「もう取り上げるよ!」という脅しは逆効果…10代のスマホ中毒を劇的に解消するスマホルールの作り方
プレジデントオンライン / 2023年1月1日 13時15分
※本稿は、イザベル・フィリオザ『12~17歳 子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■10代の社会的欲求を満たすスマホ
ティーンエージャーの脳は、彼らに社会的な刺激を求め、人と出会い、グループを作ることを促します。いつの時代にも若者は群れになって歩き回ります。
思春期は最初の愛着の対象である親からの離脱のプロセスを成し遂げ、仲間との愛着へ、新しい方向へ向かう時期です。この頃ほどに出会いやつながりを求め、他者との関係を結びたいという強い衝動を覚えることはこの先二度とないでしょう。
その他者との関係性において現代で重要な役割を果たしているのがスマートフォンです。ときに子どもはスマホに夢中になりすぎ、何度注意してもスマホを長時間使用するのがやめられないということもあるでしょう。
![スマホに張りついている](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/e/1200wm/img_7ef83a59f9021faf7df3177971bd42f1278983.jpg)
パパだっていつも何か別のことをしている。どっちにしろ、パパは僕のことが嫌いなんだ。友だちといるほうがいい。
こんなとき、親はどう対応するのが有効でしょうか。
■使用禁止はかえってスマホへの執着を高める
スマートフォンは現代においてストレス解消の道具です。大人にとっても恋人のようなもの。家が火事になった場合、たった1つの物しか持ち出せないとしたら、何を持って出ますかという質問に、今ではあらゆる年齢の驚くべき数の人がスマートフォンと答えます。ティーンエージャーの脳では、自分のスマートフォンを見るだけで、喜びと充足感の神経伝達物質が噴出することを知っていますか?
スマートフォンの使用禁止や取り上げるという脅しは、子どもの警戒心を強めるだけでなく、元気を取り戻すためにスマートフォンを使って友だちと連絡を取りたいという気持ちを増大させる危険があります。スマートフォンは、すでに誰かとつながっている、グループに所属している、という快感の源泉になっていて、彼らの避難所でもあるのです。そのため、禁止することで、かえってさらに大事なものと思わせるのは得策ではありません。
メールやSNSはこの年齢の強い社会適合性の衝動に応えるものです。10代の子どもは、友だちと過剰なまでに連絡を取り合っていますが、その世界に入れないため、親はいらだちを募らせます。
■使用を制限するときは「家族全員」
家族で話し合うために、頭や身体のSAR(比吸収率:生体組織が吸収する電波のエネルギー量)や、電磁波による害、ブルーライトや放射熱の害、スマートフォンをポケットに入れている時の生殖器官への危険な影響についてなど、インターネットで情報を探すように促してみてください。使い方の条件を決め、親も含めて家族全員が守れるようなルールを練りましょう。
もしわが子が友だちからも孤立するほどスマートフォンに熱中するようなら、子どもの脳内報酬システムのオピオイド(喜びと報酬の回路の受容体に結合する物質)が減少して、自分で節度を保って使えるようになるまで、家族全員でインターネットの利用を制限するのもいいでしょう。ただし本人も私たち親も、それが罰ではなくて、一緒に決めた「禁断症状の治療」だということをはっきりさせること。そして私たち親は、子どもに対峙(たいじ)するのではなく、寄り添いましょう。
子どもを落ち着かせ、快適さと充足感をもたらすスマートフォンから離れたいと思わせるには、よほどのモチベーションが必要です。スマートフォンをやめればもっと良い成績が取れるというのでは、決してその気になりません。子どもにとって未来図を設計することは、あまりに抽象的なのです。
ですから、子どもの好きなものから取りかかりましょう。好きなスマホゲームが中世を舞台にしている? それなら中世の城を観光客として訪れるだけでなく、それに関する夏期セミナーなども受講してみるのはどうでしょう?
鍵となるのは、愛着と探検です。一にも二にも親子の絆、そして自分の内面の力が成長したと、子どもが実感できるような体験をすることです。
また、互いにチャレンジすることもできます。「あなたがスマートフォンを使う時間を減らすのなら、ママやパパもメールにすぐ返信するのを止める/チョコレートを控える/タバコを止める/あなたのために時間を使うようにする」……など。
■嘘をつくのは独立心の表れ
家族でルールを決めたのに、嘘をついて隠れて使っている場合はどうしたらいいでしょう。
![嘘をつく](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/d/2/1200wm/img_d24c1397272bcd20a4ea7f67f1b8194d217837.jpg)
「嘘をつく」というよりもむしろ「全部は言わない」のは個性形成の一部です。ティーンエージャーには、自分は独立した存在だと感じたいという欲求がありますから。
そもそも、それは大人の言う意味通りの「嘘」なのでしょうか? 子どもが親に本当のことを言わないのは、おそらく親の反応を恐れているからでしょう。親に怒ってほしくないのです。
「うん、わかってる」は、「僕のことはかまわなくていいよ」という意味で、実際には「タブレットを隠し持っているよ」です。子どもは自分の望むことをしたいばかりでなく、親を喜ばせたいとも思っています。
これは私たちの目には矛盾と映りますが、彼らにとってはそうではありません。
もしわが子が本当のことを言ったとしたら、自分の行動に責任を持たせて試したり、失敗を経験することで学ばせたりしますか? それとも制限を設けたり、禁止したり、怒ったり、恥ずかしい思いをさせたり、決めつけたりしますか?
親が平常心を保つようにすれば、子どもは本当のことを話してくれるようになります。ですから、子どもが「本当は違う」と思いつつ、「うん、わかってるから大丈夫」としか答えられないような質問をするより、子どもと一緒に決めたルールを口に出して、思い出させましょう。あるいは、キーワードだけを使って、わが子が脳の前頭前野を働かせられるよう呼びかけましょう。例えば、この場面では、子どもに「タブレット」と一言だけ呼びかけるといいですね。
■道理にかなった公平なルールは守る
意外に思われるかもしれませんが、ティーンエージャーは多くのルールを守ります──自分の所属する集団や参加しているグループのルールを。
![イザベル・フィリオザ『12~17歳 子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/8/1200wm/img_28c25efe46fcf55fc6d77b95437941b5318991.jpg)
ルールは帰属意識を与えてくれるし、グループの活動や調和に役立つからです。ティーンエージャーに聞くと、道理にかなっていて公平で適切なルールなら、きちんと守ると言います。つまり、グループの活動と発展を可能にし、調節し、促進するのはルールなのです。
私たち親は制限あるいは禁止するもの、つまりコントロールしようとする試みをルールと呼んでしまうことがあります。そうすると、もちろん子どもは尊重しません。反対に違反したり、抵抗したりします。いつの時代も、思春期の子どもたちは限界を押しのけ、既成の秩序に疑問を抱き、探検に出かけたものです。この衝動のおかげで、人類は地球上に散らばり、広がっていったのです。
■ルールを守りたくなる親のあり方
親に愛着を持って結びついていると感じていれば、子どもは親を喜ばせたいと思うものです。ここに、親の持つ本当の力があります。もちろん、親との関係が良好でなければ、子どもはルールを守る気になりません。
わが子に対して険しい表情を向けたり、罰を与えたりして恐れさせるよりも、親子関係の質を保つことのほうが大切です。そのほうが、これから先、子どもがルールを守るようになります。
禁止でなくてルールであることが大前提です。そのルールが実行可能か、もっと上位の要求に反していないか、ティーンエージャーが友だちの前でも感情の面でも友だちとの関係の点でも守ることができるようなものかを確認しながら親子で一緒に決めましょう。
![【図表1】ルールの伝え方](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/e/1200wm/img_7ee305efbaa02ff0a0dce205337e0351283028.jpg)
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1957年パリ生まれ、心理療法士。父は心理学者、母は心理療法士で病気を体・心・感情を含めて全体的に見るというホリスティック医療の先駆者。パリ第5大学で、臨床心理学の修士号を取得したあと、フランス、アメリカ、ベルギー、イギリスなどで、交流分析、新ライヒ派のセラピー、神経言語プログラミングなどを学ぶ。それ以後、独自のセラピーを開発し、感情を専門とするセラピストとして、多くの大人や子どもの治療に当たる。世界的ベストセラーシリーズ『子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)ほか著書多数。
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(心理療法士 イザベル・フィリオザ)
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