)もアディダスを着用していた。

アディダス「アディゼロ アディオス プロ 3」
アディダス「アディゼロ アディオス プロ 3」(アディダス公式サイトより)

アシックスは8区花尾恭輔(駒大3)が日本人歴代4位となる57分30秒で区間賞。2年連続でアシックスのシューズを履いて、優勝ゴールに飛び込んだ。今回着用していたモデルは今年6月に発売された「METASPEED SKY+」だ。ストライド型ランナーがよりストライドを伸ばし、少ない歩数でゴールすることを追求したシューズになる。ピッチ型向けのモデル「METASPEED EDGE+」もあるが、レース用としては「SKY+」をチョイスしている選手が多いようだ。

アシックス「METASPEED SKY+」
アシックス「METASPEED SKY+」(アシックス公式サイトより)

大躍進を遂げたのがプーマだ。5区青木瑠郁(國學院大1年)が今年10月に発売された「FAST-R NITRO ELITE Fire Glow」という厚底モデルを履いて区間賞を獲得。丹所健(東京国際大4)も2区で7人抜きを演じている。

今回は区間賞に届かなかったが、ミズノは嶋津雄大(創価大4)が着用。6区で2人抜きを披露している。一方、ニューバランスは目立った活躍がなかった。

■箱根駅伝2023の「シェア争い」はどうなるのか

全日本大学駅伝から箱根駅伝は2カ月間ほどしかないため、他のメーカーに履き替える選手は非常に少ない。そのため箱根駅伝2023でも全日本大学駅伝と同じようなシェア率になることが予想される。正月決戦もナイキを履くランナーが7~8割を占めることになるだろう。

ナイキは今冬の駅伝シーズンに向けて、シューズとアパレルからなる「EKIDEN PACK」コレクションを12月1日より発売中。2003年に発売された「ナイキ メイフライ」というモデルと、日本古来の勝利の象徴でトンボを意味する「あきつ」をインスピレーションしたデザインになっている。なおこのコレクションは基本、日本国内だけの発売だが、面白いことにデザインはナイキジャパンではなく、米国本社が担当しているという。ナイキの本気度がわかるだろう。

新モデルの登場がないため、箱根駅伝出場選手はヴェイパーフライか、前足部にエアが搭載されたアルファフライ2、もしくはアルファフライを着用することになる。なお前回1区で驚異的な区間記録を打ち立てた吉居大和(中大3)はアルファ2を履いて勝負に出る予定だ。

アディダスは全日本大学駅伝でも活躍した葛西潤(創価大4)をはじめ、岸本大紀(青学大4)、平林清澄(國學院大2)が着用しているが、一番の大物はイェゴン・ヴィンセント(東京国際大4)だろう。箱根では1年時に3区、2年時に2区で区間記録を樹立。3年時にナイキからアディダスに履き替えている。今回は3区もしくは4区の出場が濃厚で、4区に出場することになれば3区間で区間記録保持者になるかもしれない。

アシックスは全日本大学駅伝大会の最終8区で区間賞を獲得した花尾恭輔(駒大3)、箱根駅伝予選会で日本人トップを飾った木村暁仁(専修大3)の活躍が期待できる。同社のユニフォームを着る帝京大、専大、山梨学大では履く選手が数人いる見込み。シェアを大きく伸ばすのは難しいが、今回も存在感を発揮するだろう。

箱根駅伝を協賛しているミズノは前年に続き苦戦が予想される。9月下旬、同社初の厚底シューズとなる「WAVE DUEL PRO」を発売。踵部分が厚くない独特なデザインは注目を浴びたが、学生トップランナーの着用者は現状いないようだ。ただし、ミズノは前回4区区間賞の嶋津雄大(創価大4年)が愛用している。嶋津は厚底が合わないため、今後発売予定の非厚底タイプを着用予定。今回もインパクトある走りを見せてくれるだろう。

ミズノ「WAVE DUEL PRO」
ミズノ「WAVE DUEL PRO」(ミズノ公式サイトより)

ニューバランスは前回1人だったが、今回は順大と城西大の2校が同社のユニフォームを着用している。少しはシェアを伸ばすかもしれない。

そして一番の注目は……。

■箱根駅伝2023では「プーマ」が躍進する予感大

箱根駅伝ではニューカマーといえるプーマだ。日本ではサッカーのイメージが強いが、陸上界では世界的なアスリートが愛用している。前回は加藤大誠(明大4)ひとりの着用者だったが、全日本大学駅伝では青木瑠郁(國學院大1)、丹所健(東京国際大4)、宗像聖(東京国際大4)の3人が着用していた。

プーマ「FAST-R NITRO ELITE Fire Glow」
プーマ「FAST-R NITRO ELITE Fire Glow」(プーマ公式サイトより)

加えてプーマのユニフォームを着ている立教大が箱根駅伝予選会を突破。正月の晴れ舞台に55年ぶりに出場することになる。箱根予選会でプーマを履いていた立大の選手はいなかったが、普段の練習では多くの選手が同社のシューズを活用しており、本番でも履く選手が出る可能性がある。

前回はナイキを着用して3区の日本人最高タイムを叩き出した丹所は、今回プーマの未発売モデルを着用する予定。「ナイキ厚底シューズと変わらないクッション性もあるし、スピードも出る。ナイキから脱出するのはなかなか難しいと思うんですけど、自分には合っていると思います」と話していた。

あるスポーツ専門店では今秋のレーシングシューズの売れ行きはナイキよりもアシックスの方がいいという。「METASPEED」シリーズへの関心の高さがうかがえるが、まだまだレースではナイキを選ぶ選手が圧倒的に多いようだ。また昨季まではアディダスを履いていた選手が今夏に発売されたアルファフライ2を気に入り、ナイキに履き替えたパターンもある。

各社がハイレベルのシューズを登場させていることで、選手たちは“シューズ選び”に悩んでいるようだ。まだまだ“厚底ウォーズ”は続くだろう。

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酒井 政人(さかい・まさと)
スポーツライター
1977年、愛知県生まれ。箱根駅伝に出場した経験を生かして、陸上競技・ランニングを中心に取材。現在は、『月刊陸上競技』をはじめ様々なメディアに執筆中。著書に『新・箱根駅伝 5区短縮で変わる勢力図』『東京五輪マラソンで日本がメダルを取るために必要なこと』など。最新刊に『箱根駅伝ノート』(ベストセラーズ)

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(スポーツライター 酒井 政人)

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