3位は綾野剛&反町隆史、2位は橋本愛、1位は…国内ドラマ「2022年俳優ランキング」男女混合ワースト10
プレジデントオンライン / 2022年12月30日 17時15分
■「才能の無駄遣い」を感じたワースト俳優ランキング
2022年のドラマを振り返り、僭越(せんえつ)ながらワースト俳優を決めさせていただく。ベスト俳優同様に点数をつけてはみたのだが、「正直、俳優に罪はなくね?」と思う案件もある。作品自体の質の問題、要するに「出て損している」「才能の無駄遣い」というケースも。とりあえず5項目で点数をつけてみた。
「そもそも話が面白くない」「キャラクターに特筆すべき特性や魅力がない」「演技力に難あり」「ミスキャスト感 設定に無理あり」「途中脱落 最後まで観たいと思わなかった」。
それぞれ1点ずつの合計でワースト10を決定。
10位 今田美桜 元気印ドタバタ女子の限界
「悪女(わる)」(日テレ)1点
30年前に石田ひかりが演じた作品をリバイバル。令和仕様でちっとも悪女ではない田中麻理鈴を今田美桜が演じた。
社内を走り回り、各部署で味方や仲間を増やし、女性社員を奮起させる。日テレは相変わらずヒロインに破天荒元気女子をもってくるが、正直キツイ。元気印のドタバタ女子が起こす化学変化という古典は、日本のドラマ界でいまだに健在。ガラパゴスヒロインだな。
朝ドラの「おかえりモネ」で今田が演じた神野マリアンナ莉子が令和の空気に合っていてすごくよかったので、つい比べてしまった。
■ドラマよりも気になった香川のスキャンダル
9位 竹内涼真 騒動のほうが迫力出ちゃったしねぇ…
「六本木クラス」(テレ朝)2点
原作に忠実に作ればいいってもんじゃないし、かといって微妙なカスタマイズで日本版を作ると大失敗するし、韓国ドラマのリメイクは難しい。結局、本家「梨泰院クラス」を観ればいいってことに。
竹内涼真の前髪と清涼感は忠実なのだが、背負った不幸と復讐への凄みが足りなかった気がする。優しい顔は損だな。早乙女太一は迫力あったよね、底意地の悪さに。
放送中に共演の香川照之の一件があって、どう観ていいのかわからず、脱落した。ドラマよりもドラマチックな凋落を目の当たりにしちゃったから。
■作品は面白かったけれど…
8位 佐藤勝利 五感はいいが、棒読み感が
「赤いナースコール」(テレ東)2点
若手脚本家がサイコパス病院の惨劇に巻き込まれるサスペンスホラー。佐藤勝利は、身の毛もよだつとんでもない殺人事件に巻き込まれるのだが、恐怖の表情はすこぶるいい。本当に怖がっている感じが表情筋から伝わってくるのだが、推理を展開する場面では超絶平坦な口調で驚愕。あまりの恐怖で舌が回らなかったのか、抑揚を失ったのか。
ただし、他の役者が手練れ&きわもの揃いで、最後まで目を離せなかった。
■ジャニーズなのに芸人にしか見えない
7位の前に、ちょっと悩んだ次点を紹介しておこう。
●向井理 たばこが嫌い 「婚活探偵」(BSテレ東)1点
恋愛経験がほとんどないハードボイルドな探偵が婚活するというコメディ。筋金入りの喫煙者の役なのだが、あまりにたばこの吸い方が下手すぎて。たばこが嫌いな人に見えた。些末な1点だが致命的な1点でもあり。
●山下智久 村本にしかみえない 「正直不動産」(NHK)1点?
嘘つきの不動産営業マンが石碑を壊した呪いで、嘘をつけなくなるという話。意志に反して、都合の悪い真実や本音を怒涛(どとう)のように吐き出すシーンがあるのだが、山下智久がウーマンラッシュアワーの村本大輔にしか見えなくなって笑えた。これワーストではなく、むしろベストだな。
●阿部寛 しまいには風呂に潜っていた 「DCU」(TBS)微妙
水中の事件や事故を捜査する特殊捜査隊の話。海や川、湖の迫力ある映像……と思いきや、途中から陸の捜査がメインに。しまいには水族館や温泉に潜っていた阿部寛。
水中の顔圧(迫力のある顔)はハリウッド級なのに、捜査する舞台がどんどんしょぼくなって。お金がなかったのか、海上保安庁が渋ったか。
ということで、ランキングに戻る。
7位 町田啓太 ぬるいホモソーシャルで無駄遣い
「テッパチ!」(フジ)3点
![写真=フジテレビ「テッパチ!」公式サイトより](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/9/2/1200wm/img_92480486767bd7e80f1322261fd9bac5637034.jpg)
陸上自衛隊の自衛官候補生たちを描くっつうんで、期待して観たけれど、無駄にシャワー、上半身裸、腕相撲……それじゃない感のてんこ盛り。
町田啓太は生ぬるい青春ホモソーシャルに合わない。女性の多い環境や精神的にひりつく修羅場でのほうが、繊細な感情表現や立ち居振る舞いの妙が生かされるのに。女性教官(白石麻衣)とやたら出合い頭で衝突するのも、前方不注意が過ぎる。自衛官としての資質を疑う。防衛省の全面協力が仇となったのか、そもそもの内容がひどかったのか。
■キムタクドラマはいつも通りの構図
6位 飯豊まりえ 特殊能力が微妙で暗すぎるヒロイン
「オクトー ~感情捜査官 心野朱梨~」(日テレ)3点
飯豊まりえは感情の色が見える特殊能力の持ち主と聞いて、面白そうだと思ったのだが、真相にたどり着くまでが結構大変。スケッチブックにクレヨンで色を塗るも、その後は想像力と推理力っつう、やや限定的能力だ。
両親を殺害され、自分をかばった姉が感情を失った状態で入院中という悲惨な過去を背負っているのだが、重さが伝わってこず、ただただ暗いヒロインという印象。ヒロインの特性として、何かひとつでも惹きつけるフックが欲しかった。
5位 木村拓哉 希死念慮強い不機嫌な中年の負の影響
「未来への10カウント」(テレ朝)木村拓哉 3点
![写真=tv asahi「10count」公式サイトより](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/c/1200wm/img_3cd03bc036efdbde10260def1032c387558533.jpg)
初回、ピザをデリバリーした木村拓哉がチンピラあんちゃんたちにオッサン扱いされてボコられるのを観て、ちょっと安心した。ようやくやさぐれてしょぼくれた中年の憂いを演じられるようになったのかと。
ところが、なぜか教員免許をもっていて、焼き鳥屋もやっていて、伝説のボクサーで、とてんこ盛りの経歴。不機嫌で無愛想な中年を盛り立てるために、まわりの大人がみんなバカな役回りに見えてしまう構図がつらい。要するに定番、キムタク通常運転。
■尻すぼみ展開の秋元ドラマ
4位 佐々木希・遠藤憲一・斉藤由貴 タチの悪いコメディに悪ノリ
「YouTuberに娘はやらん!」(テレ東)3点
2022年は秋元康原作ドラマが各局を席巻、名優が次々に巻き込まれていくのを観て忸怩(じくじ)たる思い。特徴としては、切り口と第1話は面白くても、たいていが尻すぼみになっていく。これはその代表例。
YouTuberとテレビマンの間で揺れる女性とその家族をコミカルに描くのだが、父親役の遠藤憲一と母親役の斉藤由貴の悪ノリが肌寒くて。佐々木希は相変わらず平坦を貫いている。共感が乏しいヒロイン、悪ノリの両親、ドラマではなくコントに。
■作品のワーストは「ちむどんどん」
トップ3に行く前に、どうしても触れておかなければいけない案件がある。反省会が話題になった朝ドラ「ちむどんどん」である。役者に罪はないものの、ご都合主義でわやな展開に朝ドラファンが不満ののろしをあげまくった。
特に、黒島結菜・竜星涼・仲間由紀恵・大森南朋の家族が問題でね。大叔母に拾ってもらったわりに生意気な次女、大言壮語で夢見がち、詐欺に引っかかっては金をせびるクズニーニー、親戚に金を借りて赤貧洗うがごとしの生活なのに、馬鹿息子に何度も金を融通する母親、幼少期に手癖の悪い長男を叱らなかった父親。
サブタイトルは「ふがいない家族」「迷惑家族」でもある。点数は3点なのだが、普通にランキングに入れるのは違う気がして。実質1位といってもいい。別枠でラズベリー作品賞を授けたいほどの破壊力だった。
ということで、トップ3へ。
■ドラマの前半と後半で落差が
3位 綾野剛・反町隆史 エエ話にもっていきすぎて魅力を失う
「オールドルーキー」(TBS)3点
37歳のサッカー選手が現役引退に追い込まれ、アスリートとしての中途半端さや社会経験のなさで転職もままならず四苦八苦。前半の致命的なポンコツっぷりがとてもよかった綾野剛。ただ、その後は一生懸命にアスリートファーストを貫き、問題解決というパターン化が微妙に興味を削いだ。
冷酷無比な社長を演じたのは反町隆史だが、途中キャラがブレてなかった? 元女子アナに鼻の下伸ばすって浅くないか? 「若いうちが華」という残酷なアスリートの現状を、すべてエエ話に落としてしまうご都合主義が気になった。
■ドラマの設定と女優が残念なミスマッチ
2位 橋本愛 3種の教師パターンが微妙に上滑り
「家庭教師のトラコ」(日テレ)3点
謎の凄腕家庭教師トラコを演じた橋本愛。基本のキャラは橋本愛ならではの陰の濃さが生かされていてよかった。
脚本・遊川和彦の「富裕層優先社会への不満と呪詛」をこめた長台詞も、完璧なイタコとしてきっちりまっとうした。じゃあ、何が問題だったのか。
トラコは依頼主の子供や家庭環境に合わせて、キャラを変えるのだが、その3パターンが微妙に古臭くて。浮世離れしたメリー・ポピンズ風はメインビジュアルなのでよいとして、熱血教師風と色っぽいお姉さん風が微妙に上滑りしていた感。
なぜ熱血と色気が必要なのか。着せ替え&キャラ変なんかしなくても、橋本愛なら演じ分けができたのでは? ということでうっかり高得点に。
■演技、配役、内容、宣伝…どれもよくなかった
1位 本田翼 最も寮母にしてはいけない作り笑い
「君の花になる」(TBS)4点
本田翼のすごいところは、歯の浮くようなセリフ回しと愛想笑いができるところ。元気で明るく優しい教師だったが、NOと言わずに愛想笑いと安請け合いで教師からいいように使われ、生徒からも嫌われて、教職を辞めたという役どころ。そこはなんとなく適役。本田翼の作り笑いは筋金入りの本物だから。常に数センチ浮いている感じを何年も維持できるところはすごい。
![「LINEモバイル」記者発表会に出席した女優の本田翼さん=2020年2月10日、東京都](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/3/1200wm/img_a3f27eccf3da07a0652d5a2c1171d89b484213.jpg)
ただ、男性アイドルグループ・8LOOMの寮母にしてはいけない。芸能事務所のリスクマネジメントに問題あり。案の定、それみたことかという展開。
わきの甘さがそもそも物語の質を下げている気がする。PV制作にSNS展開、8LOOMという架空だが完成度の高いアイドルグループを作り上げた手腕はすごいが、そっちに気合が入りすぎてドラマ本編がお粗末に。
翼はたぶん陰キャのほうが合う。国家資格や特殊能力をもたない、何ももたない等身大の女性を数センチ浮かずに演じられるときを待っている。
実は、今年は途中脱落した作品が多い。
このランキングにのせるほど観ていないため、真のワーストはそっちに潜んでいる可能性もある。正直、アイドル主演が多すぎて辟易(へきえき)している。ファンだけ喜べばいいドラマ制作の姿勢に、未来はない。とはいえ、駄作も喰らわば皿まで。来年はちゃんと観ます。
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ライター
1972年生まれ。千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より東京新聞の放送芸能欄のコラム「風向計」の連載開始。テレビ「週刊フジテレビ批評」「Live News イット!」(ともにフジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。
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(ライター 吉田 潮)
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