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なぜ街中の自動販売機が減っているのか

プレジデントオンライン / 2012年6月29日 12時0分

■それでも大手が攻勢意外と身近な激戦地

ビジネスマンなら、仕事の合間に自動販売機で缶コーヒーなどの飲料を買った経験があるはず。そんな飲料自販機にも消費不況の風が吹いている。売り上げ不振で撤去される自販機が後を絶たないのだ。

日本自動販売機工業会の調査によれば、2008年の設置台数は258万8200台で前年比1.9%減。販売金額は2兆5229億円で同10.6%減と二桁も落ち込んだ。09年も設置台数、販売金額ともに前年割れの見込みだ。日本自動販売機工業会の黒崎貴専務理事は原因を次のように分析する。

「08年のリーマン・ショックの後、オフィスの自販機は稼働率が格段に落ちた。人員削減に加え、残業が減って、夜間の利用が落ち込んだ影響が特に大きい。一方、路面の自販機もまわりの小売店などとの価格競争にさらされている。それに追い討ちをかけたのが08年に導入されたタスポ(たばこ自販機の成人識別システム)だ。たばこと飲料を自販機で同時に買う人が多かったのだが、タスポの利用を敬遠したお客さんがコンビニエンスストアなどに流れて、自販機での飲料の『ついで買い』も減ってしまった」

ところが、飲料自販機全体が減るなか、大手飲料メーカーの自販機は逆に増加傾向にある。09年の設置台数を見ると、サントリーグループが45万2000台で前年比2.5%増、アサヒビールグループが24万台で同4.3%増、キリンビバレッジが23万6000台で同1.3%増となっている。なぜ各社とも自販機部門のテコ入れに余念がないかというと、「自販機こそ最も拡大したい販路」(黒崎専務理事)だから。

自販機では定価販売が原則。自販機の販路が拡大すれば、売り上げの増加につながるだけでなく、商品の値崩れにも歯止めがかけられる。さらに、大手メーカーの場合、自社で自販機を一括運営しているケースが多く、自販機は利益貢献度も高い。「設置先に払う手数料を除けば、利益を自社で総取りできる。小売店に払う販促費や割戻金などの経費も必要ない」というのが各メーカー関係者の共通認識になっている。

また、自社一括運営の場合、「自販機はいわば直営店」(キリンビバレッジ)という点も見逃せない。小売店と違って自販機の品揃えはメーカーの思い通りにできるので、商品の販促や市場調査にも活用が可能だ。つまり、自販機から顧客の嗜好などの情報を直接収集できるのだ。

確かに「飲料自販機の市場はすでに飽和状態で、設置できる立地は限られてきた」こともメーカー関係者の共通した見方ではある。しかし、売り上げの約4割を占める自販機の販路を確保することは、飲料メーカーが勝ち残るための至上命題。となれば、不採算の自販機の撤去が進む一方で、好立地の奪い合いが激化することは必至だ。

陣取り合戦の主戦場と目されるエリアは、販売効率も運営効率も高い都市圏。なかでも、大手メーカーが虎視眈々と狙っているのはオフィスや工場、公共機関といった事業所だ。関係者によれば、今や事業所が自販機の設置場所の主流になっている。

「まわりの自販機や他業態と不特定の顧客を取り合う路面よりも、確実な固定客を見込める事業所のほうが魅力的。それに、事業所向けの販路開拓はグループ力を活用できる我々にとって有利だ」と、ある大手メーカーの幹部は胸の内を明かす。

みなさんのオフィスでも、ある日突然、飲料自販機が撤去されたと思ったら、すぐに違うメーカーの自販機が設置されることが起きるかもしれない。

※すべて雑誌掲載当時

(ジャーナリスト 野澤 正毅 撮影=市来朋久、宇佐見利明、坂本道浩 図版作成=ライヴ・アート)

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