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息子を亡くした資産家独居74歳が餌食…親切顔の女友達2人組「300万円の車は50万円で売却できた」は限りなく嘘

プレジデントオンライン / 2022年12月30日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kumikomini

ひとり暮らしの高齢者の中には多くの資産を持ち、現金や貴金属などを自宅に保管している人が少なくない。認知症の初期症状がある74歳女性は同居していた障害を持つ40代後半の息子を突然亡くした。お金のにおいを嗅ぎつけ寄ってきた“輩”によって知らず知らずのうちに大金をむしり取られたが、女性は何の疑いも抱いていない。成年後見人を務める司法書士が語る、最近増えているそうしたグレーな案件の防止策とは――。

■50万円以下ですむ葬儀なのに、請求は150万円

「認知症の高齢者、とくに身近に見守る家族がいない一人暮らしの方には、お金をむしり取ろうとする輩が近づいてくることが多いので要注意です」

そう語るのは、関東地方で成年後見人として8年のキャリアを持つ司法書士のKさん(45)です。最近遭遇した高齢女性の被害を話してくれました。

「Tさん(74歳・女性)の妹さんから連絡がありました。『先日、姉と会ったんですが、どうも言動がちょっとおかしい。認知症になったんじゃないか』というんです。Tさんはかなり前に離婚され、今は障害を持つ息子さん(40代後半)と首都圏の一軒家で二人暮らしをしています。妹さんが言うには“姉はけっこう資産を持っていて認知症になったとしたら、その管理が心配。息子の将来のことも気になるし、成年後見人をつけることを考えている。相談に乗ってもらえないか”と」

成年後見人には親族もなれるのですが、妹さんは群馬に住んでおり、近隣の専門家に頼んだ方が安心と思って伝手(つて)を頼って私に連絡してきたわけです。ただ、緊急の案件ではなかったので、後日、会って相談しましょう、ということになったそうです。

ところが、その1カ月間にTさんに重大な出来事が起きました。

「これは後で妹さんから聞いた話です。まず、息子さんが急逝されたそうなんです。葬儀をしたのですが、今はコロナ禍で簡素なものが主流。息子さんの葬儀も参列者は親族5人のみの家族葬だったんですが、妹さんによれば、会場は広いし祭壇は大がかりだった。それで後でTさんに費用を聞くと、150万円近くだったと。それもお坊さんにかかる費用を含まず葬儀社への支払いだけで。参列者5人の家族葬ならかかっても50万円程度が相場でしょう。大手の葬儀社だったそうですが、相手を見て、“この家は取れる”と思ったんじゃないですか。葬儀費用なんて素人はよく分からないものですし、ましてやTさんは最愛の息子を亡くしてひどくショックを受けているうえ認知症気味。息子さんのためならと、言われるがまま、祭壇は立派なものを、お花も飾って、と応じたらしいです」

50万円以下ですむところが、150万円……。3倍のコストも資産家のTさんには大きな損害とはいえなかったかもしれませんが、葬儀社の行為が意図的であれば、悪質です。しかも、重大な出来事はそれだけではなかったのです。

■“300万円”のクルマの売却額が50万円だった

葬儀の約2週間後、一人ぼっちになったTさんを心配して、妹さんが家を訪ねたところ、車庫に停めてあるクルマが見当たらない。「クルマはどうしたの?」と聞くと、「友達に売ってもらった」と。認知症の症状がある70代の高齢女性が自動車を運転するというのも怖いですが、息子さんを施設や病院に連れて行くのに必要だったそうです。この来訪時、妹さんも売却や免許返納の話をするつもりだったそうですが、友達なる人に先を越されたわけです。Kさんは「売ってもらった」という部分が気になったので一部始終を聞くと、驚きの事実が判明しました。

「妹さんは、Tさんに『いくらで売れたの?』と聞くと、返ってきた答えが50万円。新車で購入した時は300万円近くしたクルマで、まだ5年くらいしか乗っていない。事故もなくきれいに使っていたので、少なく見積もっても100万円以上で売れるはずだ、というわけです。不安になった妹さんは、『その友達ってどんな人?』と聞くと、昔の知り合いで“息子さんが亡くなったと聞いて心配になったので訪ねてきた”女性2人組だそうです」

妹さんの嫌な予感は確信へと変わりました。おそらく業者にはもっと高く売れたのに、Tさんには50万円だったと言ったに違いありません。

その女性2人組がTさん宅に来たのは計4回。1回目は最愛の長男を亡くしたTさんの悲しい胸の内を親身に聞いてくれたそうです。2回目もいろいろと励ましてくれた後、クルマの売却の話が出て、3回目には買い取り業者を連れてきて、売る手続きをしたとのことでした。そして問題なのが4回目。Tさんを元気づけるために食事に誘ってくれたというのです。それ自体はいいのですが、なぜか2人組のひとりが「私は留守番をしているから」と残り、Tさんはもうひとりの女性と出かけました……。と、そこまでTさんの話を聞いていた妹さんはハッとして、一目散に走りました。

和室の障子
写真=iStock.com/ablokhin
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ablokhin

預金通帳やキャッシュカード、印鑑などを保管している場所へ向かったのです。盗まれたのではないか……と貴重品が入った引き出しを全部確認したそうです。幸い、無事でしたが、別の保管場所である「宝飾品とかは大丈夫?」と聞くと、「何があるかいつも確認しているわけじゃないから分からないわ」と一切疑っていません。それどころか、Tさんは最後に妹さんにこう言い放って激怒したそうです。

「あんた、(女性2人組は)私のことを心配して来てくださっているのに疑うなんて失礼じゃない」

■「お金のにおいを嗅ぎつけた人たちが寄ってくるんです」

妹さんから、この話を聞いた時、Kさんは「無理に時間をつくってでも相談に乗っておくべきだったと思った」と言います。

「成年後見人をつけるかどうかは重要な判断ですから、すぐに決まるものではありませんし、仮に決まったとしても手続きに時間がかかるため、今回のような2つの出来事が起こった時点で成年後見人になってはいないでしょう。ただ、後見人の候補者として交流ができることでアドバイスはできるわけです。息子さんが亡くなった時も連絡は来るでしょうから、葬儀の相談にも乗れる。クルマの売却についても『いくら親しくても素人がそんな話を持ちかけてくるのはおかしいから応じない方がいいですよ』と。私のように成年後見人として高齢者や認知症の方と接していると、こうした類いの話は残念ながら、日常的に数多く聞きます。葬儀社の件は、業者側からすれば“営業の範囲内”でしょうし、2人組の女友達にしても売却代金50万円は支払われていますから悪い人とは決めつけるわけにはいきませんが、資産を持っていそうな高齢者には、お金のにおいを嗅ぎつけた人たちが寄ってくるものなんです」

心に寂しさを抱えた高齢者は少なくありません。それに認知症が加わり判断能力が鈍ると、普通ならおかしいと思うことも信じてしまうものです。振り込め詐欺を行う犯罪集団だけでなく、違法ではないものの、グレーなやり方で利を得ようとする人たちもいるということ。そうした高齢者が家族の目の届かない状況にあるのであれば、Kさんのような経験豊富で面倒見の良い成年後見人をつける検討をしてみてもいいかもしれません。

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相沢 光一(あいざわ・こういち)
フリーライター
1956年生まれ。月刊誌を主に取材・執筆を行ってきた。得意とするジャンルはスポーツ全般、人物インタビュー、ビジネス。著書にアメリカンフットボールのマネジメントをテーマとした『勝利者』などがある。

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(フリーライター 相沢 光一)

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