遺伝学が解明「ルックスに恵まれない人は、筋トレ、ボイトレで逆転可能」
プレジデントオンライン / 2023年1月13日 10時15分
■なぜかモテる人は特異な遺伝子を宿す
美女と野獣。世の中には周りからすると「どうしてこの組み合わせ……」と思うようなカップルが存在します。しかし、そもそも人はアソータティブメイティング(Assortative mating)といって似た者同士が惹かれ合う傾向が強く、考え方や能力が自分と似ている人に魅力を感じます。
アメリカの学生を対象にした研究では、関係が長く続いているカップルほど、入学時の学力のレベルが同等であることが明らかになりました。身体的特徴についても同じことが言え、特に中指の長さが相対的に似ている者同士が惹かれ合い、カップルとなりやすいことがわかっています。
人には良い面があれば、悪い面も同じくらいあります。お互いの長所と短所が両極端で異なる場合、それぞれの最悪な面ばかりを子どもが受け継いでしまうリスクは大いにあります。しかし、両親が似た者同士であれば、子どもに悪い面が遺伝されるのはともかくとして、良い面を受け継ぐ可能性を高めることができます。似た者同士が惹かれ合うことは、人類の長い歴史のなかで遺伝子に組み込まれた、生存戦略なのです。
ですから、美男美女のカップルが誕生するのは遺伝学的にも自然な流れです。それなのになぜ、容姿が優れている者とそうではない者のカップルが存在するのでしょう。その答えは「免疫力」に隠されています。
いかに子どもの生存率を高めて遺伝子を残していくか。人類において最も重要な課題です。免疫力が高い子孫を残せる相手をパートナーとして選べるかどうかが問われています。
ヒトの免疫に関わる遺伝子にHLA(ヒト白血球抗原)というものがあります。体内のほぼすべての細胞の周りに分布し、病原体などの異物を排除する、大切な役割を担っています。
HLAは両親から半分ずつ受け継ぎ、型の組み合わせは数万通りもあります。HLAの型は血が繋がっていない関係では数百〜数万分の1の確率でしか一致しないとされています。
臓器移植をする場合、この型が一致した相手からしか臓器提供を受けることができません。型が一致していなければ「異物だ」と判断され、排除しようとしてしまうからです。しかし、恋愛や結婚における相手としては、HLAの型が違っていればいるほど相性が良いと判断されます。
例えるなら、HLAは病原体に対抗する武器のようなものでしょう。戦いに行くとき、同じ武器を2つ持つよりも、違う種類の武器を持っていたほうが臨機応変に戦うことができますよね。お互いのHLAの型の種類がかけ離れているカップルから産まれる子供は、感染症に対して強くなります。免疫力が高い子孫を残すために、本能的にHLAの型の一致率が低い相手をパートナーとして選ぶようになっているのです。
「容姿はふつうなのに意味がわからないほどモテてるな」という人は、非常に珍しいHLAの型を持っているのかもしれません。HLAの型が似ている相手ほど相性が悪い、かけ離れているほど相性が良いと感じるようになっているので、レアな型を持つ人は、多くの人にとって自分と異なる型の持ち主となるからです。
■モテたくば自分を磨け
HLAの型は病院で採血してもらえば調べることができますが、容姿だけではわかりません。相手が自分と型が似ているのか、違うのかを本能的に判断しているのは嗅覚です。「なんだかいい匂いだな」と思う人っていますよね。好きな人の体臭そのものに好感を持つ人も少なくないでしょう。これには理由があって、実はHLAの型の重なりを匂いで見抜いているのです。
スイスのウェデキント氏が1995年に行った研究では、相手と自分のHLAの型の重なりが少ないほうがその人を良い匂いに感じ、重なりが多いと良くない匂いだと感じる、ということが判明しました。この匂いで型の重なりを判断する能力は、女性にしか備わっていないことがわかっています。
メスがオスを選ぶ、というのは動物界の大原則です。メスは1度妊娠すると、妊娠期間中はオスとの繁殖活動にエネルギーを割けません。特に人間の場合は妊娠から出産に加え、子育てにも大きなエネルギーを費やさねばならず、莫大な時間がかかります。
■メスのほうが慎重に相手を見極める
一方で、オスはメスが妊娠している間も別のメスを妊娠させることができます。動物のオスのほとんどが、繁殖に関しては、メスさえよければ基本的にそれでよい、相手は選ばない、という「来るもの拒まず」なスタンス。メスはオスをじっくり選ばないと、年単位で次の繁殖の機会を失うことになるため、メスのほうが慎重に相手を見極める能力をより高く備えているのです。
免疫力が高い子孫を残すためには、HLAの型だけでなく、高い免疫力の相手を選ぶことも必要です。相手の免疫力を判断するうえで大きな手がかりとなるのが、声が魅力的かどうかです。
声の魅力度は客観的に数値化できません。ある研究では、サンプル対象の人たちに1から10まで数を数えてもらい、その声を聞いた人たちに、良い声かどうか判断してランクを付けてもらいました。そのランクと比較したのが、サンプル対象の人たちの体の左右対称性。声のランクが高い、つまり声が魅力的な人ほど、体の左右対称性が高い、という結果が出ました。
本来、人間の体は左右対称に成長するようにできています。この成長を妨げるのが病原体です。発達段階で病原体に攻撃されて影響を受けてしまうと、対称性が崩れていきます。体の左右対称性が高い人は、病原体に攻撃を受けてこなかったか、攻撃されても影響を受けずに対抗できたということ。つまり体の左右対称性が高いほど、免疫力も高いことを意味します。
ほかにも、免疫力の判断材料はいくつかあります。ルックスの良さも含まれていて、筋肉量、IQの高さ、喧嘩の強さ……。これらの要素を総合的に見て、免疫力が高いかどうかは判断されます。アピールと努力次第では、実力以上に免疫力が高いように「思わせる」ことができます。
動物界の話をすると、オス鳥はメス鳥に自分がいかに優れているかをアピールするために、歌やダンスを披露します。自分がいかに他の鳥よりも優れているか、免疫力が上回っているかをメスに見せつけ、メスはそのアピールを受けて相手を選びます。
それは人間だって同じ。容姿は遺伝的なものですから、後天的に変えることはできません。これこそ運次第です。しかし実際の力はさておき、モテるためには相手に自分の免疫力がいかに高いか、ということをアピールできさえすればよい。容姿が優れていなかったとしても、筋トレやボイストレーニングしたり、良い学歴を経たり……。免疫力は総合的に判断されるのですから、他の要素でカバーできる話なのです。
容姿が最高に恵まれている人でも、他の要素が足りない、あるいは相手に十分アピールできなければ、免疫力が低く見られてしまい、「イケメンなのになぜかモテない人」と言われることとなってしまいます。
モテる人生は、自分でつくり出すことができます。卑屈にならず前向きに、努力を重ねていきましょう。
----------
動物行動学研究家
愛知県出身。著述家として、多数の著作を世に送り出す。近著に『66歳、動物行動学研究家。ようやく「自分」という動物のことがわかってきた。』(ワニブックス)。
----------
(動物行動学研究家 竹内 久美子 構成=冨田ユウリ)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
これからの蚊対策は「殺さず吸わせず」 痒いところに手が届く、蚊にまつわる最新研究3選
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月12日 18時50分
-
徳島大など、ニワトリ胚の雌雄を卵の外から早期に判別可能な方法を開発
マイナビニュース / 2024年7月2日 18時49分
-
ラッコが「愛情表現」で血まみれになる納得の理由 最初は「鼻でつつく」など平和的に始まるが…
東洋経済オンライン / 2024年7月1日 20時0分
-
卵の中のひなの性別を、ふ化前に目の色で「目利き」する手法を開発
PR TIMES / 2024年7月1日 13時45分
-
更年期世代も「まだ恋愛をする」理由とは?脳の仕組みから考える「極めて明快な理由」【脳科学者・黒川伊保子先生に聞く】
OTONA SALONE / 2024年6月29日 20時0分
ランキング
-
1SNS投資詐欺、拠点のビル一斉捜索で8人逮捕 大阪府警、スマホ1800台超を押収
産経ニュース / 2024年7月23日 21時16分
-
2〈華麗なる一族、親子トップ2人が辞任〉報告書で暴かれた小林製薬のヤバすぎる製造管理体制…従業員が異変を報告も品質管理担当者は「青カビはある程度は混じる」記者会見は開かず逃げ切りか?
集英社オンライン / 2024年7月23日 20時6分
-
3睡眠時のエアコン「つけっぱなし」と「切タイマー」どっちが快適?節電できる風量は「弱」?「自動」?
RKB毎日放送 / 2024年7月23日 20時11分
-
4「県民の負託、理由にならない」 堺市の永藤市長 兵庫の斎藤知事疑惑巡り突き放し
産経ニュース / 2024年7月23日 20時17分
-
5部内パワハラ自殺、遺族が提訴 中央大フェンシング部、青森地裁
共同通信 / 2024年7月23日 19時16分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください