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「私はオオカミの餌にされた」物言うメーガンとハリー王子が仕掛ける2023年の英国王室への"シン爆弾"

プレジデントオンライン / 2022年12月31日 11時15分

写真=Netflix『ハリー&メーガン』公式サイトより

お騒がせロイヤルのハリー王子とメーガン妃。Netflixのドキュメンタリー作品の中で過去最大級の視聴率をはじき出した『ハリー&メーガン』で2人は「連中は兄を守るために平気でウソをつく」「オオカミの餌にされた」などと発言。23年1月にはアメリカでハリーの自叙伝『SPARE』が発刊予定で王室への闘いはこれからが本番との見方もある――。

■なぜハリー&メーガンはお騒がせロイヤルになったのか

エリザベス女王が2022年9月に亡くなった英国王室には、これまで何人ものお騒がせメンバーが登場した。目下のお騒がせ王族といえば、なんといってもハリー王子(ヘンリー王子)とメーガン妃だ。動画ストリーミングサービスNetflixで独占配信中の『ハリー&メーガン』も、同社のドキュメンタリー作品で最大級の視聴率をあげたという。

そもそも同作品が配信される前から放映されていたオフィシャルトレーラー(予告編)からして、扇動的だった。

「人種に対するヘイトがある」(友人談)
「王室に嫁ぐ女性たちは、とてつもない苦労をする」(ハリー談)
「悲劇を繰り返したくなかった」(ハリー談)
「私はオオカミの餌にされてたの」(メーガン談)
「連中は兄を守るために平気でウソをつく」(ハリー談)
「私たちが望んでた家庭を築くことができる」(メーガン談)

といったコメントがつながれたもので、全体的に不穏な空気が流れている。

これらを見る限り、本編ではメディアも真っ青のスクープでもあるのかと期待してしまう。

しかし実際には、2人の相思相愛ぶりとお惚気(のろけ)、息子・アーチーや娘・リリベットとの家族団欒、メーガンの上昇志向と強烈な自己愛ぶり、そしてハリーが母ダイアナ元妃の事故死にいまだ苦悩する姿などの方が目を惹く。もちろん、王室やパパラッチ批判はあるが、すでに世間に知られたものがほとんど。予告編から想起されるほどの“爆弾”はなかった、期待されたほど面白くないという意見も多い。

英国在住歴30年、イギリス全土にわたって公認ガイドを行う塩田まみさんは言う。

「2人は結婚、王室離脱から現在に至るまで、さまざまな誤解、批難、差別を受けていると語っています。それらは主にメーガン妃に対するもので、誤解を解いてネガティブなイメージを払拭したいというのが狙いだそうです。しかし、具体的に彼らはどうしてほしいのか、今後どうしたいのかが、いまひとつ不明瞭だと思いました」

イギリス王室を離脱して、経済的自立を目指さざるをえないハリーには、Netflixとの莫大(ばくだい)な契約金は魅力的だった。しかし、エリザベス女王の死去により、父チャールズが国王になり、風向きが変わった。決定的な発言は削除する、という判断になったのかもしれない。

そこで、なぜこのカップルがお騒がせロイヤルになったのか、整理してみたい。

■破れジーンズに素足、そしてハグ――戸惑う兄夫婦

一番の理由に挙げられるのは、メーガンの「国籍と人種問題」だろう。

『ハリー&メーガン』でも、彼女はアメリカ人であり、母がアフリカ系にルーツを持つことがクローズアップされる。

塩田さんは続ける。

「イギリス人は表だって言及することはありませんが、アメリカ人に対してどこか“上から目線”というか微妙な距離感を持っている人が少なくない。アメリカは世界一位の経済大国、軍事大国です。しかし、もともとはイギリスからの移民が中心となって作った新興国、という意識がまだ抜けない人もいるかもしれません」

2022年12月6日、アメリカのニューヨーク・ヒルトンで開催された「2022 Robert F. Kennedy Human Rights Ripple of Hope Gala」に出席したハリー王子とメーガン妃。
写真=ABACA PRESS/時事通信フォト
2022年12月6日、アメリカのニューヨーク・ヒルトンで開催された「2022 Robert F. Kennedy Human Rights Ripple of Hope Gala」に出席したハリー王子とメーガン妃。 - 写真=ABACA PRESS/時事通信フォト

さらに、メーガン自身がイギリス人やイギリスという国をあまり知らなかったことが問題だったと塩田さん。例えば“ハグ”。つまり相手の体を抱きしめる抱擁は挨拶として当たり前だと思っていたこと。

『ハリー&メーガン』では、「私はハグが大好きだが、イギリス人はハグを嫌がる」とメーガンは言う。兄嫁のキャサリン妃も初対面でハグを嫌がり、堅苦しくてよそよそしい、本当の気持ちを隠すような印象だったとほのめかした。

「メーガン妃が留学や就職などでイギリスにある程度住んでいたのなら、イギリス人はそんなものだと思うでしょう。単なる慣習の違いですから、生活をするうちに受け入れてくるものです」(塩田さん)

しかもメーガンはウィリアム王子(当時)&キャサリン妃と初めて会った際、破れたジーンズを穿き、素足というスタイルだったとか。メーガンは“自分らしくいたい”との気持ちで、あえてその装いにしたのかもしれない。

類推するに、初対面で、いくらファッションといえどもカジュアルすぎる姿でハグをかましてくるアメリカ人女性に、コンサバな兄夫婦が戸惑った、と考えられる。つまり、メーガンが言うところの“自分らしい”行動や物言いがちょくちょく見受けられ、王室メンバーやスタッフとハレーションを起こしたとも。

しかし、トラブルが多少なりとも起こるのは、国際結婚あるあるだ。しかも嫁ぎ先が王室という特殊な家柄なのだから、推して知るべし。

■意識高い系のメーガンが絶対に許せない「肌の色」発言

国籍差別以上にメーガンが許せなかったのが、自身の混血のルーツを話題にされたことだろう。長男のアーチーを妊娠した時、「生まれてくる子の肌の色はどんなだろう」と、とある王室メンバーに懸念されたことに憤慨したのは当然だ。

ハリーは、それが誰であるかは絶対言わないと宣言。『ハリー&メーガン』では、誰なのか暴露されると予想されていたが……。

冒頭で、メーガンは強烈な自己愛の持ち主と書いたが、決して悪い意味だけで表現したわけではない。

ロサンゼルスのミドルクラスの家庭に生まれ、世界大学ランキング2022で24位の名門・ノースウェスタン大学を卒業して2つの学位を取得。その後、在アルゼンチンアメリカ大使館でインターンを経験した。ハリウッド女優としては一流と言えないまでも(二流に近いが)、まあまあの成功を収めた。そこまで行き着くには、相当な努力をしたのだろう。それゆえ、自尊心もべらぼうに高い。

アメリカ・シカゴのノースウェスタン大学
写真=iStock.com/tupungato
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tupungato

また、人種問題だけではなく、幼い頃からジェンダー平等にも目覚め、“フェミニスト”を自称する。

世界最大の消費財メーカー・P&Gの食器用洗剤のCMで「アメリカ中の女性がフライパンや鍋の油と格闘している」というキャッチコピーに、なぜ女性だけが格闘するのかと疑問を持ったのが11歳の頃。メーガンはニュース番組のキャスターや、当時の米大統領夫人だったヒラリー・クリントンに手紙を書いて、この女性差別コピーに異議を唱えたそうだ。その結果「アメリカ中の女性」が「アメリカ中の人々が」に変わったというエピソードを『ハリー&メーガン』の中で語っている。

■アフリカ系アメリカ人の妃は、開かれた王室の証

塩田さんも、メーガンに対して嫌悪感はない。

「アフリカ系のルーツを持つメーガン妃は、ハリー王子の妻としてそれほど条件が悪い相手とは思えません。個人の意見はさておき、多様なルーツを背景に持ち、バリバリのフェミニストのメーガンが妃になるのは、開かれた王室の象徴になりえます。なぜなら、イギリスを中心に経済・軍事同盟を結ぶ英連邦諸国には、インド、アフリカ諸国やカリブ諸国が含まれます。これらの国々の人々はもはや差別する相手ではなく、大事な運命共同体の構成員なのです。しかもハリー王子は将来国王になる可能性が低いので、そこまで結婚相手に神経質にならなくてもよかったのです」

それでも、以前に比べてジェンダーや人種差別が少なくなっているとはいえ、いまだに根深い問題であることに変わりがない。

「メーガン妃の人種差別問題よりも、イギリスで大騒ぎになったのは、故エリザベス女王の元側近だったスーザン・ハッシーさんの事件です。バッキンガム宮殿の集まりに呼ばれた黒人慈善活動家のンゴジ・フラニさんの出自を、スーザンさんが執拗(しつよう)に問い詰めました。ンゴジさんが生まれも育ちもイギリスだと答えているにもかかわらず、です。ただ、私は大げさに騒ぎ立てている気もしますね。イギリスはアメリカに比べて人種差別はない国だと思いますが、実際にはいろいろとあるわけです」

■黒人をあえてテーマに据えるイギリスの風潮

ここには、イギリスの人種差別問題のオモテとウラの二重構造があると塩田さんは言う。

オモテは、例えば「バンクオブイングランド」(英国中央銀行)の博物館が、その昔、奴隷貿易で財を成したことを反省し、展示物の半分を黒人奴隷に関するものに変えたことに象徴される。また、大手保険市場「ロイズ保険組合」も奴隷船の保険を扱ったことを謝罪し、黒人や少数民族を支援する団体に資金を提供すると表明した。

イングランド銀行
写真=iStock.com/tupungato
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tupungato

さらには、170年の歴史を持つロンドンの「ビクトリア&アルバート美術館」(V&A)では、2022年には、開館以来初めて「アフリカファッション展」を開催。あちこちの美術館や博物館などで黒人をフィーチャーする展覧会が開かれ、むしろ食傷気味だと塩田さんは言う。

「バンクオブイングランドの博物館を見に来る人の大半は、銀行のシステムに興味があって、黒人問題にはそれほど注目していないでしょう。また、V&Aをはじめとした黒人関連の展示物のクオリティが高ければいいのですが、なかにはそうでない場合もあります。たくさんの有色人種の中でも“黒人”を扱っておけば、無難だし今風だと思っている節もあります。だから差別の根本的な問題が解決されているかといえば、疑問ですよね」

一方、メーガンの人種差別問題はウラだ。

開かれた王室の象徴として、世の中の潮流として、最初はそれなりにメーガンに好意的だった王室メンバーも、ついつい「肌の色」発言が出た、周囲も彼女のアメリカ式の振る舞いに嫌気がさして、冷たく当たるようになった――というのが、リアルなところか。

それに対してメーガンが黙っておらず、夫のハリーも、母ダイアナに似た境遇の妻のために戦う姿勢を決めたのだろう。

■自身をスペアと呼ぶのは、挑発か、自虐か

ハリーにとって(ウィリアムにとっても)ダイアナの悲惨な事故死はぬぐいきれないトラウマになっている。25年前、ダイアナは常軌を逸したパパラッチに追い詰められて亡くなったが、夫の不倫や王室メンバーに受け入れられず離婚したことも、早逝の遠因だといえる。これに関しては、ハリーへの同情を禁じえない。

しかし、『ハリー&メーガン』の次は、アメリカで出版されるハリーの自叙伝『SPARE』(スペア=予備)の発刊が2023年1月に控えている。

『ハリー&メーガン』は『SPARE』の序章に過ぎないという意見もあり、ハリーとメーガンが仕掛ける王室やパパラッチへの闘いは、これからが本番だということだ。

「イギリスでは、王室の高位メンバーを指して、王位継承者をHeir(エアー=継承者)、それ以外をSpareと呼ぶ習わしがあります。エリザベス女王がエアーで、妹のマーガレット王女がスペア、皇太子時代のチャールズ国王がエアーで、弟のアンドルー王子やエドワード王子がスペアということ。ハリー王子はずっとウィリアム王子のスペアでしたが、現在では、兄の子供達の継承順位の方が高いので、スペアですらない。そんな立場や半生を嘆いてか、自叙伝のタイトルが付けられたのでしょう」

しかし、次男坊だからこそ甘やかされ、少年時代の不良行動も、大学に行かなかったことも大目に見られてきた。アフリカ系アメリカ人の混血で離婚歴があるメーガンとの結婚も許された。それもこれも、ハリーがスペアだったから。

■ハリーがSpareからDisappearになる日が来る⁉

「このままハリー王子がアメリカに居続けては、SpareからDisappear(ディサピアー=消える)になるかもしれません。彼は昔から何かことが起きると、アフリカなどに雲隠れを繰り返していました。しかし彼ももう38歳。亡くなった母の年齢を超えた立派な大人です。暴露映像や暴露本ではなく、自分の個性を生かせる事業などに取り組み、それを地道に継続し、周囲の理解を得るべきだと思います。彼の個性は英国民に愛されていたのですから、それができると私は信じています」と、塩田さんは“愛され次男”ハリーを心配する。

今後“スペア”の行方がどうなるか――。見守っていきたい。

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東野 りか フリーランスライター・エディター
ファッション系出版社、教育系出版事業会社の編集者を経て、フリーに。以降、国内外の旅、地方活性と起業などを中心に雑誌やウェブで執筆。生涯をかけて追いたいテーマは「あらゆる宗教の建築物」「エリザベス女王」。編集・ライターの傍ら、気まぐれ営業のスナックも開催し、人々の声に耳を傾けている。

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(フリーランスライター・エディター 東野 りか)

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