この言葉だけは絶対に使ってはいけない…謝罪会見を炎上会見に変えてしまう「3つのNGフレーズ」
プレジデントオンライン / 2023年1月15日 13時15分
※本稿は、新田龍『炎上回避マニュアル』(徳間書店)の一部を再編集したものです。
■「場当たり的な対応」は炎上を加速させる
炎上と聞いて即座に狼狽する必要はない。まずは「今、発生しているのはそもそも炎上なのか?」「自分たちに非はあるのか?」といったところから、冷静かつ正確に把握することが重要だ。事実確認をおろそかにしたまま、批判に怯えて場当たり的な対応をすることがもっとも炎上を加速させる危険な行為であることを認識しておきたい。
ネット上で多くの人があなたの会社や商材について話題にしていて、その中に思いがけなく批判的意見が多かったとしても、それが即「炎上」であるとは言い切れない。世の中のどんなに支持されているブランドにもアンチは存在し、批判の声自体は必ずあるものだからだ。まずはその批判的な意見が、自分たちにとって有害かどうか見極めるところから始まる。
SNSなどのソーシャルメディアに限らず、そもそもインターネット上においては、似たような属性(所属や趣味、政治信条など)や共通点を持った者同士が相互に繋がって集団を形成している。これは「クラスタ」と呼ばれるが、たとえばTwitterのあるクラスタ内で話題になっている事象であっても、別のクラスタに属する人はその話題をまったく知らない、などということはごく一般的だ。
■「万バズ」が届いている人は全体のごくわずか
Twitterのひとつの投稿が、1万件以上リツイート(共有)もしくは「いいね」されることを「万バズ」といい、当該情報が大いに注目を浴びている状態の証左となるが、Twitterのユーザー数は日本全国に4500万人もいるのだ。万バズしたところで、その情報が届き、何らかの反応をしている人は全体のわずか0.02%に過ぎない。
SNS上で盛り上がっているように見えても、それはあくまで「クラスタ内」だけの話であることがほとんどで、その話題を全然知らない人の方が大多数であることをまず押さえておきたい。ご参考までに、我が国における主要なSNSの、日本国内アクティブユーザー数はおおよそ次のとおりである。
●Twitter 4500万人
●Instagram 3300万人
●Facebook 2600万人
●TikTok 1700万人
(いずれも2022年11月時点)
したがって、一見批判意見が多いように見えても、それがまったく筋違いの、妥当ではないものであったり、直接的な顧客層とは無関係のクラスタ内で留まっていたりする限りは、特段深刻な問題ではないと考えてよい。
したがって、批判意見を問題視すべきなのは、批判している主体が「自社にとって主たる顧客層」である場合と、明らかに自社に非がある批判意見が、特定のクラスタに留まらず、不特定多数の目に触れてしまっている場合だ。これらはすなわち「ネガティブな口コミ」となり、自社商材の選定や購買判断にあたり、マイナスの影響をもたらしてしまうだろう。確認すべきは次のような点である。
現状確認
●どのような批判意見が拡散しているのか
●何が批判の原因か
●批判されている内容は事実か
●誤解や筋違いの妥当性がない意見だとすれば、事実は何か
●批判意見が特定クラスタに留まらず、不特定多数の目に触れているか
●原因が自社発信の情報にあった場合、それはいつ、誰が、どこで(どの媒体で)、どんな言動/行動をしたのか
●批判対象となっている自社発信情報の内容は事実か
●そもそも、発信者はなぜそのような言動/行動をしたのか
●発信者本人は、当該時点でどのような対応をとっているのか
●情報拡散によって、個人や会社への批判、誹謗中傷、電凸(電話突撃)など、実被害が発生していないか
●発信情報や発信者の言動/行動に、法令や内規、社会的規範から逸脱したところはないか
■「クラスタ」を超えて批判が殺到したらそれは「炎上」
まずはこのように、批判意見に対して事実確認を早期におこなうことが重要だ。できれば少数精鋭の調査チームを組成し、権限を与えて迅速に確認を進められるとよいだろう。事実を正確に確認せぬまま、批判拡大を恐れて場当たり的な判断を下すことは非常に危険である。合わせて、ネット上での論調を把握し、理解することも必要だ。ユーザーが何に対して批判しているのか理解できなければ、その後の対応も適切におこなうことができない。それどころか、逆に「本質が分かっていない」とさらなる批判に繋がる可能性もあるだろう。
最初に話題となったSNSのクラスタを超えて批判意見が拡散し、不特定多数の目にとまり、多くのネットユーザーから批判的な意見が集中的に寄せられ、自社がターゲットとする顧客層からの批判にまで至ってしまったら、残念ながらそれは「炎上」だ。これら事実確認と論調の把握ができ、判断材料が揃った段階で、今後の対応方針を策定し、対応内容を早急に検討することになる。
■危機管理広報が抑えるべき4つの方針
炎上時における対応は、いわば「危機管理広報」である。普段の前向きな広報とは異なる面が多々あるうえ、人は短期的にメリットのありそうな選択をついしてしまうものだ。しかし、不用意な対応によって却って批判が高まり、そちらに対応のリソースを割かれてしまい、本来の問題解決に悪影響を及ぼしてしまってはどうしようもない。広報担当者が冷静に判断して経営者に具申できればよいのだが、なかなか難しいこともあろう。そんなときに立ち返って確認しておきたい、危機管理広報の対応指針を4つ挙げておこう。
1.「謝罪」から入る
きっかけや内容がいかにあなたや組織にとって不本意なものであっても、「炎上」状態にあるということは、「不快に感じた人が一定割合存在する」ことに他ならない。一刻も早く釈明や反論をしたいところであろうが、その前にまずは「世の中をお騒がせしたことについて謝罪」することが基本となる。
「謝罪だなんて! 自分たちは炎上による罵詈雑言の被害者なのに!!」と思われるお気持ちは重々分かるのだが、「謝罪すること」は「法的な責任を認めること」とイコールではないので、身構える必要はない。まずは炎上という事態に至ってしまったことについて、「不適切な点があったと重く捉えており、真摯に対応していく」との姿勢を示すことが重要である。そうすれば批判者側でも、「その後の釈明を聞こう」といったスタンスにもなるはずだ。
![謝罪に頭を下げる日本のビジネスマン](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/1/1200wm/img_f1558411db791f4726c4a0fa32e31ce3588691.jpg)
2.すべての判断基準は「組織外」に置く
危機管理広報の落とし穴となるキーワードがある。それは「この業界では当たり前」だ。
組織内の不祥事やトラブル、失言が公になった際などに、トップや担当者が「業界の常識」を持ち込んで判断してしまったことで、対応に妥協や詰めの甘さが生じることはよくある。また関係者の「今まで誰も何も言わなかったのに、何を今さら文句を言われないといけないのか!?」といった本音は、決して口をついて出ることはないだろうが、雰囲気はそれとなく感じとれてしまうものだ。それでは事態が収束するどころか、炎上がさらに拡大してしまうことにもなりかねない。
「社内的には問題ない」「この業界ならどこでもやっている」「今までずっとこのやり方でやってきた」といった言い訳は通用しない。「業界の常識」とか「暗黙の了解」といったものから極力距離を置き、これまでの経緯などをまったく知らない一般の人がネガティブな情報を目にしたらどういった印象を持つか、イメージすることが重要だ。
炎上が進展してからでも、都度ネットを検索すれば「世間の声」はいくらでも拾うことができる。そこから、「世間はどんな点に注目しているのか」「何が問題視されているのか」といったポイントが分かるはずだ。その論点と向き合って対応していく必要がある。危機管理広報の判断基準を、社内や業界内に置いてはいけない。
3.事実をフルオープンにする
自分たちに都合が良かろうが悪かろうが、把握できている情報はすべて、主観的判断は差し挟まずフルオープンにすることが基本だ。情報の出し惜しみは新たな疑惑を生み、後で発覚したときに「隠蔽していたのでは?」などと余計な勘ぐりに繋がり、騒ぎも大きくなってしまう。必要な情報か否か、判断するのはこの場合あくまで受け手側なのだ。具体的な開示情報とスタンスについては、次項にて詳説する。
4.「組織の問題」として責任を負う姿勢を示す
発端が自組織の不祥事や失言にあるとしても、暴言レベルの批判を浴び続ければ、感情的な反発もしてしまいたくなるものだろう。ましてや、その原因が自組織の従業員による不手際であれば、「従業員が軽率だった」などといった釈明で済ませてしまいたくなるかもしれない。しかし、それでは「他人事」「責任逃れ」と捉えられ、炎上が加速するリスクがある。あくまで、騒動を引き起こし、世の中を騒がせてしまった自組織の問題として、組織ぐるみで対応する姿勢を示すべきなのだ。
■謝罪で絶対に言ってはいけない3つの言葉
その他にも、責任逃れだと捉えられるリスクのある表現として次のようなものが存在する。いずれもつい使ってしまいがちだが、炎上に油を注ぐ結果になりかねず、くれぐれもご法度として認識しておきたい。
![新田龍『炎上回避マニュアル』(徳間書店)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/5/1200wm/img_c5e02a762469dbaedcefe1e7a6eb3910284226.jpg)
●不快な気持ちを抱かせたなら
既に炎上している時点で、不快な思いを抱いている人は一定割合存在しているため、他人事のように聞こえてしまう。逆効果である。
●遺憾である
カン違いしている人が多いようだが、「遺憾」とは「期待どおりにならず不満だ」という意味であり、謝罪の場面で用いる言葉ではない。こちらも、用語のチョイスでさらに批判が強まる展開になりかねない。
●誤解を招いてしまった
「誤解されている」と感じているのはあくまで自分たち側であり、あまりに主観的な言葉である。批判している側は当然ながら「自分たちが誤解している」とは思っていない。すなわち、相手に対して「それは誤解です」と述べるのは、「あなたは間違っている」と言っているのと同じだ。誰しも、間違っていると言われれば気分は良くないし、とくに炎上時点であなたの組織への信頼度が高い人であればあるほど、「信用していたのに、誤解と言われた……」と反発が大きくなる可能性が高い。
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働き方改革総合研究所株式会社代表取締役
働き方改革総合研究所株式会社代表取締役。労働環境改善、およびレピュテーション改善による業績と従業員満足度向上支援、ビジネスと労務関連のトラブルと炎上予防・解決サポートを手がける。厚生労働省ハラスメント対策企画委員。
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(働き方改革総合研究所株式会社代表取締役 新田 龍)
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